漢方の診察

東洋医学における痰厥:その原因と症状

- 痰厥とは -# 痰厥とは 痰厥とは、東洋医学において、体内の水分代謝の乱れにより生じた「痰」と呼ばれる粘り気のある病理産物が、体内のエネルギーや情報の通り道である「気」の流れを阻害し、意識の消失や筋肉の痙攣といった「厥逆」と呼ばれる症状を引き起こす病態を指します。 東洋医学では、健康を保つためには、体内に存在する「気」「血」「水」と呼ばれる要素が滞りなく巡っていることが重要だと考えられています。これらのバランスが崩れると、様々な不調が現れるとされています。 痰厥の場合、「水」の代謝が乱れることで「痰」が生じ、この「痰」が「気」の流れを阻害することで厥逆症状が現れると考えられています。西洋医学でいう「痰」は、主に呼吸器系の分泌物を指しますが、東洋医学における「痰」は、体内の水液代謝の乱れによって生じる粘り気のある病理産物全般を指します。そのため、呼吸器系だけでなく、消化器系や循環器系など、様々な部位に影響を及ぼす可能性があります。 痰厥は、その原因や症状、体質などによって様々なタイプに分類され、それぞれに対応した治療法が選択されます。
漢方薬

咳や痰に?消導剤の働きを解説

- 消導剤とは? 呼吸器系のトラブルを抱え、咳や痰に悩まされる時、漢方薬の世界では「消導剤」と呼ばれる種類の薬草を用いることがあります。 この消導剤は、その名の通り、体内に溜まった不要な水分や痰などの「導」き出すべきものを「消」化し、呼吸器系の働きをスムーズにすることを目的としています。 消導剤が効果を発揮するのは、主に粘り気の強い痰が絡む咳が出るときや、息苦しさを感じる時です。 これらの症状は、風邪や気管支炎、喘息など、様々な原因で引き起こされますが、いずれの場合も、呼吸器系に過剰な水分が溜まり、その結果として痰が発生している状態だと考えられます。 消導剤に含まれる生薬の働きによって、痰を薄くして排出しやすくする効果、炎症を抑えて咳を鎮める効果、気道の緊張を和らげて呼吸を楽にする効果などが期待できます。 具体的には、麻黄(マオウ)、杏仁(キョウニン)、桔梗(キキョウ)などが、それぞれの特性を生かして、呼吸器系の不調改善に貢献します。 ただし、消導剤はあくまでも対症療法であり、根本的な病気の治療を行うものではありません。 自己判断で安易に使用せず、必ず専門家の診断のもと、適切な処方を受けるようにしましょう。
漢方薬

咳や痰に効く漢方薬:消食剤とは?

- 消食剤とは何か -# 消食剤とは何か 消食剤とは、東洋医学において、体内に溜まった余分な水分や老廃物を指す「痰(たん)」を薄めて、体外へ排出する働きを助ける漢方薬の総称です。 咳や痰が絡む、喉に何か詰まった感じがする、といった呼吸器系の症状に効果を発揮します。 東洋医学では、「痰」は体の水分代謝が滞ることによって生じると考えられており、「水毒」の一種として位置付けられています。「水毒」は、体内の水分の循環が悪くなることで、様々な不調を引き起こすとされています。消化不良や冷え、むくみなども、この「水毒」が原因となることがあります。 消食剤は、体内の余分な水分や老廃物を排出する働きを高めることで、「水毒」を解消し、呼吸器系の症状改善を促します。 また、「水毒」が原因で起こる他の症状にも効果が期待できます。咳や痰、喉の不快感といった症状がある場合は、自己判断せずに、専門家の診断のもと、適切な漢方薬を使用するようにしましょう。
漢方薬

咳や痰にさようなら!:除痰剤のスッキリ効果

- 咳と痰の関係 咳は、空気の通り道である気道に、ウイルスや細菌、埃などの異物や、煙や冷気などの刺激を感じた際に、それを体外へ強制的に排出する、人間の持つ重要な防御反応です。咳をすることで、気道への侵入者を排除し、健康を守っています。 一方、痰は、気道で産生される粘液のことを指します。痰は、気道に入った異物を絡めとったり、気道の表面を潤して乾燥を防いだりするなど、重要な役割を担っています。つまり、痰自体は決して悪いものではなく、むしろ体を守るために必要不可欠な存在と言えます。 しかし、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかったり、タバコの煙や大気汚染などの刺激にさらされたりすると、体を守るために痰が過剰に分泌されることがあります。その結果、痰が絡みやすくなり、咳とともに排出されるようになります。 咳や痰は、一時的なものであれば心配ありませんが、長引いたり、息苦しさや発熱などの症状を伴う場合は、肺炎や気管支炎などの呼吸器疾患のサインである可能性も考えられます。自己判断せずに、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
漢方薬

咳や痰に悩むあなたへ:祛痰剤の世界

- 祛痰剤とは -# 祛痰剤とは 「祛痰剤」とは、文字通り痰を取り除くための薬のことを指します。痰は、呼吸器の病気によって引き起こされることもありますが、東洋医学では、体のバランスが崩れた時に現れるサインの一つとして捉えます。そのため、ただ単に痰を排出するのではなく、その原因を突き止め、根本から治療することを目指します。 西洋医学では、痰の粘り気を弱めて排出を促す薬が一般的ですが、東洋医学では、患者の体質や症状に合わせて、様々な生薬を組み合わせた漢方薬を用います。例えば、風邪の初期症状で、寒気を感じ、透明で水っぽい痰が出る場合には、体を温めて発汗を促す作用を持つ「麻黄湯(まおうとう)」などが用いられます。一方、喉が乾燥して、粘り気のある黄色い痰が出る場合には、熱を取り除き、潤いを与える「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」などが有効です。 このように、東洋医学における祛痰剤は、体全体のバランスを整え、自然治癒力を高めることを目的としています。自己判断で服用せず、必ず専門家の診断を受けてから使用しましょう。
漢方の治療

東洋医学における下気消痰

- 下気消痰とは -# 下気消痰とは 「下気消痰」は、東洋医学における治療法の一つで、その名の通り「気を降ろし、痰を消す」ことを目指します。 これは、体のエネルギーである「気」の流れが滞ることによって生じる痰の症状を改善することを目的としています。 東洋医学では、「気」は全身をくまなく巡り、生命活動の源と考えられています。 この「気」の流れが何らかの原因で滞ってしまうと、体に様々な不調が現れると考えられており、その一つが「痰」の発生です。 「痰」とは、単に呼吸器系のみに現れる症状ではなく、東洋医学では体内に停滞した「気」が形を変えたものと考えられています。そのため、呼吸器系以外にも、消化器系や循環器系など、様々な場所に症状が現れることがあります。 下気消痰では、「気を降ろす」効果のある生薬を「降気薬」、「痰を消す」効果のある生薬を「化痰薬」と呼びます。 下気消痰の治療では、これらの生薬を患者さんの体質や症状に合わせて適切に組み合わせることで、「気」の滞りを解消し、痰の症状を改善していきます。 下気消痰は、咳、痰、喘鳴、息切れ、のどの詰まり、めまい、食欲不振、吐き気など、様々な症状に用いられます。
漢方の治療

東洋医学における降気化痰:呼吸器症状へのアプローチ

- 気滞と痰の関係 東洋医学では、生命エネルギーである「気」は、健やかな状態では体の中をスムーズに巡っています。しかし、ストレスや感情の抑圧、不規則な生活、冷えなどが原因で、この「気」の流れが滞ってしまうことがあります。この状態を「気滞(きたい)」と呼びます。 気滞は、体の様々な機能に影響を及ぼしますが、特に水分代謝と密接な関係があります。 「気」には、体内の水分を適切な場所に運んだり、不要な水分を排泄したりする働きがあると考えられています。ところが、気滞が起こると、この水分の循環が滞り、体の中に余分な水分が溜まりやすくなってしまいます。 東洋医学では、この余分な水分が、体内で「痰(たん)」を生成すると考えられています。痰は、呼吸器系に影響を与えることが多く、咳や痰の増加、息苦しさといった症状を引き起こします。また、痰は呼吸器系だけでなく、消化器系や循環器系など、体の様々な場所に影響を及ぼし、様々な不調の原因となると考えられています。 つまり、気滞によって水分の代謝が乱れることが、痰を生み出し、様々な不調を引き起こす原因の一つと考えられているのです。
漢方の治療

東洋医学における化痰:痰の解消と健康

- 化痰とは -# 化痰とは 東洋医学では、体内に溜まった余分な水分や老廃物のことを「痰(たん)」と呼びます。この痰は、呼吸器系だけでなく、消化器系や代謝など、様々な体の機能と深く関わっていると考えられています。そのため、痰が過剰に溜まると、咳や痰づまりといった呼吸器症状だけでなく、消化不良やむくみ、倦怠感など、様々な不調の原因になるとされています。 化痰とは、このように体内に溜まった痰を、薬や食事療法などによって薄めて排出しやすくする治療法のことを指します。東洋医学では、痰は体のバランスが崩れることで生じると考えられているため、化痰は単に痰を取り除くだけでなく、体の根本的な状態を整えることを目的としています。 具体的には、痰の状態や原因に合わせて、生薬を用いた漢方薬の処方や、食事療法、生活習慣の改善などが行われます。例えば、湿度の高い環境で体が冷えやすい人の場合は、体を温め、水分代謝を促すような生薬を用いた漢方薬が処方されたり、冷たい飲み物や生野菜を控えるなどの食事指導が行われます。 化痰は、東洋医学における重要な治療法の一つであり、様々な症状の改善に役立つと考えられています。
漢方の診察

東洋医学における「痰蒙心包」:その謎に迫る

- 心の orifices を覆い隠す痰 東洋医学では、心臓は単なる血液を循環させる器官ではなく、思考や感情、意識など、人間としての精神活動を司る重要な役割を担うと考えられています。この「心」の働きを円滑に行うために重要な役割を担っているのが、「心包」という概念です。 心包は、心臓を包む袋のようなものではなく、心臓を外界からの邪気やストレスから守る、いわば心のバリアのような役割を担っています。心包が正常に機能することで、心は穏やかに、そして力強くその役割を果たすことができます。 しかし、心包に「痰」と呼ばれる病理産物が生じると、問題が生じます。東洋医学における「痰」は、単に呼吸器系に溜まる粘液だけでなく、体内の水分の代謝異常によって生じる、あらゆる粘っこい病理産物の総称です。 この痰が心包に影響を及ぼすことで、心の orifices を覆い隠してしまう状態を、「痰蒙心包」と呼びます。心の orifices とは、心が外界と繋がる窓口のようなもので、ここが痰によって塞がれてしまうと、心の働きが鈍り、様々な症状が現れます。 具体的には、思考力の低下や物忘れ、感情の不安定、不眠、動悸、めまいなどが挙げられます。まるで心が霧で覆われたように、明瞭さを失い、本来の力を発揮できなくなってしまうのです。
体質

陽虚が招く水滞:気化不例の理解

- 気化不例とは -# 気化不例とは 東洋医学では、人は生まれながらにして「気」「血」「水」という3つの要素を持っていて、これらが体の中を滞りなく巡ることで健康が保たれると考えられています。その中でも特に、「気」は生命エネルギーの源であり、体のあらゆる活動になくてはならないものです。呼吸や血液の循環、体温調節、消化吸収、水分代謝など、「気」は体の中で休みなく働いてくれています。 この「気」の働きが弱まってしまうことを「気虚」といいますが、さらに「気虚」が進んで冷えの症状が顕著になった状態を「陽虚」と呼びます。「気化不例」は、この「陽虚」が原因で起こる体の不調の一つです。 「気化」とは、体の中に入った水分を「気」の力で温め、体中に巡らせたり、不要な水分を汗や尿として体外へ排泄したりする働きのことを指します。「気化不例」になると、この「気」による水分の代謝機能が正常に働かなくなるため、体に水分が過剰に溜まってしまいます。 具体的には、むくみや冷え、だるさ、尿量減少、下痢、めまい、食欲不振、頭痛などの症状が現れます。 「気化不例」は、体質や生活習慣、ストレスなどが複雑に関係して起こると考えられています。
内臓

東洋医学における『結胸』:その原因と症状

- 『結胸』とは 『結胸』は、東洋医学において、胸やお腹周辺の臓器の働きが悪くなることで起こると考えられています。これは、体の中をスムーズに巡っているはずの「気・血・水」の流れが、何らかの原因で滞ってしまうことが原因です。 この流れを阻害する原因となるものを「邪」と呼びますが、具体的には、 * 体内に溜まった余分な水分である「痰飲(たんいん)」 * 消化不良などで胃腸に停滞した食べ物の滞りである「食積(しょくせき)」 * 寒さや暑さなどの外部からの影響である「外邪(がいじゃ)」 などが挙げられます。 これらの「邪」が体内に侵入し、特に胸部に留まってしまうことで、様々な不快な症状が現れます。つまり、『結胸』とは、これらの「邪」が原因で、胸部に様々な不調が現れる状態のことを指します。
漢方の治療

東洋医学における宣肺化痰:呼吸を楽にする知恵

- 呼吸を楽にする東洋医学の考え方 東洋医学では、健康を保つためには体内の「気」というエネルギーの流れがスムーズであることが重要だと考えられています。この「気」は、全身を巡り、体の機能を維持するために欠かせないものです。呼吸器の健康においても、「気」の流れは非常に重要です。 肺は、東洋医学では「気」を体内に取り込む主要な器官だと考えられています。新鮮な空気と共に「気」を吸い込み、全身に送り届ける役割を担っています。しかし、肺の働きが弱ったり、風邪などの影響で「気」の流れが滞ると、呼吸に悪影響が出ると考えられています。 例えば、呼吸が浅くなったり、息苦しさを感じたりするのは、「気」が不足している状態かもしれません。また、痰が絡む、咳が止まらないといった症状は、「気」の流れが滞り、体に不要なものが溜まっている状態を表している可能性があります。 東洋医学では、このような呼吸器の不調を改善するために、食事療法、鍼灸治療、漢方薬の処方など、様々なアプローチで「気」の流れを整え、肺の機能を高めることを目指します。
漢方の診察

東洋医学における熱哮:原因と症状

- 熱哮とは -# 熱哮とは 熱哮とは、東洋医学において、肺に熱がこもることで起こる呼吸器疾患の一つです。激しい咳や喘鳴、呼吸困難などの症状が現れ、現代医学の喘息と共通する部分もありますが、東洋医学ではその原因や治療法が異なります。 熱哮は、主に肺に熱がこもり、気道の炎症を引き起こすことで発症すると考えられています。この熱は、風邪などの外邪が原因となる場合や、暴飲暴食、過労、ストレスなどによって体内に熱が生じる場合があります。また、辛いものや脂っこいものなど、熱を生みやすい食事も原因の一つとされています。 熱哮の特徴的な症状として、粘り気のある黄色や緑色の痰が挙げられます。これは、東洋医学で「熱痰」と呼ばれるもので、肺に熱がこもることで発生すると考えられています。その他、咳や喘鳴、呼吸困難、胸の痛み、発熱などの症状が現れることもあります。 熱哮の治療は、肺の熱を取り除き、呼吸機能を改善することを目的とします。そのため、東洋医学では、患者さんの体質や症状に合わせて、漢方薬の処方や鍼灸治療などが行われます。また、日常生活においても、辛いものや脂っこいもの、甘いものなどを控えるなど、食生活の改善が重要です。さらに、適度な運動や十分な休息を心がけ、ストレスを溜めないようにすることも大切です。
漢方の診察

東洋医学における『痰』の理解

- 『痰(たん)』2つの側面 東洋医学では、西洋医学でいう「痰(たん)」は「喀痰」と捉え、単なる呼吸器系の症状の一つとして認識されています。一方、東洋医学では、この「痰」をより広義に捉え、「痰」という言葉には、目に見える形で排出されるものだけでなく、体内に蓄積して様々な不調を引き起こすものも含まれます。 東洋医学でいう「痰」は、体内の水分の代謝が滞ることによって生じる、粘稠な病理産物と考えられています。分かりやすく例えると、鍋料理を焦がしてしまった時に鍋底に残る、こびり付いた物質をイメージすると良いでしょう。この「痰」は、呼吸器系だけでなく、消化器系など、体の様々な場所に蓄積する可能性があります。 目に見える「痰」としては、咳と共に排出される粘液などが挙げられます。これは、風邪などの呼吸器系の不調時に多く見られます。一方、目に見えない「痰」は、体内に留まり、様々な不調を引き起こすとされています。例えば、めまいや動悸、吐き気、消化不良、関節の痛み、むくみ、さらには精神的な不安やイライラ感なども、「痰」が原因で引き起こされると考えられています。 このように、東洋医学における「痰」は、西洋医学の考え方とは少し異なる視点から捉えられています。そのため、「痰」の治療には、単に症状を抑えるのではなく、体質や生活習慣を改善し、水分の代謝を正常化することが重要となるのです。
漢方の診察

東洋医学が考える咳嗽の原因と治療

- 咳嗽とは 咳嗽とは、肺や気道への刺激をきっかけに、反射的に息を吐き出すことを指します。激しい咳の場合には、胸部に痛みを感じたり、呼吸が苦しくなったりすることがあります。西洋医学では、主に呼吸器系の病気と捉えられますが、東洋医学では少し違った視点で捉えます。 東洋医学では、咳嗽は体のバランスが崩れたサインだと考えられています。体内の気、血、水の流れが滞ったり、過剰になったりすることで、肺に影響を及ぼし、咳が出ると考えます。そのため、咳の原因を特定するために、患者さんの体質や生活習慣、症状などを総合的に判断します。 例えば、風邪の初期症状としてみられる咳は、寒さや乾燥によって体の防衛機能が低下し、肺に邪気が侵入することで起こると考えられています。一方、慢性的な咳は、胃腸の働きが弱っていたり、ストレスや疲労が溜まっていたりすることが原因として考えられます。 東洋医学では、咳嗽の治療には、体のバランスを整えることを重視します。具体的には、鍼灸や漢方薬を用いて、気、血、水の巡りを改善し、肺の機能を高めることで、咳の症状を和らげます。また、食事療法や生活習慣の改善など、患者さん一人ひとりの体質や症状に合わせた総合的な治療を行います。
漢方の診察

東洋医学における風痰:その原因と症状

- 風痰とは -# 風痰とは 「風痰」とは、東洋医学の考え方において、風の邪気と痰飲が合わさって生じる病邪のことを指します。 風は、目に見えないものの、自然界における様々な変化をもたらす力として捉えられています。その性質は動きやすく、変化しやすく、留まることを嫌うとされています。人体においても、風は体内を縦横無尽に巡り、時に体の機能を正常に保つ働きを担います。 一方、痰は、体内に停滞しやすい性質を持つ病理産物です。体内の水液代謝が滞ると、余分な水分が体内に溜まり、それが粘り気を帯びて痰となります。痰は、気の流れを阻害し、様々な不調を引き起こす原因となります。 風痰は、この風の動きやすさと痰の停滞しやすさが組み合わさることで、複雑な症状を引き起こすと考えられています。風のように症状が現れたり消えたりする、めまいやふらつき、耳鳴り、咳、痰などの症状が特徴です。 風痰は、その原因や症状によって細かく分類され、それぞれに適した治療法が選択されます。日々の生活習慣や食事内容を見直し、体の内側から健康を整えることが大切です。
漢方の診察

舌の裏にできる嚢胞:舌下痰包

- はじめに -# はじめに 私達が毎日当たり前のように食事をしたり、会話をしたりする際に、口の中は重要な役割を担っています。食べ物を噛み砕き、唾液と混ぜ合わせて飲み込みやすくする、また、発声して言葉を作る、など、その働きは多岐に渡ります。口の中には、唇、歯、歯茎、舌、口蓋(こうがい)など様々な器官が存在しますが、特に舌は食べ物を喉の奥に送り込んだり、味を感じたりする上で欠かせない、非常に良く動く器官です。 ところで、ご自身の舌の裏側を観察したことはありますでしょうか。鏡で見てみると、血管が透けて青白く見えたり、細かい粒々が見えたりするかもしれません。舌の裏側は唾液腺が開口している部分でもあり、通常時でもサラサラとした唾液で潤っています。この舌の裏側に、何らかの原因で唾液が溜まってしまい、膨らみができてしまうことがあります。今回は、その様な舌の裏側にできる嚢胞の一つである「舌下痰包」について解説していきます。
漢方の診察

舌下に潜む謎:痰包とその正体

- はじめに -# はじめに 私たちの健康を支える東洋医学は、西洋医学とは異なる視点で身体の不調と向き合い、独自の解釈と治療法を培ってきました。古くから伝わるその知恵は、現代においても多くの人の心身を癒しています。今回は、東洋医学における重要な概念の一つである「痰包(たんぽう)」について、詳しく解説していきます。 「痰(たん)」と聞くと、風邪をひいた時に喉に絡む粘り気のある分泌物をイメージする方が多いかもしれません。しかし、東洋医学における「痰」は、もっと広い意味を持っています。それは、体内の水分代謝が滞ることによって生じる、様々な不調の原因となる粘液質の総称なのです。そして、「痰包」とは、その「痰」が体内の特定の場所に停滞し、塊状になってしまった状態を指します。 痰包は、体の様々な場所に形成される可能性があり、その場所や症状は多岐に渡ります。例えば、喉にできた痰包は、声がれや異物感の原因となり、頭にできた痰包は、頭痛やめまいを引き起こすことがあります。このように、痰包は、その存在によって様々な不調を引き起こす可能性を秘めているのです。 西洋医学では、痰包に対応する明確な病名はありません。そのため、西洋医学的な検査では、異常が見つからない場合もあります。しかし、だからといって、その症状を軽視することは決してできません。痰包は、東洋医学の観点から見ると、身体からの重要なサインであると言えるでしょう。 この章では、痰包の基本的な概念について解説しました。続く章では、痰包ができる原因や症状、そしてその改善策について、さらに詳しく見ていくことにしましょう。
漢方の診察

痰鳴:呼吸の音に潜むサイン

私たちは、日々何気なく呼吸をしていますが、その呼吸の音に意識を向けることは少ないのではないでしょうか。東洋医学では、呼吸は単に生命を維持するための行為ではなく、心身の状態を反映する重要なサインと捉えられています。 呼吸は、体内に新鮮な「気」を取り込み、不要な「気」を排出する働きをしています。この「気」の流れがスムーズであれば、心身ともに健康な状態が保たれます。しかし、何らかの原因で「気」の流れが滞ると、呼吸に乱れが生じ、様々な不調が現れると考えられています。 普段の呼吸と異なる音、例えば、呼吸が浅い、呼吸が速い、息苦しい、ゼーゼーという音がする、ヒューヒューという音がするといった場合には、体に何らかのサインが出ている可能性があります。これらの音は、肺や気管支などの呼吸器系の不調だけでなく、ストレスや不安などの精神的な緊張によっても引き起こされることがあります。 東洋医学では、これらの呼吸の音を注意深く聞き分けることで、病気の予防や早期発見に役立てるとされています。日頃から自身の呼吸の音に耳を傾け、いつもと違うと感じたら、専門家の診察を受けるようにしましょう。
内臓

東洋医学における貯痰之器:肺の役割

- 貯痰之器とは? 東洋医学では、身体の中に「貯痰之器」と呼ばれる場所があると考えられています。「貯痰之器」とは、その名の通り、体内で生じた「痰」と呼ばれる不要なものが溜まりやすい場所のことを指します。 現代医学では、肺や気管支といった具体的な臓器名を挙げて病気を説明しますが、東洋医学では、「痰」は「気」や「血」の流れを滞らせる原因となるものと考えられており、その「痰」が溜まりやすい場所として「貯痰之器」という概念を用います。 「貯痰之器」は特定の臓器を指す言葉ではありませんが、特に呼吸を司る「肺」がその役割を担うと考えられています。肺は、空気中の清気を体内に取り込み、体内の濁気を排出する働きをしていますが、この働きが弱まると、体内に「痰」が溜まりやすくなると考えられています。 「痰」は、咳や痰などの呼吸器症状だけでなく、頭痛やめまい、食欲不振、むくみなど、様々な不調の原因となると考えられています。そのため、東洋医学では、「貯痰之器」の状態を把握することが、病気の予防や治療に重要であると考えられています。
漢方の診察

寒痰阻肺證:その症状と特徴

- 寒痰阻肺證とは -# 寒痰阻肺證とは 寒痰阻肺證は、東洋医学における呼吸器系の病態の一つです。「寒痰」とは、冷えや水分代謝の滞りによって生じた、粘り気のある冷たい性質の痰のことを指します。この寒痰が肺に停滞し、気の流れを阻害することで、咳や痰などの呼吸器症状をはじめ、様々な不調が現れると考えられています。 冬の寒い時期や、冷えやすい体質の方に多く見られます。また、普段から冷たい飲食を摂り過ぎたり、冷房の効いた室内で長時間過ごしたりする習慣がある場合も、発症のリスクが高まるとされています。 寒痰阻肺證は、単なる風邪とは異なる病態として捉えられています。風邪の場合、発熱や喉の痛みなどの症状が中心となることが多いですが、寒痰阻肺證では、白い色の痰を伴う咳、息苦しさ、倦怠感などが特徴的に見られます。 東洋医学では、一人ひとりの体質や症状に合わせた治療が大切だと考えられています。寒痰阻肺證と診断された場合は、身体を温める効果のある漢方薬の処方や、鍼灸治療などが行われます。さらに、日常生活では、身体を冷やさないように注意することが重要です。例えば、温かい食事を心がけたり、冷たい飲み物は控えるようにしたりするなどの工夫が大切です。
漢方の診察

痰熱閉肺證:咳、痰、胸の痛み…

- 痰熱閉肺證とは -# 痰熱閉肺證とは 痰熱閉肺證とは、東洋医学の考え方の中にある病的な状態の一つで、肺に熱と痰が停滞することで呼吸機能が正常に働かなくなることを指します。この状態になると、咳、痰、胸の痛み、息苦しさなど、風邪や気管支炎に似た症状が現れます。 西洋医学では、これらの症状はウイルスや細菌感染などによって引き起こされると考えられていますが、東洋医学では、体内の熱と湿邪のバランスが崩れることが原因だと考えられています。 具体的には、暴飲暴食や脂っこいものの食べ過ぎなどによって体に熱がこもり、それが湿気と結びつくことで「痰熱」と呼ばれる病的な状態を引き起こします。この痰熱が肺に停滞すると、気道の流れが阻害され、呼吸困難や咳、痰などの症状が現れると考えられています。 痰熱閉肺證は、単なる風邪や気管支炎とは異なり、体質や生活習慣などが複雑に絡み合って発症すると考えられています。そのため、東洋医学では、患者さん一人ひとりの体質や症状に合わせて、食事療法や漢方薬などを用いた総合的な治療が行われます。
漢方の診察

秋の乾燥に注意!燥邪犯肺證とは?

- 燥邪犯肺證とは -# 燥邪犯肺證とは 秋の訪れとともに、空気の乾燥が強まりますが、東洋医学では、この乾燥した状態を「燥」と捉え、「邪気」の一種である「燥邪」が体に侵入しやすくなると考えます。そして、この燥邪が特に影響を与えやすいのが、呼吸をつかさどる重要な臓器である「肺」です。 「燥邪犯肺證」は、まさにこの燥邪が肺に侵入し、その機能を阻害することで引き起こされる様々な症状を指します。肺は、体内に新鮮な空気を取り込み、不要なものを排出する役割を担っていますが、燥邪の影響を受けると、そのスムーズな働きが妨げられます。 具体的には、乾燥による喉の痛みや咳、痰の絡み、声のかすれといった呼吸器系の症状が現れます。さらに、燥邪は体の潤いを奪う性質があるため、皮膚の乾燥や便秘といった症状も引き起こすことがあります。 燥邪犯肺證は、まさに秋の乾燥がもたらす体の不調と言えるでしょう。
漢方の診察

痰蒙心神証:その症状と東洋医学的理解

- 痰蒙心神証とは -# 痰蒙心神証とは 東洋医学では、心と身体は密接に繋がっていると捉え、心の働きは目に見えない「気」「血」「水」のバランスによって保たれていると考えます。 痰蒙心神証は、このバランスが崩れ、体内の「水」の巡りが滞ることで生じる「痰」が、「心」を覆い隠してしまう状態を指します。まるで、澄み切った空を覆い隠す霧のように、「痰」が心の働きを阻害することで、様々な症状が現れると考えられています。 西洋医学の診断名とは異なりますが、意識が朦朧としたり、ぼーっとして集中力が低下したり、物忘れが多くなるといった、まるで霧がかかったような状態が見られます。また、気分が落ち込みやすく、憂鬱な気分になったり、不安を感じやすくなることもあります。さらに、頭が重く感じたり、体がだるく感じるなど、身体の不調を訴える場合もあります。 痰蒙心神証は、過剰なストレスや不規則な生活習慣、冷えやすい体質などが原因で引き起こされると考えられています。東洋医学では、一人ひとりの体質や状態に合わせて、漢方薬や鍼灸治療などを用い、「痰」を取り除きながら「心」の働きを整えていく治療を行います。