病理

その他

熱極生風:東洋医学における熱と痙攣の関係

- 東洋医学における熱 東洋医学では、人間の身体は自然の一部であり、自然界と調和することで健康を保つと考えられています。この調和が崩れると、様々な不調が現れると考えられており、その原因の一つとして「熱」が挙げられます。 熱は、体内のエネルギーの流れが滞ったり、バランスが崩れて過剰になった状態を指します。現代医学でいう体温とは異なり、感覚的に感じる熱さや、炎症、発熱などを含む幅広い概念です。 この熱は、体内の特定の場所に留まることがあります。例えば、胃に熱がこもると、口渇や便秘、胃の痛みなどを引き起こすとされています。また、熱は体内を移動することもあり、その結果、様々な症状が現れると考えられています。例えば、熱が上に昇ると、顔面が赤くなる、のぼせる、頭痛などの症状が現れ、下に下がると、下痢や頻尿を引き起こすとされています。 東洋医学では、熱の原因や症状に合わせて、食事療法や鍼灸、漢方薬などを用いて、身体のバランスを整え、熱を取り除くことで健康を取り戻すことを目指します。
内臓

肝陽偏旺:その原因と症状

- 肝陽偏旺とは -# 肝陽偏旺とは 東洋医学では、健康を保つためには、体内の「陰」と「陽」という相反する二つの気が調和していることが重要だと考えられています。この陰陽のバランスが崩れ、陽の気が過剰に強くなる状態を「陽亢」と言います。 「肝陽偏旺」または「肝陽上亢」とは、この陽亢が肝に起こった状態を指します。肝は、東洋医学では「疏泄(そせつ)」という、気の流れをスムーズにする働きを担うと考えられています。 肝陽偏旺になると、この疏泄作用が過剰になり、気が上に昇りすぎる状態になります。その結果、のぼせやイライラ、怒りっぽくなる、めまい、頭痛、目の充血、耳鳴り、不眠などの症状が現れることがあります。 肝陽偏旺は、ストレスや過労、睡眠不足、食生活の乱れ、感情の起伏などが原因で引き起こされると考えられています。また、体質的に肝陽が亢進しやすい人もいます。 肝陽偏旺を改善するためには、生活習慣の見直しやストレス解消、食養生などが大切です。症状が重い場合は、漢方薬を用いた治療も行われます。
内臓

肝気犯脾:胃腸の不調と感情の関係

- 肝気犯脾とは -# 肝気犯脾とは 東洋医学では、目に見えない生命エネルギーが体の中をくまなく巡っているとされ、これを「気」と呼びます。気は、体の各臓腑を活発に動かし、健康を保つために欠かせないものです。 体の働きを保つには、この気が滞りなくスムーズに流れることが重要です。 感情や精神活動を司るのが「肝」の働きであり、飲食物から栄養を吸収するのが「脾」の働きです。 肝気犯脾とは、怒りやストレス、感情の抑圧などによって肝の気が上昇し、その影響が脾にまで及んでしまう状態を指します。 脾は、胃と共に消化吸収を担う重要な臓腑ですが、肝の気が過剰に脾を刺激してしまうことで、脾の働きが弱まり、消化不良や食欲不振、腹部膨満感、下痢などの症状が現れます。 例えば、仕事で大きなストレスを抱えている人が、胃痛や食欲不振を起こしてしまうのは、肝気犯脾が原因の一つと考えられます。 また、イライラしやすかったり、気分が落ち込みやすかったりするのも、肝の気の流れが滞っているサインかもしれません。 肝気犯脾を改善するには、ストレスを溜め込まないこと、十分な睡眠をとること、適度な運動をすることなどが大切です。 また、暴飲暴食を避け、消化の良いものを食べるように心がけましょう。
内臓

東洋医学における水氣凌心

- 水氣凌心の概念 水氣凌心とは、東洋医学における重要な概念の一つで、体内の水分バランスが崩れ、心臓に負担がかかっている状態を指します。 東洋医学では、人間は自然の一部と捉え、生命活動の源となる「氣」が体の中をくまなく巡っていると考えられています。この「氣」は、体内の水分代謝にも深く関わっており、「氣」の流れが滞ると、水が正常に代謝されずに体内に溜まってしまうと考えられています。 この過剰な水分が、やがて心臓に影響を及ぼし始めると、動悸や息切れ、むくみといった様々な症状が現れます。さらに悪化すると、めまい、息苦しさ、冷えなどを引き起こし、日常生活に支障をきたすこともあります。 水氣凌心の原因は、気候や食生活の乱れ、過労、精神的なストレスなど、様々な要因が考えられます。特に、冷えやすい食べ物や飲み物の摂り過ぎは、体内の水分の代謝を悪くし、水氣凌心を招きやすいとされています。 東洋医学では、水氣凌心の治療として、「氣」の流れを整え、水分の代謝を促進することを目的とした治療が行われます。具体的には、漢方薬の処方、鍼灸治療、食事療法、生活習慣の改善などが挙げられます。
その他

心の乱れは「痰火擾心」から?:東洋医学の視点

- 東洋医学における「心」 東洋医学において、「心」は生命活動の根幹を担う重要な器官として位置づけられています。西洋医学では心臓は血液を循環させる臓器として捉えられますが、東洋医学では単なる血液の循環器官ではなく、人間の精神活動や意識、思考などをつかさどる、より広範囲な役割を担うものと考えられています。 東洋医学の考えでは、「心」は五臓六腑の中心に位置し、他の臓腑と密接に関係しながら、生命活動を維持しています。精神活動や意識、思考といった目に見えない働きも、「心」の重要な機能です。感情の起伏や思考の混乱、睡眠の質なども、「心」の働きと密接に関係しています。 つまり、東洋医学における「心」は、西洋医学的な心臓の機能に加えて、人間の精神活動や感情、意識といった目に見えない部分を包括的に表す概念と言えるでしょう。
内臓

東洋医学における下厥上冒:その原因と症状

- 下厥上冒とは -# 下厥上冒とは 東洋医学では、健康な状態を保つためには、体内のエネルギーである「気」が滞りなく巡っていることが重要であると考えられています。この「気」には、大きく分けて2つの種類があります。1つは、天から降りてきて体内を温めたり、栄養を上に巡らせたりする働きを持つ「清気」です。もう1つは、地面から吸収され、老廃物を排泄したり、不要なものを下に降ろしたりする働きを持つ「濁気」です。 通常、清気は上に昇り、濁気は下に降ります。しかし、この流れが逆転してしまうことがあります。東洋医学では、これを「下厥上冒」と呼びます。つまり、下厥上冒とは、本来ならば体の上部である頭や顔、心臓などに昇っていくべき「清気」が下に降りてしまい、逆に体の下部である胃腸や足などに降ろすべき「濁気」が上に昇ってしまう状態を指します。 下厥上冒が起こると、体の様々な場所に不調が現れると考えられています。例えば、清気が頭に昇らず濁気が頭に昇ってしまうことで、頭痛やめまい、のぼせ、顔面紅潮などが起こりやすくなります。また、清気が下に降りてしまうことで、冷え性や下痢、むくみなどが起こりやすくなることもあります。 下厥上冒は、過労や睡眠不足、ストレス、暴飲暴食、冷えなど、様々な要因によって引き起こされると考えられています。
その他

気随液脱:深刻な脱水を理解する

- 体液と生命エネルギーの関係 東洋医学では、人間の身体は「気」と呼ばれる生命エネルギーによって活動していると考えられています。この「気」は、目には見えないものの、全身をくまなく巡り、身体の様々な機能を支えています。まるで、太陽の光が地球を照らし、生命を育むように、「気」は私たちの身体を内側から温め、活動の源となっているのです。 そして、この「気」は、血液やリンパ液などの体液と密接な関係があります。体液は「気」の乗り物に例えられ、「気」を身体の隅々まで運び届ける役割を担っています。川の流れがスムーズであれば、船は速やかに目的地へ到着できます。これと同じように、体液が潤沢に存在することで、「気」もまたスムーズに体内を循環し、健康を維持することができるのです。 反対に、体液が不足すると、「気」の流れは滞り、身体の機能は低下してしまいます。これは、干上がった川では船が動けなくなるのと同じです。体液の不足は、「気」の不足にも繋がり、様々な不調として現れると考えられています。例えば、冷えやむくみ、肌の乾燥、便秘、疲労感などは、体液不足によって「気」の循環が悪くなっているサインかもしれません。 東洋医学では、健康を保つためには、「気」を養い、体液を潤すことが大切だと考えられています。食事や睡眠、適度な運動など、日々の生活習慣を見直し、「気」と体液のバランスを整えるように心がけましょう。
体質

東洋医学における津虧血瘀:その関係と影響

- 津虧血瘀とは -# 津虧血瘀とは 東洋医学において、体の不調は、体内の「気・血・水」のバランスが崩れることで起こると考えられています。その中でも、「津虧血瘀(しんきけつお)」は、体の潤いである「津」が不足し、血液の流れである「血」が滞っている状態を指します。これは、体の水分代謝と血液循環が密接に関係しているという東洋医学の考えに基づいています。 津は、唾液や涙、消化液など、体内の水分全般を指し、栄養を体の隅々まで運び、老廃物を排出する重要な役割を担っています。この津が不足すると、体が乾燥し、栄養が行き渡らず、老廃物が溜まりやすくなります。 一方、血瘀とは、血液循環が悪くなり、体に様々な不調を引き起こす状態を指します。血瘀が起こると、体に必要な酸素や栄養が十分に行き渡らなくなり、老廃物も排出されにくくなります。 津虧血瘀は、これらの要素が複雑に絡み合った結果として現れる病態と言えるでしょう。例えば、津液不足によって血液がドロドロになると、血流が悪くなり、血瘀を引き起こしやすくなります。また、血瘀によって体の組織に栄養や酸素が行き渡らなくなると、さらに津液が不足するという悪循環に陥ってしまうこともあります。 津虧血瘀は、めまい、動悸、息切れ、冷え性、便秘、肌の乾燥、シミ、しわなど、様々な症状を引き起こす可能性があります。これらの症状が現れた場合は、東洋医学に基づいた治療が必要となるでしょう。
漢方の診察

深刻化する体の水不足「津脱」とは

- 体の水分を司る「津」 東洋医学では、人間の体は「気・血・津液」という3つの要素で成り立っているとされています。西洋医学でいう体液に相当する「津液」は、栄養を体の隅々まで行き渡らせたり、老廃物を排泄したりするなど、健康を維持するために欠かせないものです。この津液は、大きく「津」と「液」に分けられます。 「液」は、血液のように体内を循環する水分のことです。一方、「津」は、体表面に近い部分に存在する、さらさらとした水分のことを指します。汗や涙、唾液、胃液などが「津」に当てはまります。 「津」は、体にとって重要な役割を担っています。例えば、皮膚や粘膜の表面を潤して乾燥を防ぎ、外部からの刺激や細菌から体を守っています。また、汗として体温調節をしたり、涙で目を保護したり、唾液で消化を助けたりと、様々な働きをしています。 「津」が不足すると、肌の乾燥や目の乾き、口の渇き、便秘などの症状が現れます。また、風邪などの感染症にかかりやすくなることもあります。これは、体の防御機能が低下するためです。 健康を維持するためには、「津」を十分に補給することが大切です。水分をこまめに摂取したり、消化の良い食べ物を食べたりするなど、生活習慣に気を配りましょう。
血液

大量出血と気:氣隨血脫について

{東洋医学では、目には見えないけれど、私たちが生きていくためのエネルギー源となっている「気」というものが、全身をくまなく巡っています。この「気」は、体の中を循環する血液と非常に深い関係にあり、血液の流れに乗って体の隅々まで運ばれると考えられています。「氣隨血脫」とは、大怪我や大量出血などによって血液が大量に失われてしまうと、この「気」までもが一緒に体の外に逃げていってしまうことを意味します。この状態に陥ると、単に血液の量が減るだけでなく、生命エネルギーそのものが著しく弱まってしまうため、非常に危険な状態と言えます。まるで、川の水量が減るだけでなく、水源そのものが枯渇してしまうようなもので、生命活動の根幹を揺るがす深刻な事態となるのです。
血液

血不循經:溢血を生む病態

- 血不循經とは -# 血不循經とは 東洋医学では、生命エネルギーである「気・血・水」が体内をくまなく巡り、身体の各組織に栄養を与え、機能を維持していると考えられています。この流れをスムーズに行うための道筋を「経脈」と呼びます。 「血不循經」とは、読んで字のごとく、血液が正常な経路である経脈を循(めぐ)らず、溢れ出てしまう病的な状態を指します。これは、西洋医学でいうところの「溢血」にあたり、血管が損傷し、血液が血管の外に漏れ出てしまうことを意味します。 出血のように体外に血液が流れ出すわけではなく、血管の外にある組織や臓腑などに血液が滲み出てしまう状態を指し、内出血や皮下出血などが代表的な例です。さらに、脳などの重要な臓器で起こる脳出血も含まれます。 東洋医学では、この「血不循經」は、気の乱れや血の滞りなどが原因で起こると考えられています。例えば、激しい感情の変動やストレス、過労、冷え、食生活の乱れなどが、気の巡りを阻害し、血液の循環を滞らせ、血管に負担をかけることで発症すると考えられています。 「血不循經」は、その症状が現れた部位や程度によって、様々な治療法が選択されます。漢方薬の服用、鍼灸治療、食事療法、生活習慣の改善など、心身のバランスを整え、気血の巡りを改善することで、根本的な体質改善を目指します。
血液

東洋医学における血不歸經:溢血のメカニズム

- 血不歸經とは 東洋医学では、血液は血管の中を規則正しく巡り、全身に栄養を届ける役割を担っています。さらに、血液は単なる肉体的なものにとどまらず、精神活動にも深く関わっていると考えられています。 この血液の流れが、何らかの原因で乱れてしまい、本来であれば血管の中を流れるべき血液が、血管の外に溢れ出てしまう病理状態を、血不歸經(けつふっきょう)と呼びます。 血不歸經は、西洋医学の出血と類似した概念ですが、単に出血という現象面だけでなく、なぜ血液が血管の外に出てしまうのか、体の状態や原因までを含めて考える点が大きく異なります。東洋医学では、身体の内側にある不調が、血不歸經という形で表面に現れると考えられています。 例えば、怪我などによる出血も血不歸經の一つですが、月経異常や痔、吐血、下血なども、血不歸經の症状として捉えられます。
血液

東洋医学における気と血の関係:気病及血

気と血生命エネルギーの調和 東洋医学では、人間の健康は「気」と「血」という二つの要素の調和によって成り立っていると考えられています。 「気」とは、目には見えない生命エネルギーのようなもので、全身を巡り、身体のあらゆる機能を 활성化させます。呼吸や血液循環、体温調節、消化吸収、免疫力など、私たちが生きていくための活動全てに「気」が関わっているのです。 一方、「血」は、身体を滋養する役割を担います。栄養や酸素を体内に運び、老廃物を排出することで、細胞や組織を健やかに保ちます。 この「気」と「血」は、それぞれ独立したものではなく、互いに深く影響し合っています。川の両岸とそこに流れる水に例えられるように、「気」は「血」を生成し、推动する力となり、「血」は「気」を物質的に支えています。 もし、「気」が不足すると、「血」を十分に生成したり、循環させることができなくなり、冷えや倦怠感、消化不良などを引き起こします。反対に、「血」が不足すると、「気」は活動するための基盤を失い、めまいや動悸、不眠といった症状が現れます。 このように、「気」と「血」は、どちらか一方に偏りがあるのではなく、常にバランスを保つことが健康にとって重要なのです。
その他

東洋医学における血随気逆:解説

- 血随気逆とは -# 血随気逆とは 東洋医学では、私たちの体は「気」「血」「水」の3つの要素で成り立っており、これらが滞りなく巡り、バランスを保つことで健康が維持されていると考えられています。その中の要素の一つである「気」は、全身をくまなく巡り、生命活動のエネルギー源となる重要なものです。 通常、この「気」は体の上部から下部へと流れるのが自然な状態ですが、心身の疲労やストレス、不摂生などが続くと、気の働きが乱れ、本来とは逆の方向、つまり下から上へと昇ってしまうことがあります。これが「気逆」と呼ばれる状態です。 「血随気逆」とは、この乱れた気の流れに、血液が巻き込まれてしまう状態を指します。気は目に見えないエネルギーですが、血液は目に見える形で現れます。 激しい怒りや興奮、ストレスなどによって気が急に上逆すると、顔面紅潮や頭痛、めまい、動悸などが起こりやすくなります。また、慢性的な気逆によって血随気逆の状態が続くと、のぼせや耳鳴り、不眠、イライラしやすくなる、といった症状が現れることもあります。 東洋医学では、病気を捉える際に、単に症状だけを見るのではなく、その人の体質や生活習慣、心の状態などを総合的に判断します。 血随気逆も、その人の体質や生活習慣などが深く関わっていると考えられており、治療には、気の乱れを整え、気血の流れをスムーズにする漢方薬の処方や、鍼灸治療、食事療法、運動療法などが行われます。
血液

東洋医学における「血逆」:気血の乱れ

- 血逆とは 東洋医学では、生命エネルギーである「気」と血液である「血」は、全身をくまなく巡り、互いにバランスを取り合うことで健康を保つと考えられています。この流れが滞ったり、逆流したりすると体に様々な不調が現れると考えられており、その病理現象の一つに「血逆」があります。 -# 血逆とは 「血逆」とは、経絡と呼ばれる気血の通り道において、本来流れるべき方向とは逆方向に血液が流れる状態を指します。 東洋医学では、血液は単に栄養を運ぶだけでなく、「気」の作用によって温められ、全身に送られると考えられています。この血液の流れが逆流する「血逆」は、様々な体の不調を引き起こすとされています。 例えば、激しい頭痛や吐き気、めまい、顔面紅潮などが挙げられます。また、精神的な興奮状態を引き起こすとも考えられています。 「血逆」は、過労やストレス、睡眠不足、暴飲暴食など、生活習慣の乱れによって起こりやすくなるとされています。また、体質や気候の変化も影響すると考えられています。
体質

気滞から熱へ?:気鬱化火を理解する

- 気鬱化火とは -# 気鬱化火とは 東洋医学では、人の心と身体は密接に関係しており、目には見えない「気」というエネルギーが全身を巡ることで健康が維持されていると考えられています。この「気」の流れが、ストレスや不規則な生活、環境の変化などによって阻害されると、心身に様々な不調が現れます。この状態を「気滞」と呼びます。 「気滞」は、初期段階では、気分の落ち込みやイライラ、食欲不振、睡眠の質低下など、比較的軽い症状として現れます。しかし、「気滞」の状態を放置し、根本的な原因に対処せずにいると、「気」の滞りがさらに深刻化します。すると、まるで行き場を失った水が熱を帯びていくように、「気」も熱を帯び始めます。この状態を「気鬱化火」と呼びます。「気鬱化火」は、「気滞」から発展した段階であり、より深刻な症状を引き起こすとされています。 「気鬱化火」の状態になると、顔面紅潮、のぼせ、動悸、不眠、便秘、口内炎、肌荒れなど、熱の症状を伴うことが特徴です。さらに、怒りっぽくなったり、情緒不安定に陥りやすくなるなど、精神面にも影響が及びます。このように、「気鬱化火」は、心身に多岐にわたる症状を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
漢方の診察

虚実転化:病気の進行を読み解く

- 体の状態を示す「虚」と「実」 東洋医学では、体の状態を把握する上で「虚」と「実」という考え方を取り入れています。これは、体内のエネルギーの状態を表すもので、健康を保つためにはこの二つのバランスが重要であると考えられています。 「虚」とは、簡単に言うと体のエネルギーが不足している状態を指します。例えるならば、植物に必要な水や養分が不足している状態に似ています。このような状態になると、体は本来の機能を十分に発揮することができなくなり、様々な不調が現れます。 一方、「実」とは、「虚」とは反対に体内のエネルギーが過剰になっている状態を指します。これは、まるで植物に必要以上の水や肥料を与え過ぎてしまった状態と言えるでしょう。エネルギーが過剰になることで、体の働きが過剰になり、これもまた不調につながると考えられています。 東洋医学では、健康な状態を保つためには「虚」と「実」のバランスが大切であると考えられています。どちらかに偏っている状態を「不調」と捉え、その状態に合わせて、食事療法や鍼灸治療などでバランスを整えていきます。 例えば、疲れやすい、冷えやすい、食欲がないといった症状は「虚」のサインである可能性があります。反対に、顔が赤い、イライラしやすい、便秘がちといった症状は「実」のサインである可能性があります。 重要なのは、自分の体の状態を「虚」と「実」のどちらに傾いているのかを正しく見極めることです。自己判断はせず、専門家の意見を仰ぐようにしましょう。
漢方の診察

東洋医学における虚実真仮:病気の複雑な様相

- 虚実真仮とは 東洋医学の根幹をなす考え方の一つに「虚実真仮」があります。これは、病気の状態を見極めるための重要な指針であり、複雑な病状を理解する上で欠かせません。 「虚」と「実」は、身体の根本的な状態を表しています。「虚」は、生命エネルギーである「気」や「血」が不足している状態を指します。疲れやすい、息切れしやすい、食欲がないなどの症状が現れます。「実」は、反対に「気」「血」「水」などが滞ったり、偏ったりしている状態を指し、痛みや腫れ、発熱といった症状が現れます。 一方、「真」と「仮」は、表面的に現れている症状を表しています。「真」は、病気の本質的な症状を指し、根本的な治療が必要な状態です。「仮」は、一時的に現れた症状や、他の病気の影響を受けて現れた症状を指し、根本的な治療を行う前に対処する必要があります。 例えば、風邪をひいて熱が出ている場合、熱自体は「実」の状態ですが、その原因が体力の低下、つまり「虚」の状態にあると判断されれば、「虚」を補う治療が優先されます。 このように、虚実真仮は単独で判断するのではなく、組み合わせて病状を判断することが重要です。東洋医学では、この虚実真仮を判断材料に、一人ひとりの体質や状態に合わせた治療法を選択します。
漢方の診察

東洋医学における「実」

- 「実」への対応 東洋医学では、病気の状態を「虚」と「実」に分けて考えます。「実」とは、体力が十分にありながら、体に不要なものが過剰に溜まっている、あるいは体の反応が過剰になっている状態を指します。風邪の初期に見られるような、発熱や頭痛、便秘、炎症などがその代表例です。 このような「実」の状態に対しては、過剰な熱や水分、邪気などを体外に排出し、体のバランスを整える治療を行います。具体的には、発汗、瀉下、吐かせる、瘀血を取り除くといった方法が用いられます。 発汗には、生姜や葛根など、体を温める作用のある生薬を用いた漢方薬を処方したり、鍼灸治療で特定のツボを刺激したりする方法があります。瀉下には、大黄や芒硝など、便通を促す作用のある生薬を用いた漢方薬を処方します。吐かせる方法としては、甘草を用いた漢方薬を処方するほか、嘔吐反射を促すツボを刺激する鍼灸治療などが行われます。瘀血を取り除くには、当帰や紅花などの生薬を用いた漢方薬が処方されます。 ただし、自己判断でこれらの方法を試みることは大変危険です。自分の体質や症状に合った適切な治療を受けるためには、必ず専門家の診断と指示に従ってください。自己判断による治療は、症状の悪化や予期せぬ副作用を引き起こす可能性があります。
漢方の診察

東洋医学における寒熱格拒とは

- 寒熱格拒とは -# 寒熱格拒とは 寒熱格拒とは、東洋医学において体のバランスが大きく崩れた、極めて複雑な病態を指します。 これは、単に体が冷えている、あるいは熱を持っているというような、一過性の状態とは全く異なるものです。 私たちの体には、外部からの邪気(病気の原因となるもの)の侵入を防ぎ、体内の状態を一定に保とうとする働きが備わっています。しかし、過労やストレス、暴飲暴食などによってこの働きが弱まると、本来は体に害のない程度の寒邪や熱邪であっても、過剰に体内に侵入し、深刻な病を引き起こすことがあります。これが寒熱格拒です。 寒熱格拒では、体の防御機能が正常に働かなくなるため、本来であれば温められるべき手足の先は冷たくなり、逆に冷やされるべき体の中心部は異常に熱を持つなど、体の温度調節機能が乱れ、本来あるべき状態とは逆の状態に陥ってしまいます。 例えば、真冬なのに熱いものを欲したり、真夏なのに厚着をしないと落ち着かなかったりするのは、寒熱格拒によって体の感覚が麻痺している状態だと考えられています。 寒熱格拒は、放置するとさらに複雑な病気を引き起こす可能性もあるため、体の異変を感じたら、自己判断せずに速やかに専門家にご相談ください。
体質

東洋医学における「実寒」とは?

- 実寒とは 東洋医学では、病気の原因を身体の外側から侵入してくる邪気と考えることがあります。この邪気は、風邪や暑さ、湿気、乾燥など、自然界に存在する様々な要因とされています。その中でも、冷えの性質を持つものを「寒邪」と呼びます。 実寒とは、この寒邪が身体の奥深くにまで入り込み、身体の機能が低下した状態を指します。冬の厳しい寒さや冷房の効いた室内に長時間いること、冷たい飲食物の過剰摂取などが原因で、身体が冷え切ってしまい、様々な不調を引き起こします。 実寒の状態になると、身体は冷えから守ろうとして、熱を生み出そうとします。その結果、身体が緊張し、気や血の流れが滞りやすくなります。気や血の流れが滞ると、身体の隅々まで栄養や温かい血液が行き渡らなくなり、臓腑の働きも弱まってしまいます。 実寒の症状としては、冷えやすい、寒がり、顔色が悪い、手足の先が冷たい、腰やお腹が冷える、下痢しやすい、尿量が多い、むくみやすい、生理痛が重い、生理不順などの症状が現れます。 実寒は、放置すると様々な病気の原因となる可能性があります。普段から身体を冷やさないように心がけ、食生活や生活習慣を見直すことが大切です。
漢方の診察

東洋医学における寒熱:陰陽のバランスと健康

- 寒熱とは 東洋医学では、健康を保つためには体内の陰と陽のバランスが重要であると考えられています。この陰陽は、自然界のあらゆる現象を二つの相反する性質で捉える考え方で、陰は静かで冷たい性質を、陽は動的で温かい性質を表します。 人間の体もまた、この陰陽のバランスによって健康が保たれており、バランスが崩れてどちらかに偏ると不調が現れると考えられています。この陰陽のバランスの乱れ、特に冷えや熱といった体の状態を表す概念の一つに「寒熱」があります。 寒熱は、文字通り「寒」と「熱」を表し、体の状態が冷えているか熱っぽいかを示す指標となります。例えば、風邪をひいた時に感じる悪寒や発熱は、寒熱の分かりやすい例です。 東洋医学では、この寒熱を判断することで、体の状態をより詳しく把握し、その人に合った治療法を選択していきます。単に熱があるからといって解熱剤を処方するのではなく、なぜ熱が出ているのか、体のどこに原因があるのかを突き止めることが重要だと考えます。 寒熱は、病気の診断だけでなく、体質やその時の体調を判断する上でも重要な指標となります。普段から自分の体の状態を観察し、寒熱のバランスを整えることで、健康維持に役立てることができます。
その他

東洋医学における裏病出表:健康への道のり

- 裏病出表とは 裏病出表とは、東洋医学、特に漢方医学において、病気が治癒に向かう過程を表す重要な概念です。 漢方医学では、人の体は「気」という生命エネルギーが循環することで健康が保たれていると考えます。この「気」には、生まれながらに体に備わる「正気」と、病気の原因となる外部からの邪気である「病邪」の二つがあります。 健康な状態とは、体内の正気と病邪がバランスを保っている状態を指します。 しかし、過労や暴飲暴食、冷えなどによって体の抵抗力が弱まると、病邪が体内に侵入し、正気との間で攻防戦が始まります。 この戦いの結果、病邪が体表面に向かって押し出され、体外へ排出されることで、体は回復に向かいます。 この病邪が体外へ排出される過程こそが「裏病出表」と呼ばれるものです。 例えば、風邪をひいた際に発熱や咳、鼻水などの症状が出ますが、これは体内の病邪と正気が戦っている証拠であり、病邪が体外へ排出されようとしている状態を表しています。 つまり、裏病出表は単なる症状の悪化ではなく、体が本来持つ自然治癒力によって病気を治そうとする過程であると言えます。
漢方の診察

東洋医学における「表邪入裏」:病の進行を探る

- 病邪の侵入経路 東洋医学では、病気を引き起こす原因を「病邪」と呼びます。この病邪は、私たちの身の回りにある様々な要因が変化し、体に悪影響を及ぼすものと考えられています。例えば、寒すぎる気温や過労、暴飲暴食なども病邪となりえます。 この病邪は、主に体の外から内側へ侵入してきます。その経路は様々ですが、代表的なものをいくつか紹介しましょう。 まず、口や鼻は、空気中に漂うウイルスや細菌などが侵入しやすい経路です。風邪やインフルエンザなどは、この経路を通じて病邪が侵入することが多いです。 また、皮膚も病邪の侵入経路となります。傷口から細菌が入り込んだり、寒気が直接体に影響を及ぼしたりすることがあります。 さらに、目も病邪の侵入経路の一つです。アレルギー物質やウイルスなどが、目から侵入し、結膜炎などを引き起こすことがあります。 このように、病邪は様々な経路から私たちの体に侵入しようとします。東洋医学では、これらの侵入経路を理解し、病邪から身を守る予防法を大切にしています。日々の生活の中で、寒さや暑さ、湿気などから体を守る工夫をしたり、栄養バランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけることが、病気を予防し、健康な体を維持するために重要です。