冷汗

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命の危機を知らせる警鐘: 亡陽證

- 陽気の深刻な喪失 東洋医学では、私たちが生きていくために必要なエネルギーを「気」と捉えています。 この「気」の中でも、温かさを生み出し、体を動かす活力を与えるものを「陽気」と呼びます。 この陽気は、太陽の光や、食べ物から得られるエネルギーから作られ、全身を巡り、生命活動を支えています。 しかし、様々な原因でこの陽気が著しく衰え、生命活動が維持できなくなる寸前の状態に陥ることがあります。 東洋医学では、これを「亡陽證(ぼうようしょう)」と呼びます。 亡陽證は、単に体がだるい、疲れやすいといった体力低下の状態とは異なり、生命の危機に直結する危険な状態です。 具体的には、意識がもうろうとしたり、手足が冷たくなったり、脈が弱くなるなどの症状が現れます。 亡陽證は、適切な治療を速やかに行わなければ、命を落とす危険性も孕んでいるため、注意が必要です。
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絶汗:死の前兆となる発汗

「絶汗」とは、文字通り汗が途絶えることなく流れ出る状態を指します。しかし、単に汗の量が多い「多汗」とは一線を画します。東洋医学では、人がまさに命の危機に瀕し、生命力が尽きようとする時、すなわち瀕死の状態において現れる特徴的な兆候の一つとされています。 東洋医学では、汗は「心の液」と表現され、心と密接な関係があると考えられています。健康な状態であれば、体温調節や老廃物の排出など、体内のバランスを保つために汗は適度に分泌されます。しかし、生命力が著しく低下すると、このバランスが崩れ、制御することができなくなってしまうのです。その結果、滝のように汗が流れ出る「絶汗」という状態に陥ると考えられています。 絶汗は、生死を左右する重篤な病状において現れることが多いとされています。そのため、東洋医学の現場では、絶汗が見られる場合、その背景にある病態を速やかに見極め、適切な処置を行うことが非常に重要視されます。
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蛇毒内攻証:その脅威と対処

- 蛇毒内攻証とは -# 蛇毒内攻証とは 蛇毒内攻証とは、読んで字のごとく、蛇にかまれた際に、その毒が体の奥深くにまで入り込み、様々な体の不調を引き起こす状態を指します。蛇の毒は、かまれた箇所だけに留まらず、血液の流れに乗り全身に広がり、生命を維持する上で重要な役割を担う臓器にまで深刻なダメージを与える可能性を秘めています。 蛇毒が体内に巡り始めると、まず、吐き気や嘔吐、めまい、冷や汗、呼吸困難、血圧の低下といった症状が現れます。重症化すると、意識が薄れ、痙攣を起こしたり、最悪の場合、命を落としてしまうこともあります。 蛇毒内攻証は、一刻を争う事態であり、適切な処置を迅速に行うことが極めて重要となります。病院では、蛇毒に対する血清療法や、症状に合わせて呼吸管理、循環管理などの集中治療が行われます。 蛇にかまれた場合、たとえ軽傷に見えても、決して油断せず、速やかに医療機関を受診することが大切です。
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中風:陽気が離れる時

- 中風脱証とは -# 中風脱証とは 東洋医学では、人体を流れる目に見えないエネルギーである「気」の乱れが、様々な病気を引き起こすと考えられています。脳卒中と似た症状を示す「中風」も、この「気」の乱れが原因で起こるとされています。 中風にはいくつかの種類がありますが、その中でも「中風脱証」は、生命エネルギーである陽気が急速に体から失われていく、非常に危険な状態を指します。まるで風に吹かれたロウソクの炎が消えそうになるように、生命の力が弱まっていく様子を表しています。 中風脱証は、突然意識を失ったり、顔色が青白くなったり、呼吸が弱くなったり、脈が非常に弱くなるといった症状が現れます。西洋医学の観点からは、重度の脳卒中や心筋梗塞、ショック状態などが考えられます。 中風脱証は一刻を争う状態であり、早急な治療が必要となります。東洋医学では、失われた陽気を補い、体の機能を回復させるための治療が行われます。