収斂

漢方薬

東洋医学における固渋剤の役割

- 固渋剤とは 固渋剤は、東洋医学において、体の様々な機能を正常に保つために欠かせない「気」「血」「精」「津液」といった物質の過剰な消耗を防ぐことを目的とした漢方薬の一種です。 これらの物質は、生命活動の根源となるものであり、不足すると様々な不調が現れます。 固渋剤は、例えるならば、ダムが決壊しそうな時に、その流れを食い止める役割を果たします。体内の「気」「血」「精」「津液」が過剰に失われるのを防ぎ、健康な状態を維持する手助けをします。 具体的には、汗、尿、便、精液などの過剰な排出、あるいは出血、下痢、咳、痰などの症状を抑える効果があります。 また、気虚による息切れや脱力感、あるいは臓器の下垂などにも用いられます。 ただし、固渋剤は、その名の通り、体の機能を固く渋らせる働きがあるため、使用には注意が必要です。 自己判断で安易に服用するのではなく、必ず専門家の診断のもと、適切な処方を受けるようにしてください。
漢方の治療

肺を労り咳を鎮める斂肺止咳

- 東洋医学における咳と肺の関係 東洋医学では、咳は単なる呼吸器系の症状としてではなく、体全体のバランスの乱れ、特に肺の機能と深く結びついていると考えられています。 肺は、東洋医学では「五臓六腑」の一つに数えられ、「気」を体内に取り込む重要な役割を担っています。 「気」とは、生命エネルギーのようなもので、呼吸によって肺から取り込まれ、全身に送られます。この「気」の流れがスムーズであれば健康な状態と言えますが、何らかの原因で肺の機能が低下すると、「気」の流れが滞り、様々な不調が現れると考えられています。 咳は、この「気」の流れが滞り、肺の機能が正常に働かなくなった時に起こるサインの一つです。 特に、乾燥した空気や冷たい空気などによって肺が乾燥すると、「気」の通り道である「気道」も乾燥し、咳が出やすくなると考えられています。 また、東洋医学では、咳は大きく分けて「熱」「寒」「燥」「虚」の4つの状態に分類され、それぞれの状態に合わせて治療法が異なります。例えば、「熱」による咳には熱を冷ます効果のある薬草、「寒」による咳には体を温める効果のある薬草が使われます。 このように、東洋医学では、咳の原因や症状に合わせて、体全体のバランスを整えることで、根本から咳を改善することを目指します。 単に咳を止めるのではなく、その背景にある肺の機能低下や「気」の乱れに着目することで、より根本的な治療が可能になると考えられています。
漢方の治療

生肌と収口:傷を治す東洋医学の力

- 生肌収口とは -# 生肌収口とは 生肌収口は、東洋医学が古来より大切にしてきた、傷を治すための考え方です。 この言葉は、傷が治っていく過程を「生肌」と「収口」という二つの段階に分けて捉えています。 まず「生肌」とは、傷口に新しい皮膚組織が生まれ、徐々にその範囲を広げていくことを指します。 これは、まるで植物が芽吹くように、体が本来持っている力で、失われた組織を補っていく力強い過程といえます。 次に「収口」は、文字通り、開いた傷口が少しずつ縮んでいき、最終的に綺麗に閉じることを意味します。 生肌収口は、単に傷口を塞ぐという表面的な治療ではありません。 東洋医学の考えに基づき、体の内側から自然治癒力を高めることで、新しい組織を再生させ、傷跡を最小限に抑えながら、健康な状態へと導くことを目指します。
内臓

腎氣不固:その意味と症状

- 腎氣不固とは -# 腎氣不固とは 東洋医学において、人間の身体には「氣」というエネルギーが流れていると考えられており、生命活動の源となっています。そして、その「氣」を生み出す重要な臓腑の一つが「腎」です。腎は単なる泌尿器の役割だけでなく、成長、発育、生殖などにも深く関わっており、生命エネルギーの根源である「精」を蓄える場所と考えられています。 この腎が本来持つべき「氣」の力が弱まり、身体の様々なものをしっかりと保つ力が衰えた状態を「腎氣不固」と言います。東洋医学では、この「しっかりと保つ力」を「固摂作用」と呼び、腎の重要な機能の一つと捉えています。腎氣不固の状態になると、この固摂作用が低下するため、体内の「氣」や「水」をうまくコントロールすることができなくなり、様々な不調が生じると考えられています。 例えば、「氣」が漏れ出てしまうことで、息切れや倦怠感、無気力といった症状が現れたり、「水」の代謝がうまくいかずに、むくみや頻尿、夜間頻尿といった症状が現れたりします。また、腎は生殖機能とも密接な関係があるため、腎氣不固は、男性ではEDや早漏、女性では不妊や生理不順などを引き起こす可能性もあると考えられています。 腎氣不固は、加齢や過労、ストレス、冷え、不摂生な生活習慣などが原因で引き起こされると考えられています。日頃から、これらの原因に気をつけ、バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠を心がけることが大切です。
漢方の治療

東洋医学における固澁法:体の「漏れ」を止める方法

- 固澁法とは -# 固澁法とは 人間の体は、汗や尿、便、あるいは女性であれば月経など、様々なものを体外に排出してバランスを保っています。東洋医学では、この「出す」作用と同時に、「漏らさない」「閉じ込めておく」という働きも、健康を維持するためにとても重要だと考えています。そして、この「漏らさない」「閉じ込めておく」働きを強める治療法を「固澁法(こじゅうほう)」と呼びます。 固澁法は、体質や症状に合わせて、漢方薬や鍼灸、食事療法などを組み合わせて行われます。例えば、過剰な発汗に悩む場合は、体の潤いを保ちながら発汗を抑制する効果のある漢方薬を処方したり、鍼灸で特定のツボを刺激して発汗を調整したりします。また、下痢や頻尿が続く場合は、消化機能や泌尿器系の働きを整え、不要なものを排出し過ぎないようにする漢方薬を用いることもあります。 固澁法は、体の「気」や「血」を補いながら、「漏れ」を止めることを目的としています。単に「漏れ」を止めるだけでなく、体の根本的な力を高め、健康な状態へと導くことが、固澁法の重要なポイントと言えるでしょう。