体表

漢方薬

汗を止めて体を守る、斂汗固表薬の働き

- 汗と体の関係 東洋医学では、汗は単なる水分ではなく、体にとって重要なエネルギーである「気」の一部だと考えられています。気は、私たちが健康的に生きていくために欠かせない生命エネルギーのようなものです。食べ物から栄養を吸収し、それをエネルギーに変えて全身に送る、いわば体のあらゆる活動を支える根源的な力です。 汗は、体温調節や老廃物の排出など、健康を維持するために重要な役割を担っています。暑い時に汗をかいて体温を下げたり、運動して体内に溜まった不要なものを汗と一緒に排出したりするのは、体が正常に機能している証拠です。 しかし、東洋医学では、汗をかきすぎるのは、気も一緒に消耗してしまうと考えられています。例えば、夏の暑い日に大量の汗をかいた後、激しい疲労感や脱力感に襲われることはありませんか?これは、体内の気も一緒に失われてしまった状態だと考えられます。 また、汗の異常は、体のバランスが崩れているサインであると捉え、注意深く観察する必要があります。冷房の効いた部屋にいるのにダラダラと汗が止まらない、反対に暑くても全く汗をかかないなど、普段と違う汗のかき方をする場合は、体からの何らかのサインかもしれません。 東洋医学では、汗の状態を診ることで、体内の状態や病気の兆候を読み解こうとします。汗は、私たちの体と心が発信するメッセージの一つと言えるでしょう。
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戦慄後の汗:戰汗の謎

- 戰汗とは -戰汗とは- 「戰汗」とは、東洋医学において、悪寒や冷えを感じた後に出てくる汗のことを指します。風邪の初期症状として、多くの方が経験するのではないでしょうか。 体がぞくぞくするような寒さの後、突然どっと汗が吹き出す、あの感覚です。西洋医学では、必ずしも明確に定義づけられた症状ではありませんが、東洋医学では体の防御反応として重要な意味を持っていると考えられています。 東洋医学では、健康な状態とは「気・血・水」のバランスがとれている状態だと考えられています。「気」は生命エネルギー、「血」は血液とその循環機能、「水」は体液全般を指します。そして、このバランスが崩れることで様々な不調が現れると考えられており、戰汗もその一つです。 戰汗は、主に体の「陽気」の不足が原因で起こると考えられています。「陽気」とは、体を温めたり、外部からの邪気を防いだりする働きを持つエネルギーのことです。陽気が不足すると、体が冷えやすくなり、寒さに対応するために防御反応として汗が出てしまうのです。 戰汗は風邪の初期症状として現れやすいですが、体力の低下や冷えやすい体質、自律神経の乱れなどによっても引き起こされることがあります。普段から冷えを感じやすい、疲れやすいといった方は、戰汗が出やすい状態と言えるかもしれません。
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悪寒はあるけど熱はない?:但寒不熱とは

風邪をひくと、多くの人は体がゾクゾクする悪寒と、熱っぽさを同時に感じるでしょう。 しかし中には、悪寒がするのに熱が出ないという経験をした人もいるのではないでしょうか。 実はこのような状態は、東洋医学では「但寒不熱(たんかんふねつ)」と呼ばれ、体の中で何かが起こっているサインだと考えられています。 東洋医学では、健康な状態とは体の中の「気」「血」「水」のバランスがとれている状態だと考えます。そして、このバランスが崩れることで、様々な不調が現れると考えられています。 「但寒不熱」の状態は、体の中に「冷え」が溜まっている状態だと考えられています。 体の外から寒気が入り込んだり、体が冷える食べ物を過剰に摂取したりすることで、体の中に「冷え」が溜まってしまうのです。その結果、悪寒を感じる一方、発熱するほどのエネルギーが不足しているため、熱が出ない状態になると考えられています。 「但寒不熱」の状態を改善するには、体の中から温めることが大切です。 日常生活では、生姜やネギ、根菜類など、体を温める効果のある食材を積極的に摂り入れるようにしましょう。 また、冷たい飲み物や食べ物は控え、温かいものを摂るように心がけましょう。 湯船にゆっくりと浸かって体を温めるのも効果的です。 「但寒不熱」は、体が弱っているサインでもあります。 しっかりと体を休め、体力の回復に努めましょう。
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東洋医学における「巖」:その特徴と意味

- 「巖」とは何か 「巖」(がん)という字は、大きな石や岩山を意味します。東洋医学では、この字を借りて、体表に現れる悪性腫瘍の一種を指します。まるで岩のように硬く、ゴツゴツとした外観と感触を持っていることから、そのように呼ばれるようになりました。 西洋医学では、悪性腫瘍は「癌」(がん)と呼ばれ、細胞の異常な増殖によって引き起こされると考えられています。東洋医学においても、「巖」は細胞の異常と無関係ではありません。しかし、東洋医学では、「巖」は単なる細胞の病気としてではなく、体全体の生命エネルギー(気・血・水)のバランスが崩れた結果として捉えます。 つまり、「巖」は、長年の生活習慣の乱れや精神的なストレスなどが積み重なり、体の調和が乱れた結果、一部に偏って現れた状態だと考えます。西洋医学でいう「癌」の一部と共通する部分もありますが、東洋医学では、「巖」は体からの重要なサインと捉え、病気の根本原因を探り、体全体のバランスを整えることを治療の目的とします。