「あ」

その他

足背の感染症:足發背とは?

- 足發背とは -# 足發背とは 足發背は、足の甲に急激に生じる、膿がたまる細菌感染症です。 小さな傷や擦り傷など、皮膚のわずかな損傷から細菌が侵入し、皮膚の下で増殖することで炎症を引き起こします。 主な症状としては、患部の赤み、腫れ、熱、痛みが挙げられます。その他、足の甲が熱く感じたり、歩くと痛みが増したりすることもあります。 足の甲は、皮膚の下の組織が薄く、血管やリンパ管が網目のように張り巡らされているため、体の中でも特に感染が広がりやすい部位です。そのため、足發背は早期に適切な治療を行わないと、蜂窩織炎やリンパ管炎といった、重症化する可能性のある合併症を引き起こすことがあります。重症化すると、足の広範囲に炎症が広がったり、リンパ節が腫れたり、発熱や倦怠感などの全身症状が現れることもあります。 足發背は、適切な治療を行えば多くの場合、完治する病気です。 少しでも足に異常を感じたら、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
頭痛

東洋医学における「頭風」の理解

- 「頭風」とは何か 「頭風(とうふう)」という言葉をご存知でしょうか? これは、西洋医学でいう「頭痛」とは一線を画す、東洋医学独特の概念です。 端的に言えば、慢性的に繰り返す頭痛を指しますが、その解釈は西洋医学よりもはるかに広範にわたります。 東洋医学では、単に頭が痛いというだけでなく、まるで風に吹かれているかのような感覚や、立ちくらみ、顔の筋肉が麻痺するような感覚、頭皮のかゆみなど、多岐にわたる症状を伴う場合があるのです。 これらの症状は、東洋医学では「風」の邪気によって引き起こされると考えられています。 「風」は、目に見えない気の流れのようなもので、これが体内に侵入すると、様々な不調を引き起こすとされています。 頭部に侵入した場合は「頭風」となり、先述のような症状が現れると考えられています。 西洋医学では、頭痛の原因は様々であり、ストレスや肩こり、気圧の変化などが挙げられます。 一方、東洋医学では、「頭風」の原因は、体内の気のバランスが崩れることだと考えられています。 ストレスや不眠、過労、冷えなどが引き金となり、気が乱れることで「頭風」が生じるとされています。
その他

東洋医学が考える汗病:その原因と対処法

- 汗病とは 汗をかくことは、体温を一定に保ったり、体に不要なものを外に出したりと、健康を保つためにとても大切な体の働きです。しかし、汗の量が多すぎてしまうと、日常生活に困ったり、気持ちまで落ち込んでしまうことがあります。東洋医学では、このような状態を「汗病」と呼びます。汗病は、体の内側のバランスが崩れていることが原因だと考えられています。 例えば、普段から疲れていると感じていたり、食欲がなかったり、眠りが浅いといった場合は、体が弱っているサインかもしれません。このような状態のときに、暑さや緊張、辛いものを食べたといった刺激が加わると、体が過剰に反応して大量の汗が出てしまうことがあります。 また、東洋医学では、体の中に「気」「血」「水」という3つの要素があり、これらがバランスよく巡っていることで健康が保たれると考えられています。汗は「水」の一部と考えられており、「気」が不足したり、「水」の巡りが悪くなったりすると、汗の調節がうまくいかなくなり、汗が出すぎたり、逆に汗が出なくなったりすることがあります。 汗病を改善するには、体の内側からバランスを整えていくことが大切です。規則正しい生活習慣を心がけ、十分な睡眠と栄養を摂るようにしましょう。また、自分に合った方法でストレスを解消することも大切です。
その他

汗證:東洋医学における異常発汗

- 汗證とは -汗證とは- 汗證とは、東洋医学において、汗の異常を指す言葉です。 西洋医学では、汗は体温調節の生理現象として捉えられ、病気として扱われることは稀です。しかし東洋医学では、汗は「心の液」とも呼ばれ、その量や状態は、体の状態を反映していると考えられています。 例えば、健康な状態であれば、気温の上昇や運動などによって適度に汗をかき、体温を調節します。一方で、病気の場合には、汗のかき方に異常が現れます。 具体的には、汗の量が多すぎる、少なすぎる、あるいは特定の時間帯や部位にのみ汗をかくといった症状が見られます。また、汗の色や臭いが変化することもあります。これらの症状は、東洋医学では「自汗」「盗汗」「黄汗」「戦汗」など、様々な名称で呼ばれ、それぞれ異なる原因と治療法が考えられています。 東洋医学では、汗の異常を通して、体の陰陽のバランスの乱れや、気・血・水の巡りの滞りを把握し、治療に役立てます。
漢方の診察

東洋医学における「按診」:体からのメッセージに触れる

東洋医学では、患者さんからお話を伺う「問診」と同じくらい、体に直接触れて診察する「按診」を大切にしています。これは、視覚や聴覚ではなく、触覚を通して体の内側の状態を直接感じ取ることができるからです。西洋医学の診察でも体に触れて調べることはありますが、東洋医学の按診は、患部だけでなく、全身の状態を把握するために、より広い範囲を、そして繊細な感覚で行います。 例えば、患者さんの手首の少し上の部分には「脈診」と呼ばれる、体の状態を反映する重要な場所があります。東洋医学の医師は、この部分に指を当てることで、単に脈の速さや強さを診るだけでなく、脈の深さ、リズム、滑らかさなど、様々な情報を読み取ります。これらの情報は、患者さん自身の感覚では気づかない体の不調や、病気の兆候をいち早く発見する手がかりとなります。 また、お腹や背中などを触診することで、内臓の硬さや張り、冷えや熱の偏りなどを確認します。これらの情報は、患者さんの体質や、病気の原因を探る上で重要な手がかりとなります。このように、東洋医学における触診は、患者さんの体と対話する、非常に繊細で奥深い診察法と言えるでしょう。
漢方の診察

東洋医学における麻促脈:その意味と重要性

- 麻促脈とは 麻促脈は、東洋医学における脈診において、重要な意味を持つ脈象の一つです。脈診とは、動脈の拍動を触れることで、その状態から体の状態や病気を判断する伝統的な診断法です。古代中国で体系化され、現代においてもその有効性が認められています。 麻促脈は、「麻」と「促」という二つの特徴を併せ持つ脈を指します。「麻」は、脈の流れている感触が粗く、ざらざらとしている状態を指します。これは、糸へんに麻と書くことからも、麻の糸の感触をイメージすると分かりやすいでしょう。一方、「促」は、脈の速さを表し、普段よりも速く打っている状態を指します。 この二つの特徴が組み合わさる麻促脈は、一般的に体の防衛機能が過剰に働いている状態を示唆するとされています。例えば、風邪の初期症状や、強いストレスを感じている時、激しい運動の後などに現れやすい脈です。また、疼痛を伴う場合も多く、病状の変化を注意深く観察する必要があるとされています。 しかし、麻促脈が現れたからといって、必ずしも重篤な病気を示すわけではありません。東洋医学では、脈診はあくまでも診断の一つの要素に過ぎず、他の症状や体質などを総合的に判断することが重要とされています。
漢方の診察

東洋医学における溢飲:過剰な水の滞り

- 溢飲とは -# 溢飲とは 溢飲とは、東洋医学の考え方において、体内の水分のバランスが崩れ、過剰な水が体内に溜まってしまう病態を指します。 この状態は、体内の水路と呼ばれる経路に滞りが生じ、正常な水の流れが阻害されることで引き起こされると考えられています。 溢飲の特徴は、単に体内の水分量が増えるだけでなく、その水分の質にも変化が現れる点にあります。本来、体内の水は、栄養を体の隅々まで届けたり、不要な老廃物を体外へ排出したりと、重要な役割を担っています。しかし、溢飲の状態になると、この水が濁ってしまい、本来の働きを十分に果たせなくなってしまうのです。 この濁った水は、体内に留まり続けることで、様々な不調を引き起こすと考えられています。 例えば、むくみや尿量の減少、体の重だるさ、冷え、消化不良、めまい、息切れなどが挙げられます。さらに症状が進むと、呼吸困難や意識障害といった深刻な状態に陥る可能性もあるため、注意が必要です。 溢飲は、その原因や症状、体質によって分類され、それぞれに適した治療法が選択されます。
漢方の診察

東洋医学で見る膏淋:その原因と治療法

- 膏淋とは何か 膏淋とは、東洋医学において、排尿時に痛みを伴い、見た目がお米のとぎ汁のように白く濁った尿が出る状態を指す言葉です。西洋医学では、このような症状が現れた場合、尿路感染症や膀胱炎といった泌尿器系の病気を疑うことが一般的です。 しかし、東洋医学では、身体は単なる器官の集合体ではなく、気・血・水といった要素が複雑に絡み合い、常に変化し続けるひとつの有機的なシステムだと捉えます。そして、病気は、このシステム内のバランスが崩れた状態だと考えます。 膏淋もまた、身体の内部環境の乱れが表面化したものと考えます。東洋医学では、「湿熱」や「腎虚」といった体の状態が膏淋の発生と深く関わっているとされています。 例えば、「湿熱」とは、体内に余分な水分(湿)と熱がこもった状態を指し、これが下半身に影響すると、排尿時の痛みや濁った尿といった膏淋の症状を引き起こすと考えられています。一方、「腎虚」は、生命エネルギーの源である「腎」の働きが弱まっている状態を指し、これもまた、水分の代謝異常を引き起こし、膏淋の一因となると考えられています。 このように、東洋医学では、単に症状を抑えるのではなく、膏淋を引き起こした根本的な原因を探り、身体全体のバランスを整えることを治療の目的とします。
漢方の治療

東洋医学の知恵!膏薬の効果と使い方

- 膏薬とは 膏薬は、布や紙などの基材に、有効成分を含んだ薬剤を塗り広げ、皮膚に直接貼って使う外用薬です。その歴史は古く、紀元前から様々な形で用いられてきました。湿布と混同されがちですが、湿布は主に冷やしたり温めたりすることで症状を和らげることを目的としているのに対し、膏薬は有効成分を皮膚から浸透させ、筋肉や関節の痛みや炎症を抑えることを目的としています。 膏薬には、生薬を原料としたものや、化学的に合成された成分を配合したものなど、様々な種類があります。それぞれに特徴があり、痛みの種類や程度、体質などに合わせて使い分けることが大切です。例えば、温感タイプの膏薬は、血行を促進して筋肉の緊張を和らげる効果があり、冷感タイプのものは、炎症を抑え、腫れや熱感を鎮める効果があります。 膏薬は、患部に直接貼ることで、有効成分が効果的に作用するというメリットがあります。また、内服薬のように胃腸に負担をかけたり、全身に作用して副作用が出たりするリスクも比較的低いとされています。ただし、皮膚が弱い人やアレルギー体質の人は、かぶれなどの症状が出る場合もあるため、注意が必要です。使用前に、必ず添付文書をよく読み、用法・用量を守って正しく使用してください。また、症状が改善しない場合は、自己判断で使い続けずに、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
漢方薬

膏剤:漢方の知恵が凝縮された外用薬

- 膏剤とは? 膏剤とは、古くから伝わる漢方薬の剤形で、皮膚に直接塗って用いる外用薬です。漢方薬では、煎じて飲む内服薬だけでなく、身体の外側から効果を期待できる外用薬も広く使われてきました。その中でも膏剤は、有効成分を含んだ薬草を長時間かけて煮詰め、エキスを抽出して作られます。このエキスをさらに煮詰めていき、一定の濃度になるまで凝縮させます。そして、肌への刺激を和らげ、塗りやすくするために、蜜蝋や豚脂などの動物性油脂やゴマ油などの植物油を加えて練り合わせます。このようにして作られる膏剤は、軟膏やクリーム、絆創膏など、様々な形状のものがあり、症状や患部に合わせて使い分けられます。 膏剤は、皮膚から有効成分が浸透し、患部に直接作用することで効果を発揮すると考えられています。また、患部を保護したり、炎症を抑えたりする効果も期待できます。そのため、湿疹や皮膚炎、神経痛、筋肉痛、関節痛など、幅広い症状に用いられています。
漢方の診察

東洋医学における「麻木」:感覚の異変を読み解く

- 麻木とは -# 麻木とは 麻木とは、皮膚の感覚が鈍くなり、外部からの刺激を正常に感じ取ることができない状態を指します。 これは、触れた感覚、温度感覚、痛み感覚など、様々な感覚に影響を及ぼす可能性があります。 例えば、冷たい氷を握っても温度が分からなかったり、熱い湯呑に触れても熱さを感じなかったりすることがあります。 また、針で軽く刺しても痛みを感じないなど、感覚が完全に失われてしまう場合もあります。 麻木は、まるで皮膚の表面を虫が這うようなピリピリとした感覚や、皮膚の一部または全体が締め付けられるような感覚を伴うことがあります。 このような感覚は、一過性のこともあれば、慢性的に続くこともあります。 日常生活では、手足の痺れとして経験することが多く、特に指先に症状が現れやすいです。 軽度の麻木の場合、日常生活に支障がないこともありますが、重症化すると、箸が使えなくなったり、ボタンを留めるのが困難になったりと、日常生活に支障をきたすこともあります。 麻木は、神経の圧迫や血行不良、糖尿病などの病気によって引き起こされることがあります。 また、冷え性や疲労、ストレスなども麻木の原因となることがあります。 麻木が続く場合は、放置せずに医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けるようにしましょう。
漢方の診察

東洋医学が考える「噫気」:その原因と改善策

- 「噫気」とは何か 「噫気(げき)」とは、東洋医学において用いられる言葉で、胃の中から空気やガスが、音とともに上がってくる状態を指します。西洋医学では「噯気(おくび)」と呼ばれるものとほぼ同じ現象を指します。 私たちは、食事をしたり話をしたりする日常の動作の中で、知らず知らずのうちに微量の空気を飲み込んでいます。胃の中に溜まった空気は、通常は特に意識することなく、口から自然と排出されます。しかし、様々な原因で胃の中に空気が溜まりすぎたり、排出の仕方が乱れたりすると、過剰な空気やガスが、音や時には臭いを伴って口から出てしまうことがあります。この状態を、東洋医学では「噫気」と診断します。 「噫気」は、必ずしも病気のサインというわけではありません。健康な人でも、炭酸飲料を飲んだ後や早食いをした後などに、一時的に「噫気」が起こることがあります。しかし、頻繁に「噫気」が起こる場合や、「噫気」とともに腹部の張りや痛み、吐き気などの症状が現れる場合には、胃腸の不調や病気の可能性も考えられます。その場合は、自己判断せずに、医療機関を受診し、適切な診察を受けるようにしましょう。
頭痛

東洋医学が考える『めまい』の原因と治療法

- めまいとは -# めまいとは 東洋医学では、めまいは単なる症状ではなく、体内の調和が乱れたしるさと捉えます。視界がぐるぐる回ったり、体がふらつく感覚は、まさに体の均衡が失われている状態を表しています。西洋医学では、メニエール病や良性発作性頭位めまい症などが主な原因として挙げられますが、東洋医学では、その背景にある体質や生活習慣、心の乱れまでを総合的に判断します。 めまいは、主に「気」「血」「水」のバランスの乱れから生じると考えられています。「気」は生命エネルギー、「血」は血液とその循環、「水」は体液を指します。過労やストレス、睡眠不足などは「気」を消耗させ、めまいやふらつきを引き起こすことがあります。また、貧血や冷え性は「血」の巡りが悪くなっている状態であり、めまいの原因となることがあります。さらに、水分の代謝異常は「水」の偏りを生じ、めまいや頭痛を伴うことがあります。 東洋医学では、めまいの治療として、鍼灸治療や漢方薬を用いて、体のバランスを整えていきます。鍼灸治療は、経穴と呼ばれる体の特定のポイントに鍼や灸を施すことで、気の流れを調整し、体の不調を改善します。漢方薬は、患者の体質や症状に合わせて、生薬を組み合わせて処方されます。めまいの原因となる「気」「血」「水」のバランスを整え、根本的な改善を目指します。 めまいを予防するためには、規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、「気」「血」「水」のバランスを整えることが大切です。また、ストレスを溜め込まないように、自分に合ったリフレッシュ方法を見つけることも重要です。
漢方の治療

東洋医学における汗法:その役割と効果

東洋医学では、人間は自然の一部であり、その自然と調和しながら生きていくことが健康の要諦だと考えられています。自然の摂理に逆らわず、常にバランスを保つことが大切とされ、この調和のとれた状態を「中庸」と呼びます。 しかし、過労やストレス、不摂生、気候の変化などによってこのバランスが崩れると、身体に様々な不調が現れ、これが病気だと考えられています。 東洋医学の治療では、病気の原因を取り除き、自然治癒力を高めることを重視します。そのための方法の一つとして、古くから「汗法」と呼ばれる治療法が用いられてきました。 「汗法」とは、文字通り、身体から汗をかくことで邪気を体外へ排出させ、身体の中に溜まった毒素や老廃物を発散させることで、気・血・水の巡りを改善し、自然治癒力を高めることを目的とした治療法です。 この治療法は、単に汗をかくことだけが目的なのではなく、身体のバランスを整え、健康な状態へと導くための手段として、古代から東洋医学の中で重要な役割を担ってきました。
その他

夏の暑さと健康:暑風について

- 暑風とは 暑風とは、夏の強い日差しや高い気温によって引き起こされる、健康への深刻な影響を指します。 高温多湿な環境下に長時間いることで、私たちの体は体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもってしまいます。 この状態が続くと、様々な症状が現れ始めます。 初期症状としては、めまいや立ちくらみ、頭痛、倦怠感、吐き気などが挙げられます。 また、大量の汗をかいて脱水症状を起こし、意識が朦朧としたり、痙攣を起こしたりすることもあります。 特に、乳幼児や高齢者は体温調節機能が未発達あるいは低下しているため、暑風にかかりやすく、重症化するリスクも高いため注意が必要です。 暑風を防ぐためには、こまめな水分補給、適切な冷房の使用、通気性の良い服装を心がけ、直射日光を避けるなど、暑さ対策を万全に行うことが大切です。 また、バランスの取れた食事や十分な睡眠をとり、体力を維持することも重要です。 万が一、暑風と思われる症状が出た場合は、涼しい場所に移動し、安静にして水分を補給しましょう。 症状が改善しない場合は、速やかに医療機関を受診してください。
漢方薬

漢方薬の「合方」:相乗効果で効能アップ

- 漢方薬における合方とは? 漢方薬の世界では、単一の生薬ではなく、複数の生薬を組み合わせた「方剤」が治療の基本となります。方剤は、まるで何種類ものスパイスやハーブを調合して作られた、奥深い味わいのスープのようなものです。そして、この方剤の中でも、2種類以上の異なる方剤をさらに組み合わせることを「合方」といいます。 合方は、いわば漢方薬の処方箋を患者さん一人ひとりに合わせて仕立てる、オーダーメイド治療のようなものです。一人として同じ人間がいないように、体質や症状も千差万別です。そのため、ある患者さんには効果的な方剤でも、別の方には少し効果が強すぎたり、弱すぎたりする場合があります。このような場合に、漢方の専門家は長年の経験と知識を駆使して、複数の漢方薬を組み合わせることで、患者さんの状態にぴったり合った、より効果的な治療を目指します。 例えば、風邪の症状一つをとっても、寒気を感じやすかったり、喉の痛みが強かったりと、人によって現れ方は様々です。そこで、合方によって、それぞれの症状に適した漢方薬を組み合わせることで、より的確に、そして効果的に体の不調を整えていくことができるのです。 このように、合方は漢方薬の治療効果を高め、患者さん一人ひとりの状態に合わせたきめ細やかな治療を実現するために欠かせない、重要な手法と言えるでしょう。
その他

東洋医学における「悪気」:その理解と影響

- 悪気とは何か 東洋医学では、健康を保つためには「気」というエネルギーが体の中を滞りなく巡ることが重要だと考えられています。この「気」の流れを悪くしたり、体に悪い影響を与えるものを「邪気」と呼びますが、「悪気」はこの「邪気」の中でも特に強い力を持ったものだと考えられています。「邪気」には、寒さや暑さなどの自然現象が原因となるものや、ウィルスや細菌などの目に見えるものが原因となるものなど、様々なものが考えられます。しかし、「悪気」はこれらの「邪気」とは少し異なり、人の憎しみや嫉妬、怒りといったネガティブな感情から生み出される、目に見えない邪気のことを指します。 「悪気」は、人の心の奥底に渦巻くネガティブな感情が形となったものだと考えられています。そのため、他の「邪気」と比べて強力な力を持っており、人の体に様々な悪影響を及ぼすとされています。例えば、原因不明の体調不良や、慢性的な疲労感、やる気の低下などは、「悪気」の影響を受けている可能性があります。また、「悪気」は、人の心の弱った部分に入り込みやすく、精神的なストレスや不安感を増大させるとも言われています。 東洋医学では、心と体は密接に繋がっているとされており、「悪気」の影響は、体の不調だけでなく、心の不調にも現れると考えられています。
漢方薬

東洋医学における相須:薬効を高める組み合わせ

- 相須とは -# 相須とは 相須とは、漢方医学の治療において、複数の生薬を組み合わせる際に用いる重要な考え方の一つです。 これは、似たような薬効を持つ二つの生薬を組み合わせることで、それぞれの薬効を単独で用いるよりも高め、より効果的に病気の症状を改善することを目指すものです。 例えば、身体を温める作用を持つ生薬Aと、同じく身体を温める作用を持つ生薬Bを組み合わせたとします。 単独で用いるよりも、組み合わせることで温める作用が強まり、冷え症の改善などに効果を発揮します。 この相乗効果は、自然界の植物や鉱物などから作られる生薬の特性を活かし、互いの力を高め合うことで、身体全体のバランスを整え、自然治癒力を引き出すという漢方医学の考え方に基づいています。 相須は、単に薬効を高めるだけでなく、副作用を軽減する効果も期待できます。 例えば、生薬Aが身体を温める効果がある一方で、胃腸に負担をかける副作用があるとします。生薬Bも同様の効果と副作用を持つ場合、単独で使用すると胃腸への負担が大きくなってしまいます。しかし、相須の関係にある生薬Cを組み合わせることで、胃腸への負担を軽減しながら、身体を温める効果を得ることが期待できます。 このように、相須は、長年の経験と観察に基づいた漢方医学の知恵であり、自然の力を最大限に活かして、心身の健康を目指すための大切な考え方と言えるでしょう。
その他

子供の発疹と東洋医学:麻毒の正体とは?

春の穏やかな日差しの中、公園には子供たちの元気な声が響き渡ります。しかし、この季節は、冬の間に体内に溜まった邪気を発散しようと、様々な病気が流行しやすくなる時期でもあります。特に、「麻疹」は、その強い感染力から、子供たちの間で流行しやすい病気の一つとして知られています。 東洋医学では、麻疹は「麻毒」と呼ばれる、目に見えない毒素が体内に侵入することで発症すると考えられています。この「麻毒」は、空気感染によって伝染し、子供の免疫力が弱まっている時に、特に侵入しやすくなります。 「麻毒」が体内に侵入すると、発熱や咳、鼻水といった風邪に似た症状が現れます。さらに、赤い発疹が顔から体全体に広がり、強い痒みを伴うこともあります。東洋医学では、これらの症状は、「麻毒」と体が戦っている証と考えられています。そして、この戦いを乗り越えることで、子供は免疫力を高め、健やかに成長していくと考えられています。
漢方の診察

夏の湿気にご用心!:暑湿とは?

梅雨の時期から夏にかけて、気温と湿度が高い日が続きますね。この時期は、ただでさえ体がだるく感じやすいのに、むくみや食欲不振、下痢などの不調を感じやすくなる方も多いのではないでしょうか。 東洋医学では、夏特有のこの不調の原因は、暑さと湿気が組み合わさった「暑湿(しょしつ)」にあると考えられています。 暑湿は、体の中に余分な水分と熱を溜め込み、気の流れを滞らせます。その結果、消化機能の低下や水分の代謝不良を引き起こし、食欲不振やむくみ、だるさといった症状が現れるのです。 また、暑湿は、体に必要な「気」の消耗も招きます。だるさや倦怠感、やる気が出ないといった症状も、この「気」の不足が原因と考えられています。 夏の暑さや湿気は避けられませんが、生活習慣を見直すことで、暑湿による不調を予防することができます。食事では、水分代謝を促す食材や胃腸の働きを整える食材を積極的に摂り入れましょう。また、適度な運動や睡眠を心がけ、体の「気」を補うことも大切です。
漢方の診察

夏の養生:暑さに負けない体づくり

- 暑気とは? 夏の焼け付くような暑さは、ただ暑いだけでなく、私たちの体にとって様々な不調を引き起こす原因となりえます。東洋医学では、これを「暑気」と呼び、季節の変わり目に注意すべき邪気の一つとして捉えています。 暑気は、夏の高温多湿な環境が原因で、体にこもった熱がうまく発散されずに生じます。この熱は、体の水分やエネルギーを奪い、様々な不調を引き起こすと考えられています。 具体的には、倦怠感、食欲不振、喉の渇き、めまい、熱中症などが挙げられます。また、暑気はイライラしやすくなったり、集中力が低下したりといった精神的な影響を与えることもあります。 東洋医学では、暑気から体を守るためには、涼しい環境を保つ、十分な水分補給を行う、体を冷やす食材を積極的に摂るといった対策が重要とされています。また、睡眠をしっかりとることで、暑さで消耗した体力を回復することも大切です。
ツボ

歩くと痛い足の裏!その原因は足跟痛?

- 足の裏の痛み 私たちは普段、歩くという動作を何気なく行っていますが、この時、足の裏にかかる負担は想像以上に大きいものです。そして、その負担が積み重なることで、ある日突然、足の裏に痛みが走るようになることがあります。 この痛み、もしかしたら「足根骨痛」かもしれません。足根骨痛とは、かかとの骨とその周辺組織に痛みが生じる疾患です。朝起きた時や、長く座った後など、足の筋肉が緊張している状態から動き出す際に痛みが強くなるのが特徴です。 足の裏の痛みは、日常生活に支障をきたすだけでなく、放置すると歩行困難に繋がってしまうこともあります。そのため、痛みの原因を早期に突き止め、適切な対処をすることが大切です。
漢方の診察

夏の危険な症状:暑閉気機証とは

- 暑さによる体の異変 夏の暑さが厳しさを増すと、私たちの体は様々な影響を受けます。普段は健康な人でも、暑さによって体調を崩してしまうことがあります。気温の高い日が続いたり、湿度が高い日が続くと、体は暑さに対応しようと様々な反応を起こします。 例えば、体温を下げようと汗をかきますが、その汗が十分に蒸発しないと、体温調節がうまくいかず、体内に熱がこもってしまいます。すると、めまいや立ちくらみが起こりやすくなったり、体がだるく感じたりすることがあります。また、食欲がなくなったり、眠りが浅くなったりすることもあります。このような症状は、熱中症の初期症状である可能性もあるため、注意が必要です。 このような暑さによる体の不調を予防するためには、こまめな水分補給が重要です。喉が渇く前に、こまめに水を飲むように心がけましょう。また、適切な休息も大切です。疲れているときは、無理をせずに体を休ませるようにしましょう。さらに、栄養バランスの取れた食事を心がけ、暑さで失われやすいビタミンやミネラルを積極的に摂取することも大切です。 暑さは、私たちが思っている以上に体に負担をかけています。暑さ対策を万全に行い、健康に夏を乗り切りましょう。
漢方の診察

夏の暑さが招く体調不良:暑傷津気證とは?

夏の暑さは、私たちにとって心地よい反面、体に負担をかけるものでもあります。東洋医学では、自然環境と人間の健康は密接に関係していると考えられており、夏の暑さが原因で体調を崩すことも少なくありません。 今回は、夏の暑さで生じる体調不良の一つである「暑傷津気證」について解説していきます。 「暑傷津気證」とは、夏の厳しい暑さによって体内の水分やエネルギーが失われ、様々な不調が現れる状態を指します。人の体は、暑さを感じると汗をかいて体温を調節しようとします。しかし、度重なる暑さや、湿度が高い状態が続くと、汗として水分やエネルギーが過剰に失われてしまいます。その結果、倦怠感や食欲不振、めまい、頭痛、吐き気などの症状が現れます。 東洋医学では、こうした症状は、体内の水分やエネルギーが不足し、バランスが崩れた状態だと考えます。そのため、「暑傷津気證」の予防や改善には、失われた水分やエネルギーを補い、体のバランスを整えることが大切です。具体的には、こまめな水分補給や、消化に良い食事を心がけ、十分な睡眠をとるようにしましょう。また、涼しい場所で過ごす、服装を工夫するなど、暑さを避ける工夫も大切です。