東洋医学における「涎」:消化と健康の隠れた関係
東洋医学を知りたい
先生、『涎』って東洋医学ではどんな意味ですか?普通の唾液とは違うんですか?
東洋医学研究家
いい質問ですね!東洋医学で『涎』は、ただの水っぽい唾液ではなくて、五臓の脾と関係が深いと考えられています。脾で作られた『清』といわれるものが口に上がってきたものと考えられているんですよ。
東洋医学を知りたい
脾で作られたものなんですか!じゃあ、体の状態と関係があるんですか?
東洋医学研究家
その通り!脾の働きが良いと、サラサラとした『涎』が十分に分泌されると考えられています。逆に、脾が弱っていると『涎』の分泌が悪くなったり、ネバネバしたりすると言われていますよ。
涎とは。
東洋医学で使う『涎』という言葉は、さらさらとした唾液のことです。この唾液は、東洋医学でいう『脾』という臓腑と関わりがあると考えられています。
「涎」とは何か
– 「涎」とは何か
東洋医学では、人間の体から生み出される液体を、それぞれ異なる性質と役割を持つものとして捉えています。汗や涙、尿などはもちろんのこと、口の中に溢れ出る唾液でさえも、一様に扱われるわけではありません。 普段何気なく口の中に溜まる唾液ですが、東洋医学では「涎(えん)」と「唾」の二つに区別されます。
「唾」とは、口の中にねっとりと絡みつくような、粘り気の強い濁った唾液のこと。食べ物を口にした時などに多く分泌され、食べ物を消化しやすいように包み込み、食道を通る際に傷つけないように保護する役割を担います。この「唾」は、食べ物の消化吸収を司る「胃」の働きと密接に関わっているとされています。
一方、「涎」とは、さらさらとした水のような薄い唾液のこと。何も食べ物を口にしていない時でも、自然と口の中に湧いてきます。東洋医学では、この「涎」は、生命活動を支える「気」を生み出す「脾」と深い関わりがあるとされています。「脾」は、全身に栄養を巡らせ、水分代謝を調節する重要な臓器です。そのため、「涎」の分泌量は、「脾」の働きの良し悪しを反映していると考えられています。「涎」が十分に分泌されていれば「脾」の働きが順調であり、健康な状態であると言えます。反対に、「涎」の分泌が不足すると、「脾」の働きが弱まっているサインと捉え、消化不良や倦怠感、むくみなどの症状が現れる可能性があります。
このように、東洋医学では、「涎」は単なる唾液ではなく、「脾」の働きを反映し、健康状態を判断する重要な指標として考えられています。
項目 | 説明 | 関係する臓器 | 役割 |
---|---|---|---|
唾 | ねっとりとした、粘り気の強い濁った唾液 | 胃 | 食べ物を包み込み、消化しやすくする。食道を通る際に傷つけないように保護する。 |
涎 | さらさらとした水のような薄い唾液 | 脾 | 生命活動を支える「気」を生み出す。 |
脾臓との密接な関係
– 脾臓との密接な関係
東洋医学において、脾臓は「後天の本」と称されるほど重要な臓器です。生まれた後の成長や健康を支える上で、欠かせない役割を担っています。その重要な役割とは、私たちが口にする飲食物から「気」を生み出し、全身へと送り届けることです。この「気」は、生命エネルギーとも言い換えられ、体のあらゆる活動の源となります。
そして、脾臓と密接な関係にあるのが「涎」です。涎は、東洋医学では脾臓の働きによって作られると考えられています。食事をすると口の中に自然と溢れ出てくる涎は、単なる水分ではなく、脾臓が正常に働いている証なのです。
もし、脾臓が弱っていると、涎の分泌量にも変化が現れます。例えば、分泌量が減って口の中が乾きやすくなったり、逆にダラダラと流れ出てしまったりすることがあります。また、涎の性質が変化し、粘り気が強くなることもあります。
このように、東洋医学では、一見関係ないように思える涎の状態から、脾臓の健康状態を窺うことができます。日頃から、自身の体の状態を観察し、小さな変化を見逃さないようにすることが大切です。
臓器 | 働き | 関係 | 状態 |
---|---|---|---|
脾臓 | 後天の本 飲食物から「気」を生み出し、全身へ送り届ける |
涎は脾臓の働きによって作られる | 正常: 適度な涎の分泌 弱っている: 口の渇き、涎の過剰分泌、粘り気のある涎 |
消化を助ける「涎」の役割
– 消化を助ける「涎」の役割
私たちは普段、食事をするときに何気なく「涎(よだれ)」を分泌していますが、この涎は、口の中を潤すだけでなく、食べ物を消化しやすい状態にするために重要な役割を担っています。
食事をすると、視覚や嗅覚からの刺激によって、まず涎が分泌されます。これは、食べ物が口の中に入ってくる前に、口の中を湿らせておく準備段階といえます。そして、実際に食べ物が口の中に入ると、さらに多くの涎が分泌され、食べ物を包み込むように潤していきます。
涎には、食べ物を消化しやすくする消化酵素が含まれています。この消化酵素は、食べ物の成分を分解し、体が吸収しやすい形に変える働きがあります。例えば、ご飯やパンなどに含まれるデンプンを分解する酵素も、涎の中に含まれています。
また、涎は、食べ物を飲み込みやすくする潤滑油のような役割も担っています。口の中でよく噛み砕かれた食べ物は、涎と混ざり合うことで滑らかになり、食道を通ってスムーズに胃へと送られていきます。
さらに、涎は、胃液などの刺激から胃腸を守る役割も担っています。胃は強い酸性の胃液を分泌して食べ物を消化しますが、涎は胃腸の粘膜を覆うことで、この胃酸から胃腸を守っているのです。
このように、一見、単なる水分のように思える涎ですが、消化活動において様々な重要な役割を担っています。涎の分泌が不足すると、食べ物が消化しにくくなるだけでなく、胃腸に負担がかかり、様々な不調につながる可能性も考えられます。
涎の役割 | 詳細 |
---|---|
消化促進 | 消化酵素を含み、食べ物を分解して吸収しやすい形に変える。例:デンプンを分解する酵素 |
嚥下補助 | 食べ物を滑らかにして、食道への通過をスムーズにする。 |
胃腸保護 | 胃液などの刺激から胃腸の粘膜を保護する。 |
「涎」と健康状態
– 「涎」と健康状態
東洋医学では、身体の外側に現れるさまざまなサインを注意深く観察することで、その人の健康状態を見極めようとします。舌の状態や脈の状態を診ることはよく知られていますが、実は「涎」、つまり「つば」の状態も重要な手がかりを与えてくれます。
健康な状態であれば、「涎」は透明でさらさらとしており、口の中も適度な潤いを保っています。しかし、何らかの不調を抱えている場合には、「涎」に変化が現れます。例えば、「涎」の量が増えたり減ったり、色が変化したりすることがあります。また、口の中がねばねばしたり、逆に渇いた感じになるのも、「涎」の異常として捉えられます。
東洋医学では、こうした「涎」の変化は、体の中の水分(東洋医学では「津液」と呼びます)のバランスが崩れているサインだと考えます。「津液」は、体中に栄養を運んだり、体温を調節したり、潤いを与えたりと、健康維持に欠かせない役割を担っています。不摂生やストレス、加齢などによって「津液」のバランスが崩れると、「涎」の状態に変化が現れるだけでなく、様々な体調不良を引き起こす可能性があります。
「涎」は、健康のバロメーターとも言える大切なものです。普段何気なく飲み込んでいる「涎」ですが、その状態を意識することで、自身の健康状態を把握する手がかりが得られるかもしれません。
涎の状態 | 体の状態 |
---|---|
透明でさらさら、口の中は適度に潤っている | 健康な状態 |
量の変化、色の変化、ねばつき、口の渇き | 津液のバランスが崩れている可能性あり(不摂生、ストレス、加齢などが原因) |
健康な「涎」を保つには
健康な体を守るためには、様々な要素が関わっていますが、その中でも見落としがちなのが「涎」の重要性です。東洋医学では、「涎」は「脾」と呼ばれる臓器と深い関係があると考えられています。「脾」は、食べたものを消化吸収し、体全体に栄養を届ける役割を担っています。「脾」の働きが順調であれば、十分な量の「涎」が分泌され、口の中を潤し、食べ物を消化しやすくします。
しかし、不規則な生活や冷たいものの摂り過ぎ、過度なストレスなどによって「脾」の働きが弱ってしまうと、「涎」の分泌量が減ったり、質が悪くなったりします。その結果、口の中が乾やすくなり、食べ物が飲み込みにくくなるだけでなく、消化機能の低下や免疫力の低下にも繋がることがあります。
「脾」の働きを整え、「涎」の分泌を促すためには、まず、規則正しい食生活を心掛けることが大切です。暴飲暴食を避け、胃腸に負担をかけすぎないようにしましょう。また、冷たい食べ物や飲み物は「脾」の働きを弱らせる傾向があるので、温かいものを積極的に摂るように心がけましょう。
食事をよく噛むことも、「涎」の分泌を促す効果があります。ゆっくりと時間をかけて食事をするように心がけましょう。毎日の生活の中で、少し意識を変えることで、「脾」の働きを整え、健康な「涎」を保つことができます。
要素 | 関係性 | 影響 | 対策 |
---|---|---|---|
涎 | 脾と深い関係性を持つ | 分泌量低下や質の悪化は、口の渇き、消化不良、免疫力低下につながる | 脾の働きを整える |
脾 | 消化吸収を担う臓器 | 不規則な生活、冷たいものの摂り過ぎ、ストレスで働きが弱る | 規則正しい食生活、温かいものを食べる、よく噛む |