肝腎陰虚

体質

肝陽上亢:その原因と症状

- 肝陽上亢とは 東洋医学では、人間の身体は「気・血・水」の三つの要素で成り立っているとされ、これらがバランスを保つことで健康が維持されると考えられています。この考え方に基づくと、肝陽上亢とは、五臓六腑の「肝」と密接な関係を持つ「陽」の気が必要以上に上昇してしまう状態を指します。 肝は、東洋医学において「疏泄(そせつ)」という重要な役割を担っています。これは、体内に滞りなく気を巡らせ、精神活動や血の巡り、消化機能などを円滑にする働きです。しかし、ストレスや過労、睡眠不足、不適切な食事などの様々な要因によって肝の働きが弱まると、この疏泄がうまく機能しなくなります。その結果、コントロールを失った陽の気が上昇してしまう状態、すなわち肝陽上亢を引き起こしてしまうのです。 肝陽上亢になると、上昇した陽の気が頭に上りやすくなるため、のぼせや顔面紅潮、めまい、耳鳴り、イライラしやすくなる、怒りっぽくなるといった症状が現れます。また、不眠や頭痛、口が苦く感じる、便秘などの症状を伴うこともあります。肝陽上亢は、高血圧や脳血管疾患などのリスクを高めるとも考えられているため、注意が必要です。
体質

東洋医学における「相火妄動」

- 「相火妄動」とは -# 「相火妄動」とは 東洋医学では、人間の生命活動は「気・血・水」のバランスによって成り立っていると考えられています。そして、このバランスを保つために重要な役割を担っているのが「陰陽五行説」です。 陰陽五行説では、自然界のあらゆる現象を「木・火・土・金・水」の五つの要素に分類し、それぞれの要素が互いに影響し合いながら調和を保っていると考えます。 「火」はこの五行の一つであり、心臓や循環器系、精神活動などをつかさどるエネルギーとされています。この「火」のエネルギーが、何らかの原因で過剰になり、暴走した状態が「相火妄動」と呼ばれるものです。 つまり、「相火妄動」とは、体内のエネルギーバランスが崩れ、「火」のエネルギーが過剰になることで、心身に様々な不調が現れる状態を指します。 例えるならば、本来は静かに燃えていてほしい火が、制御を失って激しく燃え盛っているような状態です。この状態が続くと、心身のバランスはさらに崩れ、様々な症状を引き起こす可能性があります。
漢方の診察

下焦病證:流行性熱病の後遺症

下焦病証とは、高熱を伴う感染症が長引いたり、いったん治まったと思われた後に再び現れる、様々な症状を指します。東洋医学では、このような高熱を伴う感染症を「温病」と呼び、その症状の変化や経過を重視して治療を行います。 温病は、風邪などの外部からの邪気が原因で起こりますが、病気が長引いたり、体力が低下していると、邪気が体の奥深くまで侵入してしまうことがあります。この時、特に影響を受けやすいのが「下焦」と呼ばれる部位です。 下焦とは、西洋医学の解剖学的な名称ではなく、東洋医学独自の考え方で、体の機能を維持するために必要な「精」を蓄え、不要なものを排泄する重要な役割を担っています。具体的には、腎臓と膀胱が含まれます。下焦は生命活動の根幹を担う場所で、ここに邪気が入り込むと、慢性的な疲労感や倦怠感、冷え、むくみ、排尿異常など、様々な症状が現れます。これが下焦病証です。 下焦病証は、温病の治療が適切に行われなかった場合や、患者の体力が低下している場合に起こりやすく、その症状は多岐にわたるため、自己判断せずに、専門家の診察を受けることが大切です。
漢方の治療

肝と腎を補う: 調肝補腎のススメ

- 調肝補腎とは? 調肝補腎とは、東洋医学における治療法の一つで、その名の通り、肝の働きを整えながら腎の働きを補うことを目的としています。東洋医学では、人間の身体は、肝、心、脾、肺、腎という五臓を中心とする臓腑で構成され、これらの臓腑は、それぞれが独自の機能を持ちながらも、互いに密接に関連し合い、影響し合って、全体として調和を保っていると考えられています。 この考え方に基づき、調肝補腎は、肝の疏泄(そせつ)作用と腎の精を補うことで、身体全体のバランスを整え、様々な不調を改善へと導きます。 肝は、東洋医学では「気」の流れを調整し、精神状態や自律神経の働きを司るとされています。ストレスやイライラなどが続くと、肝の働きが低下し、「気」の流れが滞り、自律神経の乱れ、イライラしやすくなる、不眠、消化不良、生理不順などを引き起こすと考えられています。 一方、腎は、東洋医学では生命エネルギーの根源である「精」を蓄え、成長、発育、生殖機能などを司るとされています。加齢やストレス、過労などが続くと、腎の「精」が不足し、老化現象の促進、疲労感、精力減退、腰痛、頻尿などを引き起こすと考えられています。 調肝補腎は、これらの症状に対して、単に肝と腎の働きを別々に調整するのではなく、両者の関係性に着目し、相乗効果によって身体全体のバランスを整え、心身の健康を取り戻すことを目指します。