「こ」

漢方の診察

東洋医学における心痿:心の病が体に及ぼす影響

- 心と体のつながり -# 心と体のつながり 東洋医学では、心と体は切り離せないものと考えられています。西洋医学では、心と体は別々のものとして扱われることが多いですが、東洋医学では、両者は密接に関係し合い、互いに影響を与え合っているという考え方があります。 感情の変化や精神的なストレスは、体の状態に直接影響を与えると考えられています。例えば、怒りやイライラといった感情は、気の流れを乱し、頭痛や肩こり、めまいなどを引き起こすとされています。また、不安や緊張といった感情は、胃腸の働きを弱め、食欲不振や消化不良の原因となると考えられています。 逆に、体の不調が心の状態に影響を与えることもあります。例えば、慢性的な痛みや不眠症は、精神的なストレスを生み出し、うつ病などの精神疾患のリスクを高める可能性があります。 東洋医学では、心身のバランスを保つことが健康にとって重要であると考えられています。バランスの取れた食事や適度な運動、質の高い睡眠などを心がけることはもちろんのこと、ストレスをうまく解消し、心を穏やかに保つことも大切です。 鍼灸や漢方薬などの東洋医学的な治療法は、心と体の両面に働きかけることで、様々な症状の改善を目指します。
その他

東洋医学における剛痙:熱と寒の間

- 剛痙とは -# 剛痙とは 剛痙とは、東洋医学の観点からみた、熱を伴う痙攣の一種です。痙攣は一般的に筋肉の収縮によって起こりますが、剛痙は高熱に伴って現れる点が特徴です。急激な体温上昇によって一時的に脳の働きが乱れることで、全身の筋肉が固まり、突っ張ったような状態に陥ります。西洋医学では、主に乳幼児期に多く見られる熱性痙攣として認識されています。一方、東洋医学では、体質やその時の体調、周囲の環境など、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。 例えば、体質として「熱証」と呼ばれる、体内に熱がこもりやすい人は、剛痙を起こしやすいと考えられています。また、暴飲暴食や睡眠不足、過労などで体のバランスが崩れている時や、季節の変わり目で気温の変化が激しい時なども、発症のリスクが高まります。 東洋医学では、剛痙は一時的な症状として捉え、発症の原因を取り除くことで、自然と治癒に向かうと考えられています。しかし、症状が重い場合や、繰り返す場合は、専門家の診察を受けることが大切です。
漢方の治療

東洋医学における降気の概念

- 降気とは -# 降気とは 東洋医学では、目には見えない「気」というエネルギーが体の中を循環することで、健康が保たれると考えられています。この気の流れが、何らかの原因で乱れてしまうことがあります。その中でも、肺の気と胃の気が本来下降すべきところを、逆に上昇してしまう状態を「気逆」と呼びます。「降気」とは、この気逆の状態を改善し、肺と胃の気を本来あるべき下降方向へ導き、正常な状態に戻すことを意味します。 私たちの体の中では、気は絶えず循環しており、それぞれ特定の方向へ流れることで健康が保たれています。呼吸によって肺に取り込まれた清気は、全身へと送られるために下降していきます。一方、飲食物から作られる胃の気は、栄養を全身に送るために下降し、消化を助ける働きをしています。このように、肺と胃の気はどちらも下降するのが自然な状態です。しかし、ストレスや過労、暴飲暴食、冷えなど、様々な要因によってこの流れが逆行してしまうことがあります。これが「気逆」と呼ばれる状態で、咳、喘息、しゃっくり、嘔吐といった症状として現れます。 降気を促すためには、生活習慣の見直しや、漢方薬、鍼灸、マッサージなどの東洋医学的な治療法が用いられます。これらの治療法を通じて、気の流れを整え、肺と胃の気を下降させることで、健康な状態を取り戻すことを目指します。
漢方の治療

東洋医学における降逆下気:肺と胃の気の逆流を整える

- 降逆下気とは -# 降逆下気とは 降逆下気とは、東洋医学において重要な治療法の一つです。その名の通り、「逆らう気を降ろし、気を下す」という意味を持ちます。私たちの体には、「気」と呼ばれる生命エネルギーが流れていると考えられており、この気は常に一定方向に流れることで健康が保たれています。しかし、過労やストレス、暴飲暴食など、様々な要因によってこの流れが乱れることがあります。気が正常な方向とは逆に上昇してしまうことを「気逆」と呼び、吐き気やげっぷ、咳、動悸、めまいなど、様々な不調を引き起こすとされています。 降逆下気は、まさにこの乱れた気の流れを正常な状態に戻すためのアプローチです。主に、肺や胃の気が上昇してしまうことで起こる症状を改善する目的で行われます。具体的には、漢方薬の服用や鍼灸治療、ツボ押し、食養生など、様々な方法が用いられます。 現代社会はストレスが多く、生活習慣も乱れがちです。そのため、知らず知らずのうちに体に負担をかけてしまい、気逆の状態に陥っている人も少なくありません。降逆下気は、このような現代人にとって非常に重要な養生法と言えるでしょう。
漢方の治療

東洋医学で探る咳嗽と呼吸困難の治療法

- 肺気の逆流と咳嗽、呼吸困難の関係 東洋医学では、咳や息苦しさといった呼吸器の症状は、肺自体だけの問題ではなく、体の全体の気の巡りの不調と密接に関係していると考えられています。特に、肺の働きである呼吸と深く関わる「肺気」の流れが逆流してしまう「肺気の逆流」は、様々な呼吸器症状を引き起こす原因の一つと考えられています。 通常、肺気は体の上に向かってスムーズに流れ、呼吸を助ける役割を担っています。これは、空気を吸い込むと同時に、体にとって必要な「気」も取り込み、全身に巡らせているからです。しかし、この肺気が何らかの原因で逆流してしまうと、咳が出たり、呼吸が苦しくなったりといった症状が現れると考えられています。 肺気の逆流を引き起こす原因は様々ですが、東洋医学では、風邪や冷えなどの外的な要因、ストレスや疲労、暴飲暴食といった内的な要因などが考えられています。これらの要因によって体のバランスが崩れ、肺気の正常な流れが阻害されることで、逆流が起こるとされています。 肺気の逆流は、咳や呼吸困難だけでなく、痰や喘鳴、声がれなどの症状を引き起こすこともあります。また、長期間にわたって肺気の逆流が続くと、呼吸器の機能が低下し、喘息などの慢性的な呼吸器疾患に発展する可能性もあると考えられています。 東洋医学では、肺気の逆流に対して、体のバランスを整え、肺気の正常な流れを回復させることを目的とした治療が行われます。具体的には、漢方薬の処方、鍼灸治療、食事療法、呼吸法などが挙げられます。
漢方の治療

東洋医学における降気化痰:呼吸器症状へのアプローチ

- 気滞と痰の関係 東洋医学では、生命エネルギーである「気」は、健やかな状態では体の中をスムーズに巡っています。しかし、ストレスや感情の抑圧、不規則な生活、冷えなどが原因で、この「気」の流れが滞ってしまうことがあります。この状態を「気滞(きたい)」と呼びます。 気滞は、体の様々な機能に影響を及ぼしますが、特に水分代謝と密接な関係があります。 「気」には、体内の水分を適切な場所に運んだり、不要な水分を排泄したりする働きがあると考えられています。ところが、気滞が起こると、この水分の循環が滞り、体の中に余分な水分が溜まりやすくなってしまいます。 東洋医学では、この余分な水分が、体内で「痰(たん)」を生成すると考えられています。痰は、呼吸器系に影響を与えることが多く、咳や痰の増加、息苦しさといった症状を引き起こします。また、痰は呼吸器系だけでなく、消化器系や循環器系など、体の様々な場所に影響を及ぼし、様々な不調の原因となると考えられています。 つまり、気滞によって水分の代謝が乱れることが、痰を生み出し、様々な不調を引き起こす原因の一つと考えられているのです。
内臓

心腎不交:東洋医学の視点

- 心腎不交とは -# 心腎不交とは 東洋医学では、人体は単なる物質ではなく、目に見えない「気」や「血」といった生命エネルギーが循環することで成り立っていると考えます。そして、心臓と腎臓はこのエネルギー循環において特に重要な役割を担っています。 心臓は「君主」に例えられ、全身に血を巡らせ、精神活動を司る役割を担います。いわば、人体を統治する皇帝のような存在と言えるでしょう。一方、腎臓は「先天の気」を貯蔵し、成長、発育、生殖機能を支える役割を担います。これは、生命エネルギーの根源を蓄え、人体の土台を築く役割と言えます。 このように重要な役割を担う心臓と腎臓ですが、東洋医学ではこの二つの臓器は単独で機能するのではなく、互いに密接に関連し合っていると考えます。心臓の熱は腎臓の冷やす力で調整され、腎臓の潤いは心臓の熱を鎮めることで、バランスを保っているのです。 しかし、過労やストレス、老化など様々な要因によって、この心臓と腎臓の協調関係が乱れることがあります。この状態を東洋医学では「心腎不交」と呼びます。心腎不交の状態になると、気や血の流れが滞り、身体と精神のバランスが崩れ、様々な不調が現れると考えられています。
内臓

心胃火燔:その原因と症状

{心胃火燔とは、東洋医学で使われる言葉で、心と胃に熱がこもってしまった状態を表します。まるで心に火が灯り、胃が焼けるように感じることから、このように呼ばれています。 この熱は、激しい怒りや焦り、悩みといった精神的なストレスや、辛い物や脂っこい物、甘い物の食べ過ぎ、暴飲暴食といった食生活の乱れによって生じると考えられています。 心胃火燔になると、イライラしやすくなったり、怒りっぽくなったり、集中力の低下や不眠といった症状が現れます。また、胃の不調として、口内炎、胸焼け、胃痛、便秘なども見られます。 現代社会はストレスが多く、食生活も乱れがちです。そのため、心胃火燔は決して他人事ではありません。日頃からストレスを溜め込まないよう、また、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
虚弱体質

心陰過耗:知っておきたいその原因と症状

- 心陰過耗とは? -# 心陰過耗とは? 東洋医学では、人間の身体は「陰陽」という相反する要素のバランスで成り立っているとされています。「陰」は体に必要な物質やエネルギーを指し、「陽」はその活動性を表します。そして、心臓は休むことなく全身に血液を送り出すという重要な役割を担っており、この活動を支えているのが「心陰」と呼ばれるエネルギーです。 心陰は、心臓が正常に働くために欠かせない潤滑油のようなもので、精神活動にも深く関わっています。しかし、過度なストレスや疲労、睡眠不足、栄養の偏りなどが続くと、この心陰が消耗し、心陰過耗の状態に陥ってしまいます。 心陰過耗になると、心臓は十分な働きができなくなり、動悸や息切れ、不眠、不安感、焦燥感といった症状が現れます。また、顔色が悪くなったり、手足が冷えたり、口や喉が渇くといった症状が現れることもあります。 心陰過耗は、そのまま放置すると、心臓の働きをさらに低下させ、深刻な病気を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
体質

心陽不足:その原因と症状

- 心陽不足とは -# 心陽不足とは 東洋医学において、心臓は単に血液を循環させる臓器ではなく、精神活動や意識、思考などにも深く関わっていると考えられています。この心臓の働きを支えているのが「陽気」と呼ばれる生命エネルギーです。特に心臓の陽気を「心陽」と呼び、心陽が不足した状態を「心陽不足」と言います。 心陽は、全身に血を巡らせ、温める役割を担っています。また、精神活動を活発にし、意識を明瞭に保つ働きもしています。この心陽が不足すると、様々な不調が現れます。 例えば、冷えやすい、疲れやすい、顔色が悪い、動悸がする、息切れしやすいなどの身体的な症状が現れることがあります。また、精神的には、不安感が強い、 депрессияになりやすい、不眠になる、物忘れがひどくなるなどの症状が現れることもあります。 心陽不足の原因は、過労、ストレス、睡眠不足、冷え、不適切な食事など、現代社会では多くの人が心陽を消耗しやすい状況に置かれています。心陽不足を改善するためには、これらの原因を取り除き、心陽を補う生活習慣を心がけることが大切です。
体質

知っておきたい! 心陰不足:その原因と症状

- 心臓を支える陰の力不足、それが心陰不足 -# 心陰不足とは 東洋医学では、人の体は「陰」と「陽」という相反する二つの力で成り立ち、この二つのバランスが保たれることで健康が維持されると考えられています。 心臓は体を活発に動かすための「陽」の臓器ですが、その力強い働きを陰ながら支えているのが「心陰」と呼ばれるものです。 心陰は、心臓に栄養を与え、潤いを与え、スムーズな活動を手助けする大切な役割を担っています。しかし、様々な原因でこの心陰が不足してしまうことがあります。これが「心陰不足」と呼ばれる状態です。 心陰が不足すると、心臓はまるで乾き切った大地のように潤いを失い、その働きは弱まってしまいます。すると、動悸や息切れ、不眠、不安感など、様々な不調が現れるようになります。 心陰不足は、過労や睡眠不足、ストレス、栄養不足、加齢など、様々な要因によって引き起こされます。忙しい現代社会において、心陰不足は決して珍しいものではありません。 東洋医学では、心陰不足の状態を改善するために、食事療法、漢方薬、鍼灸治療など、様々な方法を用います。日頃から心身のバランスを整え、心陰を補う生活を心がけることが大切です。
その他

心氣不固:動悸や不安の根源を探る

- 心氣不固とは -# 心氣不固とは 東洋医学では、人間の精神活動や身体活動はすべて「氣」という生命エネルギーによって動かされていると考えられています。この「氣」は、心肺機能と深く関わる「心」にも存在し、「心氣」と呼ばれます。「心氣」は、精神活動や意識、思考、睡眠などを司る重要な役割を担っています。 しかし、過度なストレスや不眠、疲労、精神的なショックなどが原因で、この「心氣」が不足したり、流れが滞ったりすることがあります。その結果、「心氣」は不安定な状態に陥ってしまいます。 この状態を東洋医学では「心氣不固」と呼びます。「心氣不固」になると、心が落ち着かず、不安や焦燥感、不眠、動悸、息切れ、物忘れしやすくなるといった症状が現れます。 現代社会は、ストレスや不眠、過労といった問題を抱えやすい環境であり、「心氣」が乱れやすく、「心氣不固」の状態に陥りやすいと言えるでしょう。そのため、日頃から「心氣」を養い、精神的な安定を保つことが大切です。
体質

心神不安定な状態:心氣不收とは?

- 心氣不收とは -# 心氣不收とは 東洋医学では、心臓は単なる血液を循環させる臓器ではなく、精神活動や意識、思考など、人間らしさを司る重要な役割を担うと考えられています。そして、この心の働きを支えているのが「心氣」と呼ばれる目に見えないエネルギーです。心氣が充実している状態とは、心が安定し、思考が明晰で、感情も穏やかに保たれている状態を指します。 しかし、様々な要因によってこの心氣が乱れてしまうことがあります。過労やストレス、不眠、栄養の偏り、激しい感情の起伏などがその要因として挙げられます。心氣が乱れると、心身のバランスが崩れ、様々な不調が現れます。その状態の一つが「心氣不收」です。 心氣不收とは、心氣が体の中心に留まらず、落ち着きなく過剰に活動したり、上に昇ったりする状態を指します。まるで落ち着きがなく、心がフワフワと漂っているような状態です。その結果、動悸や不眠、不安感、焦燥感、物忘れ、注意力散漫といった症状が現れやすくなります。また、夢をたくさん見てしまったり、寝つきが悪くなったりするのも、心氣不收の特徴的な症状です。 心氣不收は、心の働きが不安定になっているサインと言えるでしょう。日頃から心身のバランスを意識し、心氣を養うことが大切です。
不眠

東洋医学が捉える「心氣不寧」:その原因と治療法

- 心身のバランスを崩す「心氣不寧」とは 現代社会は、ストレスや不規則な生活、過剰な情報などにより、多くの人が心身に負担を抱えています。 そんな中、東洋医学で使われる「心氣不寧」という言葉をご存知でしょうか。 心氣不寧とは、強い不安感や動悸、ちょっとしたことにも驚きやすい、常に心が落ち着かない状態を指します。これは西洋医学でいう特定の病気とは異なり、東洋医学特有の考え方である「心」と「体」のバランスが崩れた状態を指し示しています。 具体的には、「何となく落ち着かない」「イライラしやすい」「ぐっすり眠れない」「食欲がない」といった症状が現れます。 これらの症状に心当たりがある方は、もしかしたら心氣不寧の初期症状かもしれません。自覚症状がない場合でも、知らず知らずのうちに心身に負担を抱えている可能性もあります。 心氣不寧は、放置すると自律神経の乱れを引き起こし、さらに深刻な症状に繋がってしまうこともあります。自身の心身のサインを見逃さず、早めに対処することが大切です。
虚弱体質

心氣不足:その原因と症状、改善策とは

- 心氣不足とは -# 心氣不足とは 東洋医学では、心臓は単なる血液を送り出すポンプとしての役割だけでなく、精神活動や意識にも深く関わっていると捉えています。そして、心臓の働きを支え、全身に活力を与えているのが「心氣」です。心氣は、血液を循環させる原動力となり、精神活動や意識を安定させるなど、私たちの心身に大きな影響を与えています。 しかし、様々な要因によってこの心氣が不足してしまうことがあります。これが「心氣不足」と呼ばれる状態です。 心氣不足になると、心臓の働きが弱まり、全身への血液循環が悪くなります。その結果、動悸や息切れ、疲れやすさ、顔色が悪くなるなどの症状が現れます。また、精神活動にも影響が出やすいため、不安感や不眠、集中力の低下、物忘れなどを引き起こすこともあります。 心氣不足は、過労や睡眠不足、ストレス、偏った食生活など、現代社会に溢れる様々な要因によって引き起こされます。心身のバランスを崩しやすい現代人にとって、心氣不足は決して他人事ではありません。
漢方の治療

心腎不交を癒やす:交通心腎の知恵

- 心と腎の密接な関係 東洋医学では、人体は独立した臓腑がそれぞれ独自の役割を担いながらも、互いに影響し合い、全体として一つの調和のとれた状態を保っていると考えます。この複雑な関係性の中で、特に重要な繋がりを持つのが「心」と「腎」です。 心は、精神活動や意識、思考をつかさどる臓腑であり、感情の動きにも深く関わっています。一方、腎は生命エネルギーの根源である「精」を貯蔵し、成長、発育、生殖機能などを司ります。一見すると異なる役割を担っているように思える心と腎ですが、東洋医学ではこの二つは密接に関係し合い、互いに影響を与え合っていると考えられています。 心が活発に働くためには、腎が蓄える「精」の力が必要です。腎の「精」は、心へ栄養を送り届けることで、精神を安定させ、思考力を高め、意識を明瞭に保つ働きを助けます。逆に、過度なストレスや緊張、不眠などが続くと、心の働きが乱れ、腎の「精」を消耗してしまうことになります。すると、疲れやすくなったり、気力が低下したり、老化現象が早まったりと、様々な不調が現れてきます。 また、腎が「精」をしっかりと蓄えるためには、心の安定が欠かせません。心が穏やかで満たされている状態は、腎の働きを助け、「精」の生成を促します。反対に、不安や恐怖、悲しみなどのネガティブな感情を抱き続けると、心の働きが弱まり、腎にも悪影響を及ぼします。その結果、生殖機能の低下や成長の遅延、老化の促進などを招く可能性があります。 このように、心と腎は互いに滋養し合い、影響を与え合うことで、私たちの生命活動全体を支えています。東洋医学では、心身の健康を保つためには、この心と腎のバランスを調和させることが重要であると考えられています。
体質

東洋医学における『心氣盛』とは?

- 心氣盛の概要 東洋医学では、心臓は身体中に血液を送る働き以外にも、精神活動や意識、思考など、目には見えない心の働きにも大きく関与していると考えられています。この心の働きを支えているのが『心氣』です。心氣は、例えるならば心が活動するためのエネルギーのようなもので、心氣が充実していれば心は安定し、精神活動も活発に行われます。 しかし、様々な要因によってこの心氣が過剰に強くなってしまうことがあります。これが『心氣盛』と呼ばれる状態です。心氣盛は、心のバランスが崩れ、本来あるべき状態から逸脱していることを意味します。心氣が過剰になると、落ち着きがなくなり、怒りっぽくなったり、不眠に悩まされたりすることがあります。また、動悸やのぼせ、めまいなどを引き起こすこともあり、放置すると心身に様々な不調が現れると考えられています。 心氣盛は、体質や生活習慣、環境などが複雑に絡み合って起こると考えられています。東洋医学では、心身のバランスを整え、心氣の流れをスムーズにすることで、心氣盛の症状改善を目指します。
内臓

東洋医学における鼓脹:その特徴と意味

- 鼓脹とは 鼓脹(こちょう)とは、東洋医学において、お腹が太鼓のように張り詰めた状態を指す言葉です。現代医学でいう腹水とは異なり、単なるお腹の膨満感ではなく、まるで太鼓を叩いた時のような弾力と緊張を伴う点が特徴です。 東洋医学では、この鼓脹は、体内の水分の流れが滞り、余分な水が腹部に溜まることで起こると考えられています。この水の流れを滞らせる原因は様々で、食事の不摂生や過労、冷え、ストレス、老化などが挙げられます。 鼓脹は、その原因や症状によっていくつかの種類に分けられます。例えば、みぞおちのあたりが張っていて、食欲不振や吐き気を伴う場合、消化機能の低下が原因として考えられます。また、お腹全体が張っていて、特に夕方になると症状が強くなる場合は、体の水分代謝機能の低下が疑われます。 鼓脹は、放置すると呼吸困難や食欲不振、全身の倦怠感など、様々な症状を引き起こす可能性があります。そのため、気になる症状がある場合は、自己判断せずに、早めに専門医に相談することが大切です。
漢方の診察

夜明けの警告:五更泄と腎の関係

- 五更泄とは? 五更泄とは、毎朝決まった時間、特に夜明け前に起こる下痢を指します。この時間帯は、東洋医学では「五更」と呼ばれ、ちょうど太陽の気が上昇し始める時間帯にあたります。 健康な状態であれば、この時間に自然と目が覚め、尿を排出することで滞りなく一日が始まります。しかし、五更泄の場合、この時間に腹部の痛みを伴う下痢が起こり、日常生活に支障をきたすこともあります。 東洋医学では、五更泄は体の冷えや脾胃の機能低下が原因で起こると考えられています。冷えによって消化器官の働きが弱まり、未消化の食べ物や水分が腸に溜まってしまうことで、夜明け前に下痢が起こりやすくなると考えられています。また、ストレスや不規則な生活習慣なども、五更泄の悪化要因となることがあります。
漢方の治療

東洋医学における降火:熱を鎮める知恵

- 熱邪と降火 東洋医学では、病気は、体内のバランスが崩れることで起こると考えられています。このバランスを崩す要因の一つに「邪」があり、その中でも特に、体に熱をもたらすものを「熱邪」と呼びます。 熱邪は、まるで炎のように体内にこもった熱と表現され、発熱以外にも、顔が赤くなる、皮膚に赤い発疹が出る、目が充血する、口が渇く、喉が痛い、尿の色が濃くなる、便秘になるなど、様々な症状を引き起こすとされています。これらの症状は、熱邪が体のどこに影響を及ぼしているかによって異なり、風邪や炎症性疾患、精神的な興奮状態など、様々な病態に関係すると考えられています。 このような熱邪に対抗し、体のバランスを整える方法の一つが「降火」です。降火は、その名の通り、体内の過剰な熱を冷ますことを意味します。具体的には、食事療法や漢方薬、鍼灸治療などによって、体の熱を取り除き、炎症を鎮め、体の機能を正常に戻すことを目指します。 降火によって体のバランスが整うと、自然治癒力が高まり、健康な状態へと導かれます。東洋医学では、病気になってから治療するのではなく、日頃から体のバランスを整え、病気を予防することが大切だと考えられています。
漢方の診察

東洋医学における『小腹不仁』とは

- 小腹不仁の概要 「小腹不仁」とは、東洋医学において、下腹部周辺に現れる、一般的な言葉では表現しきれない、曖昧で複雑な不快感を指す言葉です。西洋医学の検査では異常が見つからない場合でも、患者さん自身が、冷え、張り、重苦しさ、痛みやしびれ、感覚の鈍りといった、様々な感覚を訴えることがあります。 このような違和感は、常に感じられる場合もあれば、冷えや疲労、精神的な緊張など、特定の状況下で悪化することもあります。例えば、寒い季節になると症状が強くなったり、仕事で疲れている時や、ストレスを感じている時に、より強く自覚されることがあります。 小腹不仁は、東洋医学では、「気」や「血」の流れの滞り、「水」の偏りなどが原因だと考えられています。そのため、症状や体質に合わせて、これらのバランスを整える治療が行われます。鍼灸治療や漢方薬の処方などを通して、身体全体の調和を取り戻すことを目指します。
漢方の診察

東洋医学における心下痞:その特徴と理解

- 心下痞とは -# 心下痞とは 心下痞(しんかひ)は、東洋医学において、みぞおち周辺に感じる、様々な不快感や違和感のことを指します。みぞおちはちょうど胸骨の下あたりに位置し、西洋医学でいう「心窩部」と呼ばれる場所に相当します。このみぞおちの奥に、何かが詰まっているような、つかえているような、あるいは押さえつけられるような、重苦しい感覚を覚えます。しかし、実際に手で触れてみても、明確な腫れや痛みは感じられないことが特徴です。 現代医学の診断基準に照らし合わせると、心下痞に完全に一致する病名は存在しません。強いて言えば、機能性ディスペプシア(FD)と呼ばれる、検査では異常が見つからないにも関わらず、胃の痛みやもたれ、膨満感などの症状が続く病気と、症状が重なる部分が多いと考えられています。 心下痞は、ストレスや不規則な生活、冷えなどによって、体のエネルギーや水分をスムーズに巡らせる働きである「気」の循環が滞ってしまうことが原因で起こると考えられています。その結果、胃腸の働きが低下し、みぞおち周辺に不快な症状が現れると考えられています。
漢方の診察

東洋医学で紐解く「小腹硬滿」

- 小腹硬滿とは 小腹硬滿とは、東洋医学特有の概念で、西洋医学の病名とは直接結びつきません。簡単に言えば、おへそから恥骨あたりにかけて感じる、一種独特な不快感を伴う、張ったような感覚を指します。この感覚は、単なる食べ過ぎや便秘によるお腹の張りとは異なり、慢性的に続いたり、他の症状を伴う場合もあります。 西洋医学では、この「お腹の張り」は、主に胃腸の運動や消化吸収機能の低下、ガス貯留などが原因として考えられています。しかし、小腹硬滿は、このような消化器系の問題だけでなく、精神的なストレスや自律神経の乱れ、冷え、血行不良なども深く関わっていると考えられています。 東洋医学では、身体全体のバランスを重視します。そのため、小腹硬滿は、単なるお腹の症状として捉えるのではなく、身体全体の不調のサインと捉え、その原因を探ることが重要になります。 例えば、ストレスや不安、緊張などにより、気の流れが滞ることで小腹硬滿が起こると考えられています。また、冷えによって血行が悪くなることや、水分代謝が悪くなることも原因の一つと考えられています。 小腹硬滿は、症状が軽い場合は、あまり深刻に考えない方もいるかもしれません。しかし、慢性化すると、食欲不振や消化不良、便秘、下痢、めまい、動悸、息切れ、不眠、イライラなどの症状を引き起こす可能性もあります。そのため、自己判断せず、気になる症状がある場合は、専門医に相談することをお勧めします。
漢方の診察

東洋医学における「小腹満」:その原因と対処法

- 小腹満とは何か 「小腹満」とは、東洋医学で使われる用語の一つで、みぞおちの少し下あたり、いわゆる下腹部に感じる、張ったような、または詰まったような不快な感覚を指します。現代医学の腹部膨満感とは異なる概念であり、西洋医学で明確に対応する病名はありません。あくまで患者自身の感覚的な表現に基づいて診断される症状で、お腹が膨れているように見える、または実際に膨れている場合もあれば、そうでない場合もあります。 小腹満は、東洋医学では、主に「気」の巡りが滞ることによって起こると考えられています。「気」とは、生命エネルギーのようなもので、全身をくまなく巡り、心身の活動を支えています。しかし、過労やストレス、冷え、暴飲暴食などによって、この「気」の巡りが悪くなると、様々な不調が現れると考えられています。 小腹満も、この「気」の滞りによって起こる症状の一つです。特に、ストレスや不安、緊張などによって、胃腸の働きが低下し、「気」がスムーズに流れなくなることで、下腹部に不快な張りや詰まりを感じると考えられています。 また、小腹満は、便秘や月経不順、冷え性などを伴う場合もあります。これらの症状も、「気」の巡りの悪さが関係していると考えられています。 東洋医学では、小腹満の治療として、「気」の巡りを改善するために、漢方薬の処方や鍼灸治療などが行われます。また、日常生活では、ストレスを溜めないようにリラックスする、体を冷やさないように温かい服装をする、バランスの取れた食事を心がける、適度な運動をするなど、「気」の巡りを良くする生活習慣を心がけることが大切です。