「な」

その他

流注:転移性癰の脅威

- 流注とは -# 流注とは 東洋医学では、人間の体には「気・血・津液」と呼ばれる生命エネルギーが流れており、これらが体内をくまなく巡ることで健康が保たれると考えられています。そして、このエネルギーの通り道となるのが「経絡」と呼ばれるものです。 「流注」とは、体の中に侵入した病気の原因となる邪気が、この経絡の流れに沿って移動し、別の場所に到達して新たな病気を引き起こす現象を指します。 特に、皮膚に生じる悪性の腫れ物である「癰(よう)」が、元の場所から離れた場所に現れることを「流注」と呼ぶことが多く、これは西洋医学でいう「転移性癰」に相当します。 癰は、放置すると重症化しやすく、命に関わる場合もあるため注意が必要です。流注は、癰以外にも、様々な病気の発生や悪化に関係すると考えられており、東洋医学では重要な概念の一つとなっています。
漢方の診察

痿躄:東洋医学が捉える筋力低下の概念

- 痿躄とは -# 痿躄とは 痿躄(いひ)とは、東洋医学において用いられる言葉で、脚に力が入らず歩行が困難な状態を指します。現代医学でいう筋萎縮や麻痺といった病名とは異なる視点から、体の不調をとらえた概念です。西洋医学では、主に筋肉や神経の異常を原因として病気を診断しますが、東洋医学では、人間の体は自然の一部であり、その調和が崩れることで病気が生じると考えます。痿躄も、この調和の乱れが原因で起こると考えられており、その要因は様々です。 東洋医学では、生命エネルギーである「気」や血液などの「血」の流れが滞ったり、不足したりすることで、体のバランスが崩れると考えられています。痿躄の場合、これらの要素が脚に十分に行き渡らなくなることで、筋力の低下や運動障害が生じると考えられています。 例えば、過労やストレス、冷えなどが原因で、「気」の流れが滞ると、栄養や酸素が筋肉に十分に行き渡らず、痿躄の状態を引き起こすと考えられています。また、加齢や栄養不足などによって「血」が不足すると、筋肉に栄養が行き渡らず、痿躄を引き起こすと考えられています。 このように、痿躄は単なる脚の症状ではなく、体の全体のバランスの乱れが表れた結果だと考えられています。そのため、東洋医学では、一人ひとりの体質や症状に合わせて、食事療法や鍼灸治療などを行い、体のバランスを整えることで、痿躄の改善を目指します。
漢方の診察

東洋医学における痿病:その原因と治療法

- 痿病とは -# 痿病とは 痿病は、東洋医学の考え方では、体の活動の源である「気」や体の潤いとなる「血」の流れが滞ってしまうことで起こると考えられています。 特に、手足の筋肉を司る経路に影響が出やすく、筋力の低下や歩行が困難になるといった症状が現れます。重症化すると筋肉がやせ細ってしまい、手足を持ち上げることも難しくなります。 現代医学の病気でいうと、筋肉が徐々に衰えていく筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィー、脳や脊髄に病変が生じて様々な神経症状を引き起こす多発性硬化症といった病気が、痿病と関連付けられることがあります。 西洋医学では、主に筋肉や神経の異常として捉えられるこれらの病気ですが、東洋医学では、体の根本的な機能の乱れが、痿病という形で現れていると考えます。 そのため、痿病は、単に筋力が低下するだけでなく、手足のしびれや感覚の異常、言葉がうまく話せなくなる、自分の意思とは関係なく体が動いてしまうなど、様々な症状を伴うことがあります。
漢方の診察

命の危機を知らせる警鐘: 亡陽證

- 陽気の深刻な喪失 東洋医学では、私たちが生きていくために必要なエネルギーを「気」と捉えています。 この「気」の中でも、温かさを生み出し、体を動かす活力を与えるものを「陽気」と呼びます。 この陽気は、太陽の光や、食べ物から得られるエネルギーから作られ、全身を巡り、生命活動を支えています。 しかし、様々な原因でこの陽気が著しく衰え、生命活動が維持できなくなる寸前の状態に陥ることがあります。 東洋医学では、これを「亡陽證(ぼうようしょう)」と呼びます。 亡陽證は、単に体がだるい、疲れやすいといった体力低下の状態とは異なり、生命の危機に直結する危険な状態です。 具体的には、意識がもうろうとしたり、手足が冷たくなったり、脈が弱くなるなどの症状が現れます。 亡陽證は、適切な治療を速やかに行わなければ、命を落とす危険性も孕んでいるため、注意が必要です。
漢方の診察

東洋医学における亡陰證:その症状と意味

- 亡陰證とは -# 亡陰證とは 亡陰證とは、東洋医学において、体の潤いに関わる「陰」が極端に不足した状態を指します。私たちの体は、ちょうど植物が太陽の光と水によって育つのと同じように、「陽」と「陰」の相反する要素によってバランスを保っています。このうち、「陽」は温める、動かすといった活動的なエネルギーを、「陰」は冷やす、潤すといった静的なエネルギーをそれぞれ表しています。 陰を構成する要素の一つに「陰液」があり、これは私たちの体の潤滑油のような役割を果たしています。この陰液が不足すると、体はまるで乾ききった大地のように潤いを失い、様々な不調が現れます。これが亡陰證と呼ばれる状態です。 亡陰證では、乾燥症状や熱症状が目立つのが特徴です。例えば、皮膚や粘膜の乾燥、空咳、喉の渇き、微熱などがみられます。これは、陰液が不足することで体の熱を冷ますことができなくなり、過剰な熱が生じてしまうためです。また、陰液は栄養分を体に行き渡らせる役割も担っているため、不足すると栄養が不足し、めまい、ふらつき、意識障害といった深刻な症状が現れることもあります。 亡陰證は、例えるなら、植物に水が足りずに枯れていく状態に似ています。陰液は私たちの体を潤すだけでなく、生命活動の維持にも欠かせないものです。亡陰證は、命に関わる危険な状態であるため、適切な治療が必要です。
漢方の診察

中消ってどんな病気?原因と症状、東洋医学的な見方

- 中消とは何か 中消とは、東洋医学における病気の概念の一つで、現代医学の糖尿病や甲状腺機能亢進症といった病気と共通する症状を示します。中医学では、体の陰陽のバランスが崩れ、気・血・津液といった生命エネルギーが不足することで、様々な不調が現れると考えられています。中消もその一つであり、特に「消渇(しょうかつ)」と呼ばれる、喉が渇く、尿量が多いといった症状に分類されます。 中消の特徴は、食欲が旺盛であるにもかかわらず、体重が減少し、身体が衰弱していくという点にあります。これは、一見矛盾する症状のように思えますが、東洋医学ではこれを「胃熱亢進(いねつこうしん)」の状態と捉えます。つまり、体内の熱が異常に高まり、食べた物をうまくエネルギーに変換できず、むしろ燃やし尽くしてしまうのです。 例えるならば、水がめの中に水はたっぷり入っているのに、植物は枯れてしまっているような状態です。水分は十分にあっても、それが植物に行き渡らず、栄養として吸収されていない状況を指します。中消においては、食べた物は水のようにただ身体を通過し、栄養として吸収されずに排出されてしまうため、どれだけ食べても体重が増えず、体力も回復しないのです。
漢方の診察

東洋医学における長脈:その意味と重要性

- 長脈とは 東洋医学では、身体の様々な情報を読み取るために脈を診ます。これを脈診といい、患者さんの手首にある特定の部位を触れて脈の状態を診ることで、体内の状態や病気の兆候を把握します。脈診は、西洋医学における聴診器のように、東洋医学において重要な診察方法の一つです。 脈診では、脈の速さや強さ、深さなど、様々な要素を総合的に判断しますが、その中でも脈を打つ範囲は重要な指標となります。 通常、脈は寸、関、尺と呼ばれる三つの部位で触れることができます。この三つの部位を超えて長く脈を感じられる場合を長脈と呼びます。長脈は、必ずしも病気のサインではありませんが、体内の状態変化を示唆している可能性があります。
体質

東洋医学における亡津液:深刻な脱水の危機

- 体の潤滑油津液とは? 東洋医学では、私たちの体は単なる肉体ではなく、気・血・津液といった目には見えない生命エネルギーが複雑に絡み合って成り立っていると捉えます。これらのエネルギーは、それぞれが重要な役割を担っており、互いに影響し合いながら体の調和を保っています。その中でも津液は、血液と同じように体内をくまなく巡り、潤いを与えることで生命活動を維持する重要な役割を担っています。 例えば、私たちが日々何気なく過ごしている中でも、唾液や涙、汗、消化液、関節液など、様々な体液が分泌されていますが、これらはすべて津液の一種だと考えられています。津液は、これら体液の元となる成分を生み出し、体の隅々に行き渡ることで、潤滑油のように滑らかな動きを助けます。また、体内の組織や器官を乾燥から守り、正常な機能を維持する役割も担っています。 津液が不足すると、体の潤いが失われ、様々な不調が現れます。例えば、口や喉の渇き、肌の乾燥、便秘、目の乾き、関節の痛みなど、一見すると関係ないように思える症状も、津液の不足が原因となっている可能性があります。逆に、津液が過剰に溜まってしまうと、むくみや冷え、だるさ、下痢などを引き起こすこともあります。 このように、津液は私たちの健康を維持するために欠かせないものです。東洋医学では、日々の生活習慣や食事を通して、体質に合った津液のバランスを保つことが大切だと考えられています。
血液

東洋医学における亡血:その深刻な影響

- 亡血とは -# 亡血とは 東洋医学では、「血(けつ)」は生命活動の源となる重要な要素と考えられています。この「血」が様々な原因で体外に失われたり、体内での循環が滞ったりすると、体にさまざまな不調が現れます。その中でも特に、「血」が急激に大量に失われた状態を「亡血」と呼びます。 これは、西洋医学でいうところの大量出血やショック状態に相当し、生命の危機に直結する大変危険な状態です。 亡血は、出血を伴う外傷や手術、出産などによって引き起こされることが多いです。また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化器疾患、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患による出血が原因となることもあります。 亡血の症状としては、出血によるめまいや立ちくらみ、顔面蒼白などが挙げられます。また、冷汗や手足の冷え、脈が速く弱くなる、呼吸が速くなるといった症状が現れることもあります。重症化すると、意識がもうろうとしたり、意識を失ってしまうこともあります。 亡血は一刻を争う状態です。もしも、上記の症状が見られた場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。
漢方の治療

東洋医学における軟膏の役割

- 軟膏とは -# 軟膏とは 軟膏は、皮膚に直接塗って用いる外用薬の一種です。飲み薬のように内服するのではなく、患部に直接塗布することで効果を発揮します。軟膏は、油脂性の成分を多く含むため、皮膚の表面に薄い膜を作るように広がります。この膜が、薬効成分を患部に長時間とどめておく役割を果たします。そのため、軟膏は、飲み薬に比べて効果が持続しやすいという特徴があります。 また、軟膏は、皮膚の表面を油分で覆うことで、乾燥を防ぐ効果も期待できます。そのため、湿疹や皮膚炎など、皮膚が乾燥することで症状が悪化しやすい病気の治療にも用いられます。さらに、軟膏は、患部を保護する役割も果たします。例えば、傷口に軟膏を塗ることで、外部からの細菌の侵入を防ぎ、傷の治りを早める効果があります。このように、軟膏は、皮膚疾患の治療において、様々な効果が期待できる薬剤です。
体質

中氣下陷:氣のバランスを崩した時の体のサイン

- 中氣下陷とは? -# 中氣下陷とは? 東洋医学では、生命エネルギーである「氣」が全身を巡り、様々な機能を支えていると考えられています。この「氣」の中でも、特に重要なのが「中氣」です。中氣は、体の真ん中にある「脾」という臓腑で作られ、全身に送られることで、内臓を正しい位置に保ったり、消化吸収を助けたり、体内の水分代謝を調整したりといった重要な役割を担っています。 しかし、様々な要因によって脾の働きが弱まると、この中氣が十分に作られなくなり、下腹部へと沈んでしまうことがあります。これが、「中氣下陷」と呼ばれる状態です。 中氣下陷が起こると、本来であれば中氣によって支えられている内臓が下垂し、様々な不調が現れます。例えば、胃や腸が下垂することで、食欲不振や消化不良、便秘、下痢などが起こりやすくなります。また、子宮や膀胱が下垂すると、頻尿や尿漏れ、子宮脱などの症状が現れることもあります。 さらに、中氣は、体内の水分代謝にも深く関わっています。中氣が不足すると、水分の代謝が滞り、むくみや冷え、だるさなどの症状が現れやすくなることもあります。 このように、中氣下陷は、私たちの健康に様々な影響を与える可能性のある状態です。
漢方薬

漢方の知恵! 流膏ってどんな薬?

- 流膏とは何か 流膏は、漢方薬の世界で古くから用いられている独特な剤形の一つです。一見すると、蜂蜜やシロップのようにとろりとした半液体状をしています。漢方薬というと、乾燥させた植物を煎じて飲むというイメージが強い方が多いかもしれません。しかし流膏は、そのイメージとは全く異なる、独特の形状と服用方法を持つ製剤です。 多くの流膏は、独特の香りを放ちます。これは、原料となる生薬そのものの香りである場合もあれば、製造過程で添加される香料による場合もあります。流膏は、その形状から、主に外用薬として用いられます。患部に直接塗布することで、皮膚から有効成分を浸透させ、効果を発揮します。また、湿布のように患部に貼り付けて使用するタイプの流膏もあります。 流膏の最大の特長は、その剤形にあります。半液体状であるため、有効成分が均一に分散しやすく、皮膚への浸透性が高いというメリットがあります。また、べたつきが少なく、使用感が良い点も魅力です。そのため、皮膚の炎症やかゆみ、痛みなどを伴う症状に効果が期待できます。 近年では、その使い勝手の良さから、再び注目を集めている流膏。古来より伝わる漢方の知恵が詰まった流膏は、現代人の様々な症状に寄り添う、心強い味方と言えるでしょう。
体質

東洋医学における「亡陽」とは

- 「亡陽」の意味 「亡陽」とは、東洋医学において、人体を温め、活動を支える根源的なエネルギーである「陽気」が、急激に失われてしまう重篤な状態を指します。文字通り、「陽」が「亡びる」と表現されるように、生命活動の根幹を揺るがす深刻な事態を表しています。 これは、単なる一時的な体力低下や疲労とは全く異なり、身体の様々な機能が著しく低下し、生命維持すら危ぶまれるような緊急事態を意味します。まるで太陽を失った大地のように、身体は冷え込み、生命力は著しく衰えていきます。 具体的な症状としては、顔面蒼白、冷汗、呼吸微弱、意識混濁、手足の冷えなどが挙げられます。これらの症状は、陽気が著しく損なわれ、生命力が衰退していることを示す危険信号です。 「亡陽」は、重度の脱水症状や出血、激しい下痢、ショック状態など、生命に関わるような深刻な病態によって引き起こされることがあります。東洋医学では、「亡陽」の状態に陥った場合、一刻も早く陽気を補い、生命力を回復させるための処置が必要であると考えられています。
漢方の診察

東洋医学における亡陰:その深刻な影響

- 亡陰とは? 東洋医学では、人間の身体は「陰」と「陽」という相反する要素が調和することで健康が保たれていると考えられています。このうち、「陰」は身体を潤す力、冷ます力、栄養を与える力を持ち、生命活動の根源的なエネルギーと言えるでしょう。 「亡陰」とは、この重要な「陰」が急激に、かつ大量に失われてしまう病態を指します。高熱が長く続いたり、大量の下痢や嘔吐、あるいは大出血などによって体内の水分や栄養が失われることで起こります。 陰が失われると、身体は潤いを失い、熱がこもってしまいます。その結果、高熱、意識障害、けいれん、皮膚の乾燥、口や喉の渇き、動悸、息切れなどの症状が現れます。 亡陰は生命に関わる危険な状態であり、迅速な治療が必要です。東洋医学では、失われた陰を補う漢方薬の処方や、鍼灸治療などが行われます。西洋医学では、点滴などによって水分や電解質を補給する治療が行われます。 日頃から、十分な水分を摂取し、栄養バランスの取れた食事を心がけることが大切です。また、過度な発汗や下痢などの症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
その他

中臓: 突然襲う重度の脳卒中

- 中臓とは -# 中臓とは 「中臓」とは、東洋医学の古典的な医学書に記されている言葉で、現代医学でいう脳卒中の中でも、特に重症な状態を指します。 現代医学の脳卒中の分類とは異なる概念であり、東洋医学独特の視点から診断されます。中臓は、意識障害、言語障害、顔面神経麻痺といった、生命に関わる重篤な症状を特徴とします。 東洋医学では、身体の内部を流れる「気」や「血」の巡りが滞ることによって、様々な病気が引き起こされると考えられています。 中臓も、この「気」や「血」の流れが脳内で詰まったり、溢れたりすることで起こるとされています。 具体的には、突然意識を失って倒れたり、言葉が話せなくなったり、顔が歪んでしまうといった症状が現れます。 これらの症状は、現代医学の脳卒中の症状と共通する部分が多いですが、東洋医学では、患者の体質や脈、舌の状態など、様々な要素を総合的に判断して診断を行います。 中臓は、命に関わる危険性の高い病気であるため、早期の発見と治療が重要となります。東洋医学では、鍼灸治療や漢方薬を用いることで、「気」や「血」の流れを改善し、症状の緩和を目指します。
その他

知っておきたい中絡の知識

- 中絡とは -# 中絡とは 中絡とは、東洋医学において、身体に軽い麻痺や痺れが生じる状態を指す言葉です。現代医学の視点では、軽度の脳卒中、またはその前兆と類似した症状と考えられます。 中絡は、顔面の片側に軽い歪みが生じたり、手足の感覚が鈍くなったりするなど、特徴的な症状が現れます。具体的には、口角が下がったり、片方のまぶたが重く感じたり、箸やペンが持ちにくくなったりといった症状が挙げられます。ただし、意識を失ったり、重い麻痺が残ったりすることはありません。 中絡は、あくまで一時的な症状であり、多くの場合、自然に回復に向かいます。しかし、症状が長引いたり、頻繁に起こる場合は、本格的な脳卒中へと進行する可能性も考えられます。そのため、中絡の症状が見られた場合は、自己判断せずに、速やかに医療機関を受診することが大切です。
その他

夏の危険!中暑について解説

- 中暑とは 中暑は、夏の暑い時期に特に注意が必要な、命に関わることもある危険な状態です。高温の環境下に長時間いることで、私たちの体は体温をうまく調節できなくなり、体温が異常に上昇してしまうことで起こります。 中暑は、屋外で強い日差しを浴び続けたり、激しい運動をすることで起こりやすいと思われがちですが、実はそうではありません。風通しが悪く、気温の高い室内でも、十分に注意が必要です。例えば、エアコンのない部屋や、直射日光が差し込む部屋などは、知らず知らずのうちに体温が上昇し、中暑を引き起こす危険性があります。 中暑は、適切な予防と対処をすることで、防ぐことができます。こまめな水分補給や、涼しい場所での休憩、通気性の良い服装を心がけるなど、日頃から暑さ対策をしっかりと行いましょう。また、もしも周りの人が中暑のような症状を起こしたら、すぐに涼しい場所へ移動させ、衣服を緩めて体を冷やす、水分補給を行うなどの応急処置を行い、速やかに医療機関へ連絡しましょう。
漢方薬

中庸を得る:中品という生薬の世界

- 中品とは何か? 漢方薬の世界では、自然界の草木や鉱物など、自然の力を秘めた生薬を用いて、心と体の調和を図り、健康を目指します。 数多くの生薬は、その効能や作用の強さ、体への影響などによって、「上品」「中品」「下品」の三段階に分類されます。 この中で「中品」に分類される生薬は、穏やかながら幅広い効果を持つことが特徴です。上品のように即効性や強い作用はないものの、体質改善や慢性的な不調の緩和などに役立ちます。 また、中品は毒性が低い、またはあっても非常に軽いため、長期間にわたって安心して服用できるという利点があります。そのため、病気の予防や健康維持を目的とした服用にも適しています。 中品に分類される生薬は多岐にわたり、例えば、胃腸の働きを整えるもの、血行を促進するもの、精神を安定させるものなど、様々な効能を持つものが知られています。 漢方薬では、これらの生薬を単独で用いることは少なく、複数の生薬を組み合わせることで、より効果を高めたり、副作用を抑制したりしています。 中品は、穏やかな作用ながらも、心身のバランスを整え、健康を維持するために欠かせないものです。日々の生活に取り入れることで、健やかで活力あふれる毎日を送る助けとなるでしょう。
漢方の診察

東洋医学における隠痛:その特徴と意味

- 隠痛とは 隠痛とは、東洋医学において、鈍くうずくような、長く続く痛みのことを指します。これは、針で刺されたような鋭い痛みとは異なり、比較的穏やかな痛みですが、長期間にわたって続くことが特徴です。このような痛みは、慢性的な病気や体質の虚弱によって引き起こされることが多く、表面的な治療だけではなかなか改善しにくいとされています。 例えば、体の芯が冷えるような感覚や、重だるく感じる痛みなどが隠痛に当てはまります。このような痛みは、一時的なものではなく、数か月、あるいは数年単位で続くこともあり、日常生活にも影響を及ぼすことがあります。 西洋医学では、隠痛の原因を特定することが難しい場合があり、痛み止めなどの対症療法で対処することが多いです。一方、東洋医学では、隠痛の原因を体の内部のバランスの乱れと捉え、その根本的な原因を改善することに重点を置きます。具体的には、鍼灸治療や漢方薬の処方、食生活の改善などを通して、体の内側から健康を取り戻すことを目指します。 隠痛は、その痛み自体も辛いものですが、長期間続くことで精神的な負担も大きくなってしまうことがあります。つらい痛みを感じたら、我慢せずに、早めに専門家に相談することをお勧めします。
漢方の診察

五感を超えて:東洋医学における「苗竅」

- 感覚の扉、苗竅とは 東洋医学では、健康を保つためには、身体の中を流れる「気」や「血」の流れを円滑にし、「陰陽」のバランスを整えることが重要だと考えられています。そして、これらの状態を把握するために重要な役割を担うのが「苗竅」です。「苗竅」とは、現代医学でいう感覚器官、すなわち目、耳、鼻、口、舌の五感を司る器官のことを指します。 苗竅は、外界からの情報を得るための単なる入り口ではありません。東洋医学では、五感は身体の内側と外側を繋ぐ大切な「窓」だと捉えられています。私たちは、苗竅を通じて外界からの情報を受け取るだけでなく、同時に身体内部の状態もまた、苗竅を通して表面に現れると考えます。 例えば、目の充血や乾燥は、身体に熱がこもっているサインかもしれませんし、耳鳴りは、気の流れが滞っていることを示唆している可能性があります。このように、苗竅は身体からのサインを受け取る重要な受信機としての役割も担っているのです。 東洋医学では、病気の兆候を早期に発見し、未然に防ぐことを重要視します。そのため、日頃から自身の感覚に意識を向け、苗竅からのメッセージを読み解くことが健康を保つ第一歩と言えるでしょう。
漢方の診察

痿軟舌:東洋医学が捉える舌の異常

- 痿軟舌とは -# 痿軟舌とは 痿軟舌とは、東洋医学の診察法の一つである舌診において観察される舌の状態を指します。健康な舌は適度な弾力と潤いを持っていますが、痿軟舌はまるで茹ですぎた野菜のように、舌が柔らかく、弾力を失い、しんなりとした状態になっていることを言います。この状態は一時的なものではなく、身体の内部に何らかの不調が生じているサインであると考えられています。 東洋医学では、舌は内臓の状態を映し出す鏡と考えられており、舌の色や形、表面の状態などを観察することで、体内の状態を把握しようとします。痿軟舌は、主に気虚(元気の不足)や陽虚(温める力の不足)が関係しているとされています。 気虚は、生命エネルギーである「気」が不足した状態で、疲労感や倦怠感、息切れなどを引き起こします。痿軟舌も、この気虚によって舌の筋肉が十分に働かなくなることで起こると考えられています。 一方、陽虚は、身体を温めるエネルギーである「陽気」が不足した状態で、冷え性やむくみ、下痢などを引き起こします。陽気が不足すると、体内の水分の代謝が滞り、舌に水分が過剰に溜まってしまうことで、痿軟舌になると考えられています。 痿軟舌が見られる場合は、その原因を探り、体質や症状に合わせた適切な養生法を実践していくことが大切です。
鍼灸

隠れた経絡の秘密:潜性感伝

- 経絡と気血の流れ 東洋医学では、人間の生命活動は、「気」と呼ばれるエネルギーと、「血」と呼ばれる血液によって維持されていると考えられています。目には見えませんが、この「気」と「血」は、体の中を絶えず循環し、全身に栄養を届け、老廃物を排出し、様々な機能を調整しています。 この「気」と「血」の通り道となるのが、「経絡」と呼ばれるものです。経絡は、体の中をくまなく走るエネルギーの通り道で、まるで intricate な網目のように全身に張り巡らされています。 経絡は、単なる血管のような物理的な管ではなく、エネルギー的な通路と考えられています。そして、その流れは、川の流れのように滞ることなく、スムーズであることが理想とされています。 もし、病気やストレス、生活習慣の乱れなどによって経絡の流れが滞ってしまうと、気血の循環が悪くなり、体の様々な部分に不調が現れると考えられています。 例えば、ある経絡の気血の流れが滞ると、その経絡が通っている組織や臓腑に栄養が行き渡らなくなり、機能が低下してしまいます。その結果、痛みやしびれ、冷え、むくみなどの症状が現れることがあります。 逆に、経絡の流れがスムーズであれば、気血が全身に行き渡り、細胞が活性化します。その結果、自然治癒力が高まり、健康な状態を保つことができると考えられています。 東洋医学では、鍼灸やあんま、指圧などの施術によって、経絡の流れを調整し、気血の循環を促すことで、様々な症状の改善を目指します。
漢方の診察

東洋医学における身体尺「中指同身寸」

- 中指同身寸とは -# 中指同身寸とは 東洋医学、特に鍼灸治療において、身体には経絡と呼ばれるエネルギーの通り道があり、その経絡上にあるツボを刺激することで治療効果があるとされています。ツボの正確な位置を特定することは、治療効果を最大限に引き出すために非常に重要です。しかし、人の身体は身長や骨格によって異なるため、同じツボであっても人によってその位置は微妙に異なります。そこで、東洋医学では身体の寸法を測る際に、個人の体格差を考慮した「同身寸」という方法を用います。 中指同身寸は、数ある同身寸の中でも最も簡便で広く用いられている方法の一つです。この方法では、患者自身の中指第二関節の横幅を基準にしてツボの位置を測ります。具体的には、中指を軽く曲げた時にできる、第二関節の横じわの間の長さを「一寸」とします。この一寸を基準に、三寸、四寸と身体の各部の長さを測ることで、体格差に左右されずに正確なツボの位置を把握することが可能となります。 中指同身寸は、その簡便さから鍼灸師だけでなく、家庭でツボ療法を行う際にも活用することができます。自分の身体の寸法を把握しておくことは、健康管理の上でも役立ちます。
内臓

東洋医学における生化:生命エネルギーの源泉

- 生化とは何か? 私たちの体は、食事として口にするものからエネルギーや体を構成する様々な要素を取り込み、活動するための源に変換しています。この、生命を維持する上でも欠かせない活動の根幹を成すのが「気」と「血」であり、東洋医学では、これらを生成する過程全体を指して「生化」と呼びます。 では、一体どのようにして「気」と「血」は作られるのでしょうか? 生化の考え方は、私たちが日々口にする飲食物、つまり「水穀」が、体内で複雑な変化を経て、精妙な物質である「気」と「血」へと生成されていく過程を説明しています。 東洋医学では、胃腸などの消化器官の働きを非常に重視しており、これらを総称して「脾胃」と呼びます。生化において、脾胃は中心的な役割を担い、水穀を消化吸収しやすい形へと変化させます。そして、脾胃で生成された「水穀の精微」は、全身に運ばれ、「気」や「血」など生命活動の源へと変化していくのです。 生化は、単に物質的な変化を指すだけでなく、「気」という目には見えないエネルギーの生成過程を含む、より広義で複雑な概念です。生命活動の根源である「気」と「血」がどのように作られるのかを知ることは、東洋医学の考え方を理解する上で非常に重要であり、健康を維持していく上でのヒントを与えてくれます。