「つ」

漢方の治療

東洋医学における「通絡」:滞りを解消し、流れを取り戻す

- 「通絡」とは何か 「通絡(つうらく)」とは、東洋医学において非常に重要な考え方の一つです。 私たちの体の中には、「気血」と呼ばれるエネルギーと血液が流れており、健康を保つためには、この「気血」が全身をくまなく巡ることが大切であると考えられています。 そして、その「気血」の通り道となるのが「経絡(けいらく)」と呼ばれるものです。 「経絡」は、体中に張り巡らされた網目のように、複雑につながっています。 しかし、様々な原因によって、この「経絡」が詰まってしまうことがあります。すると、「気血」の流れが悪くなり、体に様々な不調が現れると考えられています。 例えば、肩こりや腰痛、冷え性、しびれなどが挙げられます。 「通絡」とは、まさにこの詰まってしまった「経絡」を通りやすくする施術のことを指します。 「経絡」の詰まりを解消することで、「気血」の流れがスムーズになり、体の不調を改善に導くと考えられています。 「通絡」を実現する施術方法には、鍼灸治療やマッサージなど、様々なものがあります。
漢方の診察

東洋医学における弦脈:その意味と重要性

- 弦脈とは -# 弦脈とは 東洋医学では、脈の状態を観察することで、体内の状態や病気の兆候を捉えようとします。これは脈診と呼ばれる診断法で、その中でも弦脈は重要な指標の一つです。 弦脈は、まるで琴や三味線などの弦に触れたときのように、ぴんと張った状態を指します。指で脈を調べると、強い抵抗感があり、弾力に乏しく硬く感じられます。 健康な人の脈は、適度な柔らかさと滑らかさを持ち合わせていますが、弦脈のように緊張が強く硬い脈は、体内のバランスが崩れていることを示唆している可能性があります。 例えば、怒りやストレスを感じている時、緊張状態が続いている時、または痛みがある時などに、弦脈が現れやすいと言われています。また、高血圧や動脈硬化などの病気と関連付けられることもあります。 ただし、弦脈だからといって必ずしも病気であるとは限りません。体質やその時の体調によって脈の状態は変化します。東洋医学では、弦脈だけを見るのではなく、顔色、舌の状態、体全体のバランスなどを総合的に判断して診断を行います。
漢方薬

漢方薬の知恵:包煎とは?

- 包煎とは? 包煎とは、漢方薬を煎じる際に行う特別な方法のことです。煎じ薬を作る際、通常はすべての生薬を一緒に煮出しますが、包煎では特定の生薬を布やガーゼで包んでから煮出します。この時、生薬を包む布やガーゼのことを「煎じ袋」と呼ぶこともあります。 では、なぜ包煎をする必要があるのでしょうか?それは、大きく分けて二つの理由があります。 一つ目は、生薬の刺激を和らげるためです。例えば、胃腸に負担をかけやすい生薬を直接煎じると、お腹が痛くなったり、吐き気を催したりすることがあります。このような生薬を包んで煎じることで、刺激を弱め、身体への負担を軽減することができます。 二つ目は、有効成分を効率よく抽出するためです。揮発しやすい成分を含む生薬や、他の生薬と混ざると効果が変化してしまう生薬など、煎じ方によって効き目が変わってしまうことがあります。このような生薬を包んで煎じることで、成分の揮発を防いだり、他の生薬との不要な反応を抑制したりすることができます。 このように、包煎は生薬の効果を最大限に引き出し、身体への負担を軽減するために用いられる、漢方薬の煎じ方における重要な技法と言えるでしょう。
漢方の診察

東洋医学における津枯血燥:その原因と症状

- 津枯血燥とは -# 津枯血燥とは 東洋医学では、私たちの体は「気・血・津液」のバランスによって健康が保たれていると考えられています。このうち、「津液」は、西洋医学でいう体液と似た概念で、唾液や涙、汗など、体内の潤滑油のような役割を担っています。 「津枯血燥」とは、この津液が不足し、体が乾燥した状態になることを指します。体の潤いが不足すると、同時に熱がこもりやすくなり、「血燥」と呼ばれる血液の循環が悪くなる状態を招きます。 津枯血燥は、さまざまな要因で引き起こされますが、特に加齢やストレス、過労、睡眠不足、偏った食事などが影響すると考えられています。また、乾燥した気候も、津枯血燥を悪化させる要因の一つです。 津枯血燥になると、肌や髪、喉の乾燥、便秘、目の渇き、めまい、立ちくらみ、不眠、イライラしやすくなるなどの症状が現れます。これらの症状は、西洋医学では異なる病名に分類されることもありますが、東洋医学では「津液不足」と「熱のこもり」という共通の原因によって引き起こされると考えます。
便秘

東洋医学における便秘解消法

- 通便とは -# 通便とは 東洋医学では、「通便」とは、ただ便を出すことだけを目的とするのではなく、体の中に溜まった不要なものを排出し、体のバランスを整えるための大切な治療法だと考えています。 健康な状態を保つためには、食べたものがきちんと消化・吸収され、不要なものが便としてスムーズに排出されることが重要です。しかし、様々な原因でこの流れが滞ってしまうことがあります。ストレスや不規則な生活、冷え、食生活の乱れなどがその原因として挙げられます。 東洋医学では、便秘などの症状が出ている場合、それは体のバランスが崩れているサインだと捉えます。そのため、ただ便を排出させるのではなく、その人の体質や状態に合わせて、鍼灸治療や漢方薬などを用いながら、根本的な原因にアプローチしていくことを大切にします。 例えば、冷えが原因で便秘になっている場合は、体を温める効果のある鍼灸治療や漢方薬を用います。また、ストレスが原因の場合は、リラックス効果のある鍼灸治療や漢方薬を選びます。 このように、東洋医学における通便治療とは、一時的に症状を改善するのではなく、体の内側から健康な状態へと導き、根本的な体質改善を目指すことを目的としています。
漢方薬

東洋医学における使薬: 経絡と部位への作用

- 使薬とは -# 使薬とは 東洋医学において、使薬は単なる草木や石の類ではありません。自然界の力を借りて、人が本来持っている自然の力で治る力、すなわち自然治癒力を高め、心と体のバランスを整えるための大切な役割を担っています。その歴史は古く、数千年もの間、人々の健康を保ち、病気を治すために用いられてきました。 使薬の一つ一つには、自然界のエネルギーが宿っているとされ、その力を「薬性」と呼びます。熱いもの、冷たいもの、温めるもの、冷やすものといった性質や、体の特定の部位に作用するといった特徴があります。 例えば、風邪のひき始めに用いられる葛根湯という漢方薬には、発汗を促し、体の熱を冷ます働きがあります。これは、葛根湯に含まれる生姜や麻黄といった生薬の、体を温める薬効によるものです。 このように、東洋医学では、自然の力を借りて体の内側から健康を促すことを大切にしています。そして、その自然の力を最大限に引き出すために、使薬は重要な役割を担っているのです。現代においても、その効能は高く評価され、世界中の人々に愛され続けています。
漢方の診察

東洋医学における痞満とそのケア

- 痞満とは 痞満(ひまん)は、東洋医学において、胸やみぞおち、お腹の上部あたりに詰まったような、不快な圧迫感や張りを感じることを指します。例えるなら、食べ過ぎた後や、胃もたれを起こしている時の、あの重苦しい感覚に似ています。現代医学の用語では、胃もたれや腹部膨満感といった状態に近いと言えるでしょう。 日常で感じる、食後に胃がもたれる、お腹が張って苦しい、げっぷがよく出る、といった症状は、この痞満の可能性があります。また、単に消化器系の不調だけでなく、精神的なストレスや緊張が原因で起こることもあります。東洋医学では、心と体は密接に関係していると考えるため、精神的な要因も重視されます。 痞満は、病気というよりは、体からのサイン、一種の未病の状態と捉えられます。このサインを見逃さず、生活習慣の見直しや、適切な養生を行うことで、より深刻な病気を予防することに繋がると考えられています。
漢方の診察

東洋医学における「痞」:その意味と症状

- 「痞」とは 東洋医学では、心と身体は密接に繋がっていると捉え、目には見えない「気」の流れが健康を左右すると考えます。この「気」は、全身をくまなく流れ、生命エネルギーを運んだり、体の機能を調整したりしています。しかし、様々な要因によってこの「気」の流れが滞ってしまうことがあります。その結果、体に様々な不調が現れると考えられており、「痞」もその一つです。 「痞」は、特定の部位に「気」の流れが滞り、停滞してしまうことで起こるとされています。まるで、水路を流れる水が、途中で詰まって淀んでしまうかのようです。この「気」の停滞によって、体の一部に膨張感や圧迫感、抵抗感といった不快な感覚が生じます。具体的には、喉に何かが詰まったような感覚、お腹が張って苦しいような感覚など、患者さん自身は強い不快感を覚えます。 しかし厄介なことに、「痞」は、外見からは分かりにくく、検査をしても異常が見つからない ことが少なくありません。そのため、西洋医学的な診断が難しく、治療法も確立されていないのが現状です。東洋医学では、「痞」は身体からの重要なサインと捉え、その原因を探り、滞った「気」の流れをスムーズにするための治療を行います。
漢方の治療

鼻づまりの悩み解消!:通鼻竅のススメ

鼻詰まりは、私たちの多くが日常で経験する、大変煩わしい症状です。呼吸が苦しくなるばかりか、夜中に鼻が詰まって眠れなかったり、日中は頭がぼーっとして集中できなかったり、酷いときには頭痛を引き起こすこともあります。 東洋医学では、鼻詰まりの原因は、風邪やアレルギーによる鼻の炎症の他、体の冷えや、気の流れの乱れなど、様々な要因が考えられています。 例えば、体が冷えると、体の防衛反応として鼻の粘膜が腫れ上がり、鼻詰まりを起こしやすくなります。また、ストレスや不眠、疲労などが続くと、気の流れが滞り、これもまた鼻詰まりの原因となります。 このような鼻詰まりの症状を改善するために、東洋医学では様々な治療法が用いられてきました。鍼灸治療では、体の特定のツボを刺激することで、気の流れを整え、鼻の炎症を抑え、体の冷えを改善していきます。また、漢方薬の服用も効果的です。体質や症状に合わせて処方することで、体の内側から鼻詰まりの根本的な改善を目指します。 さらに、日常生活においても、体を冷やさないように温かい服装を心がけたり、バランスの取れた食事を摂ったり、十分な睡眠をとるなど、健康的な生活習慣を維持することが大切です。規則正しい生活は、気の流れを整え、免疫力を高め、鼻詰まりになりにくい体作りに繋がります。
漢方の治療

めまいと東洋医学:その原因と治療法

- 瞑眩とは -# 瞑眩とは 瞑眩とは、周囲がぐるぐると回転しているように感じたり、体がふわふわと浮いているような感覚に襲われる状態を指します。まるで自分が回転しているかのように感じたり、周囲の景色が揺れ動いて見えたり、あるいは体が宙に浮いているような感覚に陥ることがあります。 このようなめまいが起きると、吐き気や嘔吐を伴うことが多く、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。立っていることすら困難になり、横になって安静にする必要が出てくる場合もあります。回転性の感覚に加えて、立ちくらみや目の前が一瞬暗くなるといった症状が現れることもあります。 めまいは一時的なものから慢性的なものまで、その症状は様々です。原因もまた多岐にわたり、耳の病気や脳の病気、ストレスや睡眠不足、低血圧、貧血などが考えられます。めまいが頻繁に起こる場合や、症状が重い場合には、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
アレルギー

鼻詰まり解消へ:通竅療法のススメ

- 鼻詰まりの悩み 鼻詰まりは、多くの人が日常的に経験する、大変煩わしい症状です。鼻は、空気の通り道であると同時に、においを感じる嗅覚器官としての役割も担っています。この鼻の通り道が狭くなることで、息苦しさを感じたり、においが分かりにくくなったりする状態が、鼻詰まりです。 鼻詰まりを引き起こす原因は様々です。風邪やインフルエンザなどのウイルス感染、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などが代表的なものとして挙げられます。また、乾燥した空気や、タバコの煙、ハウスダストなども、鼻の粘膜を刺激し、鼻詰まりを引き起こす要因となります。 鼻詰まりによって呼吸が困難になると、睡眠不足や集中力の低下、頭痛などを引き起こし、日常生活に支障をきたすこともあります。さらに、鼻詰まりが長引くと、嗅覚や味覚にも影響を及ぼす場合があり、注意が必要です。 鼻詰まりの症状を和らげるには、原因に合わせた適切な対処が重要になります。自己流で対処するのではなく、医療機関を受診し、医師の診断に基づいた治療を受けるようにしましょう。
漢方の治療

東洋医学における鼻閉対策:通鼻のススメ

- 鼻詰まりに悩むあなたへ 鼻が詰まってしまい、息苦しさを感じたり、夜中に目が覚めてしまったり、勉強や仕事に集中できなかったり…、誰でも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。鼻詰まりは、私たちの生活の質を大きく下げてしまう、本当に厄介な症状です。そして、なかなか良くならず、長引く鼻詰まりに悩まされている方も少なくありません。 一口に鼻詰まりと言っても、その原因は様々です。風邪や花粉症などのアレルギー反応によって鼻の粘膜が腫れてしまう場合や、空気の乾燥によって鼻の中が乾いてしまう場合、また、ストレスや疲労が原因で自律神経が乱れ、鼻詰まりを引き起こす場合もあります。 鼻詰まりの症状を和らげるためには、その原因に合わせた適切な対処をすることが大切です。まずは、部屋を加湿したり、温かい飲み物を飲んだりして、鼻の粘膜を潤すようにしましょう。鼻詰まりがひどい場合は、蒸しタオルを鼻に当てて温めるのも効果的です。 また、鼻詰まりは、体の冷えも関係していると言われています。そこで、体を温める食材を積極的に食事に取り入れてみましょう。生姜やネギ、根菜類などがおすすめです。 鼻詰まりが長引く場合は、自己判断せずに、医療機関を受診するようにしましょう。専門家の適切なアドバイスを受けることが、つらい鼻詰まりから解放されるための近道です。
漢方薬

体の水の通り道を整える:通淋薬の働き

- 通淋薬とは -# 通淋薬とは 通淋薬は、東洋医学において、尿の滞りによる様々な症状を改善するために用いられる漢方薬の一種です。東洋医学では、人間の身体は自然界と調和し、体内のエネルギーである「気」の流れによって健康が保たれていると考えられています。 この「気」の流れが滞ると、体内の水分代謝にも影響を及ぼし、膀胱に熱や余分な水分が溜まりやすくなります。これが、東洋医学における排尿の不調の原因と考えられています。 通淋薬は、これらの熱や余分な水分を取り除き、膀胱の機能を高めることで、スムーズな排尿を促します。具体的には、排尿時の痛みや残尿感、頻尿、尿のにごり、血尿などの症状を改善する効果が期待できます。 通淋薬は、その症状や体質に合わせて、様々な生薬を組み合わせた漢方薬が処方されます。自己判断で服用するのではなく、専門家の診断のもと、適切な処方を受けることが大切です。
漢方の診察

東洋医学の見方:唾血とその原因

- 唾液に現れる体のサイン唾血とは 唾血とは、その名の通り、唾液に血が混じって口から出てしまう症状のことを指します。西洋医学では、気道や肺から出た血液が、咳と共に喀出される現象と捉えられます。一方、東洋医学では、単なる症状として捉えるのではなく、体内のバランスの乱れが表面化したものと考えます。 東洋医学では、体内のエネルギーの流れである「気」、血液などの体液である「血」、そしてそれらを循環させる「水」のバランスが重要視されます。このバランスが崩れることで、体に様々な不調が現れると考えられており、唾血もその一つです。 唾血を引き起こす原因は様々ですが、東洋医学では、熱が体内にこもる「熱証」と、体の潤いが不足する「燥証」が主な原因として考えられています。辛いものや脂っこいものの食べ過ぎ、過労、ストレス、睡眠不足などは、体に熱を生み出し、血の巡りを悪くするため、唾液に血が混じりやすくなると考えられています。また、乾燥した気候や、加齢による体の潤い不足も、唾液の分泌を減らし、血をサラサラにするため、唾血のリスクを高めると考えられています。 唾血は、決して軽視できる症状ではありません。もし、血の色が鮮やかだったり、量が多かったりする場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。自己判断は危険ですので、専門家の診断を仰ぎましょう。そして、日頃からバランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、体内のバランスを整えることが大切です。
漢方の治療

東洋医学における通因通用

- 通因通用の考え方 東洋医学では、人間は自然の一部であり、自然と調和することで健康を維持できると考えられています。この考え方は、体の内部にも当てはまります。体の中では、「気・血・水」と呼ばれる生命エネルギーが絶えず循環しており、これらのバランスが保たれている状態が健康であると考えます。 しかし、このバランスが崩れると、体に様々な不調が現れます。東洋医学では、これを「不通則痛」、つまり「流れが滞ると痛みを生じる」と捉えます。この滞りを生み出す原因となるのが、風邪や冷え、湿気などの外から侵入する「邪気」や、過労やストレス、偏った食事などの生活習慣の乱れによって体内に生じる「内因」です。 「通因通用」とは、これらの原因によって滞りが生じている部位を特定し、流れをスムーズにすることで症状を改善するという治療の考え方です。例えば、風邪の初期症状である寒気や発熱は、体内に侵入した「風寒の邪気」が原因で、体の防衛反応として熱を生み出し、邪気を追い出そうとしている状態だと考えます。そこで、発汗作用のある食材や生薬を用いることで、体の外に邪気を排出するのを助け、症状の改善を促します。 つまり、通因通用とは、単に症状を抑えるのではなく、その原因を突き止め、体の自然な回復力を引き出すことで根本的な治療を目指すという東洋医学の根幹を成す考え方なのです。
漢方の診察

東洋医学が考える「攣急」の改善法

- 東洋医学における攣急とは 攣急とは、手足が突っ張ってしまい自分の意思通りに動かせない状態を指します。西洋医学では「痙縮」と呼ばれることもありますが、東洋医学では単なる筋肉の硬直として捉えるのではなく、体の内部を流れるエネルギーである「気血」の乱れが深く関係していると捉えています。 東洋医学では、私たちの体は「気」という目に見えないエネルギーが循環することで健康が保たれていると考えます。この「気」の流れ道は「経絡」と呼ばれ、全身に張り巡らされています。そして、「気」と並んで重要なのが「血」です。「血」は体に栄養を与え、「気」と「血」はお互いに影響し合いながら体のバランスを保っています。 この気血の流れが、過労やストレス、冷え、水分代謝の乱れなどによって滞ってしまうと、体に様々な不調が現れます。その一つが攣急です。つまり、東洋医学では攣急は体の表面に現れたサインであり、その根本には気血の乱れがあると考えるのです。 例えば、冷えによって気血の流れが悪くなると、筋肉や血管が収縮しやすくなり、攣急が起こりやすくなると考えられています。また、精神的なストレスは「気」の流れを滞らせ、体の様々な部位に緊張を生み出し、攣急を引き起こすと考えられています。
鍼灸

東洋医学の知恵:筒灸の世界

- 筒灸とは何か 筒灸とは、東洋医学の考え方に基づいた温熱療法の一つで、特に耳によく用いられます。細い筒状の器具を用いることから「筒灸」と呼ばれ、その歴史は古く、中国で長い年月をかけて培われてきた伝統医学に深く根付いています。現代においても、その効果が見直され、様々な症状の改善を目的として用いられています。 筒灸では、艾というヨモギの葉を乾燥させて作ったもぐさを燃焼させ、その熱を身体に伝えることで温熱刺激を与えます。特に耳にはツボが集中しており、全身の様々な器官や機能と密接に繋がっているとされています。そのため、耳にあるツボを的確に温めることで、血行促進や免疫力の向上、自律神経の調整、冷え性の改善、肩こりや腰痛の緩和など、様々な効果が期待できます。また、副作用が少ないことも大きな特徴の一つです。 筒灸は、古くから伝わる東洋医学の知恵と現代のニーズが融合した、安全で効果的な施術法と言えるでしょう。
鍼灸

鍼灸治療と椎間関節:pulse療法で痛みを和らげる

私たちの背骨は、椎骨と呼ばれる骨がいくつも積み重なって構成されています。この椎骨と椎骨の間には、クッションの役割を果たす椎間関節という関節が存在します。 椎間関節は、背骨の動きを滑らかにし、体を支えるという重要な役割を担っています。 例えば、体を曲げたり伸ばしたり、左右にひねったりする際に、椎間関節がスムーズな動きを可能にしているのです。 しかし、長時間悪い姿勢を続けたり、同じ体勢を長時間維持したりすると、この椎間関節に大きな負担がかかってしまいます。その結果、椎間関節周辺の組織に炎症が起こり、「椎間関節性疼痛」と呼ばれる痛みが生じることがあります。この痛みは、背中の痛みや腰痛として感じられることが多く、場合によっては、首の痛みや頭痛を引き起こすこともあります。日常生活において、猫背や長時間のデスクワーク、中腰での作業などは、椎間関節に負担をかける代表的な例と言えるでしょう。
鍼灸

椎間関節鍼通電療法とは?

- 椎間関節鍼通電療法とは -# 椎間関節鍼通電療法とは 椎間関節鍼通電療法は、東洋医学と西洋医学、両方の良い点を取り入れた治療法です。東洋医学で古くから用いられてきた鍼治療に、西洋医学の物理療法である電流刺激を組み合わせることで、より高い効果を目指します。 施術の対象となるのは、背骨の両側にある小さな関節「椎間関節」です。椎間関節は、身体を動かす際に重要な役割を担っていますが、姿勢が悪かったり、同じ体制を長時間続けたりすると負担がかかり、痛みや炎症が生じることがあります。 この治療法では、まず、痛みや炎症のある椎間関節に正確に鍼を刺します。その後、鍼に微弱な電流を流すことで、周囲の筋肉や神経を刺激します。 電流刺激によって、筋肉の緊張が和らぎ、血行が促進されることで、痛みの原因物質が除去されやすくなり、炎症も抑えられます。また、神経の働きが調整されることで、痛みが脳に伝わるのをブロックする効果も期待できます。 椎間関節鍼通電療法は、腰痛や肩こり、頭痛など、様々な痛みに対して効果が期待できる治療法として注目されています。
その他

東洋医学における「募原」:体表と内臓のつながり

- 募原とは何か -# 募原とは何か 募原とは、東洋医学において、体の表面と内臓が密接に関連していることを示す重要な概念の一つです。 体の表面には、内臓の状態を反映する特定の部位が存在し、これを募穴と呼びます。募穴は、経絡と呼ばれるエネルギーの通り道上にあり、それぞれの臓腑と対応しています。そして、募原とは、この募穴の奥深く、横隔膜と胸膜の間の空間を指します。 東洋医学では、この募原は、体外から邪気が侵入しやすい場所であると同時に、体内の病邪が溜まりやすい場所であると考えられています。 例えば、風邪などの伝染病では、病原体がまずこの募原に侵入し、その後、臓腑に影響を及ぼすと考えられています。 募原は、臓腑と体表を結ぶ重要な接点であり、内臓の病変が体表に現れる場合、その反応が現れやすい場所であると言えます。 例えば、心臓に問題がある場合、心臓に対応する募穴である巨闕穴に圧痛や硬結が現れることがあります。このように、募原の状態を観察することで、内臓の健康状態を把握することができると考えられています。
鍼灸

鍼灸治療の基礎:對證選穴とは

- 鍼灸治療と経穴 鍼灸治療は、身体に鍼や灸を用いて刺激を与えることで、体の内側を流れる「気」のバランスを整え、人間が本来持っている自然治癒力を高める、古くから伝わる治療法です。その施術において特に重要な役割を担うのが「経穴」です。 経穴は、全身に数百カ所存在する体表上の特定の部位のことを指します。まるで体中に張り巡らされた intricate なネットワークの結節点のように、それぞれの経穴は特定の臓腑や器官と深く結びついています。 鍼灸師は、患者さんの体の状態を、脈や舌の状態、顔色、体質などを総合的に見極めることで判断します。そして、その状態に合わせて適切な経穴を選び、鍼やお灸で刺激を与えることで、気の乱れを整え、様々な症状の改善を促します。 例えば、肩こりの症状の場合、肩周辺の筋肉や、肩こりに関係する経穴に鍼やお灸で刺激を与えます。 このように、鍼灸治療は経穴への刺激を通じて、身体の内側から健康を取り戻していくことを目指す、奥深い治療法といえます。
漢方の治療

健康の鍵!東洋医学における「通調水道」の力

- 「通調水道」とは? 東洋医学において、「水」は生命を維持する上で欠かせない要素と考えられています。 雨や川の水といった私達が普段目にする「水」だけでなく、体内の水分もまた、健康を保つためには非常に重要です。 この体内の水分の流れをスムーズにするための重要な概念こそが、「通調水道」です。 体内の水分は、単に私達が毎日飲む水やお茶などの飲み物から得られるだけではありません。 食事で食べる野菜や果物といった食べ物からも水分は摂取されますし、体内で栄養素が分解される時にも「代謝水」として水が作られます。 このように様々な経路を経て体内に取り込まれた水は、ただ喉の渇きを潤すためだけに存在する訳ではありません。 水は体中を巡り、栄養を体の隅々まで届けたり、老廃物を体の外に運び出すという重要な役割を担っています。 この水の流れが滞ってしまうと、体に必要な栄養が行き渡らなかったり、不要な老廃物が溜まってしまったりと、体の様々な不調につながってしまうのです。 「通調水道」は、体内の水分の流れをスムーズにすることで、栄養や老廃物の運搬を円滑にし、体全体のバランスを整え、健康な状態を保つために欠かせない要素と言えるでしょう。
鍼灸

東洋医学における募穴: 内臓の窓

- 募穴とは -# 募穴とは 東洋医学では、生命エネルギーである「気」が体の中をくまなく巡っていると考えられており、その通り道を「経絡」と呼びます。 経絡の上には「ツボ」と呼ばれる点が数多く存在し、その中でも内臓と特に深い関わりを持つ重要なツボの一つが「募穴」です。 募穴は、各臓腑の「気」が集まるところであり、臓腑の活動が盛んになると、募穴にもその状態が顕著に現れます。 例えば、胃に熱がこもると、対応する募穴である中脘に圧痛が出現したり、熱を感じたりすることがあります。 逆に、臓腑の働きが弱ると、対応する募穴は陥没したり、冷えを感じたりすることがあります。 このことから、募穴は臓腑の状態を診断する上で重要なポイントとなります。 東洋医学の診察では、患者さんの脈の状態や舌の状態と合わせて、募穴の状態を観察することで、臓腑の活動状態や病気の診断を行います。 また、募穴は治療の際にも重要な役割を果たします。 募穴に鍼灸治療を施すことで、対応する臓腑の「気」の流れを調整し、臓腑の機能を回復させる効果が期待できます。 例えば、胃の働きを活発にしたい場合は、中脘にお灸を据えたり、指圧を加えたりします。 このように、募穴は東洋医学において、診断と治療の両面で欠かせない重要なツボと言えるでしょう。
女性の悩み

月経痛を東洋医学で考える

- 月経痛とは 月経痛は、多くの女性が経験する、毎月の月経期間前後に生じる下腹部や腰の痛みを指します。この痛みは、子宮の収縮によって起こるもので、子宮内膜と呼ばれる子宮内側の組織が剥がれ落ちる際に、プロスタグランジンという物質が分泌されることが原因とされています。 痛みの程度は人それぞれで、軽い痛みを感じる人もいれば、日常生活に支障が出るほどの激しい痛みを感じる人もいます。痛みの感じ方は、体質や年齢、ストレス、冷え、睡眠不足、食生活の乱れなど、様々な要因によって変化します。 多くの場合、痛みは月経開始の1~2日前から始まり、2~3日続きます。痛みの種類としては、子宮の収縮に伴う「生理的月経痛」と、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が原因で起こる「病的月経痛」の二つに分けられます。生理的月経痛は、鎮痛剤の使用や体を温めることで症状が和らぐことが多いですが、病的月経痛の場合は、根本的な治療が必要となる場合があります。 月経痛が重い場合は、我慢せずに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。