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東洋医学における「濡脈」:その特徴と意味

- 濡脈とは 東洋医学では、身体の表面を流れる「気」の流れを診て、健康状態を把握します。その中でも、脈診は「気」の流れを把握する上で特に重要な診断方法の一つです。脈診とは、手首にある橈骨動脈に指を当て、脈の速さや強さ、深さ、リズムなどを診ることで、身体の中の状態を判断する伝統的な診断方法です。数百年にわたり、多くの医師たちが経験と知識を積み重ねてきたことで、脈診は現代でも活用されています。 脈診では、様々な種類の脈が確認できます。その中でも「濡脈」は、水に浮かぶ木の葉のように軽く、指で触れるか触れないかのうちに去っていく脈のことを指します。まるで、水面をなでるように、軽くフワフワとした感触が特徴です。このような脈が現れる場合は、身体の中の「気」が不足している状態、いわゆる「気虚」の状態であると考えられています。 「気虚」の状態は、疲れやすい、食欲不振、息切れ、顔色が悪いといった症状が現れやすくなります。さらに、「気」は私たちの身体を守る「衛気」を生み出す源でもあるため、「気虚」が続くと風邪を引きやすくなったり、病気にかかりやすくなる可能性があります。 濡脈は、私たちの身体が弱っていることを知らせるサインです。もし、ご自身の脈が濡脈だと感じたら、無理をせずにゆっくりと休養し、身体を温めるように心がけましょう。そして、専門家である東洋医学の医師に相談してみるのも良いでしょう。
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東洋医学における布指:脈診の精度を高める技術

- 布指とは 東洋医学、特に中医学において、患者の体の状態を把握するために脈を診ることを脈診と言います。脈診は、単に脈の速さを見るだけでなく、脈の強さ、リズム、深さなど、様々な要素から総合的に判断する、非常に繊細な診察方法です。そして、この脈診を行う上で非常に重要なのが、-「布指」-と呼ばれる指の置き方です。 -# 布指の重要性 布指は、ただ漫然と指を置くのではなく、-指一本一本に役割があり、それぞれ異なる位置に、異なる強さで置く-必要があります。正しい布指を行うことで、初めて患者の微 subtle な脈の変化を感じ取ることができ、正確な診断に繋がるのです。 -# 布指の方法 一般的に、布指は利き手を使い、人差し指、中指、薬指の三本を用います。まず、患者の手首の親指側にある橈骨動脈に軽く指を当てます。この時、-人差し指は手首の付け根近くに、薬指は人差し指から指二本分程度離れた位置に置き、中指はその後ろに添えるように-します。 -# 布指から読み取れる情報 各指が置かれた場所によって、得られる情報は異なります。人差し指の位置では「寸」といい、主に心臓や肺などの状態を、中指の位置では「関」といい、主に肝臓や胆嚢などの状態を、薬指の位置では「尺」といい、主に腎臓や膀胱などの状態を診ます。それぞれの脈の強さ、速さ、リズム、滑らかさなどを総合的に判断することで、患者の体質や病気の状態を把握します。 このように、布指は単なる指の置き方ではなく、-患者の体の状態を正確に読み解くための、脈診の基礎となる重要な技術-と言えるでしょう。
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東洋医学における濡泄:原因と症状

- 濡泄とは 東洋医学では、健康を保つために体内の水分バランスが非常に重要であると考えられています。このバランスが崩れ、体に余分な水分が溜まってしまう状態を「湿」と呼びます。この「湿」が悪さをして起こる下痢の一つに、「濡泄(じゅえつ)」があります。 濡泄は、体内に溜まった過剰な「湿」によって、消化吸収を司る「脾」の働きが弱まってしまうことが原因で起こります。脾は、食べ物から栄養を吸収し、体に必要なエネルギーに変換する重要な役割を担っています。しかし、脾が湿邪の影響を受けてしまうと、その機能が低下し、水分代謝がうまくいかなくなってしまいます。 その結果、消化不良を起こしたり、体に必要な水分をうまく吸収できなくなったりします。そして、余分な水分が腸に溜まり続け、水のような便が続くようになります。これが濡泄の主な症状です。 濡泄は、まるで雑巾を絞ったように、だらだらと水のような便が出るのが特徴です。また、お腹が張ったり、冷えを感じたり、体が重だるく感じることもあります。このような症状が見られる場合は、濡泄の可能性がありますので、早めに専門家にご相談ください。