漢方

その他

股関節の痛みは要注意!:環跳疽について

- 環跳疽とは -# 環跳疽とは 環跳疽は、股関節に膿が溜まる病気です。西洋医学では、細菌感染によって引き起こされる股関節の化膿性関節炎と診断されることが多いでしょう。 東洋医学では、この病気は「風」「寒」「湿」「熱」といった外邪が体内に侵入し、気血の流れを阻害することで発症すると考えられています。特に、環跳と呼ばれるお臀のツボ周辺に症状が現れやすいことから、環跳疽という名前が付けられました。 環跳は足の太陽膀胱経という経絡上に位置し、下半身の気血が集まる重要なツボです。そのため、外邪の影響を受けやすく、環跳疽が生じやすいと考えられています。 環跳疽の症状としては、股関節の激しい痛み、腫れ、熱感、発赤などが挙げられます。重症化すると、歩行困難や高熱などの全身症状が現れることもあります。 東洋医学では、環跳疽の治療には、鍼灸や漢方薬を用います。鍼灸治療では、滞った気血の流れを改善し、痛みや腫れを和らげることを目的に、環跳をはじめとするツボに鍼やお灸を施します。漢方薬は、患者の体質や症状に合わせて処方し、体の免疫力を高めたり、炎症を抑えたりする効果が期待できます。 環跳疽を予防するには、普段から体を冷やさないように注意すること、適度な運動で気血の流れを良くすること、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
内臓

東洋医学から見る腸癰:急性盲腸炎

- 腸癰とは -# 腸癰とは 腸癰(ちょうよう)は、東洋医学における病名の一つで、現代医学でいう急性虫垂炎(一般的に「盲腸」と呼ばれる病気)に相当します。 腸癰は、主に大腸に生じる化膿性の炎症を指し、激しい腹痛を伴うことが特徴です。 東洋医学では、体のバランスが崩れることで病気が起こると考えられています。 腸癰の場合、過食や偏った食事、冷え、過労、ストレスなどによって、「湿熱(しつねつ)」と呼ばれる病理産物が腸に停滞し、炎症を引き起こすと考えられています。湿熱とは、体内の水分代謝が滞り、熱を帯びた状態を指します。 腸癰の主な症状としては、右下腹部の激しい痛み、発熱、吐き気、便秘、下痢などが挙げられます。 また、炎症が進行すると、腹膜炎を引き起こし、生命に関わる危険性もあります。 腸癰は、早期に発見し、適切な治療を行うことが重要です。東洋医学では、鍼灸や漢方薬を用いて、湿熱を取り除き、炎症を抑える治療を行います。 自己判断で対処せず、症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
その他

東洋医学から見る臀癰:原因と治療法

- 臀癰とは何か 臀癰とは、お尻の溝、医学用語で言うと殿溝に膿が溜まる病気です。現代医学では肛門周囲膿瘍とも呼ばれ、細菌感染によって引き起こされます。 -# 臀癰の症状 初期には、肛門周辺の痛みや腫れ、発熱などがみられます。症状が進むと、激しい痛みで座っているのも辛くなったり、排便が困難になることもあります。さらに悪化すると、膿が皮膚を突き破って体外に排出されることもあります。 -# 東洋医学的な考え方 西洋医学では、臀癰は細菌感染による炎症と考えますが、東洋医学では、体の表面的な症状だけでなく、体全体のバランスの乱れが反映されたサインとして捉えます。 東洋医学では、過労、睡眠不足、偏った食事、冷え、ストレスなどの生活習慣の乱れが、体の免疫力や自然治癒力を低下させ、臀癰を引き起こすと考えます。 -# 臀癰の予防 臀癰を予防するためには、規則正しい生活、バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、冷え対策、ストレスを溜めないなど、生活習慣を見直すことが大切です。
漢方の治療

温補脾胃:胃腸を温めて元気をチャージ

- 脾胃陽虚証とは -# 脾胃陽虚証とは 東洋医学では、食べ物を消化吸収し、そこから生命エネルギーである「気」を生み出す重要な働きを「脾胃」が担うと考えられています。この脾胃の働きが弱まり、冷えが生じている状態を「脾胃陽虚証」と言います。 脾胃は、いわば体全体のエネルギー生産工場のようなものです。この工場が冷え切って働きが鈍くなると、十分な「気」を作ることができなくなり、様々な不調が現れます。 現代社会では、冷たい飲食物をよく口にする、過度なダイエットをする、ストレスを抱えやすいなど、脾胃を冷やす要因が多く、脾胃陽虚証を引き起こしやすい環境と言えます。
漢方の治療

健胃:消化を助ける東洋医学の知恵

- 健胃とは -# 健胃とは 健胃とは、東洋医学に基づいた考え方で、胃腸の働きを良くし、食べ物の消化をスムーズにするための治療法です。西洋医学では胃そのものに焦点を当てることが多いですが、東洋医学では、体全体のバランスを重視し、その一部として胃の働きを捉えています。 私たちの体は、食べた物を胃で消化し、そこから栄養を吸収することで健康を保っています。しかし、不規則な生活や冷え、ストレス、過労などは胃腸に負担をかけ、消化機能を低下させる要因となります。消化不良は、食欲不振や胃もたれ、栄養不足など、様々な不調につながる可能性があります。 そこで、東洋医学では、胃腸の働きを整え、消化機能を高める「健胃」という考え方が重要視されます。具体的には、食事療法、漢方薬、鍼灸、マッサージなどを用いて、胃腸に負担をかけずに消化を助ける方法や、胃腸の働きを活発にする方法などを総合的に行います。 健胃は、胃腸の不調改善だけでなく、体全体の健康増進にもつながると考えられています。消化機能が向上することで、栄養吸収が促進され、免疫力や自然治癒力の向上も期待できます。
漢方の治療

健脾利湿:胃腸の乱れとむくみに

- 健脾利湿とは -# 健脾利湿とは 健脾利湿とは、東洋医学における治療法の一つで、体の水分代謝を改善し、健康な状態へと導くことを目的としています。 東洋医学では、体の水分代謝を司る重要な臓腑として「脾」を位置付けています。 脾は、飲食物から栄養を吸収し、全身に運ぶ役割を担っています。 また、体内の水分を適切に処理し、不要な水分を排泄する機能も持っています。しかし、疲労やストレス、冷たい食べ物などによって脾の機能が低下すると、体内の水分代謝が滞り、余分な水分が体に溜まりやすくなると考えられています。この状態を「湿邪」といい、むくみやだるさ、食欲不振、下痢、めまい、頭痛、関節の痛みなど、様々な不調を引き起こすと考えられています。 健脾利湿は、食事療法や漢方薬を用いることで、弱った脾の機能を高め、体内に溜まった余分な水分を取り除くことを目指します。具体的には、水分代謝を促す食材(薏苡仁、ハトムギ、とうもろこし、小豆など)や、脾の働きを助ける食材(山芋、生姜、棗など)を積極的に食事に取り入れることが大切です。また、体を温めることや、適度な運動も、湿邪の改善に効果的です。 健脾利湿は、湿邪による不調の改善だけでなく、健康増進や病気の予防にも役立ちます。
その他

繰り返す肌の悩み、癤病を東洋医学はどう考える?

- 癤病とは -# 癤病とは 癤病とは、皮膚の一部分に繰り返し癤(せつ)ができる状態を指します。癤とは、毛穴に細菌が入り込み、炎症を起こして膿が溜まった状態をいいます。 誰でも一度は経験する、いわゆる「おでき」のことですが、これが単発的にできるのではなく、慢性的に繰り返してできる場合、癤病と診断されます。 癤病は、一度治ったと思っても同じ場所に繰り返しできたり、複数の癤が同時にできてしまうなど、厄介な特徴があります。 癤は、毛穴に常在する細菌が、皮膚の抵抗力が弱まっている時に増殖することで発生します。そのため、疲労やストレス、睡眠不足、栄養の偏りなどは、癤病の大きな要因となります。 また、糖尿病などの基礎疾患が隠れている場合もあるため、繰り返し癤ができる場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
漢方の治療

健脾益氣:胃腸を元気に!

- 健脾益氣とは? 「健脾益氣」とは、東洋医学の考え方に基づいた治療法の一つです。 この言葉は、「脾(ひ)」の働きを健やかにし、「気」を補うという意味を持ちます。 東洋医学では、「脾」は食べ物を消化吸収し、そこから栄養やエネルギーを生み出す重要な臓器だと考えられています。 「脾」の働きが弱ってしまうと、食欲不振や消化不良、疲れやすくなるなどの症状が現れることがあります。 一方、「気」は生命エネルギーと捉えられ、全身を巡り、健康を保つために欠かせないものです。 「気」が不足すると、元気がなくなったり、免疫力が低下したりすると言われています。 「健脾益氣」は、食事療法や漢方薬などを用いることで、「脾」の働きを整え、「気」を補うことで、様々な不調を改善に導き、健康な状態へと導くことを目指します。
漢方の治療

心身を養う:養心のすすめ

- 養心とは -# 養心とは 養心とは、東洋医学において心身の健康を保つための大切な考え方の一つです。これは、単に体の健康を追い求めるのではなく、心の状態を重視し、精神的な疲労やストレスを和らげることで、心と体のバランスを整え、健康な状態へと導くことを目指します。 現代社会は、情報過多や激しい競争、複雑な人間関係など、心に負担をかける要因が多く存在します。日々時間に追われ、心に余裕を失いがちな状況と言えるでしょう。このような状況下では、知らず知らずのうちに心が疲弊し、それが原因で体の不調につながることもあります。 養心を実践するということは、自身の心の状態に意識を向け、心の声を聴く時間を持ち、心に安らぎを与えることを意味します。具体的には、穏やかな気持ちで過ごす時間を作ったり、自然と触れ合ったり、自分の好きなことを楽しんだりすることが挙げられます。また、ゆったりと呼吸を整えたり、瞑想を取り入れたりするのも効果的です。 養心によって心の安定を取り戻すことは、体の健康にも良い影響を与え、ひいては心身の調和へとつながっていきます。現代社会において、養心の考え方は、健やかで充実した日々を送るための知恵と言えるでしょう。
漢方の治療

心と体を養う:補養心血のススメ

- 補養心血とは -# 補養心血とは 補養心血とは、東洋医学において、心と血の働きを補い、元気づける治療法です。心身の健康を取り戻すことを目的としており、特に、心と血の両方が不足した状態である「心血虚」に効果を発揮します。 東洋医学では、心は単なる臓器ではなく、意識、思考、感情など、精神活動全般をつかさどる重要な役割を担うと考えられています。一方、血は全身に栄養を運ぶだけでなく、精神活動の源でもあり、心の安定にも深く関わっています。 心と血は互いに影響し合い、密接な関係にあります。心が活発に働けば血の巡りも良くなり、逆に、血が不足すると、心に栄養が行き渡らず、精神が不安定になったり、不眠に悩まされたりすることがあります。 補養心血は、心と血の両方に働きかけることで、心身のバランスを整え、健康な状態へと導きます。具体的には、食事療法、漢方薬、鍼灸、気功など、様々な方法が用いられます。これらの方法を組み合わせることで、より効果的に心と血を補い、心身の不調を改善へと導きます。
漢方の治療

温補命門:腎陽虚を改善する東洋医学

- 温補命門とは -# 温補命門とは 「温補命門」とは、東洋医学における治療法の一つで、体の奥深くに位置する「腎」という臓器の働きを活性化させることを目的としています。 特に、「腎陽虚」と呼ばれる、体のエネルギー源である「陽気」が不足し、冷えを感じやすくなったり、活動意欲が低下したりする状態に効果があるとされています。 腎は、東洋医学では生命エネルギーを蓄え、成長や生殖、老化に関わる重要な臓器と考えられています。この腎の陽気が不足すると、冷え性、倦怠感、腰痛、頻尿、勃起不全など、様々な症状が現れるとされています。 温補命門では、身体を温め、陽気を補う効果を持つ生薬を組み合わせて用いることで、弱った腎の機能を高め、症状の改善を図ります。 代表的な生薬としては、身体を温める作用の強い「附子(ブシ)」や「肉桂(ニッケイ)」、陽気を補う「人参(ニンジン)」や「鹿茸(ロクジョウ)」などが挙げられます。これらの生薬を、 individual 体質や症状に合わせて配合することで、より効果的な治療を目指します。 温補命門は、単に身体を温めるだけでなく、根本的な体質改善を目指す治療法と言えるでしょう。
漢方の治療

東洋医学における壮陽: その考え方と治療法

- 壮陽とは 壮陽とは、東洋医学の考え方に基づいた治療法の一つです。 人間の体には、「気」「血」「水」と呼ばれる3つの要素が循環しており、これらがバランスを保つことで健康が維持されていると考えられています。 このうち「気」は、生命エネルギーのようなもので、体のあらゆる機能を支えています。 「気」には様々な種類がありますが、その中でも特に温かく活動的な性質を持つものを「陽気」と呼びます。 この陽気が不足すると、体が冷えたり、疲れやすくなったり、男性機能が低下したりするなど、様々な不調が現れるとされています。 壮陽とは、食事療法や漢方薬、鍼灸治療などを通して、この陽気を補い、強化することで、男性の活力や精力を取り戻すことを目指す治療法です。 加齢やストレス、過労、睡眠不足、食生活の乱れなどは、陽気を消耗させる原因となります。 壮陽は、これらの原因を取り除きながら、体の内側から健康な状態へと導くことを目指します。
その他

東洋医学が診る瘡瘍:その原因と治療法

- 瘡瘍とは何か 瘡瘍とは、皮膚表面が赤く腫れ上がり、熱を持ち、痛みを伴う症状を総称した言葉です。これは、現代医学でいうところのニキビや癰、疽、蜂窩織炎など、様々な皮膚の病気を含みます。 西洋医学では、これらの症状は細菌感染などによって引き起こされると考えられていますが、東洋医学では少し異なる視点から捉えます。東洋医学では、体の表面に現れる症状は、体の内部、つまり内臓や気血の流れと密接に関係していると考えられています。つまり、瘡瘍は単なる皮膚の炎症ではなく、体の内部に潜む不調が表面に現れたサインと捉えるのです。 例えば、暴飲暴食や脂っこいものの食べ過ぎなど、不摂生な生活を続けていると、体に熱がこもりやすくなります。この熱が体の上部、特に顔に影響を与えると、ニキビができやすくなると考えられています。また、ストレスや疲労、冷えなどで体の免疫力が低下すると、皮膚のバリア機能も低下し、細菌感染を起こしやすくなります。これが、癰や疽などの化膿性の皮膚疾患に繋がると考えられています。 このように、東洋医学では瘡瘍の原因を体の内外の様々な要因から総合的に判断します。そして、その原因に基づいて、食事療法や漢方薬、鍼灸治療など、一人ひとりの体質や症状に合わせた治療法を行います。
漢方の診察

東洋医学が考える「顫震」:その原因と治療

- 顫震とは何か 顫震とは、頭や手足などが自分の意思とは関係なく、震えたり、ふるえたりしてしまう状態を指します。この状態は、字の通り、震える、戦慄くといった動作として現れます。西洋医学では、パーキンソン病や本態性振戦などが代表的な疾患として知られています。 東洋医学では、顫震は単なる体の動きの異常として捉えるのではなく、体内の陰陽のバランスや気血水の巡りの乱れが深く関わっているととらえます。心身の疲労やストレス、老化などが原因で、体のバランスが崩れることで、顫震が生じると考えられています。 例えば、「肝」の働きが弱まっている場合、精神的なストレスや不眠、過労などが積み重なり、体の制御がうまくいかなくなり、震えが生じると考えます。また、「脾」の働きが弱っている場合は、消化吸収機能の低下や栄養不足などが原因で、体のエネルギーが不足し、手足の震えに繋がると考えられています。 このように、東洋医学では顫震の原因を体質や生活習慣、環境など様々な要因から総合的に判断し、体の根本的なバランスを整えることを目指します。そして、鍼灸治療や漢方薬の処方、食事療法や運動療法などを組み合わせることで、顫震の改善を図ります。
漢方の診察

筋痿:肝の気が引き起こす運動障害

- 筋痿とは -# 筋痿とは 筋痿とは、東洋医学において、筋肉が徐々に衰弱し、本来あるべき運動機能が損なわれた状態を指します。西洋医学でいう筋萎縮や筋ジストロフィーなどの特定の疾患とは一線を画し、様々な要因や症状を含んだ幅広い状態を包括的に捉えています。 私たちの日常生活において、筋力は非常に重要な役割を担っています。立つ、歩く、物を持ち上げるといった動作一つ一つが、健康な筋力によって支えられているのです。この筋力が低下してしまう筋痿は、私たちの生活に大きな支障をきたす可能性を秘めています。 東洋医学では、筋痿の原因を、主に気血の不足、経絡の阻塞、そして臓腑の機能低下として捉えます。過労や偏った食事、加齢、冷えなどの影響で、気血の流れが滞ったり、臓腑の機能が低下したりすることで、筋肉に十分な栄養が行き渡らなくなり、筋痿を引き起こすと考えられています。 筋痿の症状は、筋肉の衰えや脱力感、しびれ、痛みなど、多岐にわたります。初期症状では、疲れやすさや軽い運動後の息切れなどがみられますが、進行するにつれて、歩行困難や日常生活動作の制限が現れることもあります。 東洋医学では、筋痿の治療として、鍼灸治療、漢方薬の処方、食事療法、運動療法などを組み合わせて、患者さん一人ひとりの体質や症状に合わせた総合的な治療を行います。気血の流れを改善し、臓腑の機能を高め、筋肉に栄養を補給することで、筋力の回復を目指します。
漢方の治療

補気壮陽:心と腎を元気にする東洋医学

- 元気の源、気と陽 -# 元気の源、気と陽 東洋医学では、人が生まれながらにして持っている生命エネルギーを「気」と呼び、健康を保つ上で非常に重要なものと考えています。この「気」は、体中に巡り、様々な活動の源となっています。呼吸や消化、血液循環といった体の機能を支え、さらには体温を維持したり、外部からの病原菌や寒暖の変化から体を守ったりするのも「気」の働きによるものと考えられています。 そして、この「気」の働きを支え、活動力を与えているのが「陽」です。「陽」は温かさや明るさ、活動性を表し、「気」を活発に働かせる力となります。まるで太陽の光が植物の成長を促すように、「陽」は私たちの体全体の機能を高め、健康な状態を維持するために欠かせない要素です。 特に、体の中で重要な役割を担っているのが心臓と腎臓です。心臓は全身に血液を送り出すポンプとしての役割を担い、「気」を全身に巡らせる原動力となっています。一方、腎臓は生命エネルギーである「気」を蓄える場所と考えられており、両者は「気」と「陽」のバランスを保つ上で重要な役割を担っています。 これらの臓器の働きが弱まり、「気」や「陽」が不足すると、体が冷えたり、疲れやすくなったり、免疫力が低下したりと、様々な不調が現れると考えられています。
漢方の治療

東洋医学における補法:不足を補い健康を取り戻す

- 治療における補法の役割 東洋医学では、人間の体は、自然界と調和し、気、血、水といった生命エネルギーが絶えず循環することで健康が保たれていると考えられています。病気や不調は、この調和が乱れ、体内のバランスが崩れることで起こるとされています。 そこで、東洋医学の治療では、乱れたバランスを整え、健康な状態へと導くことを目指します。そのための方法の一つが「補法」です。 補法とは、弱った体の機能を高め、健康な状態へと回復させるために、不足している気、血、水を補う治療法です。 例えば、疲れやすい、息切れしやすいといった症状は、「気」の不足が原因と考えられます。このような場合には、高麗人参やなつめといった「気」を補う効果のある生薬を用いた漢方薬を処方したり、鍼灸治療で特定のツボを刺激したりすることで、「気」の巡りを促し、症状の改善を図ります。 また、めまい、立ちくらみ、顔色が悪いといった症状は、「血」の不足が考えられます。この場合は、「血」を補う効果のある当帰や芍薬といった生薬を用いたり、食事療法ではレバーやほうれん草など鉄分を多く含む食材を積極的に摂るように指導したりします。 さらに、補法は、病気の予防や健康増進にも役立ちます。体質や体調に合わせた適切な補法を行うことで、病気に対する抵抗力を高め、健康な状態を長く保つことができるのです。
慢性疾患

東洋医学が診る肺痿:慢性咳嗽とその治療

- 肺痿とは -# 肺痿とは 肺痿は、東洋医学で使われる病名の一つで、長引く咳を主な症状とする肺の病気を指します。現代医学の慢性閉塞性肺疾患(COPD)や慢性気管支炎などと共通する部分も多いと考えられていますが、西洋医学の診断名と完全に一致するわけではありません。 肺痿の特徴は、単なる咳だけでなく、呼吸のたびにヒューヒュー、ゼーゼーといった音がする、少し動いただけで息が切れる、痰が絡むといった症状を伴うことです。これらの症状は、肺の働きが衰え、呼吸によって体の中に十分な酸素を取り込めなくなることで起こります。 東洋医学では、肺は呼吸をつかさどるだけでなく、体の中に気を取り込み、全身に巡らせる働きがあるとされています。この気の流れが滞ったり、不足したりすることで、肺痿は引き起こされると考えられています。 肺痿の原因は、体質や生活習慣、環境など、様々な要因が考えられます。例えば、生まれつき体が弱い、風邪をひきやすい、タバコを吸う、冷たい空気を吸いすぎる、辛いものや脂っこいものを食べ過ぎるなども、肺に負担をかけ、肺痿の原因となることがあります。 肺痿の治療は、肺の機能を高め、気の流れを改善することを目的として行われます。漢方薬の使用、鍼灸治療、食事療法、呼吸法など、様々な方法を組み合わせて、患者さんの状態に合わせていきます。
漢方の治療

陰を養い風を鎮める:滋陰熄風のススメ

- 滋陰熄風とは -# 滋陰熄風とは 滋陰熄風は、東洋医学における治療法の一つで、体のバランスを整え、様々な不調を改善することを目指します。この治療法は、「陰」と「陽」という相反する二つの要素のバランスを重視する東洋医学の基本的な考え方に基づいています。 「陰」は、静かで落ち着いた状態、冷やす力、物質的な基礎などを表し、「陽」は、活動的で温かい状態、温める力、機能的な側面などを表します。健康な状態を保つためには、この陰と陽が互いに調和し、バランスを保っていることが重要です。 滋陰熄風では、体内の「陰」が不足し、「陽」が相対的に亢進している状態を改善することを目指します。この状態は、東洋医学では「陰虚陽亢(いんきょようこう)」と呼ばれ、めまい、耳鳴り、不眠、動悸、のぼせ、ほてり、便秘などの症状が現れると考えられています。 「滋陰」は、不足している「陰」を補うことを意味し、「熄風」は、亢進した「陽」の働きを鎮めることを意味します。具体的には、食事療法、漢方薬、鍼灸、マッサージ、気功など、様々な方法を用いて、陰陽のバランスを整え、症状の改善を図ります。 滋陰熄風は、西洋医学では治療が難しいとされる、更年期障害、自律神経失調症、慢性疲労症候群などの症状にも効果が期待できるとされ、近年注目を集めています。
その他

東洋医学における剛痙:熱と寒の間

- 剛痙とは -# 剛痙とは 剛痙とは、東洋医学の観点からみた、熱を伴う痙攣の一種です。痙攣は一般的に筋肉の収縮によって起こりますが、剛痙は高熱に伴って現れる点が特徴です。急激な体温上昇によって一時的に脳の働きが乱れることで、全身の筋肉が固まり、突っ張ったような状態に陥ります。西洋医学では、主に乳幼児期に多く見られる熱性痙攣として認識されています。一方、東洋医学では、体質やその時の体調、周囲の環境など、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。 例えば、体質として「熱証」と呼ばれる、体内に熱がこもりやすい人は、剛痙を起こしやすいと考えられています。また、暴飲暴食や睡眠不足、過労などで体のバランスが崩れている時や、季節の変わり目で気温の変化が激しい時なども、発症のリスクが高まります。 東洋医学では、剛痙は一時的な症状として捉え、発症の原因を取り除くことで、自然と治癒に向かうと考えられています。しかし、症状が重い場合や、繰り返す場合は、専門家の診察を受けることが大切です。
漢方の治療

東洋医学における熄風解痙:内なる風を鎮める治療法

- 熄風解痙とは -# 熄風解痙とは 熄風解痙は、東洋医学における重要な治療法の一つであり、体内のバランスを整えることを目的としています。この治療法で特に着目するのが、「内風」と呼ばれる病態です。東洋医学では、体内のエネルギーである「気」の流れが乱れることで、様々な不調が現れると考えられています。この乱れた状態が過剰になると、「風」と呼ばれる状態になり、さらに悪化すると「内風」となると考えられています。 内風は、まるで体の中に強い風が吹き荒れているような状態であり、様々な症状を引き起こすとされています。めまいやふらつき、手足の震え、筋肉の痙攣、意識がはっきりしないといった神経系の症状が現れることがあります。また、高血圧に伴う頭痛や耳鳴り、言語障害なども、内風と関連付けられることがあります。 熄風解痙は、その名の通り、この「内風」を鎮め、「気」の流れを正常に戻すことを目指した治療法です。具体的には、漢方薬を用いて体質や症状に合わせて治療を行います。さらに、鍼灸治療でツボを刺激し、「気」の流れを整えることで、内風から引き起こされる様々な症状の緩和を目指します。
漢方の治療

東洋医学における熄風止痙:内風を鎮める

- 熄風止痙とは -# 熄風止痙とは 熄風止痙は、東洋医学における治療法の一つで、体の内部に生じた「内風」という病的な状態に対処するために用いられます。これは、その名の通り「風を消して痙攣を止める」という意味を持ちます。 東洋医学では、体の中に「気」と呼ばれる生命エネルギーが絶えず循環しており、この「気」の流れが乱れることで様々な不調が現れると考えられています。「内風」は、この「気」の流れが乱れ、まるで体の中に風が吹き荒れているかのように、コントロールできない動きや痙攣、震えなどを引き起こす状態を指します。 熄風止痙はこの「内風」を鎮めることで、これらの症状を和らげることを目的とした治療法です。具体的には、「内風」の原因となる過剰な熱や湿気を取り除き、「気」の流れを整える生薬や鍼灸などを用います。 熄風止痙は、筋肉の痙攣や顔面神経麻痺、パーキンソン病、てんかん、小児の夜泣きなど、様々な症状に効果があるとされています。しかし、自己判断で治療を行うことは大変危険です。これらの症状でお悩みの方は、必ず専門家の診断を受けて適切な治療を受けるようにしてください。
漢方の治療

東洋医学における熄風: 内風証治療の解明

- 熄風とは -# 熄風とは 「熄風(そくふう)」とは、東洋医学における治療法の一つで、体内で過剰に生じた「風」の動きを抑え、鎮めることを目的としています。 東洋医学では、自然界と同様に人体にも「風」「寒」「暑」「湿」「燥」「火」の六つの気、いわゆる「六淫(りくいん)」が影響を与えると考えられています。これらの「六淫」は、気候や環境の変化、生活習慣の乱れなどによって、体内に入り込み、心身のバランスを崩し、様々な不調を引き起こすとされています。 「風」は、その中でも特に動きが激しく、体内を巡りやすく、体の様々な場所に影響を与えるため、注意が必要とされています。「風」が原因で起こる症状としては、めまい、ふらつき、震え、痙攣、顔面神経麻痺、皮膚のかゆみ、発疹などがあります。 熄風は、これらの「風」が原因で起こる症状を改善するために、漢方薬の処方、鍼灸治療、マッサージ、食事療法、生活習慣の改善など、様々な方法を組み合わせて行われます。 例えば、漢方薬では、「風」を取り除き、体の機能を整える働きのある生薬が用いられます。また、鍼灸治療では、「風」が溜まっている経絡やツボに鍼やお灸を施すことで、「風」の動きを調整し、症状の改善を促します。 熄風は、「風」によって引き起こされる様々な症状に対して、根本的な原因を取り除き、体のバランスを整えることを目的とした、東洋医学ならではの治療法と言えるでしょう。
内臓

東洋医学における腸痹:その原因と症状

- 腸痹とは -# 腸痹とは 「腸痹」とは、東洋医学における概念で、食べ物の消化や吸収、便の排泄といった、腸の働きが滞ってしまう状態を指します。現代医学でいう過敏性腸症候群(IBS)や慢性便秘といった病気と重なる部分もありますが、東洋医学では、体内の「気・血・水」のバランスの乱れが深く関係していると捉えています。 「気」は生命エネルギー、「血」は血液とその循環機能、「水」は体液の総称です。これらが滞りなくスムーズに流れることで健康が保たれると考えられていますが、何らかの原因でこのバランスが崩れると、様々な不調が現れると考えられています。腸痹の場合は、特に「気」の滞りである「気滞」が大きく影響し、腸の蠕動運動が低下することで、腹痛や便秘、下痢といった症状が現れると考えられています。 また、「冷え」も腸痹の原因の一つとされています。東洋医学では、冷えは身体を温める働きを持つ「陽気」が不足した状態と考えます。冷えによって腸の働きが弱まり、消化吸収機能や排泄機能が低下してしまうのです。 さらに、東洋医学では、心と身体は密接に繋がっていると考えられており、ストレスや不安、緊張といった精神的な要因も腸痹に影響を与えると考えられています。過度なストレスを感じると「気」の流れが乱れやすくなり、その結果として腸の働きにも悪影響を及ぼしてしまうのです。 このように、腸痹は「気・血・水」の乱れや冷え、心の状態など、様々な要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。