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その他

東洋医学から見る發頤:耳下腺炎とその化膿

- 發頤とは -# 發頤とは 發頤(はつい)とは、東洋医学における概念の一つで、現代医学でいう耳下腺炎、特に膿を持つものを指します。耳下腺は、耳の下あたりに位置し、唾液を分泌する大切な器官です。この耳下腺に炎症が起こることで、腫れや痛み、発熱といった症状が現れます。 發頤は、現代医学ではウイルス感染が主な原因として考えられていますが、東洋医学では、ウイルス感染に加えて、身体の内部環境や外部環境との関連性も重視して、その原因を探っていきます。 例えば、暴飲暴食や脂っこいものの食べ過ぎによって、身体の中に余分な熱や湿気が溜まり、それが原因で發頤を引き起こすと考えられています。また、冷たい風や寒さに当たることで、身体の抵抗力が低下し、發頤を発症しやすくなるとも考えられています。 東洋医学では、發頤の治療として、身体に溜まった熱や湿気を取り除き、免疫力を高めることを目的とした漢方薬の処方や、鍼灸治療などが行われます。さらに、生活習慣の改善や食事療法なども併用することで、發頤の予防や再発防止を目指します。 發頤は、適切な治療を行えば、多くの場合、後遺症を残さずに治癒します。ただし、症状が重い場合や、適切な治療を行わない場合は、膿が周囲の組織に広がり、重症化する可能性もあるため注意が必要です。発熱や耳下腺の腫れ、痛みなど、發頤の症状が見られる場合は、自己判断せずに、早めに医療機関を受診しましょう。
その他

東洋医学から見る「發」:その病態と治療

- 「發」とは何か 「發」とは、東洋医学で使われる言葉で、現代医学でいうと、皮膚の浅い部分が広く急に炎症を起こし、膿が溜まる病気のことを指します。皮膚が赤く腫れ上がり、熱を持っていて、強い痛みを伴うのが特徴です。 現代医学では、この病気の原因は、主に細菌感染だと考えられています。しかし東洋医学では、単に細菌に感染したというだけでなく、体の中の熱のバランスが崩れ、「邪」と呼ばれる悪い気が体の中に入ってきた状態だと考えます。 東洋医学では、体の状態や症状に合わせて、熱を冷ます漢方薬を使ったり、鍼灸治療で体のエネルギーの流れを整えたりすることで、「邪」を追い出し、体のバランスを取り戻すことを目指します。
その他

赤ちゃんの髮際瘡:東洋医学的視点

- 髮際瘡とは -# 髮際瘡とは 髮際瘡とは、生まれたばかりの赤ちゃんの後頸部、特に髪の毛の生え際にみられる、赤い湿疹のような皮膚症状を指します。一般的に、生後1か月ごろまでに現れることが多く、痒みを伴うこともあります。東洋医学では、赤ちゃんの皮膚は非常に薄く、未熟であるため、外邪の影響を受けやすいと考えられています。特に、湿度の高い環境や、汗、母乳の吐き戻しなどが原因で、体に余分な水分である「湿邪」が溜まりやすくなります。この湿邪が赤ちゃんの皮下に停滞し、熱を持つことで、髮際瘡が発症すると考えられています。 髮際瘡は、適切なケアを行えば、多くの場合自然に治癒していきます。しかし、症状がひどい場合や、なかなか治らない場合には、専門家の診察を受けることが大切です。
慢性疾患

東洋医学が診る肺痿:慢性咳嗽とその治療

- 肺痿とは -# 肺痿とは 肺痿は、東洋医学で使われる病名の一つで、長引く咳を主な症状とする肺の病気を指します。現代医学の慢性閉塞性肺疾患(COPD)や慢性気管支炎などと共通する部分も多いと考えられていますが、西洋医学の診断名と完全に一致するわけではありません。 肺痿の特徴は、単なる咳だけでなく、呼吸のたびにヒューヒュー、ゼーゼーといった音がする、少し動いただけで息が切れる、痰が絡むといった症状を伴うことです。これらの症状は、肺の働きが衰え、呼吸によって体の中に十分な酸素を取り込めなくなることで起こります。 東洋医学では、肺は呼吸をつかさどるだけでなく、体の中に気を取り込み、全身に巡らせる働きがあるとされています。この気の流れが滞ったり、不足したりすることで、肺痿は引き起こされると考えられています。 肺痿の原因は、体質や生活習慣、環境など、様々な要因が考えられます。例えば、生まれつき体が弱い、風邪をひきやすい、タバコを吸う、冷たい空気を吸いすぎる、辛いものや脂っこいものを食べ過ぎるなども、肺に負担をかけ、肺痿の原因となることがあります。 肺痿の治療は、肺の機能を高め、気の流れを改善することを目的として行われます。漢方薬の使用、鍼灸治療、食事療法、呼吸法など、様々な方法を組み合わせて、患者さんの状態に合わせていきます。
漢方の診察

半表半裏證とは?

- 半表半裏證の概要 半表半裏證とは、東洋医学において、風邪などの邪気が体の中に入り込もうとしている中途半端な状態を指します。 体の表面である「表」と、奥深い部分である「裏」の中間に邪気が留まっている状態を表す言葉です。 風邪の引き始めである「太陽病」では、寒さや風などの邪気が体の表面に留まり、悪寒、発熱、頭痛、筋肉痛などの症状が現れます。 しかし、邪気がさらに体内へと侵入しようとすると、半表半裏證の状態に移行します。 半表半裏證では、太陽病の症状に加えて、胸苦しさ、吐き気、食欲不振といった、体の奥が影響を受けた兆候も現れます。これは、邪気が体の「気」の流れを阻害し、胃腸などの消化器官の働きを弱らせているためと考えられています。 半表半裏證は、他の病証と複合して現れることが多く、複雑な症状を呈することが特徴です。そのため、自己判断で治療を行うことは避け、専門家の診断を受けることが重要です。適切な漢方薬の処方を受けることで、邪気を体外へ排出し、症状を改善することができます。
漢方の治療

漢方医学における破気:気鬱滞を解消する力強い治療法

- 気滞とは? 東洋医学では、目には見えないけれど、私たちが生きていくために必要なエネルギーが存在すると考えており、これを「気」と呼びます。この「気」は、体の中をくまなく巡り、様々な働きを助ける役割を担っています。 「気滞」とは、この「気」の流れが、まるで水路を水がスムーズに流れなくなるように、体内で滞ってしまう状態を指します。これは、過度な緊張や精神的な負担、不規則な生活習慣、食生活の乱れなど、様々な要因によって引き起こされます。 「気」は全身を巡りながら、心身の活動を支えているため、「気滞」が起こると、その影響は体の様々なところに現れます。 例えば、「気」の流れが滞ると、イライラしやすくなったり、気分が落ち込みやすくなったりと、精神的に不安定になりやすいと言われています。また、「気」は体の痛みとも密接に関わっており、「気滞」によって肩こりや頭痛、めまいなどが引き起こされることもあります。 さらに、「気」は消化吸収とも深く関わっているため、「気滞」になると、食欲不振や胃もたれ、便秘などを引き起こしやすくなるとも考えられています。 このように、「気滞」は一見、関係ないように思える様々な症状を引き起こす可能性があります。
漢方の診察

神秘のサイン?妊婦の脈に現れる「離経脈」とは

- 出産間近のサイン 東洋医学では、妊娠期間中はもちろんのこと、日々の健康状態を把握する上で、脈診は欠かせない診察方法です。特に、出産を控えた妊婦さんにとって、脈の変化は体の状態を知る上で重要な手がかりとなります。 東洋医学で脈診に用いる脈は、「気・血・水」といった生命エネルギーの巡りを反映していると考えられています。 これらのエネルギーは、妊娠・出産といった生命の大きな変化にも大きく関わっており、脈の変化として現れると考えられています。 数ある脈の中でも、「離経脈」と呼ばれる脈は、出産が近づいていることを示すサインとして古くから知られています。 「離経」とは、読んで字の如く経脈を離れることを意味し、滑らかで勢いのある脈を指します。これは、出産に備えて母体と胎児が独立していく状態を表していると考えられています。 東洋医学では、このように脈診を通して体の状態を総合的に判断し、妊娠期間中の体調管理や出産への備えに役立てます。
漢方薬

東洋医学における發表剤:その役割と効果

- 發表剤とは 「發表剤」とは、東洋医学において、風邪など体の表面に症状が現れる「表証(ひょうしょう)」を治療するために用いられる漢方薬の一種です。 東洋医学では、風邪などの病気の原因となる邪気が体に侵入した状態を表証と呼び、特に体の表面に近い部分に留まっている状態を指します。發表剤は、体の表面にある「表」と呼ばれる部分に侵入した邪気を、発汗作用によって体外に追い出すことを目的としています。 發表剤には、発汗を促す効果を持つ生姜や麻黄、桂枝、紫蘇などの生薬が配合されています。これらの生薬は、単に汗を出すだけでなく、体の防衛機能を高め、病気を追い出す力である「正気」を助ける働きもあります。そのため、發表剤は、悪寒、発熱、頭痛、鼻詰まり、咳など、風邪の初期症状に効果を発揮します。 發表剤は、症状や体質に合わせて、単独で処方されることもあれば、他の漢方薬と組み合わせて、より複雑な症状に対応することもあります。
漢方の診察

東洋医学における疾脈の意味

- 疾脈とは -# 疾脈とは 東洋医学の診察では、身体の表面に現れるわずかな変化から、内臓の状態や病気の兆候を読み取ることを重視します。その中でも、脈診は特に重要な診断方法の一つです。脈診は、患者さんの手首の動脈を指で触れることで、脈の速さ、リズム、強さ、滑らかさなどを観察し、健康状態を総合的に判断するものです。 脈には様々な種類があり、それぞれが体の状態を反映しています。その中で、「疾脈(しつみゃく)」は、心臓の鼓動が速く、息を一回吸って吐く間に脈が7回以上触れる状態を指します。健康な状態であれば、通常は息を一回する間に4~5回程度の脈拍が触れるため、疾脈は明らかに正常なリズムから逸脱し、異常に脈が速くなっている状態を示唆しています。 疾脈は、単独で現れることは少なく、他の症状と組み合わさって現れることが多いです。例えば、発熱を伴う感染症や、激しい運動の後、強いストレスを感じている時などに現ることがあります。また、甲状腺機能亢進症や貧血など、特定の病気が原因で現れることもあります。 東洋医学では、疾脈が現れた際には、その原因を詳しく探ることが重要だと考えます。そのため、患者さんの体質や生活習慣、症状などを総合的に判断し、適切な治療法を選択します。自己判断はせず、気になる症状がある場合は、専門知識を持った医師に相談するようにしましょう。
その他

東洋医学が考える鼻血の原因と対策

- 鼻血とは 鼻血とは、鼻の粘膜に存在する血管が傷つき、血液が流れ出る現象のことを指します。医学的には「鼻衄(びじゅく)」と呼ばれ、誰しも一度は経験する身近な症状と言えるでしょう。 鼻の内部、特にその入り口付近は、毛細血管が網目のように張り巡らされています。毛細血管は、体の隅々まで酸素や栄養を届ける役割を担っていますが、非常に細く、壁も薄いため、少しの刺激で傷ついてしまうことがあります。そのため、鼻は出血しやすい場所と言えます。 鼻血の原因は様々ですが、大きく分けて外的要因と内的要因の二つに分類できます。外的要因としては、乾燥した空気、鼻の炎症、くしゃみや鼻をほじるなどの物理的な刺激、異物の混入などが挙げられます。一方、内的要因としては、高血圧、動脈硬化などの血管の病気、血液の病気、ホルモンバランスの乱れなどが考えられます。 ほとんどの鼻血は、一時的なもので自然に止血しますが、中には underlying disease が隠れている場合もあるため、注意が必要です。特に、頻繁に鼻血が出る、鼻血の量が多い、なかなか止まらないといった場合には、医療機関への受診をお勧めします。
漢方の診察

東洋医学における奔豚氣とは

奔豚気は、東洋医学において古くから知られる病態の一つで、その名前は、まるで豚が勢いよく走り回るように、お腹の中で何かが激しく上下に動くような感覚を覚えることに由来します。 この感覚は、時に動悸や呼吸困難、不安感を伴うこともあり、患者にとっては非常に苦痛を伴うものです。 現代医学では、奔豚気そのものを特定の疾患として診断することはありません。しかし、その症状から自律神経の乱れや不安障害、あるいは逆流性食道炎などの病気が関係しているのではないかと考える専門家もいます。 奔豚気の治療には、東洋医学では心身のバランスを整えることを重視し、漢方薬の処方や鍼灸治療などが用いられます。 また、日常生活においても、規則正しい生活習慣を心がけ、ストレスを溜め込まないようにすることが大切です。 もし、豚が走り回るような独特な感覚に悩まされている場合は、自己判断せずに、早めに専門医に相談することをおすすめします。
漢方の診察

東洋医学における「奔豚」:その謎に迫る

- はじめに 私たちが普段慣れ親しんでいる医療とは異なる体系を持つ、東洋医学。その起源は古代中国に遡り、長い歴史の中で培われてきた知恵と経験に基づいています。西洋医学とは異なる視点から人間の身体と健康を捉え、病気の原因を探るだけでなく、心と身体、そして自然環境との調和を重視するのが特徴です。 今回は、東洋医学の世界で古くから知られる「奔豚」という状態について解説していきます。現代医学では説明の難しい症状や病態も、東洋医学の視点から見ると新たな理解が得られることがあります。「奔豚」を通して、東洋医学の奥深さを体感してみましょう。
漢方の診察

東洋医学における「散脈」:その特徴と意味

- 散脈とは 東洋医学では、身体の様々な部位の脈を診ることで、内臓の状態や気血の巡りなどを総合的に判断します。これを脈診といい、その歴史は古く、2000年以上も前から行われてきました。脈診では、脈の速さ、リズム、強さ、滑らかさなど、様々な要素を組み合わせて診断を行います。 散脈とは、このような脈診において重要な指標となる脈の一つです。健康な人の脈は、一定のリズムと強さで触れることができます。しかし、病気や体調不良があると、脈のリズムや強さが変化すると考えられています。この脈の変化を感じ取ることで、体内の状態を把握するのが脈診です。 散脈は、触れると脈がバラバラで、リズムが一定せず、強弱もまちまちに感じられます。まるで、数珠の粒が不揃いになっているような脈を指します。このような脈が現れる原因は、体内の「気」の乱れと考えられています。「気」は、生命エネルギーとも呼ばれ、東洋医学では、この「気」が滞りなく全身を巡っている状態が健康であるとされています。しかし、過労やストレス、暴飲暴食などによって「気」が乱れると、それが脈に現れ、散脈として触れられるようになると考えられています。 散脈は、必ずしも病気のサインではありませんが、放置しておくと、様々な不調につながる可能性があります。もし、普段と違う脈に気づいたら、早めに専門家に相談することをおすすめします。
漢方の診察

東洋医学が考える白濁:その原因と対策

- 白濁とは 東洋医学では、尿は体の状態を映し出す鏡と考えられています。健康な状態であれば、尿は透明で薄い黄色をしていますが、体のバランスが崩れると、色や濁り、臭いなどが変化します。その中でも、「白濁」は、体からの重要なサインとして注意深く観察されます。 東洋医学では、この白濁尿は、体の冷えや水分の代謝が滞っている状態、そして腎臓の働きが弱っていることを示唆すると考えられています。 冷えは、体の機能を低下させる大きな要因の一つです。特に、下半身の冷えは、腎臓の働きを弱め、尿を作り出す力や不要な水分を排出する力を低下させてしまいます。その結果、尿が白く濁ってしまうのです。 また、水分の摂り方が適切でない場合も、白濁尿が現れることがあります。現代人は、冷たい飲み物や甘い飲み物の摂りすぎによって、体の水分代謝機能が低下しやすくなっています。 水分代謝が滞ると、体内に余分な水分が溜まり、それが尿に混ざって白濁して見えることがあります。 さらに、腎臓は、体内の老廃物をろ過して尿として排出する重要な臓器ですが、その腎臓の働きが低下すると、老廃物がうまく排出されずに尿の中に混ざり、白濁尿の原因となることがあります。 白濁尿は、これらの要因によって引き起こされる可能性があります。自己判断はせず、気になる症状がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
漢方の診察

斜飛脈:東洋医学におけるその意味

- 斜飛脈とは -# 斜飛脈とは 斜飛脈とは、東洋医学の診察法の一つである脈診において、橈骨動脈が通常とは異なる位置を走行している状態を指します。 人の手首には、心臓から送り出された血液が流れる動脈が通っています。脈診では、この動脈の拍動を指で感じ取ることで、体の状態を診ます。特に、手首の親指側にある橈骨動脈は、脈診において重要な役割を担っています。 通常、橈骨動脈は手首の親指側に沿って走行しています。しかし、斜飛脈の場合、この橈骨動脈が手首の中央付近から斜めに走り、手の甲側へと向かいます。そのため、医師が患者さんの脈を診る際に、通常の位置とは異なる場所で拍動を感じることになります。 斜飛脈は、生まれつきの骨格や血管の走行の違いなど、解剖学的な個人差によって生じるものです。そのため、斜飛脈だからといって、健康上の問題があるわけではありません。 しかし、東洋医学では、脈診は体の状態を総合的に判断するために重要な診察方法の一つとされています。そのため、斜飛脈のように通常とは異なる脈が現れた場合には、他の診察結果と合わせて総合的に判断する必要があります。例えば、顔色、舌の状態、お腹の張り具合、患者さんの訴えなどを総合的に見て、その人の体質や病気の状態を判断します。 斜飛脈はあくまで脈診における一つの特徴であり、それ自体が病気のサインではありません。東洋医学では、体の状態を全体的に捉え、一人ひとりに合わせた治療法を見つけることが大切だと考えられています。
漢方の診察

解剖学的謎「反関脈」:東洋医学におけるその意義とは

- 珍しい橈骨動脈の走行 通常、手首の親指側で触れることができる脈拍は、橈骨動脈という血管によって拍動しています。この橈骨動脈は、心臓から送り出された血液を指先まで運ぶ役割を担っています。しかし、まれにこの橈骨動脈が通常とは異なる走行を示す場合があります。これを「反関脈」と呼びます。 反関脈の場合、橈骨動脈は手首の甲側、つまり手の背側を走行します。そのため、本来ならば手首の内側で触れることができる脈拍が、手の甲側で触れられることになります。これは、胎児期における血管の発達過程の変異によって生じると考えられており、約3%の人に見られる比較的珍しい現象です。 反関脈自体は無症状であることが多く、健康上の問題を引き起こすことはほとんどありません。しかし、動脈採血やカテーテル検査などの医療処置を行う際に、橈骨動脈の走行を正確に把握しておくことは非常に重要です。反関脈の場合、通常の位置に橈骨動脈を触知することができないため、医療従事者が誤って別の血管を穿刺してしまう可能性があります。 そのため、医療従事者は、脈拍を触診する際には、手首の内側だけでなく、甲側も確認することが重要です。また、患者自身も、自身の橈骨動脈の走行について知っておくことが大切です。もし、手首の甲側で脈拍が触れる場合には、医療機関を受診する際にその旨を伝えるようにしましょう。
その他

鍼灸治療と鍼劑:その役割と効果

- 鍼灸治療における鍼劑とは 鍼灸治療と聞くと、細い鍼やお灸を用いた施術を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし近年、鍼灸治療においても、注射を用いた「鍼劑」と呼ばれる治療法が注目を集めています。 鍼劑とは、主に漢方薬をベースとした薬剤を、筋肉やツボに直接注射する治療法です。鍼治療と同様、身体に自然治癒力を高めることを目的としていますが、鍼劑は薬剤の効果も期待できるため、より速やかに症状の改善を目指せる点が特徴です。 鍼劑に用いられる薬剤は様々ですが、代表的なものとして、筋肉の緊張を和らげる効果のある芍薬甘草湯や、炎症を抑える効果のある柴胡桂枝湯などが挙げられます。これらの薬剤は、西洋医学の薬と比較して、副作用が少ないという点もメリットとして挙げられます。 鍼劑は、肩こりや腰痛、神経痛といった慢性的な痛みに対して、特に効果を発揮すると言われています。また、冷え性や生理痛、自律神経の乱れといった症状にも効果が期待できます。 鍼灸治療と組み合わせることで、相乗効果も期待できます。例えば、鍼治療である程度症状を緩和させた後に、鍼劑を用いることで、さらに高い治療効果が得られる場合もあります。 鍼劑は、鍼灸院によっては取り扱っていない場合もあるため、事前に確認が必要です。また、薬剤に対するアレルギー反応が出る可能性もあるため、医師や鍼灸師としっかりと相談することが大切です。
漢方の診察

東洋医学: 寒邪が引き起こす膚脹とは?

- 膚脹とは -# 膚脹とは 膚脹とは、東洋医学において、体内に侵入した「寒邪」と呼ばれる冷えの原因となる外敵要素によって引き起こされる、むくみの一種です。このむくみは、体の表面に近い部分、特に皮膚と筋肉の間に水が溜まることで生じます。 東洋医学では、この寒邪が体の気血の循環を阻害することで、水が正常に代謝されずに停滞し、膚脹が起こると考えられています。具体的には、寒邪の影響を受けやすい下半身や、冷えやすい体質の人に多く見られます。 症状としては、皮膚の表面に光沢を帯びたむくみが現れ、指で押すとへこみが戻りにくいのが特徴です。 また、冷えを感じたり、体が重だるく感じたりすることもあります。 西洋医学の考え方とは異なり、膚脹は単なる水分の過剰摂取や腎臓機能の低下によって起こるむくみとは区別されます。 東洋医学では、膚脹の治療には、体を温めて気血の循環を促進することが重要と考えられています。具体的には、体を温める効果のある食材を摂取したり、鍼灸やマッサージなどの施術を受けたりすることで、症状の改善を図ります。
漢方薬

散剤:その特徴と用途

- 散剤とは 散剤は、生薬や薬の有効成分を細かく砕き、粉末状にしたものを指します。まるで砂糖や塩のようにサラサラとしたものもあれば、小麦粉のようにしっとりとしているものまで、その形状は実に様々です。 服用しやすいように、散剤を小さく丸めて顆粒状に加工したものもあります。これは、粉末状のままよりも飲み込みやすく、また、薬の量を調整しやすいという利点があります。 散剤は、錠剤やカプセル剤と比べて、体内に吸収されやすく、効果が早く現れやすいという特徴があります。そのため、即効性が求められる場合や、錠剤やカプセル剤を飲み込むのが困難な乳幼児や高齢者に用いられることが多いです。 一方で、散剤は、薬の味がダイレクトに感じられるため、苦味や渋みがある場合は、服用が難しいと感じる方もいるかもしれません。また、湿気やすく、品質が変化しやすいという側面も持ち合わせています。そのため、保管には注意が必要です。 近年では、錠剤やカプセル剤の開発が進み、散剤の需要は減少傾向にあります。しかし、散剤は、他の剤形にはない特性を持つ、古くから利用されてきた大切な剤形の一つです。
漢方薬

漢方の戦略:八陣とその深淵

- 処方の分類 漢方医学では、病気の状態や体質に合わせて、様々な生薬を組み合わせた「漢方薬」が用いられます。この漢方薬の処方をいくつかの種類に分けて整理したものを「処方の分類」といいます。 漢方薬の処方の分類には、いくつかの方法がありますが、その中でも代表的なものが「八陣」という考え方です。「八陣」は、漢方薬の処方を大きく8つのグループに分類したもので、それぞれのグループは、異なる戦略に基づいて病態に対処することを意味しています。 例えば、「汗を出す」「吐かせる」「下す」「気を巡らす」「温める」「冷やす」「補う」「瀉す」といった具合です。それぞれのグループは、体内の水分や気、血の巡りを調整したり、体の冷えや熱を改善したり、不足しているものを補ったり、過剰なものを取り除いたりすることで、体のバランスを整え、病気を治すと考えられています。 それぞれの陣の特徴を理解することで、どのような考え方で漢方薬が処方されているのか、その奥深さを知ることができます。そして、漢方治療に対する理解を深めることができるでしょう。
漢方薬

漢方薬における「反佐」:その役割と効果

{漢方薬の世界において重要な概念の一つに「反佐」というものがあります。これは、主となる薬効を持つ「君薬」の効果を調整したり、副作用を軽減したりするために用いられる補助的な薬のことを指します。 例えば、熱を冷ます効果を持つ生薬が「君薬」として用いられる場合、その冷やす作用が強すぎると、体に悪影響を及ぼす可能性があります。 そこで、温める作用を持つ生薬を「反佐」として少量加えることで、君薬の行き過ぎた作用を緩和し、バランスを整えるのです。 このように、反佐は君薬の効果を補助し、より穏やかで、体全体の調和を目指した治療を実現するために欠かせないものです。 漢方薬の処方には、このような生薬同士の組み合わせによる相乗効果や副作用の抑制など、長い歴史の中で培われた知恵が詰まっているのです。
内臓

食後に感じる不快感、その正体は?:逆流性食道炎

- 逆流性食道炎とは -# 逆流性食道炎とは 逆流性食道炎は、本来であれば胃に留まっているべき食べ物が胃酸と一緒に食道に逆流してしまうことで、胸やけや、食べたものが口に戻ってくるような不快な感覚などを引き起こす病気です。 私たちの体では、食べ物は食道を通って胃へと送られます。通常、胃と食道の境目には筋肉があり、胃の内容物が逆流するのを防いでいます。しかし、この筋肉が弱まったり、胃の圧力が高まったりすると、胃酸を含む胃の内容物が食道に逆流してしまうことがあります。これが繰り返し起こることで、食道の粘膜に炎症や傷が生じてしまい、逆流性食道炎を引き起こします。 逆流性食道炎になると、胸やけや、酸っぱい液体が口まで上がってくる感覚の他に、胸の痛み、咳、声が出にくくなるなどの症状が現れることもあります。また、食生活の欧米化やストレスの増加などが原因で、近年、患者数が増加傾向にあると言われています。
漢方の診察

東洋医学における「半表半裏」:複雑な体の状態を読み解く

- 半表半裏とは 東洋医学では、人の健康状態は単純に「健康」と「病気」の二つに分かれるのではなく、「表」と「裏」、そしてその中間の「半表半裏」という段階的な捉え方をします。 体の表面に近い状態を「表」、内側深くまで病気が侵入した状態を「裏」と表現します。風邪の初期症状のように、寒気や発熱、咳、鼻水といった症状が体に現れている状態は、「表」の状態と言えます。これは、病邪が体に侵入しようとしている段階であり、まだ体の奥深くまでは入り込んでいません。 一方、「裏」の状態は、病邪が体の奥深くまで侵入し、臓腑にまで影響を及ぼしている状態です。例えば、肺炎や腎盂腎炎などは、病邪が体の奥深くまで侵入している状態と言えるでしょう。 そして、「半表半裏」とは、まさにその名の通り、「表」と「裏」の中間地点を示す言葉です。風邪の初期症状が長引き、体の表面にとどまっていた病邪が、体の内部へと侵入し始めている状態を指します。具体的には、発熱や悪寒、頭痛、体の痛み、だるさといった症状に加え、咳や痰、食欲不振、吐き気、胃の不快感などがみられることがあります。 東洋医学では、この「半表半裏」の状態を適切に判断し、体の状態に合わせて治療を行うことが重要だと考えられています。
漢方の診察

東洋医学が考える「腹満」とは

- 腹満とは -# 腹満とは 腹満とは、お腹に張りや膨満感を感じる状態を指します。一見しただけでは変化が分からず、触っても明らかな異常が見られないにもかかわらず、本人が fullness や tightness と表現するような不快感を覚えるのが特徴です。 この不快感は、食後など特定のタイミングで強くなる場合もあれば、一日を通して常に感じられる場合もあります。また、便秘やげっぷ、食欲不振などを伴うことも少なくありません。 現代医学では、腹満は機能性ディスペプシアなどの消化器疾患や、過敏性腸症候群 (IBS)といった病気と関連付けられることがあります。これらの病気では、消化管の運動や分泌機能に異常が生じることで、腹満以外にも様々な症状が現れることがあります。 腹満の原因は多岐にわたり、ストレスや生活習慣の乱れなどが影響することもあります。そのため、腹満の原因を特定し、適切な治療や対策を行うためには、医師による診察や検査が必要となる場合があります。