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漢方の診察

東洋医学における牢脈:その特徴と意味

- 牢脈とは 東洋医学において、患者さんの状態を把握するために欠かせない診断方法の一つに脈診があります。これは、身体の様々な部位に現れる脈の状態を診ることで、内臓の働きや気血水の巡りなどを総合的に判断するものです。脈には実に様々な種類があり、それぞれが異なる状態を示唆しています。その中でも、「牢脈」は比較的分かりやすい脈の一つと言えるでしょう。 牢脈は、まるで丈夫な縄を触っているかのように硬く張った脈のことを指します。健康な状態であれば、脈はしなやかで適度な弾力を持っているため、牢脈のように硬く張っていることは稀です。つまり、牢脈は健康な状態ではあまり見られない脈であり、特定の病状を示唆している可能性があると言えるのです。 一般的に、牢脈は寒邪、つまり身体を冷やす病因が体内に侵入し、経絡の気血の運行を阻害している状態を示唆すると考えられています。寒邪によって血管が収縮することで、脈が硬く感じられるようになると考えられています。また、瘀血、すなわち血液の循環が悪くなっている状態も、牢脈が現れる原因の一つと考えられています。瘀血によって血流が滞ると、脈は力強く拍動するため、硬く張ったように感じられるのです。 牢脈は、その見た目や触感から比較的分かりやすい脈ではありますが、自己判断は禁物です。もしも、ご自身の脈が牢脈に当てはまると思われる場合は、自己判断せず、必ず専門の医師に相談するようにしましょう。
漢方の診察

東洋医学から見る勞淋:その原因と対策

- 勞淋とは -# 勞淋とは 勞淋(ろうりん)とは、東洋医学における病名の一つで、過労や重労働などが原因で引き起こされる排尿に関する様々な不調を指します。現代医学の病名とは一対一に対応しませんが、慢性前立腺炎や神経性頻尿などと共通する症状が見られる場合が多いと考えられています。 勞淋の特徴的な症状として、繰り返し起こる滴下するような尿漏れが挙げられます。これは、就寝後や日中の活動時を問わずに起こる可能性がありますが、特に労働後や夕方以降に悪化する傾向があります。また、排尿時に痛みや残尿感を伴うこともあり、これらの症状が長期間にわたって続くことで、患者の生活の質を著しく低下させることもあります。 東洋医学では、勞淋は過度な労働や精神的なストレスによって、身体のエネルギーや体液を調節する機能が低下することで発症すると考えられています。そのため、治療には、患者の体質や症状に合わせて、身体のエネルギー循環を改善する漢方薬の処方や、鍼灸治療などが行われます。また、日常生活においても、十分な休息と睡眠を確保すること、バランスの取れた食事を心掛けること、ストレスを溜め込まないことなどが重要です。
疲労・倦怠感

東洋医学における勞復:再発のメカニズム

- 勞復とは -# 勞復とは 勞復とは、東洋医学の考え方のひとつで、過労が原因で起こった病気が、再び繰り返してしまうことを指します。 現代社会は、仕事や人間関係などでストレスを抱えやすく、多くの人が体調を崩しがちです。 一度休養して体調が回復したと思っても、再び無理を重ねてしまうことで、以前と同じような症状が出てしまうことは珍しくありません。 西洋医学では、このような場合、検査で異常が見つからなければ「気のせい」と片付けられてしまうこともあります。 しかし東洋医学では、勞復は、単に体力が不足しているというだけでなく、体の根本的な状態や、生活習慣、そして心の持ち方などが複雑に絡み合って起こると考えます。 つまり、目に見える症状だけでなく、その人の体質や生活全体を考慮して、根本的な原因を取り除くことが大切だと考えます。 東洋医学では、一人ひとりの体質や症状に合わせた、きめ細やかな治療を行います。 食事や睡眠、運動などの生活習慣の指導はもちろんのこと、鍼灸や漢方薬などを用いて、体のバランスを整え、自然治癒力を高めることで、真の健康を取り戻し、勞復を防ぐことを目指します。
疲労・倦怠感

東洋医学における「労倦」:疲労の深層へ

- 「労倦」とは何か 「労倦(ろうけん)」とは、東洋医学において、過労や無理がたたって心身に疲労が蓄積し、心身のバランスを崩してしまった状態を指します。 現代社会では、仕事や人間関係のストレス、過剰な情報などにより、多くの人がこの「労倦」の状態に陥りやすいと言えます。 西洋医学の「overstrain(オーバーストレイン)」とほぼ同義であり、単なる疲労とは異なる、より深刻な状態を示唆しています。 具体的には、身体面では、倦怠感、食欲不振、睡眠障害、頭痛、肩こり、動悸、息切れなどが現れ、精神面では、意欲低下、集中力低下、イライラ、不安感、抑うつ状態などが現れます。 東洋医学では、このような状態を「気」の乱れが原因だと考えます。 「気」とは、生命エネルギーのことであり、心身の活動の源です。 過労やストレス、不規則な生活習慣などによって「気」が消耗したり、流れが滞ったりすると、「労倦」の状態に陥ると考えられています。 「労倦」を放置すると、自律神経失調症、うつ病、 anxiety、不眠症などの精神疾患に発展する可能性もあるため、早期に適切な対策を講じることが大切です。
慢性疾患

慢性的な疲労と闘う:勞瘧を理解する

- 勞瘧とは 勞瘧とは、東洋医学の考え方において、慢性的な疲労感を主な症状とする病気です。まるで体に重りが乗っているような、だるさや倦怠感が長期間にわたって続きます。 西洋医学でいうマラリアのような、高熱や激しい悪寒を伴うことは稀です。むしろ、微熱が続いたり、寒気がしたりする程度で、はっきりとした症状が現れないことが多いです。そのため、周囲の人からはなかなか理解されにくく、つらい思いをする人も少なくありません。 勞瘧の原因は、東洋医学では心身の疲労や過労、不摂生などが考えられています。特に、長時間労働や睡眠不足、ストレスの多い生活は、体に大きな負担をかけ、勞瘧を引き起こしやすいため注意が必要です。 また、栄養不足や冷えなども勞瘧の発症に関係すると考えられています。現代社会では、インスタント食品や加工食品ばかりの食事や、冷房の効きすぎた室内で過ごすことが多く、知らず知らずのうちに体を冷やしてしまっているケースも少なくありません。 勞瘧は、適切な治療や養生 を行うことで、改善していくことができます。東洋医学では、漢方薬や鍼灸治療などを用いて、体のバランスを整え、自然治癒力を高めることで、勞瘧の症状を根本から改善していきます。
鍼灸

健康の鍵!六腑下合穴とその効能

- 経絡の要衝、六腑下合穴とは? 東洋医学では、生命エネルギーである「気」が全身を巡ることで健康が保たれていると考えられています。そして、その「気」の通り道である経絡上には、全身に三百以上ものツボが存在します。その中でも特に重要なツボの一つとして知られているのが、「六腑下合穴」と呼ばれるものです。 六腑下合穴は、その名の通り六腑、すなわち胃、小腸、大腸、胆嚢、膀胱、三焦といった臓器と密接に関係していると考えられています。これらの臓器は、主に飲食物の消化吸収や、不要なものの排泄といった働きを担っており、東洋医学では体の下部に位置していることから「腑」と総称されます。 六腑下合穴は、それぞれの腑に対応する経絡上に存在し、対応する腑の機能を整えたり、不調を改善したりする効果があるとされています。例えば、胃の不調には足の陽明胃経にある「足三里」、大腸の不調には手の陽明大腸経にある「合谷」といった具合です。 これらのツボは、鍼灸治療などで用いられることが多く、経験豊富な専門家が体の状態に合わせて適切な刺激を与えることで、消化不良や便秘、呼吸器系の不調、泌尿器系の不調など、様々な症状の改善が期待できます。また、日頃からこれらのツボを指圧などで適度に刺激することで、未調を防ぎ、健康増進を促す効果も期待できます。
内臓

東洋医学における六腑の役割

- 六腑とは -# 六腑とは 東洋医学では、人間の身体は単なる物質的な存在ではなく、気・血・津液といった目に見えないエネルギーが循環することで生命活動が維持されていると考えられています。このエネルギーの流れを調整し、身体のバランスを保つ上で重要な役割を担うのが、五臓六腑と呼ばれる概念です。 五臓は主にエネルギーを貯蔵する臓器であるのに対し、六腑は主に消化吸収や排泄などを行う臓器とされています。 六腑とは、具体的には胆嚢・胃・大腸・小腸・膀胱・三焦の六つの器官の総称です。これらは、主に飲食物から栄養を吸収し、不要なものを排泄するという役割を担っています。 西洋医学の解剖学的な臓器とは異なり、東洋医学の六腑は機能的な概念として捉えられています。それぞれの腑は独立しているのではなく、互いに影響し合いながら身体全体の調和を保っていると考えられています。例えば、胃は飲食物を消化するだけでなく、その働きは脾と密接に関係しており、脾の働きが弱ると胃の消化機能も低下すると考えられています。このように、六腑は五臓とも密接に関係し合いながら、身体全体の健康を維持する上で重要な役割を担っているのです。