東洋医学における経絡のつながり:循經傳

東洋医学における経絡のつながり:循經傳

東洋医学を知りたい

先生、『循經傳』ってどういう意味ですか?

東洋医学研究家

「循經傳」は、簡単に言うと、風邪などの病気が体の中を一定の経路で移動していくことを指すよ。例えば、最初は体の表面に近い経路を病気が進み、次第に奥深くへと進んでいくイメージだね。

東洋医学を知りたい

体の表面に近い経路から奥に進んでいくんですか?具体的にはどんな風に?

東洋医学研究家

例えば、太陽、陽明、少陽という経路を通って病気が進むと、体の表面から徐々に内側へと病気が進行していくんだ。さらに、太陰、少陰、厥陰と進むと、今度は体の奥深くまで病気が入り込んでしまうんだよ。

循經傳とは。

東洋医学では、病気が経絡を伝って広がっていくことを『循經傳』といいます。これは、太陽、陽明、少陽、太陰、少陰、厥陰という順番で伝わっていくと考えられています。

経絡と傷寒

経絡と傷寒

– 経絡と傷寒

-# 経絡と傷寒

東洋医学では、私たちの身体には「気」と呼ばれる生命エネルギーが流れており、そのエネルギーの通り道が「経絡」だと考えられています。この経絡は、体中に網の目のように張り巡らされており、体内の臓腑と体表面を繋いでいます。そして、気や血を体中に巡らせることで、私たちの健康を維持する上で重要な役割を担っています。

この経絡の働きが、何らかの原因で乱れてしまうと、身体全体のバランスが崩れ、様々な不調が現れると考えられています。例えば、気の流れが滞ると、その部分に痛みが生じたり、冷えを感じたりすることがあります。

一方、「傷寒」とは、風邪やインフルエンザなど、主に寒さによって引き起こされる病気の総称です。東洋医学では、この傷寒の原因となる邪気が、体内に侵入すると、経絡を伝って体内を移動し、様々な症状を引き起こすと考えられています。

例えば、傷寒の邪気が肺に侵入すると咳や鼻水、喉の痛みなどを引き起こし、胃に侵入すると吐き気や下痢などを引き起こすとされています。このように、傷寒は、体内に入った場所によって症状が異なると考えられており、その伝播経路を示したものが「循經傳」です。

「循經傳」は、傷寒がどの経絡を伝って体内を移動するかを示したもので、治療を行う上で重要な指針となります。東洋医学では、傷寒の症状や経過、そして「循經傳」などを参考にしながら、患者さん一人ひとりの体質や状態に合わせた治療を行っていきます。

概念 説明 関連
経絡 生命エネルギー「気」の通り道。体内の臓腑と体表面を繋ぎ、気や血を巡らせる。 経絡の乱れは、様々な不調の原因となる。
傷寒 風邪やインフルエンザなど、寒さによって引き起こされる病気の総称。 傷寒の邪気は経絡を伝って体内を移動し、様々な症状を引き起こす。
循經傳 傷寒がどの経絡を伝って体内を移動するかを示したもの。 傷寒の治療を行う上で重要な指針となる。

循經傳の順序

循經傳の順序

– 循經傳の順序

循經傳とは、外から侵入した病邪が体内の経絡というエネルギーの通り道に沿って、一定の法則で伝播していくことを指します。その伝播の順序は、太陽、陽明、少陽、太陰、少陰、厥陰の六段階に分けられ、それぞれに属する経絡を病邪が侵していくと考えられています。

まず、病邪は体の表面にある太陽経に侵入します。太陽経は膀胱経と小腸経からなり、まさに体の防御の最前線を担っています。このため、風邪などの外邪は最初に太陽経を侵し、悪寒や発熱といった症状が現れます。

次に、病邪がさらに深部に侵入すると、陽明経(胃経と大腸経)が侵されます。陽明経は消化機能と関係が深く、食欲不振や便秘、発熱などがみられます。さらに病邪が進展すると、少陽経(三焦経と胆経)へと侵入します。三焦経は体の水液代謝、胆経は気の流れを調整する働きがあり、この段階では、胸苦しさや脇腹の痛み、口苦といった症状が現れます。

太陽経、陽明経、少陽経はまとめて「三陽経」と呼ばれ、主に体の外側を走行し、外邪の侵入を防ぐ役割を担っています。三陽経からさらに病邪が深まると、今度は体の内側を走行する「三陰経」である太陰経(脾経と胃経)、少陰経(心経と小腸経)、厥陰経(肝経と心包経)へと伝播していきます。三陰経に病邪が及ぶと、臓腑の機能が低下し、慢性的な病気になりやすいと考えられています。

このように、循經傳は病邪が体内のどの段階まで侵入しているのかを示すものであり、東洋医学における病気の診断や治療の重要な指針となっています。

段階 経絡 主な症状 役割
太陽 膀胱経、小腸経 悪寒、発熱 体の外側を走行し、外邪の侵入を防ぐ(三陽経)
陽明 胃経、大腸経 食欲不振、便秘、発熱
少陽 三焦経、胆経 胸苦しさ、脇腹の痛み、口苦
太陰 脾経、胃経 体の内側を走行し、臓腑の機能を調整(三陰経)
少陰 心経、小腸経
厥陰 肝経、心包経

六つの段階と症状

六つの段階と症状

– 六つの段階と症状

病気の原因となる邪気が体内に侵入すると、その影響は体の表面から深部へと、時間をかけて進行していきます。東洋医学では、この邪気の侵入経路を六つの段階に分けて考え、それぞれの段階を太陽経、陽明経、少陽経、太陰経、少陰経、厥陰経と呼びます。それぞれの段階には特徴的な症状が現れ、これを「六経弁証」と呼びます。

まず、体の最も外側である皮膚や筋肉などを通る太陽経の段階では、風邪の初期症状である悪寒や頭痛、発熱といった症状が現れやすくなります。

次に、邪気が胃腸などの消化器系を司る陽明経に入ると、高熱や便秘、腹痛といった症状が現れます。これは、邪気が体のより深い部分に侵入し、体の防衛機能が激しく反応している状態です。

太陽経と陽明経の間にある少陽経では、口が苦い、めまい、胸苦しさといった、体の内部と外部の中間領域である、気の流れが滞ることで起こる症状が現れやすくなります。

邪気がさらに深部に入り込み、脾臓や胃など消化吸収を担う太陰経に達すると、食欲不振や下痢、倦怠感といった、消化機能の低下を示す症状が現れます。

そして、生命活動の根幹を担う腎臓や心臓などの臓腑が属する少陰経では、冷えや動悸、息切れといった、生命力が弱まっていることを示す症状が現れます。

最後の厥陰経は、心包や肝臓など、精神活動や自律神経に関わる臓腑が含まれ、意識障害や痙攣といった、生命の危機に直面するような重篤な症状が現れる可能性があります。

このように、六経弁証は、病状の進行度合いを判断するだけでなく、それぞれの段階における適切な治療法を選択する上でも非常に重要な役割を果たしています。

段階 経絡 症状 説明
1 太陽経 悪寒、頭痛、発熱 体の最も外側である皮膚や筋肉などを通る経絡で、風邪の初期症状が現れやすい。
2 陽明経 高熱、便秘、腹痛 胃腸などの消化器系を司る経絡で、邪気が体のより深い部分に侵入し、体の防衛機能が激しく反応している状態。
3 少陽経 口苦、めまい、胸苦しさ 体の内部と外部の中間領域である、気の流れが滞ることで起こる症状が現れやすい。
4 太陰経 食欲不振、下痢、倦怠感 脾臓や胃など消化吸収を担う経絡で、消化機能の低下を示す症状が現れる。
5 少陰経 冷え、動悸、息切れ 生命活動の根幹を担う腎臓や心臓などの臓腑が属する経絡で、生命力が弱まっていることを示す症状が現れる。
6 厥陰経 意識障害、痙攣 心包や肝臓など、精神活動や自律神経に関わる臓腑が含まれ、生命の危機に直面するような重篤な症状が現れる可能性がある。

循經傳と治療

循經傳と治療

– 循經傳と治療

東洋医学では、病気の治療においても、病邪が体表から体内へと侵入し、経絡を伝って進行していくという「循經傳」の考え方が非常に重要になります。

まず、患者さんの身体に現れている症状を注意深く観察し、どの経絡に影響が出ているのかを正確に見極めることから治療が始まります。例えば、風邪の初期症状である悪寒や頭痛、発熱といった症状は、風寒の邪気が体表を走っている太陽経の段階だと考えられます。そして、病状が進むにつれて、太陽経から陽明経、少陽経へと病邪が経絡を伝って深部に侵入していくと考えます。それぞれの段階や影響が出ている経絡に合わせて、経穴(ツボ)に鍼灸を施したり、漢方薬を処方したりすることで、乱れてしまった気血の流れを整え、身体本来のバランスを取り戻すことを目指します

例えば、太陽経の段階であれば、発汗を促すことで邪気を体外へと排出する治療を行います。葛根湯などの漢方薬を用いたり、身体を温めて発汗を促す施術を行ったりします。一方、病邪がより深部に侵入し、少陰経の段階まで進んでしまった場合には、身体を温める作用の強い漢方薬を用いたり、お灸などでじっくりと温める施術を行ったりすることで、衰えてしまった陽気を補う治療を行います。

このように、循經傳に基づいた治療は、身体全体のバランスを整え、自然治癒力を高めることを目的とする東洋医学の治療の根幹をなす重要な考え方です。

段階 症状 経絡 治療法
初期段階 悪寒、頭痛、発熱など 太陽経 発汗、葛根湯、身体を温める施術
進行段階 陽明経
重症段階 少陰経 身体を温める漢方薬、お灸

まとめ

まとめ

「経絡」とは、東洋医学において体の中を流れるエネルギーの通り道と考えられており、生命活動の維持に重要な役割を担うとされています。そして、「循經傳」は、病気が体の中でどのように進行していくのか、その経路を表す概念です。この概念は、特に風邪の症例である「傷寒」がどのように進行していくかを説明する際に用いられます。

循經傳は、単に病気が広がる経路を示すだけではありません。病状が今どの段階にあるのか、そして適切な治療法は何かを判断する上でも非常に重要な役割を果たします。東洋医学では、病気を全体的に捉え、体のバランスを整えることで健康を取り戻すことを目指します。そのため、病気がどの経絡に影響を与えているのかを把握することは、適切な治療法を選択するために欠かせません。

循經傳を理解することで、私たちは自身の体の状態をより深く理解し、健康維持に役立てることができます。日頃から自身の体の変化に気を配り、東洋医学の考え方を生活に取り入れることで、病気の予防や健康増進に繋がるでしょう。

項目 説明
経絡 体の中を流れるエネルギーの通り道。生命活動維持に重要。
循經傳
  • 病気の進行経路を表す概念。
  • 病状の段階、適切な治療法の判断に利用される。
  • 特に風邪の症例「傷寒」の説明に用いられる。
循經傳の重要性
  • 体の状態を深く理解できる。
  • 健康維持に役立つ。
  • 病気の予防や健康増進に繋がる。
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