東洋医学が紐解く「驚悸」の世界

東洋医学が紐解く「驚悸」の世界

驚悸とは

– 驚悸とは

-# 驚悸とは

驚悸とは、突然訪れる驚きや恐怖、強い精神的ショックがきっかけとなって現れる動悸のことを指し、東洋医学において重要な意味を持つ概念です。西洋医学では、動悸の原因は心臓の異常や自律神経の乱れと捉えられますが、東洋医学では、心臓は精神活動、特に感情と密接な関わりを持つ臓器と考えられています。そのため、激しい驚きや恐怖といった強い感情は、心臓に直接的な影響を及ぼし、その結果として動悸が生じると考えられています。

心臓は、東洋医学では「君主之官（くんしゅしかん）」と呼ばれ、体全体の働きを統括する重要な役割を担うと考えられています。まるで国のリーダーが国民の生活や国の安定に影響を与えるように、心臓の働きが乱れると、全身のバランスが崩れ、様々な不調が現れると考えられています。

驚悸は、単なる心臓の反応ではなく、精神的なストレスや不安定な感情が身体からのサインとして現れたものと捉えられます。そのため、東洋医学では、驚悸の治療において、心臓のみに焦点を当てるのではなく、精神的な安定を取り戻し、心身のバランスを整えることを重視します。具体的には、鍼灸や漢方薬、呼吸法、瞑想などを用いて、心の緊張を解きほぐし、穏やかな状態へと導くことで、驚悸の根本的な改善を目指します。

驚悸の原因とメカニズム

– 驚悸の原因とメカニズム

東洋医学では、心臓は単なる血液を循環させる臓器ではなく、精神活動や意識、思考とも深く関わっていると考えられています。そして、心身の活動の源となる「気」の流れが滞ったり、乱れたりすることで、様々な不調が現れると考えられており、驚悸もその一つです。

「気」は全身を巡っていますが、特に精神状態の影響を受けやすい性質を持っています。そのため、強い精神的ストレス、例えば過度な緊張や不安、驚き、恐怖、悲しみなどを感じると、「気」の流れが乱れ、動悸や息切れ、胸の締め付けといった驚悸の症状が現れると考えられています。

例えば、人前でスピーチをする場面や、重要な試験を受ける直前など、緊張状態に置かれると、心臓がドキドキと高鳴る経験はありませんか？これは、緊張によって「気」が乱れ、心臓に影響を与えることで起こる驚悸の一つの例です。

また、過労や睡眠不足、栄養不足なども「気」を弱らせてしまう要因となります。「気」が不足すると、心身を支える力が弱まり、些細なことで動悸がしたり、不安を感じやすくなるなど、驚悸が起こりやすい状態になります。

このように、東洋医学では驚悸の原因を「気」の乱れと捉え、その背景にある精神的な要因や生活習慣なども考慮しながら、心身のバランスを整えることを治療の目的とします。

驚悸の症状

– 驚悸の症状

驚悸とは、脈拍数の変化や心臓の拍動を異常に感じる状態を指し、東洋医学では「心悸」「怔忡」などと表現されます。主な症状として、安静時や軽い運動時に心臓がドキドキと強く脈打つように感じることが挙げられます。これは、まるで胸の中に太鼓を打ち鳴らされているような感覚、あるいは鳩が羽ばたくような感覚と表現されることもあります。

このような動悸に加えて、息が詰まるような息切れや呼吸が浅くなる呼吸困難、胸郭内が締め付けられるような圧迫感を感じることもあります。また、精神的な緊張や不安感を伴い、落ち着かなくなることも少なくありません。症状が重い場合には、めまいや意識が遠のくような感覚、冷や汗、顔面蒼白などが現れることもあります。

驚悸の症状は、一時的なものから慢性的に続くものまで、その程度は個人差があります。疲労やストレス、睡眠不足、過剰なカフェイン摂取などが原因で一時的に症状が現れることもあれば、心臓病や甲状腺疾患などの基礎疾患が潜んでいる場合もあります。そのため、症状が続く場合には、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。

東洋医学的治療法

– 東洋医学的治療法

東洋医学では、心身の不調は、体内のエネルギーである「気」の流れが滞ったり、バランスが崩れたりすることが原因だと考えられています。そのため、治療では、この「気」の乱れを整え、心身のバランスを取り戻すことを目的とします。

そのための具体的な方法としては、主に鍼灸治療、漢方薬の処方、養生指導の３つがあります。

鍼灸治療では、身体に点在する「ツボ」と呼ばれる特定の部位に鍼を刺したり、艾（もぐさ）で温めたりすることで、気の巡りを改善し、心身のバランスを整えていきます。

漢方薬は、自然の草根木皮などを組み合わせて作られた薬です。患者の体質や症状に合わせて、数十種類の生薬を組み合わせた処方がなされます。

養生指導では、生活習慣の改善や食事療法、呼吸法、瞑想などを通して、心身の安定を目指します。

これらの治療法は、単独で行われることもありますが、組み合わせて行うことで、より高い効果が期待できます。

日常生活での予防法

– 日常生活での予防法

「驚悸」は、心臓がドキドキしたり、脈打つのが速く感じたりする症状ですが、多くの場合、一時的なもので自然に治まります。しかし、頻繁に起こったり、日常生活に支障をきたす場合は注意が必要です。驚悸を予防するために、日常生活においてできることがいくつかあります。

まず、精神的なストレスをため込まないようにすることが大切です。現代社会はストレスが多いですが、自分なりのストレス解消法を見つけ、心身のリラックスを心がけましょう。十分な睡眠をとる、栄養バランスの取れた食事を摂る、適度な運動をするなども効果的です。

また、カフェインやアルコールの過剰摂取は、神経を興奮させ、動悸を悪化させる可能性がありますので、注意が必要です。

さらに、深い呼吸をする、瞑想をする、ヨガをする、アロマテラピーを取り入れるなども、心身の安定に役立ちます。これらの方法を試して、ご自身に合ったリラックス法を見つけてみて下さい。

規則正しい生活と心の安定を保つことで、驚悸を予防することができます。ただし、症状が続く場合は、自己判断せず、医療機関を受診しましょう。