「ひ」

その他

東洋医学から見る火丹

- 火丹とは 火丹とは、東洋医学の考え方で使われる言葉で、皮膚に急に現れる赤い炎症のことを指します。まるで燃え盛る炎のように、赤みと熱を帯びた腫れが特徴です。 この火丹、その名の通り体の中の熱が原因と考えられています。東洋医学では、心や肝といった体の機能と密接に関わっているとされ、感情の乱れやストレス、不摂生な生活によって体内の熱バランスが崩れ、その熱が皮膚に現れたものが火丹だと考えられています。 現代の医学では、火丹は細菌やウイルス感染などによる皮膚の炎症全般を指すことが多く、湿疹や皮膚炎、帯状疱疹なども含まれます。火丹は、その原因や症状によって様々な種類に分けられ、それぞれに合わせた治療法が選択されます。 例えば、赤く腫れ上がり、熱と痛みを伴う場合は、熱を取り除く作用のある生薬を用いたり、炎症を抑える効果のある漢方薬を処方したりします。また、食事療法や生活習慣の改善指導など、体質改善を目指した治療も行われます。 火丹は、早期発見と適切な治療によって症状を抑え、再発を防ぐことが重要です。皮膚に異常を感じたら、自己判断せずに早めに専門医に相談しましょう。
漢方の治療

食欲を呼び覚ます「開胃」のススメ

「開胃」とは、東洋医学において、食欲不振や消化不良といった症状を改善し、食欲を増進させるための治療法を指します。これは、ただ単に食事の量を増やすことを目的とするのではなく、胃腸の働きを活発化させ、体内に栄養を効率よく取り込むことを目指しています。 現代社会においては、ストレスの多い環境や不規則な生活習慣、偏った食事などにより、胃腸の不調を訴える人が少なくありません。このような現代人の抱える悩みにも、「開胃」は有効な解決策となり得ます。 東洋医学では、胃腸は「後天の気」を生み出す源と考えられています。これは、人が健やかに生きるために欠かせないエネルギーの元となるものです。つまり、胃腸の働きが弱まり、「後天の気」が不足すると、食欲不振だけでなく、全身の倦怠感や気力の低下、免疫力の低下など、様々な不調が現れると考えられています。 「開胃」の治療法としては、漢方薬の処方、鍼灸治療、食事療法、生活習慣の改善指導など、様々な方法が用いられます。症状や体質に合わせて、これらの方法を組み合わせることで、胃腸の働きを整え、健康な状態へと導きます。
内臓

脾痿:脾の気が招く体の衰弱

- 脾痿とは何か 脾痿とは、東洋医学における独特な概念で、体のエネルギー源である「気」を生み出す臓器「脾」の機能が低下し、同時に熱を持つことで、全身に様々な不調が現れる状態を指します。現代医学では、脾痿に完全に一致する病名はありません。しかし、その症状から、神経系や筋肉系の疾患と関連付けられることがあります。 東洋医学において、脾は単なる消化吸収器官ではなく、食べ物から「気」を生成し、全身に送る重要な役割を担うと考えられています。この脾の働きが弱まり、いわゆる「脾虚」の状態になると、消化不良や食欲不振といった症状が現れます。さらに、脾に熱がこもる「脾熱」の状態が加わると、「脾痿」となり、全身の気の流れが滞り、倦怠感、食欲不振、下痢などの消化器症状に加え、手足の痺れや筋力の低下といった運動機能の低下も見られるようになります。 特に、筋肉に力が入らなくなる症状は「痿症」と呼ばれ、脾痿の代表的な症状の一つとされています。脾痿は、過労やストレス、偏った食生活などによって引き起こされると考えられています。
その他

痙病:東洋医学の見解

- 痙病とは 痙病とは、筋肉が異常に緊張し固まってしまい、自分の思い通りに体を動かすことが困難になる状態を指します。まるで体が硬直したかのように感じ、特に首や肩、背中、手足の筋肉が突っ張るような感覚に襲われます。 この病気の特徴的な症状として、首筋の強直、手足の突っ張りや曲がりが挙げられます。痙縮と呼ばれる、筋肉が不随意に収縮してしまうことで、関節が動きにくくなり、日常生活に支障をきたすこともあります。重症化すると、口が開けづらくなったり、食事や会話に苦労することもあります。さらに、背中が弓なりに反り返ってしまうこともあり、症状が悪化するにつれて、日常生活での動作や行動が大きく制限されてしまう可能性があります。 現代医学では、痙病は脳卒中や脳性麻痺、脊髄損傷などの後遺症として発症することが多いと認識されています。これらの病気によって脳や神経に損傷を受けると、筋肉の緊張をコントロールする機能が失われ、結果として痙病の状態に陥ると考えられています。
漢方の診察

風邪の初期症状? 表寒証とは

- 表寒証とは -# 表寒証とは 表寒証とは、東洋医学において、いわゆる「風邪(ふうじゃ)」の初期段階に見られる症状を指します。 冷たい風にあたったり、気温の急激な低下などによって体の防衛機能が弱まっている時に、寒邪と呼ばれる邪気が体の表面に侵入してくることで発症すると考えられています。 具体的には、寒気がしたり、体がゾクゾクする、くしゃみが出る、鼻水が出る、鼻が詰まる、軽い咳が出る、喉が痛い、頭痛がする、体全体がだるい、食欲がないといった症状が現れます。これらの症状は、寒邪が体の表面に留まっている状態を示しており、比較的軽い症状であることが多いです。 東洋医学では、体の表面に寒邪が侵入した状態を表証、体の内部に侵入した状態を裏証と呼び、それぞれに適した治療法が異なります。 表寒証の場合、発汗を促して寒邪を体外に排出することを目的とした治療が行われます。 例えば、生姜やネギなど体を温める効果のある食材を積極的に摂ったり、体を温める効果のある葛根湯などの漢方薬が用いられることがあります。また、十分な休養と睡眠をとり、体を温かく保つことも大切です。 表寒証は、適切な処置を行えば比較的早く回復する症状です。しかし、放置すると寒邪が体の奥深くまで侵入し、咳や痰、発熱などの症状が悪化する可能性もあります。そのため、初期の段階で適切な対策を講じることが重要です。
漢方の診察

東洋医学における「表証」:その理解と対応

- 表証とは何か 東洋医学では、体の表面に症状が現れる病態を「表証」と呼びます。これは、風邪などの初期段階に多く見られる症状で、身体の外側から邪気と呼ばれる悪い気が侵入しようとしている状態と考えられています。適切な治療を行わないと、病気が進行し、より深刻な状態になる可能性があります。 例えば、冷たい風に当たり続けたり、季節の変わり目に寒暖差が激しかったりすると、身体は外からの邪気に影響を受けやすくなります。その結果、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、喉の痛み、軽い咳、悪寒、発熱といった症状が現れます。これらの症状は、身体が邪気を追い出そうと闘っているサインと捉えられます。 表証は、悪化すると「裏証」へと進行する可能性があります。これは、邪気が体の奥深くに侵入してしまった状態を指し、高熱や激しい咳、痰が絡む、強い倦怠感といった、より重い症状が現れます。 表証を改善するには、身体を温めて発汗を促し、邪気を体外へ排出することが重要です。具体的には、温かい服装を心がけたり、生姜やネギなど体を温める効果のある食材を積極的に摂ったりすることが有効です。また、十分な休息と睡眠をとり、身体の抵抗力を高めることも大切です。 もし、症状が改善しない場合や、悪化する傾向が見られる場合は、自己判断せずに、早めに専門の医療機関を受診するようにしましょう。
漢方の診察

東洋医学における表裏辨證

- 表裏辨證とは -# 表裏辨證とは 東洋医学では、人の体は自然と調和し、常に変化していると考えられています。そして、病気もその変化の一つとして捉え、体の状態を様々な角度から観察し、診断していきます。そのための重要な方法の一つが「表裏辨證」です。 表裏辨證とは、病気が体のどこに存在しているかを「表」と「裏」の概念を用いて見極めることです。 「表」とは、体の表面に近い部分、つまり皮膚や筋肉、呼吸器などを指します。風邪などのように、外部からの邪気が体に侵入した初期段階では、悪寒や発熱、咳、鼻水といった症状が現れやすく、これらは「表証」と判断されます。 一方、「裏」とは、体の内部、つまり消化器や循環器、神経系などを指します。病気が進行し「表」から「裏」へと移動した場合や、慢性的な病気の場合には、「裏証」と判断されます。 表裏辨證によって、病気の性質や段階を判断することで、より的確な治療法を選択することができます。例えば、初期段階の風邪のように「表証」と判断された場合は、発汗させて邪気を体外に出す治療が有効ですが、病気が進行し「裏証」と判断された場合は、体の内部から整える治療が必要となります。 このように、表裏辨證は、東洋医学における診断の基礎となる重要な概念です。
漢方の診察

陽損及陰證:陰陽両虚のメカニズム

- 陽損及陰證とは -# 陽損及陰證とは 人間の生命活動を支える上で欠かせないのが、「陽気」と「陰液」という二つの要素です。簡単に言うと、陽気は温める力、陰液は潤す力と考えてよいでしょう。健康な状態を保つためには、この二つがバランスを保っていることが重要です。しかし、過労や加齢、病気などによって陽気が大きく損なわれると、単に温める力が弱まるだけでなく、陰液を生成したり、体内に留めておく力も低下してしまいます。その結果、陽気と陰液の両方が不足した状態に陥ってしまうことがあり、これを「陽損及陰證」と呼びます。 例えば、真夏の炎天下で長時間激しい運動を続けると、大量の汗と共に体内の水分やミネラルが失われ、脱水症状に陥ることがあります。これは、陽気が過剰に消耗された結果、陰液を保てなくなった状態と言えるでしょう。また、慢性的な疲労や睡眠不足、過度なストレスなども陽気を傷つけ、結果的に陽損及陰證を引き起こす要因となります。 陽損及陰證になると、倦怠感や食欲不振、めまい、不眠、動悸、息切れ、手足の冷え、口の渇きなど、さまざまな症状が現れます。これらの症状は、陽気と陰液の両方の不足によって引き起こされるため、どちらか一方だけを補えば良いというわけではありません。東洋医学では、患者さんの体質や症状に合わせて、陽気を補う生薬と陰液を補う生薬を組み合わせた漢方薬を処方したり、食事療法や生活習慣の改善などを指導することで、陽気と陰液のバランスを整え、健康な状態へと導いていきます。
内臓

東洋医学における脾熱とその影響

- 脾熱とは -# 脾熱とは 東洋医学では、脾は食べ物から栄養を吸収し、全身に送り届けるという、健康を保つ上で非常に大切な役割を担っています。これは、西洋医学でいう脾臓だけを指すのではなく、胃腸など消化吸収に関わる機能全体を包括的に表しています。この脾の働きに、熱が生じてバランスを崩してしまう状態を脾熱と呼びます。 脾熱は、暴飲暴食や脂っこい食事、冷たい食べ物や飲み物の摂り過ぎなど、食生活の乱れによって引き起こされます。また、過労やストレス、睡眠不足なども脾に負担をかけ、熱を生み出す原因となります。 脾熱になると、食欲不振や胃もたれ、下痢や便秘、お腹の張り、吐き気、倦怠感、口の渇き、味覚の変化、口内炎、舌の苔が黄色くなる、など様々な症状が現れます。 東洋医学では、病気の治療だけでなく、未病の段階で体の不調を整え、健康な状態を保つことを大切にしています。日頃から、脾に負担をかけないよう、バランスの取れた食事や十分な睡眠、適度な運動を心がけ、ストレスを溜めないようにすることが大切です。
内臓

東洋医学における脾寒:その原因と症状

- 脾寒とは -# 脾寒とは 東洋医学では、生命活動を支える重要なエネルギー源である「気」を作り出すのは、主に「脾」の働きによるものと考えられています。この「脾」は、西洋医学でいう脾臓そのものを指すのではなく、現代医学の消化器官全体を含む、より広範な働きを担うものです。 「脾」は、飲食物を消化吸収し、そこから「気」と「血」を生み出す役割を担っています。この「脾」の働きが弱まり冷えが生じた状態を「脾寒」と言います。「脾寒」になると、消化吸収機能が低下し、さまざまな不調が現れます。 「脾寒」の原因は、冷えやすい食べ物の摂り過ぎや、冷たい飲み物の飲み過ぎ、また、夏の冷房や冬の薄着などによる身体の冷えなどが挙げられます。その他、過労やストレス、睡眠不足なども「脾」の働きを弱める原因となります。 「脾寒」になると、食欲不振や胃もたれ、消化不良、下痢などを引き起こしやすくなります。また、顔色が悪くなったり、手足が冷えたり、むくみが出やすくなったりするのも特徴です。さらに、疲れやすくなったり、気分が落ち込みやすくなったりすることもあります。 「脾寒」を改善するには、身体を温めることが大切です。普段の食事では、温かいものを食べるように心がけ、生姜やネギ、ニンニクなどの身体を温める食材を積極的に摂り入れましょう。また、冷たい飲み物は控え、温かいお茶や白湯を飲むように心がけましょう。 さらに、適度な運動や十分な睡眠を心がけ、「脾」の働きを高めるようにしましょう。
漢方薬

意識を呼び覚ます!開竅剤の世界

- 開竅剤とは? 開竅剤とは、東洋医学において、意識障害や意識喪失状態を改善するために用いられる特別な生薬のことを指します。まるで閉ざされた心の扉をこじ開けるように、意識を呼び覚ます力を持つことから、この名前が付けられました。 主な効能は蘇生効果であり、呼吸が停止したり、意識を失ったりするなど、生命の危機に瀕している状態において、その状態から回復させるために緊急時に使用されることが多いです。 その他にも、精神状態を安定させたり、痙攣を止めたりする効果も期待できます。 開竅剤は、単独で用いられることは少なく、他の生薬と組み合わせて処方されることが一般的です。これは、患者さんの体質や症状に合わせて、より効果的に作用させるためです。 開竅剤は非常に強力な効果を持つ反面、その使用には専門的な知識と経験が求められます。自己判断で使用することは大変危険ですので、必ず専門家の指示に従ってください。
漢方の診察

東洋医学における「陽証」:その特徴と意味

- 「陽証」とは 東洋医学では、人間の身体を自然の一部と捉え、その状態を陰と陽の二つの側面から観察します。 この陰陽論に基づいて、身体の状態や病気の兆候を解釈していくのです。「陽証」は、この陰陽論において、身体が活動的な状態、あるいは過剰に活動している状態を指します。 例えば、風邪をひいた際に発熱や喉の痛み、咳などの症状が出る場合、これは身体に侵入した邪気を追い出そうとする反応であり、「陽証」の一つと考えられます。その他にも、顔が赤くなる、イライラしやすくなる、便秘がちになる、など、身体が熱を帯びている状態は「陽証」と判断されることが多いです。 「陽証」は、「熱証」「表証」「実証」など、様々な状態を包括する概念です。それぞれの状態に応じて、身体のバランスを整えるための適切な養生法や治療法が選択されます。例えば、熱を取り除くために体を冷やす食材を摂ったり、発汗を促して邪気を発散させるような漢方薬を用いたりします。 東洋医学では、自身の体質や状態を「陰陽」の視点で捉えることが健康管理の第一歩と考えられています。日々の生活の中で、自身の身体と向き合い、「陽証」のサインを見逃さないように心がけましょう。
体質

東洋医学における「微飮」:その原因と症状

- 「微飮」とは何か 「微飮(びいん)」とは、東洋医学において、主に精神的なストレスや緊張が原因で、体内の水の流れが滞る状態を指します。 東洋医学では、体内の水分は絶えず循環し、生命活動の維持に欠かせないと考えられています。 この水の流れが滞ることを「水毒」と呼びますが、「微飮」は、この「水毒」の初期段階に当たると考えられています。 「微飮」は、目に見えるほどのむくみがない場合でも、体のだるさや重さ、頭痛、めまい、食欲不振、軟便といった症状が現れることがあります。 現代医学の「浮腫」は、目に見えるむくみを伴う場合に診断されますが、「微飮」は、東洋医学独自の概念であり、西洋医学の病名とは直接対応しません。 「微飮」は、あくまで東洋医学的な診断名であり、自己判断は危険です。 気になる症状がある場合は、専門家の診断を受けるようにしましょう。
漢方薬

表裏雙解剤:東洋医学における万能薬?

- 表裏雙解剤とは? 表裏雙解剤とは、東洋医学において、体の表面である「表」と、体の内部である「裏」、両方に働きかける漢方薬のことを指します。\n東洋医学では、風邪などのように、外部から侵入した邪気によって引き起こされる病気は「表証」、体の内部の不調が原因で発症する病気は「裏証」と捉えます。\n表裏雙解剤は、この両方の症状が現れている、つまり表証と裏証が複雑に絡み合った状態に用いられます。 例えば、寒気や発熱、頭痛など風邪の初期症状である「表証」が見られる一方で、同時に胃腸の不調や倦怠感といった「裏証」も併せ持つような場合です。\nこのような場合、どちらか一方のみに対処するのではなく、体の内外両面からアプローチする必要があると考えられています。\n表裏雙解剤は、体の表面に作用して邪気を発散させると同時に、体の内部の機能を整えることで、病気の根本原因を取り除き、健康な状態へと導くことを目的としています。
内臓

知っておきたい便血のサイン

- 便血とは 便血とは、その名の通り、排泄された便に血液が混じっている状態を指します。 鮮やかな赤い血液が混じっている場合もあれば、黒いタール状の便が出ることもあります。 いずれにしても、便に血が混じるということは、食道から肛門までの消化管のどこかに異常が発生し、出血しているサインです。そのため、便血は決して軽視できない症状と言えるでしょう。 便血の原因は様々で、比較的軽度のものから深刻なものまで多岐に渡ります。 例えば、肛門付近の粘膜が傷つくことで発生する「痔核(いわゆる「いぼ痔)」や、肛門の粘膜に亀裂が生じる「裂肛」などは、比較的軽度で多くみられる原因として挙げられます。 また、大腸の粘膜に炎症が起こる「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」といった炎症性腸疾患、大腸にできるポリープやがんなどの腫瘍なども、便血を引き起こす可能性があります。 自己判断は大変危険です。 便血に気づいたら、まずは医療機関、特に消化器内科や肛門科を受診し、専門医による適切な検査を受けるようにしましょう。
漢方の治療

漢方薬の冷服:知られざる効果と注意点

- 冷服とは -# 冷服とは 冷服とは、煎じた漢方薬を冷ましてから飲む方法を指します。一般的に漢方薬は温めて飲むイメージが強いですが、体質や症状によっては、冷服の方が効果的に作用する場合があるのです。 漢方医学では、人間の体質や症状は一人ひとり異なり、同じ病気であっても、その根底にある原因は異なるという考え方があります。そのため、漢方薬を選ぶ際には、その人の体質や症状に合わせて、最適なものを選択する必要があります。 冷服が適していると考えられるのは、例えば、のぼせや炎症など、体に熱がこもっている状態です。このような場合、温かい漢方薬を飲むことで、さらに体が熱くなってしまい、症状が悪化する可能性も考えられます。一方、冷ました漢方薬を飲むことで、体の熱を冷まし、症状を和らげることができます。 また、冷服は、胃腸が弱っている人にも適している場合があります。温かい飲み物は胃腸に負担がかかりやすいですが、冷たい飲み物は胃腸に優しく、吸収も穏やかです。 ただし、冷服が全ての人に良いわけではありません。冷え性の人や、体が弱っている人は、冷服によって体が冷えすぎてしまい、逆効果になる可能性もあります。漢方薬を冷服するかどうかは、自己判断せず、必ず専門家の指導を受けてください。医師や漢方薬剤師に相談することで、自分の体質や症状に合った服用方法を知ることができます。
漢方の治療

漢方薬の「頻服」:効果的な服用方法とは?

- 漢方薬の服用方法 漢方薬は、自然の生薬を乾燥させて作られた薬で、様々な症状に効果があるとされています。煎じて飲む「煎じ薬」や、煎じ薬を飲みやすくした「エキス剤」など、形状も様々です。服用方法も、症状や体質、使用する生薬の種類や組み合わせによって異なります。 一般的には、食前や食間、就寝前などに1日2~3回服用することが多いです。ただし、漢方薬は西洋薬とは異なり、自己判断で服用量を変えたり、服用を中止したりすることは大変危険です。必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。 漢方薬の中には、「頻服」と呼ばれる特別な服用方法が適している場合があります。これは、症状が重い場合や、緊急性を要する場合などに、決められた時間の間隔で頻繁に服用する方法です。頻服を行う場合は、必ず医師の指示のもとで行ってください。 漢方薬の効果を最大限に引き出すためには、正しい服用方法を守ることが大切です。疑問点があれば、自己判断せずに、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
漢方の診察

東洋医学における「微脈」:その意味と重要性

- 微脈とは 東洋医学では、体の状態を把握するために、患者さんの手首の動脈に触れて脈の状態を診る「脈診」という方法があります。脈の強さや速さ、リズム、深さなどを総合的に判断することで、体の状態や病気の兆候を読み取っていきます。脈診は、視診、聴診、嗅診、問診と並ぶ重要な診察方法の一つです。 数ある脈の種類の中でも、「微脈」は特に注意深く診るべき脈の一つです。微脈は、読んで字のごとく、糸のように細く、指で触れてもはっきりと感じ取れないような弱い脈を指します。まるで、かすかな風になびく糸のように、その存在を感じ取るのが難しいことから、東洋医学では体のエネルギーが不足している「虚」の状態を示す脈として捉えられています。 微脈が現れる原因は様々ですが、疲労や睡眠不足、食事の偏り、ストレス、冷えなどによって体が弱っている状態のほか、慢性的な病気や加齢などが挙げられます。また、貧血や低血圧など、西洋医学的な病気が隠れている場合もあるため、注意が必要です。 東洋医学では、微脈が見られる場合には、体のエネルギーを補い、健康な状態へと導くための養生法を検討します。具体的には、十分な睡眠や休息をとり、バランスの取れた食事を心がけ、体を温める食材を積極的に摂ることなどが大切です。また、適度な運動やストレスを解消することも効果的です。 微脈は、体が発している「疲れています」「休ませてほしい」というサインであるとも言えます。日頃から自分の体の声に耳を傾け、微脈のようなサインを見逃さないようにすることが大切です。もし、気になる症状がある場合は、自己判断せず、専門の医師に相談するようにしましょう。
漢方の治療

表裏双解:東洋医学における病邪解除の考え方

- 表裏双解とは -# 表裏双解とは 東洋医学では、人は自然と調和して生きることで健康が保たれると考えられており、病気は、気候の変化や生活習慣の乱れなどによって体内に入り込んだ邪気によって引き起こされると考えられています。この邪気は、体の表面にとどまっている状態を「表」、体の内部に入り込んでいる状態を「裏」と表現します。表裏双解とは、このように、体の表面と内部の両方に働きかけて病邪を追い出す治療法の総称です。 風邪を例に考えてみましょう。風邪の初期症状である、寒気や鼻水、くしゃみなどは、体に侵入しようとする邪気が体の表面にとどまっている「表」の状態です。この段階では、発汗を促すことで邪気を体外へ追い出す治療を行います。生姜やネギなど、体を温める効果のある食材を摂ることも効果的です。 一方、風邪の症状が進行し、高熱や咳、痰などの症状が出ている場合は、邪気が体の内部に入り込んだ「裏」の状態と考えられます。この段階では、体の内部から邪気を追い出す治療を行います。大根やレンコンなど、体の熱を冷ます効果のある食材を摂り、安静に過ごすことが大切です。 このように、表裏双解では、体の表面にとどまっている邪気と、体の内部に入り込んだ邪気を区別し、それぞれの状態に合わせた適切な治療法を選択することで、体から病邪を追い出し、健康な状態へと導きます。
漢方の診察

便膿血:赤痢の可能性を示すサイン

- 便膿血とは? 便膿血とは、その名の通り、便に血と膿、粘液が混じっている状態を指します。通常、健康な状態であれば、便は茶褐色で固体状をしており、これらの成分は含まれていません。しかし、便膿血の場合、便の色は赤褐色や黒褐色に変色し、ドロドロとした形状になることがあります。 便に血が混じることを「血便」、膿が混じることを「膿便」とそれぞれ呼びますが、便膿血はこれらの症状が同時に現れる状態です。これは体内で何らかの異常が起きているサインであり、放置すると重篤な病気を引き起こす可能性もあります。 便膿血の原因として最も多いのは、消化管、特に大腸における炎症や感染症です。例えば、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、細菌性腸炎、虚血性大腸炎などが挙げられます。また、大腸がんやポリープなどの腫瘍が原因となることもあります。 便膿血は、その症状だけから自己判断することは大変危険です。少しでも異常に気付いたら、自己判断せずに速やかに医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしてください。
漢方の診察

東洋医学における便溏: その原因と対策

- 便溏とは -# 便溏とは 便溏とは、東洋医学において、水分の多い、形を成さない軟らかい便が続く状態を指します。西洋医学でいう軟便や下痢に相当する状態と言えるでしょう。ただし、東洋医学では、単なる症状として捉えるのではなく、身体からのサインとして重視します。便の状態は、その人の体質や消化機能、健康状態を反映していると考えられています。 便溏は、主に脾胃の機能の低下によって引き起こされると考えられています。脾胃とは、西洋医学の脾臓や胃とは異なり、飲食物を消化吸収し、気血や水分を生成・運搬する機能を担うものです。この脾胃の働きが弱まると、水分代謝がうまくいかなくなり、便に水分が過剰に含まれてしまうのです。 便溏を引き起こす原因としては、暴飲暴食や冷え、過労、ストレス、加齢などが挙げられます。また、生まれつき胃腸の弱い体質の人も便溏になりやすい傾向があります。 東洋医学では、便溏の治療として、脾胃の機能を高め、水分代謝を改善することを目指します。具体的には、食事療法、漢方薬、鍼灸、温灸などを用いて、体質や症状に合わせた総合的な治療を行います。 便溏は、放置すると消化不良や栄養不足、免疫力低下などを招く可能性があります。日頃から、食生活や生活習慣に気を配り、便の状態をチェックすることが大切です。
便秘

東洋医学における脾約:その症状と役割

- 脾約とは -# 脾約とは 東洋医学において、聞きなれない言葉かもしれませんが、「脾」は健康を保つ上で重要な役割を担っています。西洋医学でいう脾臓とは異なり、東洋医学の脾は、食べ物の消化吸収を助け、栄養を全身に送り届け、体内の水分バランスを調整するなど、多岐にわたる働きをしています。この脾の働きが弱まった状態を「脾虚」と呼びますが、「脾約」は、この脾虚がさらに進んで深刻化した状態を指します。 脾約になると、消化吸収能力が著しく低下するため、いくら食べても体に必要な栄養が十分に行き渡らなくなります。また、水分代謝の異常により、体内に余分な水分が溜まり、「湿」と呼ばれる状態を引き起こします。この湿は、体に重だるさやむくみをもたらし、さらに消化機能を低下させるという悪循環に陥ります。 脾約は、食生活の乱れや冷え、過労、ストレスなど、様々な要因によって引き起こされます。現代社会において、これらの要因は非常に身近に存在するため、脾約は決して他人事ではありません。日頃から、脾の働きを健やかに保つ生活習慣を心がけることが大切です。
内臓

慢性的な下痢:久泄について理解する

- 久泄とは -# 久泄とは 久泄とは、長期間にわたって下痢が続いたり、何度も繰り返したりする状態を指します。西洋医学でいう慢性的な下痢と同じように、一時的な消化不良とは異なり、体質や生活習慣、隠れている病気が原因となっていることが多く、根本的な治療が必要となります。 東洋医学では、久泄は体の水分代謝を司る「脾」という臓腑の機能低下が主な原因だと考えられています。脾は、飲食物から栄養を吸収し、全身に運ぶ役割を担っており、この機能が低下すると、水分をうまく処理できなくなり、下痢を引き起こすとされています。 また、久泄は「腎」の機能低下とも関連付けられます。腎は、体の成長や生殖、水分代謝などを調節する重要な臓器です。腎の機能が低下すると、体全体の水分バランスが崩れ、下痢を起こしやすくなります。 久泄の原因としては、暴飲暴食や冷え、過労、ストレス、老化などが挙げられます。これらの要因によって脾や腎の機能が低下し、久泄が起こると考えられています。 久泄を改善するためには、まず生活習慣の見直しが必要です。暴飲暴食を避け、消化の良いものを食べるように心がけましょう。また、体を冷やさないように注意し、十分な睡眠をとることも大切です。さらに、ストレスを溜め込まないように、適度な運動やリラックスできる時間を取り入れるようにしましょう。 これらの生活習慣の改善に加えて、東洋医学では、漢方薬や鍼灸治療なども有効な治療法として用いられます。症状や体質に合わせて適切な治療を受けることで、久泄の改善を目指します。
漢方の診察

東洋医学における「表邪入裏」:病の進行を探る

- 病邪の侵入経路 東洋医学では、病気を引き起こす原因を「病邪」と呼びます。この病邪は、私たちの身の回りにある様々な要因が変化し、体に悪影響を及ぼすものと考えられています。例えば、寒すぎる気温や過労、暴飲暴食なども病邪となりえます。 この病邪は、主に体の外から内側へ侵入してきます。その経路は様々ですが、代表的なものをいくつか紹介しましょう。 まず、口や鼻は、空気中に漂うウイルスや細菌などが侵入しやすい経路です。風邪やインフルエンザなどは、この経路を通じて病邪が侵入することが多いです。 また、皮膚も病邪の侵入経路となります。傷口から細菌が入り込んだり、寒気が直接体に影響を及ぼしたりすることがあります。 さらに、目も病邪の侵入経路の一つです。アレルギー物質やウイルスなどが、目から侵入し、結膜炎などを引き起こすことがあります。 このように、病邪は様々な経路から私たちの体に侵入しようとします。東洋医学では、これらの侵入経路を理解し、病邪から身を守る予防法を大切にしています。日々の生活の中で、寒さや暑さ、湿気などから体を守る工夫をしたり、栄養バランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけることが、病気を予防し、健康な体を維持するために重要です。