東洋医学における下厥上冒:その原因と症状
東洋医学を知りたい
先生、『下厥上冒』って東洋医学の言葉で、どういう意味ですか?
東洋医学研究家
良い質問だね。『下厥上冒』は、簡単に言うと、本来、体の下の方にあってほしいものが、上に上がってきてしまう状態を指すんだ。例えば、脾臓の働きが弱って、胃の内容物が上に逆流してしまうような場合に使うよ。
東洋医学を知りたい
なるほど。脾臓の働きと関係があるんですね。具体的には、脾臓の何が原因で、上がってきてしまうんですか?
東洋医学研究家
東洋医学では、脾臓は飲食物から栄養を吸収して、全身に運ぶ役割をすると考えられているんだ。で、『下厥上冒』は、この脾臓の『昇清作用』、つまり、栄養などを上に持ち上げる力が弱ってしまうことで起こるとされているんだよ。
下厥上冒とは。
東洋医学の言葉である『下厥上冒』は、ひ臓が本来上げるべきものを上げることができなくなり、胃の気が頭に逆流してしまう病気の状態を指します。
下厥上冒とは
– 下厥上冒とは
-# 下厥上冒とは
東洋医学では、健康な状態を保つためには、体内のエネルギーである「気」が滞りなく巡っていることが重要であると考えられています。この「気」には、大きく分けて2つの種類があります。1つは、天から降りてきて体内を温めたり、栄養を上に巡らせたりする働きを持つ「清気」です。もう1つは、地面から吸収され、老廃物を排泄したり、不要なものを下に降ろしたりする働きを持つ「濁気」です。
通常、清気は上に昇り、濁気は下に降ります。しかし、この流れが逆転してしまうことがあります。東洋医学では、これを「下厥上冒」と呼びます。つまり、下厥上冒とは、本来ならば体の上部である頭や顔、心臓などに昇っていくべき「清気」が下に降りてしまい、逆に体の下部である胃腸や足などに降ろすべき「濁気」が上に昇ってしまう状態を指します。
下厥上冒が起こると、体の様々な場所に不調が現れると考えられています。例えば、清気が頭に昇らず濁気が頭に昇ってしまうことで、頭痛やめまい、のぼせ、顔面紅潮などが起こりやすくなります。また、清気が下に降りてしまうことで、冷え性や下痢、むくみなどが起こりやすくなることもあります。
下厥上冒は、過労や睡眠不足、ストレス、暴飲暴食、冷えなど、様々な要因によって引き起こされると考えられています。
清気 | 濁気 | |
---|---|---|
正常な状態 | 上に昇る(頭や顔、心臓など) | 下に降る(胃腸や足など) |
下厥上冒の状態 | 下に降りる | 上に昇る |
症状例 | 冷え性、下痢、むくみなど | 頭痛、めまい、のぼせ、顔面紅潮など |
脾臓の働きと下厥上冒
– 脾臓の働きと下厥上冒
東洋医学において、脾臓は単なる臓器ではなく、生命エネルギーである「気」を生み出す重要な役割を担っています。食事から得られた栄養は、脾臓の働きによって「気」へと変換され、全身に運ばれていきます。これを「運化作用」と呼びます。
さらに脾臓は、「気」を上に昇らせる「昇清作用」も持っています。これにより、栄養が体の隅々まで行き渡り、臓器が正常に働くことができるのです。
しかし、暴飲暴食や冷たい食べ物、過労やストレスなどにより脾臓の働きが弱ってしまうことがあります。すると、運化作用が低下し、「気」が十分に生成されなくなってしまいます。また、昇清作用の低下により、本来上に昇るべき「清気」が下がってしまい、様々な不調が現れます。
この「清気」が下がる状態を「下厥」といい、反対に「濁気」が上に昇る状態を「上冒」といいます。下厥上冒になると、めまい、ふらつき、下痢、消化不良、むくみ、冷え、倦怠感などの症状が現れます。
脾臓の働きを整え、下厥上冒を改善するためには、まず生活習慣を見直すことが大切です。暴飲暴食を避け、消化の良い温かい食事を心がけましょう。また、ストレスを溜め込まず、十分な睡眠をとるようにしましょう。
脾臓の機能 | 働き | 不調時の状態 | 症状 |
---|---|---|---|
運化作用 | 食事から「気」を生成し、全身に運ぶ | 低下 | 下痢、消化不良、倦怠感など |
昇清作用 | 「気」を上に昇らせる | 低下(下厥) 「濁気」が上に昇る(上冒) |
めまい、ふらつき、むくみ、冷えなど |
胃気の逆流
– 胃気の逆流
-# 胃気の逆流
「下厥上冒」は、体の lower partにある「気」が上逆してしまう状態を指します。これは、単に脾臓の働きが弱まっているだけでなく、胃の「気」が正常な向きとは逆に上昇してしまうことが大きな特徴です。
食べ物を消化し、栄養を吸収した後の不要なものは、本来は体の下方へと送られ、便や尿として排泄されます。この流れをスムーズに行うために重要な役割を担うのが「胃の気」です。胃の気は、食べたものを消化するだけでなく、その後の不要なものを下へと送り出す力も持っています。
しかし、下厥上冒の状態に陥ると、この胃の気が弱まり、本来下へと流れるべきものが逆流し始めてしまいます。その結果、吐き気やげっぷ、胸やけなど、胃の内容物が逆流する症状が現れます。さらに、胃の気の上昇は頭部にまで及び、頭痛や頭重、めまいなども引き起こします。
このように、下厥上冒における胃気の逆流は、様々な不快な症状を引き起こす原因となります。そのため、東洋医学では、胃の気を整え、正常な流れに導く治療が重要視されます。
症状 | 原因 |
---|---|
吐き気、げっぷ、胸やけ、頭痛、頭重、めまい | 胃の気の上昇 |
下厥上冒の症状
– 下厥上冒の症状
下厥上冒は、体の上部と下部で同時に異なる症状が現れる状態を指します。特に、消化器系の不調が目立ちます。
まず、食欲が減退し、食事を美味しく感じられなくなったり、少し食べただけでもお腹が張ってしまうことがあります。また、消化機能の低下により、下痢を起こしやすくなります。
さらに、胃に溜まった気が正常に下に降りずに上に逆流することで、吐き気やげっぷ、胸焼けといった症状も引き起こします。これは、まるで熱い湯気が込み上げてくるような感覚と表現されることもあります。
これらの消化器症状に加えて、めまいやふらつき、頭痛、のぼせといった自律神経の乱れを示唆する症状が現れることもあります。これは、胃の不調が全身に影響を及ぼしているサインとも言えます。
下厥上冒は、これらの症状が単独で現れることもあれば、いくつかが組み合わさって現れることもあります。症状の現れ方には個人差が大きいため、自分の体の状態を注意深く観察することが大切です。
症状の部位 | 具体的な症状 |
---|---|
消化器系 | 食欲減退、味覚の変化、腹部膨満感、消化不良、下痢 |
胃 | 吐き気、げっぷ、胸焼け |
自律神経 | めまい、ふらつき、頭痛、のぼせ |
日常生活での注意点
– 日常生活での注意点
-# 日常生活での注意点
東洋医学では、健康を保つためには、体内のエネルギーである「気」の流れをスムーズにすることが重要であると考えられています。 下厥上冒は、この「気」の流れが乱れることで起こるとされています。具体的には、体の土台となる「脾」の働きが弱まり、胃腸でうまく「気」が作られないことで、様々な不調が現れると考えられています。
この「脾」の働きを整え、「胃」の「気」を正常に保つためには、日常生活での心がけが大切です。 まず、「脾」に負担をかけないよう、食べ過ぎや飲み過ぎは避け、腹八分目を心がけましょう。 また、一度にたくさんの量を食べると「脾」は疲れてしまうので、よく噛んで、ゆっくりと食事を楽しみましょう。
食事の内容も重要です。「脾」は、温かいものを好み、冷たいものを嫌います。冷たい飲み物や生野菜、冷奴などの冷たいものは「脾」の働きを弱めてしまうため、なるべく控えるようにしましょう。 また、脂っこいものや甘いものも「脾」に負担をかけるため、注意が必要です。 代わりに、温野菜やスープ、煮込み料理など、温かく消化の良いものを積極的に摂るように心がけましょう。
適度な運動も、「脾」や「胃」の働きを助けます。激しい運動は避け、ウォーキングや軽いストレッチなど、自分に合った運動を継続してみましょう。
これらの日常生活の心がけによって、「気」の流れが整い、下厥上冒の予防・改善に繋がると考えられています。
項目 | 注意点 |
---|---|
食事量 | 食べ過ぎ、飲み過ぎを避け、腹八分目を心がける よく噛んで、ゆっくりと食事を楽しむ |
食事内容 |
|
運動 | 激しい運動は避け、ウォーキングや軽いストレッチなど、自分に合った運動を継続する |
まとめ
– まとめ
東洋医学において、健康を維持するには、体内のエネルギーである「気」の流れがスムーズであることが重要とされています。しかし、様々な要因によってこの流れが乱れることで、体に不調が現れると考えられています。その中でも、「下厥上冒」は、気が正常な流れに逆らい、下半身の気が上半身に昇ってしまうことで起こる様々な症状を指します。
「下厥上冒」は、主に脾臓と胃の働きが弱まることで起こるとされています。脾臓と胃は、体に取り入れた飲食物から「気」を生み出し、全身に送り届ける重要な役割を担っています。しかし、暴飲暴食や冷たい飲食物の摂り過ぎ、過労やストレスなどによって、脾臓と胃に負担がかかると、その機能が低下し、「気」が正常に作られなくなります。その結果、下半身の冷えや消化不良といった症状が現れるだけでなく、上昇した「気」が頭部に滞ることで、めまいや頭痛、のぼせなどを引き起こすと考えられています。
「下厥上冒」を防ぐためには、脾臓と胃を労り、日頃から健康的な生活を心がけることが大切です。具体的には、バランスの取れた食事を心がけ、特に温かい食事を摂るようにしましょう。また、適度な運動や十分な睡眠をとり、ストレスを溜めないようにすることも重要です。東洋医学では、体を冷やすことは「気」の流れを悪くするとされているため、冷たい飲食物を避け、体を冷やし過ぎないように注意することも必要です。
概念 | 説明 |
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下厥上冒 | 気が下半身から上半身に逆流することで生じる不調 |
原因 | 脾臓と胃の機能低下による気の 생성 不足と上昇 |
脾臓と胃の役割 | 飲食物から「気」を生成し、全身に供給 |
脾臓と胃の機能低下の原因 | 暴飲暴食、冷たい飲食物、過労、ストレスなど |
症状 |
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予防策 |
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