食欲不振

漢方の治療

食欲を呼び覚ます「開胃」のススメ

「開胃」とは、東洋医学において、食欲不振や消化不良といった症状を改善し、食欲を増進させるための治療法を指します。これは、ただ単に食事の量を増やすことを目的とするのではなく、胃腸の働きを活発化させ、体内に栄養を効率よく取り込むことを目指しています。 現代社会においては、ストレスの多い環境や不規則な生活習慣、偏った食事などにより、胃腸の不調を訴える人が少なくありません。このような現代人の抱える悩みにも、「開胃」は有効な解決策となり得ます。 東洋医学では、胃腸は「後天の気」を生み出す源と考えられています。これは、人が健やかに生きるために欠かせないエネルギーの元となるものです。つまり、胃腸の働きが弱まり、「後天の気」が不足すると、食欲不振だけでなく、全身の倦怠感や気力の低下、免疫力の低下など、様々な不調が現れると考えられています。 「開胃」の治療法としては、漢方薬の処方、鍼灸治療、食事療法、生活習慣の改善指導など、様々な方法が用いられます。症状や体質に合わせて、これらの方法を組み合わせることで、胃腸の働きを整え、健康な状態へと導きます。
漢方の診察

半表半裏證とは?

- 半表半裏證の概要 半表半裏證とは、東洋医学において、風邪などの邪気が体の中に入り込もうとしている中途半端な状態を指します。 体の表面である「表」と、奥深い部分である「裏」の中間に邪気が留まっている状態を表す言葉です。 風邪の引き始めである「太陽病」では、寒さや風などの邪気が体の表面に留まり、悪寒、発熱、頭痛、筋肉痛などの症状が現れます。 しかし、邪気がさらに体内へと侵入しようとすると、半表半裏證の状態に移行します。 半表半裏證では、太陽病の症状に加えて、胸苦しさ、吐き気、食欲不振といった、体の奥が影響を受けた兆候も現れます。これは、邪気が体の「気」の流れを阻害し、胃腸などの消化器官の働きを弱らせているためと考えられています。 半表半裏證は、他の病証と複合して現れることが多く、複雑な症状を呈することが特徴です。そのため、自己判断で治療を行うことは避け、専門家の診断を受けることが重要です。適切な漢方薬の処方を受けることで、邪気を体外へ排出し、症状を改善することができます。
体質

心脾両虚:心と脾の密接な関係

- 心脾両虚とは -# 心脾両虚とは 東洋医学では、心と脾は互いに深く関係し合い、影響を与えながら体のバランスを保っていると考えられています。心臓は血液を全身に送り出すポンプのような役割を担い、精神活動や意識、思考などもつかさどっています。一方、脾は胃腸と協力して飲食物を消化吸収し、気や血を生み出す源です。この気は生命エネルギー、血は体を滋養する栄養豊富な液体を指します。 心脾両虚とは、この重要な働きを担う心と脾の両方が弱っている状態を指します。心の機能が低下すると、不安や不眠、動悸などの精神的な症状が現れやすくなります。また、脾の機能が低下すると、食欲不振や消化不良、疲れやすい、顔色が悪いなどの症状が現れます。 心脾両虚は、これらの心の症状と脾の症状が同時に現れることが特徴です。例えば、疲れやすく、食欲がなく、眠りが浅い、顔色が悪い、気分が落ち込みやすいといった症状が重なって現れることがあります。 心脾両虚は、過労やストレス、偏った食事、睡眠不足などによって引き起こされると考えられています。また、加齢によっても心身の機能が低下しやすくなるため、高齢者に多く見られる傾向があります。
漢方の診察

東洋医学が考える「口淡」の原因と対策

口淡とは、東洋医学において、味覚が薄れてしまう状態を指す言葉です。まるで霧がかかったように、何を食べても味がぼやけて感じられ、本来の美味しさを味わうことができません。 この状態は、一時的なものから慢性的なものまで様々ですが、単なる味覚の問題にとどまらず、体の不調のサインである可能性も示唆されています。 口淡は、食欲不振を引き起こし、食事量が減ることで、体に必要な栄養が不足してしまう恐れがあります。また、食事が楽しめないことから、精神的なストレスを感じやすくなり、気分の落ち込みや意欲の低下に繋がってしまうこともあります。 東洋医学では、口淡は、体の水分代謝の乱れや、胃腸の機能低下、気の流れの滞りなどが原因だと考えられています。 そのため、口淡を改善するためには、生活習慣の見直しや、体質に合った食事療法、漢方薬の服用などが有効とされています。自己判断で対処するのではなく、専門家の指導を受けるようにしましょう。
漢方の診察

insatiable: 消穀善饑とは?

- 消穀善饑底なしの食欲の謎 「消穀善饑」という言葉をご存知でしょうか?あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、これは東洋医学で使われる言葉で、簡単に言うと「どれだけ食べてもすぐお腹が空いてしまう状態」を指します。現代社会においても、この状態に悩まされている方は少なくないのではないでしょうか? 常に空腹を感じてしまう、食べても食べても満足感を得られない。このような状態は、一見すると単なる食べ過ぎやストレスによるものと片付けられがちです。しかし東洋医学では、消穀善饑は体のバランスが崩れているサインとして捉えます。 東洋医学では、食べ物を消化吸収する「脾」という臓器の働きが弱っている状態を「脾虚(ひきょ)」と言います。この脾虚が消穀善饑を引き起こす大きな要因の一つと考えられています。脾の働きが弱ると、食べた物を十分に消化吸収することができず、体に栄養が行き渡りません。その結果、体は常にエネルギー不足の状態となり、脳に「もっと食べろ」という指令を出し続けるのです。 また、ストレスや不規則な生活、冷たい食べ物や飲み物の摂り過ぎなども脾の働きを弱める原因となります。現代社会はストレスが多く、食生活も乱れがちです。消穀善饑に悩む方が多いのも、こうした背景が影響しているのかもしれません。 もしあなたが消穀善饑に悩んでいるなら、まずは自分の生活習慣を見直してみましょう。食事は腹八分目を心がけ、よく噛んで食べるように意識することが大切です。また、暴飲暴食や冷たいもの、甘いものを控えることも脾の負担を減らすために有効です。十分な睡眠をとり、ストレスを溜めないようにすることも心がけましょう。
漢方の診察

東洋医学における「納呆」:食欲不振の深層へ

- 「納呆」とは何か 「納呆」とは、東洋医学において、食欲が減退し、食事を美味しく感じられず、食べる量が自然と減ってしまう状態を指します。これは、西洋医学でいう「食欲不振」に似た概念ですが、一時的な食欲の低下とは区別されます。 西洋医学では、主に体の不調に焦点を当てますが、東洋医学では、心と体は密接に繋がっていると捉え、体の表面的な症状だけでなく、その背後にある根本的な原因を探求します。つまり、体の不調は、心の乱れが引き起こしていると考えます。 したがって、「納呆」もまた、単なる胃や腸などの消化器系の不調ではなく、体のバランスが崩れたサイン、あるいは心の状態が反映されたものと考えられています。例えば、過度なストレスや不安、悲しみなどが、食欲を減退させ、「納呆」の状態を引き起こすと考えられています。東洋医学では、このような心の状態も考慮しながら、「納呆」の改善に取り組みます。
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命に関わることも? 噤口痢の恐怖

- 噤口痢とは 噤口痢は、東洋医学の古い書物に登場する、命を落とす危険性も孕んだ重篤な病気です。激しい下痢に襲われるだけでなく、全くと言っていいほど食欲がなくなり、無理に食べたり飲んだりしようとすると、吐き気を催して嘔吐してしまうという、三重苦に苦しむ恐ろしい病気として知られています。現代の医学では、この病気にぴったり当てはまる病名は見つかっておらず、詳しい原因やメカニズムは、今もなお解明されていません。 ただ、その症状から、体の水分や栄養をうまく吸収できなくなる消化器系の深刻な機能不全と考えられています。東洋医学では、この病気を引き起こす要因として、過度なストレスや不摂生、体質などが複雑に絡み合っているとされています。 現代においても、噤口痢は、その原因や治療法が確立していないため、発症すると治療は困難を極めます。西洋医学的な対症療法と並行して、東洋医学的な観点から、体質改善や生活習慣の見直しを行うなど、様々な角度からのアプローチが必要とされています。
漢方の診察

肝胃不和とは?その症状と原因を探る

- 肝胃不和の概要 東洋医学では、体の様々な器官は単独で機能しているのではなく、互いに密接に関連し合いながら、全体として調和を保っていると考えられています。この調和が崩れた状態は「証」と呼ばれ、様々な不調を引き起こすとされています。数ある「証」の中でも、「肝胃不和」は特に重要な概念の一つです。 「肝胃不和」とは、東洋医学における五臓六腑の考え方において、肝と胃の機能的なつながりが乱れている状態を指します。西洋医学的な病名とは異なりますが、肝の疏泄機能(精神状態や情緒の安定、気の流れの調整など)と、胃の受納機能(飲食物を受け入れて消化する機能)が互いに影響し合い、様々な症状が現れると考えられています。 具体的には、精神的なストレスや不規則な生活、過度な飲酒などが原因となり、胃の消化機能が低下したり、食欲不振、吐き気、胸やけなどの症状が現れます。また、肝の機能が亢進することで、イライラしやすくなったり、怒りっぽくなったり、不眠やめまい、頭痛といった症状が現れることもあります。 このように、「肝胃不和」は心身の両面に影響を与える可能性のある複雑な証であり、その症状や原因も人によって様々です。そのため、東洋医学では、個々の体質や状態に合わせて、食事療法や漢方薬、鍼灸治療などを組み合わせながら、肝と胃のバランスを整え、全身の調和を取り戻すことを目指します。
漢方の診察

心脾両虚:心と脾の密接な関係

- 心脾両虚とは -# 心脾両虚とは 心脾両虚とは、東洋医学において心と脾の両方が弱っている状態を指します。東洋医学では、心は単に血液を循環させる臓器ではなく、精神活動や意識、思考などもつかさどると考えられています。一方、脾は食べ物の消化吸収を行うだけでなく、飲食物から「気」と「血」を生み出し、全身に送り届ける重要な役割を担っています。 心と脾は互いに影響し合う関係にあります。脾が正常に働いて「気」と「血」を十分に作り出せば、心は安定し、精神活動も活発になります。しかし、過労や偏った食事、ストレスなどによって脾の働きが弱まると、「気」と「血」が不足し、心にも影響が出始めます。心が弱ると、動悸や不眠、不安感などが現れ、さらに脾の働きを低下させるという悪循環に陥ります。 心脾両虚になると、顔色が悪くなる、疲れやすい、食欲不振、動悸、息切れ、不眠、憂うつ感、集中力低下などの症状が現れます。これらの症状は、現代医学の自律神経失調症やうつ病などとも共通点が多い点が特徴です。 心脾両虚の改善には、心と脾の両方に働きかけることが大切です。規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスを溜めないようにするなど、生活習慣を見直すことが重要です。また、漢方薬を用いる場合は、心と脾の両方を補う生薬を組み合わせた処方が用いられます。
内臓

小児に見られる厭食:東洋医学的視点

- はじめに -# はじめに 「食べる」という行為は、私たちが生きていく上で欠かせないものです。特に、心身ともに大きく成長する子どもたちにとって、毎日の食事から適切な栄養を摂ることは非常に重要です。しかし、様々な理由から食欲がわかず、思うように食事が摂れないことがあります。このような状態が続くと、子どもの健やかな成長に影響が出てしまう可能性もあり、親としては心配が尽きません。 東洋医学では、子どもの食欲不振の原因を、体質や生活習慣、周囲の環境などを含めた全体的な視点から捉えます。そして、単に症状を抑えるのではなく、心と体のバランスを整え、自然治癒力を高めることを目指します。 この章では、東洋医学の考え方をもとに、子どもの食欲不振について詳しく解説していきます。具体的には、食欲不振を引き起こす要因、体質による特徴、家庭でできるケアの方法などをわかりやすく紹介します。この情報が、少しでも保護者の皆様のお役に立てれば幸いです。
漢方の診察

胃氣虛證:胃腸の弱りを示すサイン

- 胃氣虛證とは -# 胃氣虛證とは 胃氣虛證とは、東洋医学で使われる言葉で、胃腸の働きが弱っている状態を指します。 東洋医学では、食べたものを消化し、吸収する力、そしてそれを全身に送り届ける力を「胃気」と呼びます。 この胃気が不足すると、様々な体の不調が現れます。 具体的には、食欲不振や胃もたれ、消化不良、軟便や下痢などが代表的な症状です。 また、胃腸の働きが弱ると、栄養が十分に体に行き渡らなくなるため、顔色が悪くなったり、疲れやすくなったり、めまいがしたりすることもあります。 さらに、手足が冷えたり、お腹が張ったりするのも、胃氣虛證の特徴です。 現代社会では、不規則な食生活や冷たい食べ物の摂りすぎ、ストレスなどによって、胃腸に負担がかかりやすく、胃氣虛證に陥りやすいと言われています。 日頃から、胃腸を労わり、胃気の不足を補うように心がけることが大切です。
漢方の診察

陰虚から読み解く脾胃の不調

- 脾胃陰虚証とは -# 脾胃陰虚証とは 東洋医学では、人間の身体は「気」「血」「津液」の3つの要素で成り立っており、これらが互いに影響し合いながらバランスを保つことで健康が維持されていると考えられています。「気」は生命エネルギー、「血」は血液とその働き、「津液」は体液全般を指します。そして、「陰陽論」という考え方では、あらゆる物事を「陰」と「陽」の相反する2つの側面で捉えます。身体の中では、「陰」は物質的な基礎となる栄養や潤いを与える要素、「陽」は身体の機能を活発にする温熱の要素を表します。 「脾胃陰虚証」とは、消化吸収を担う「脾」と飲食物を受け入れる「胃」において、「陰液」が不足し、乾燥している状態を指します。東洋医学では、「脾」は飲食物から栄養を抽出し、「胃」は飲食物を受け入れて消化する役割を担い、この2つの働きによって身体に栄養が行き渡ると考えられています。しかし、過労やストレス、睡眠不足、偏った食生活、加齢などが続くと、「脾」と「胃」の働きが低下し、「陰液」が不足してしまうことがあります。その結果、食べ物の消化吸収がうまくいかなくなり、様々な不調が現れると考えられています。
漢方の診察

胃腸の不調? 中焦湿熱証とその改善策

- 中焦湿熱証とは -# 中焦湿熱証とは 東洋医学では、人間の体は「気・血・水」のバランスによって健康が保たれていると考えられています。そして、体の中心部に位置する胃腸周辺は、飲食物から「気・血・水」を生み出す重要な場所であり、「中焦」と呼ばれています。 この中焦に「湿」と「熱」が停滞した状態を「中焦湿熱証」と言います。「湿」とは、体内の水分代謝が滞り、余分な水分が溜まっている状態を指し、「熱」とは、炎症や興奮など、体の活動が過剰になっている状態を指します。 中焦湿熱証は、主に暴飲暴食や脂っこい物の食べ過ぎ、冷たい物の飲み過ぎなど、胃腸に負担をかける生活習慣によって引き起こされます。また、ストレスや不眠、気候の変化なども原因となります。 中焦湿熱証になると、消化吸収を担う「脾」と、気の流れを司る「胃」の機能が低下します。その結果、食欲不振や胃もたれ、吐き気、下痢、便秘、腹部膨満感、むくみ、倦怠感、イライラしやすくなる、口が渇く、尿量が減る、舌が黄色くなる、舌苔が厚くなるなどの症状が現れます。
漢方の診察

胃腸の不調?それは脾胃湿熱症かも

- 脾胃湿熱症とは? 脾胃湿熱症とは、東洋医学において、体の水分代謝が滞り、余分な水分(湿)と熱が体内に過剰に生じた状態を指します。特に、食べ物の消化吸収を担う「脾胃」の機能が低下することで、様々な不調が現れると考えられています。 東洋医学では、脾は体内の水分を適切に巡らせ、胃と共に飲食物を消化吸収する重要な役割を担っています。しかし、暴飲暴食や脂っこい食事、冷たい飲食物の摂り過ぎ、過労やストレス、気候の影響などによって、脾胃の機能が低下することがあります。 脾胃の機能が低下すると、体内の水分代謝が滞り、湿が生まれます。さらに、そこに熱が加わることで、脾胃湿熱症の状態になると考えられています。この湿熱は、体に様々な不調を引き起こす原因となります。例えば、食欲不振や胃もたれ、下痢や軟便、むくみ、倦怠感、イライラしやすくなる、口内炎、ニキビ、皮膚の炎症などが挙げられます。 脾胃湿熱症は、食生活の乱れや生活習慣の乱れ、精神的なストレスなどが複雑に絡み合って発症すると考えられているため、その改善には、生活習慣の見直しや体質改善などが重要になります。
漢方の診察

脾虚湿困証:胃腸の不調とだるさの関係

- 脾虚湿困証とは -# 脾虚湿困証とは 東洋医学では、人間の体には「気・血・水」と呼ばれる重要な物質が巡っているとされています。 これらのバランスが保たれていることで、健康な状態が維持されます。その中でも、「脾」は「消化吸収」を担う重要な臓器と考えられています。食事から摂取した栄養をエネルギーに変換し、全身に送り届ける役割を担っています。 「脾虚湿困証」とは、この「脾」の働きが弱まり、体に不要な「湿」が溜まっている状態を指します。 「脾」の働きが弱まる「脾虚」の状態になると、食べ物をうまく消化吸収することができず、体内に「湿」が生まれてしまいます。この「湿」は、例えるなら、体に溜まった余分な水分のようなもので、これが停滞することで、様々な不調を引き起こすと考えられています。 具体的には、食欲不振や消化不良、下痢、倦怠感、むくみ、めまい、頭痛、関節痛、皮膚の湿疹などが挙げられます。また、精神面にも影響を及ぼしやすく、憂鬱感や集中力の低下などを引き起こすこともあります。 「脾虚湿困証」は、食生活の乱れや不規則な生活、ストレス、冷えなどが原因で引き起こされると考えられています。
漢方の診察

脾陰虧虚証:その原因と症状

- 脾陰虧虚証とは 東洋医学では、人間の生命活動は「気・血・津液」の3つの要素によって維持されると考えられています。このうち、「津液」は体液全般を指し、体の中に栄養と潤いを与えています。「津液」は大きく「陰液」と「陽液」に分けられ、胃腸で吸収された水分から生成される「陰液」は、主に体の潤滑や栄養の供給を担っています。 「脾」は胃腸と共に消化吸収をつかさどる臓器であり、飲食物から「気」や「血」「津液」を作り出す働きをしています。 「脾陰虧虚証」とは、この「脾」の働きが弱まり、「陰液」が不足した状態を指します。不足した「陰液」は、「脾」の働きをさらに弱めるため、悪循環に陥りやすくなります。 食べ物が十分に消化吸収されず、体に必要な栄養や潤いが不足することで、口の渇き、空腹感、便秘、肌の乾燥、微熱、寝汗、倦怠感などの症状が現れます。 「脾陰虧虚証」は、過労やストレス、暴飲暴食、睡眠不足、慢性的な病気などによって引き起こされると考えられています。また、加齢によっても「脾」の機能は低下しやすくなるため、中高年者に多く見られる傾向があります。
漢方の診察

東洋医学における痰湿證:その原因と症状

- 痰湿證とは -# 痰湿證とは 痰湿證とは、東洋医学の考え方において、体内の水分の流れが滞り、不要な水分が体に溜まってしまうことで起こる病気の状態です。この不要な水分は「湿」と呼ばれ、さらに悪化すると粘り気を帯びて「痰」に変化すると考えられています。 東洋医学では、この「痰」は単に呼吸器の病気だけに関わるのではなく、消化器など体の様々な場所に影響を与える可能性があると考えられています。 例えば、呼吸器では、咳や痰が絡む、息苦しいといった症状が現れます。消化器では、食欲不振、胃もたれ、吐き気、下痢といった症状が現れます。また、体全体では、むくみ、体が重い、だるい、頭が重い、めまい、集中力の低下といった症状が現れることもあります。 痰湿證は、日頃の生活習慣、特に食生活が深く関係していると考えられています。脂っこいものや甘いものを摂りすぎたり、冷たいものを飲み過ぎたりすると、体の水分代謝機能が低下し、痰湿が溜まりやすくなると考えられています。 痰湿證を改善するためには、食生活の見直しや適度な運動、体を温めることなどが大切です。
漢方の治療

食積を解消する東洋医学的アプローチ

- 消化不良と食積 -# 消化不良と食積 現代の慌ただしい生活の中で、食事は簡単に済ませがちです。しかし、食べ過ぎたり、消化に良くないものを食べ続けたりすると、胃腸に大きな負担がかかります。その結果、食べ物が十分に消化されず、体に様々な不調が現れることがあります。 東洋医学では、このような状態を「食積(しょくせき)」と呼びます。これは、胃腸の働きが弱まり、食べ物が未消化のまま体内に停滞している状態を指します。食積は、食べ物の消化吸収を担う「脾胃(ひい)」という機能の低下によって起こると考えられています。 食積の症状は様々ですが、胃の重さや膨満感、食欲不振、吐き気などが代表的です。また、消化不良によって生じた未消化物は、体内に不要な熱や水分を生み出し、口臭、便秘、下痢、肌荒れなどの原因となることもあります。さらに、食積を放置すると、自律神経の乱れや免疫力の低下にもつながりかねません。 食積は、日頃の食生活の乱れが原因で起こることが多いため、食習慣の見直しが重要です。特に、暴飲暴食を避け、腹八分目を心がけましょう。また、よく噛んで食べることや、消化の良い温かい食事を心がけることも大切です。さらに、適度な運動や十分な睡眠も、胃腸の働きを助けるために効果的です。
漢方の診察

お腹の冷えは要注意!:中寒證とその改善策

- 中寒證とは? -# 中寒證とは? 東洋医学では、人間の体の中心部には「中焦」と呼ばれる重要な場所があり、主に胃や脾といった食べ物を消化吸収する臓器の働きを司っています。この中焦が冷えてしまう状態を「中寒證」と呼びます。 中焦は、例えるならば、食べ物を燃料に変えて全身にエネルギーを送り出す、いわば“体全体のエンジン”のような役割を担っています。このエンジンが冷え切ってしまうと、体全体の機能が低下し、様々な不調が現れると考えられています。 中寒證の主な症状としては、食欲不振や胃もたれ、消化不良、軟便や下痢などが挙げられます。また、冷えによって全身の血の巡りが悪くなるため、顔色が悪くなったり、手足が冷えたりすることもあります。さらに、体がだるく、疲れやすい、やる気が出ないといった症状が現れることもあります。 現代医学の視点では、中寒證は自律神経の乱れや血行不良などが関係していると考えられています。ストレスや冷房の効きすぎた環境、冷たい食べ物や飲み物の摂り過ぎなどは、中焦を冷やし、中寒證を引き起こす原因となるため注意が必要です。
内臓

東洋医学が考える胃の不調「胃不和」

- 胃不和とは -# 胃不和とは 東洋医学では、食べ物を消化し、栄養を吸収する「胃」の働きを非常に重要視しています。 この胃の働きが弱まっている状態を、「胃不和(いふわ)」と呼びます。 胃は、体に取り入れた食べ物を細かく砕き、その後、体に必要な栄養素を吸収しやすい状態へと変化させる、いわば「飲食物の処理場」としての役割を担っています。この重要な働きが滞ってしまうと、体に様々な不調が現れると考えられています。 具体的には、胃のもたれ、食欲不振、吐き気、胃の痛み、膨満感、げっぷ、便秘、下痢など、消化器系を中心とした症状が現れやすくなります。 また、胃腸の不調は、体に必要な栄養が行き渡らなくなるため、倦怠感、めまい、冷え性、肩こり、頭痛、不眠などを引き起こすこともあります。 現代医学の病気とは明確に一致しませんが、慢性胃炎や機能性ディスペプシアなどが、胃不和と共通する症状を持つと言われています。 胃不和は、ストレスや不規則な生活、冷え、食べ過ぎ、偏った食事など、様々な要因によって引き起こされます。現代社会では、これらの要因に囲まれて生活している人が多く、胃不和に悩む人が後を絶ちません。 東洋医学では、胃不和の状態を改善するために、食事療法、生活習慣の改善、漢方薬の服用などを総合的に組み合わせていきます。
漢方の診察

胃気不降: 食べ過ぎ注意報?

- 食べ物が胃から下りていかない? -# 食べ物が胃から下りていかない? 食べ物がなかなか胃から下りていかず、詰まったような感覚や不快感に悩まされることはありませんか?東洋医学では、このような状態を「胃気不降(いきふこう)」と呼びます。これは、食べ物を消化し、腸へ送るための胃の働きが、気の流れの乱れによって滞ってしまう状態を指します。 私達の体には、「気」という生命エネルギーが流れており、この「気」の流れがスムーズであれば、胃腸も活発に働きます。しかし、ストレスや不規則な生活、冷えなどが原因で気が滞ると、胃の働きも低下し、食べ物がうまく下りていかなくなるのです。 胃気不降になると、食べ物が胃の中に長時間留まるため、胃もたれや消化不良を引き起こしやすくなります。また、食欲不振や吐き気、さらには胃の痛みや膨満感を感じることも。 このような症状でお悩みの方は、胃気不降の可能性があります。食生活の見直しやストレスケアなど、生活習慣を改善することで、気の巡りを整え、胃の働きを高めることが大切です。
体質

胃陽虚:食欲不振と消化不良の原因

- 胃陽虚とは? 「胃陽虚」という言葉は、東洋医学で使われる言葉で、胃の働きを支える「陽気」が不足した状態を指します。 では、この「陽気」とは一体何でしょうか? 東洋医学では、体を温めたり、活動するためのエネルギーのようなものを「陽気」と呼んでいます。 この陽気が不足すると、体や内臓の機能が低下してしまうと考えられています。 胃腸は、食べ物を受け入れて消化し、栄養を吸収するという重要な役割を担っています。 この働きを活発に行うためにも、陽気の力は欠かせません。 しかし、様々な原因で胃に十分な陽気が行き渡らなくなると、「胃陽虚」の状態になってしまいます。 その結果、胃腸の機能が低下し、食欲不振や消化不良、胃もたれ、お腹の冷え、下痢といった不調が現れると考えられています。
内臓

胃の元気不足「胃気虚」とは?

- 胃気虚とは -# 胃腸の働きを支える「気」の不足 「胃気虚」とは、東洋医学において、食べ物を消化したり、吸収したり、不要なものを体外へ排出したりといった、胃腸の働きを支える重要なエネルギーである「気」が不足した状態を指します。 この「気」は、私たちが健康な状態を保つために欠かせないものであり、特に胃腸は「気」を作り出す源であると考えられています。 しかし、様々な要因によってこの「気」が不足してしまうことがあります。 例えば、不規則な食生活や冷たい物の摂り過ぎ、過労やストレス、加齢などが挙げられます。 「気」が不足すると、胃腸の働きが低下し、消化不良や栄養吸収の不足、便秘や下痢などを引き起こしやすくなります。 さらに、胃腸の不調は、全身の倦怠感や食欲不振、息切れ、めまいなどを引き起こす可能性もあり、注意が必要です。
漢方の診察

表裏俱虚証:その複雑さと対処法

- 表裏俱虚証とは -# 表裏俱虚証とは 表裏俱虚証とは、東洋医学において、体の防衛力である「気」が著しく低下し、体の外側と内側の両方が弱っている状態を指します。まるで、風雨から家を守るための屋根と壁が、どちらも傷んでしまっているような状態です。 通常、風邪などの外敵(外邪)が体に侵入しようとすると、私たちの体はそれを跳ね返そうとします。これが「正気」の働きです。しかし、過労や睡眠不足、偏った食事などによって正気が弱まっていると、外邪を十分に排除することができず、体内に侵入を許してしまいます。 さらに、正気が弱っていると、体内に入った外邪を追い出す力も衰えているため、風邪が長引いたり、回復したと思っても再発を繰り返したりすることがあります。これが表裏俱虚証の特徴です。 表裏俱虚証をそのままにしておくと、体の奥深くまで外邪が侵入し、慢性的な咳や倦怠感、食欲不振、下痢などを引き起こす可能性があります。また、免疫力の低下にもつながり、様々な病気にかかりやすくなるため、注意が必要です。