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予後を占う五善:東洋医学の視点

- 五善とは 東洋医学では、人の体を一つの宇宙のように捉え、様々な要素が複雑に絡み合いながら変化していくと考えられています。病気の診断においても、患者の訴えや症状だけでなく、顔色、声の調子、舌の状態など、全身を観察することが重要視されます。 その中で、特に注目されるのが「五善」と呼ばれるものです。これは、体の表面に現れる五臓の働きが良い状態を示すサインを指します。東洋医学では、心、肝、脾、肺、腎という五つの臓器がそれぞれ体の重要な機能を担っていると考えられています。そして、これらの臓器の働きが活発であれば、顔色や皮膚、目、舌などに特定の好ましい変化が現れると考えられています。 具体的には、顔色が明るく潤いがあること、皮膚につやがあり、血色がよいこと、目は澄んで輝きがあること、舌は淡い紅色で潤っていることなどが挙げられます。これらのサインが観察された場合、それは単に見た目が良いというだけでなく、五臓の働きが順調で、生命エネルギーが満ち溢れている状態であることを示唆しています。 病気の回復過程においても、五善が現れることは非常に喜ばしい兆候とされます。これは、体の回復力が十分に働き、病状が改善に向かっていることを意味するからです。逆に、五善が見られない場合は、病気の根が深く、回復が遅れる可能性も考えられます。 このように、五善は、東洋医学における診断や治療において重要な指標の一つとなっています。
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東洋医学における叩打法

- 叩打法とは 叩打法は、身体の表面を軽く叩くことで、その音や響きによって身体内部の状態を探る診察法です。東洋医学では古くから伝わる診察法の一つで、特に骨や関節の状態を診る際に有効とされています。 -# 叩打法のメカニズム 身体の表面を叩くと、その振動が身体の奥深くまで伝わります。この時、振動の伝わり方や返ってくる音は、叩く場所や身体内部の状態によって微妙に変化します。例えば、健康な筋肉は弾力があり、叩くと詰まったような低い音がしますが、筋肉が緊張していたり、硬くなっていたりすると、音が濁ったり、高く響いたりします。 -# 叩打法でわかること 叩打法を用いることで、施術者は身体内部の状態をある程度把握することができます。具体的には、筋肉の緊張度合い、臓器の腫れや硬さ、骨の位置の異常などを察知することが可能です。また、患者が痛みを感じている場合、叩打法によって痛みの原因を探る手がかりを得ることもあります。 -# 叩打法の実際 叩打法は、指先や手のひら、専用の器具などを用いて行われます。叩き方は、軽く弾くように叩いたり、連続して叩いたり、強弱をつけたりと、診る部位や目的によって様々です。施術者は、長年の経験と研ぎ澄まされた感覚によって、音や響きのわずかな違いを聞き分け、身体の状態を判断していきます。 叩打法は、西洋医学における触診と並んで、東洋医学において重要な診察法の一つです。
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東洋医学における診虛裏:心拍から読み解く身体の謎

- 診虛裏とは -診虛裏とは- 診虛裏とは、東洋医学における診察方法の一つで、患者さんの手首の動脈に触れて脈の状態を診ることを指します。これは単に心拍数を測る、西洋医学における脈拍測定とは大きく異なります。診虛裏では、脈の強さや速さ、リズムに加えて、深さや滑らかさなど、脈拍に関する様々な要素を総合的に判断することで、身体の状態を詳しく把握しようとします。 患者さんの手首には、左右それぞれ三箇所ずつ、合計六箇所の脈を診る部位があります。それぞれの部位は五臓六腑と対応しており、例えば心臓の状態を調べる場合は左手首の橈骨動脈に触れ、脈の力強さやリズム、滑らかさなどを確認します。さらに、脈の深さや拍動部の広がりなども重要な判断材料となります。 この診虛裏は、長年の経験と鍛錬によって培われた繊細な感覚を必要とするため、熟練した practitioner でなければ正確に診断することはできません。 患者さんの脈に触れるわずかな時間の間にも、様々な情報を読み取っていく、まさに東洋医学の奥深さが凝縮された診断方法と言えるでしょう。
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東洋医学における腹診:お腹から体を読み解く

- 腹診とは何か -# 腹診とは何か 腹診とは、東洋医学において、患者さんの状態を把握するために用いられる重要な診察方法の一つです。西洋医学では、お腹は主に消化器官が集まる場所として捉えられますが、東洋医学では、全身の健康状態を映し出す鏡のようなものと考えられています。 腹診では、施術者が患者さんのお腹に直接触れることで診断を行います。触診する際には、皮膚の温度や湿り具合、筋肉の硬さや張り、さらには、臓器のおおよその大きさや位置などを確認します。例えば、お腹全体が冷えている場合は、身体が冷えやすい体質だと考えられますし、特定の場所だけに熱を感じれば、その部分に炎症が起きている可能性も考えられます。また、筋肉の硬さや張りは、身体の緊張状態や気の流れの滞りを示唆している場合があり、臓器の大きさや位置の異常は、その臓器の機能低下を示唆している可能性があります。 このように、腹診では、お腹の状態を五感を使って丁寧に観察することで、体内の気の滞りや臓腑の不調を把握します。そして、得られた情報を他の診察方法による情報と総合的に判断することで、病気の診断や治療方針の決定に役立てます。腹診は、患者さんの体質や病気の状態を深く理解するために欠かせない診察方法と言えるでしょう。
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東洋医学における「按診」:体からのメッセージに触れる

東洋医学では、患者さんからお話を伺う「問診」と同じくらい、体に直接触れて診察する「按診」を大切にしています。これは、視覚や聴覚ではなく、触覚を通して体の内側の状態を直接感じ取ることができるからです。西洋医学の診察でも体に触れて調べることはありますが、東洋医学の按診は、患部だけでなく、全身の状態を把握するために、より広い範囲を、そして繊細な感覚で行います。 例えば、患者さんの手首の少し上の部分には「脈診」と呼ばれる、体の状態を反映する重要な場所があります。東洋医学の医師は、この部分に指を当てることで、単に脈の速さや強さを診るだけでなく、脈の深さ、リズム、滑らかさなど、様々な情報を読み取ります。これらの情報は、患者さん自身の感覚では気づかない体の不調や、病気の兆候をいち早く発見する手がかりとなります。 また、お腹や背中などを触診することで、内臓の硬さや張り、冷えや熱の偏りなどを確認します。これらの情報は、患者さんの体質や、病気の原因を探る上で重要な手がかりとなります。このように、東洋医学における触診は、患者さんの体と対話する、非常に繊細で奥深い診察法と言えるでしょう。
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東洋医学における脈診と推尋

- 脈診とは 東洋医学において、-脈を診る-ことは、患者さんの状態を理解するためにとても大切な診察方法です。西洋医学では、 stethoscope などを用いて心臓の音を聞いて診断しますが、東洋医学では、患者さんの手首にある動脈を指で優しく押さえることで体内の状態を探ります。これを-脈診-と呼びます。 脈診では、単に脈の速さや強さを調べるだけではありません。指先に伝わる脈の微妙な変化を感じ取ることで、体の奥深い部分、そして心の状態までも読み取ることができると考えられています。 例えば、脈が速ければ炎症や興奮、遅ければ冷えや体力の低下などが考えられます。また、脈の強さやリズム、脈の打ち方なども重要な情報源となります。 熟練した医師は、まるで糸を紡ぐように、患者さんの脈を丹念に感じ取っていきます。左右の脈を比較したり、指の当てる位置を微妙に変えたりすることで、より多くの情報を得ようとします。そして、脈診で得られた情報は、患者さんの体質や病気の状態、さらには治療方針を決める上でも重要な判断材料となります。 脈診は、古代から受け継がれてきた東洋医学の奥深い wisdom を象徴する診察法と言えるでしょう。
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東洋医学の真髄に触れる:寸口診法

- 古代からの叡智 東洋医学は、西洋医学とは異なる独自の理論体系と治療法を持つ医学体系です。その根底にあるのは、古代の人々が自然と向き合い、長い年月をかけて積み重ねてきた知恵と経験です。脈診や腹診といった東洋医学独特の診察法は、現代においてもその有効性が認められ、広く活用されています。 その中でも、寸口診法は古代からの叡智が凝縮された診断法と言えるでしょう。これは、手首の橈骨動脈に指先を軽く当て、脈の速さ、強さ、深さ、リズムなどを詳細に観察することで、全身の状態を把握するものです。まるで川のせせらぎを聞くように、脈の微妙な変化を感じ取るには、長年の経験と高度な技術が必要とされます。 寸口診法によって、臓腑の働きや気血水のバランス、病気の進行状況などが分かります。西洋医学の検査では見つけることのできない、身体の不調和や病気の兆候を早期に発見できる点が、寸口診法の大きな特徴と言えるでしょう。 このように、東洋医学は古代の叡智を受け継ぎながら、現代人の健康にも大きく貢献しています。
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東洋医学における小便自利

- 小便自利とは -# 小便自利とは 東洋医学では、健康な状態を保つためには、体内のエネルギーである「気」、血液などの体液である「血」、そしてそれらが巡る経路である「水」のバランスが取れていることが重要と考えられています。この考え方を「気血水」と言い、体の様々な機能がこのバランスによって維持されていると考えられています。 小便は、「水」の巡りの中で、不要となった水分や老廃物を体外へ排出する役割を担っています。 「小便自利」とは、東洋医学の観点から見て、この排尿が自然で無理なく行われ、頻尿や残尿感、排尿時の痛みといった症状がない状態を指します。つまり、体内の水分の代謝が滞りなく行われている状態と言えるでしょう。 反対に、排尿に異常がある状態は「小便不利」と呼ばれ、体内の水分のバランスが崩れているサインと捉えられます。例えば、尿量の変化、排尿時の違和感、尿の色や臭いの変化などが挙げられます。これらの症状は、体からの重要なメッセージと言えるでしょう。東洋医学では、このようなサインを見逃さずに、生活習慣の見直しや適切な養生を行うことで、健康な状態へと導くことを目指します。
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東洋医学から見る黄疸:その原因と治療

- 黄疸とは -# 黄疸とは 皮膚や白目が黄色く変色してしまう状態を「黄疸」と呼びます。これは、血液中に「ビリルビン」という黄色い色素が過剰に増加することが原因で起こります。ビリルビンは、古くなった赤血球が分解される際に肝臓で処理され、胆汁とともに体外へ排出される物質です。 東洋医学では、この黄ばみを「黄疸」と呼び、古くから様々な原因と治療法が考えられてきました。黄疸は、それ自体が病気ではありませんが、体からの重要なサインです。 例えば、肝臓の機能が低下すると、ビリルビンの処理が滞り、血液中のビリルビン濃度が上昇しやすくなります。また、胆石などで胆道が閉塞した場合も、胆汁の流れが悪くなり、ビリルビンが血液中に逆流してしまうことがあります。 黄疸の原因を正しく理解し、適切な対処をすることが重要となります。黄疸が見られた場合は、自己判断せずに、医療機関を受診し、医師の診断を受けるようにしましょう。
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黄胖病:東洋医学の視点

- 黄胖病とは -# 黄胖病とは 黄胖病は、東洋医学において、皮膚が乾燥して黄色く変化し、特に顔や足首にむくみが見られる病的な状態を指します。西洋医学のように一つの病名を示すものではなく、複数の症状が組み合わさって現れる、東洋医学独特の概念と言えます。 この病態は、体内の水分の代謝が滞り、「気」と呼ばれる生命エネルギーの流れが阻害されているサインと捉えられています。さらに、五臓六腑と呼ばれる体の器官の働きにも乱れが生じていると考えられています。 具体的には、脾胃と呼ばれる消化器官の機能低下によって、体内の水分代謝がうまくいかなくなり、余分な水分が体内に溜まってしまうことで、むくみが発生すると考えられています。また、肺の機能低下も、水分の代謝を阻害する要因の一つとされています。さらに、腎は体内の水分バランスを調整する役割を担っていますが、その機能が低下することで、黄胖病を引き起こすと考えられています。 このように、黄胖病は一つの原因によって引き起こされるのではなく、体全体のバランスの乱れによって発症すると考えられています。そのため、治療においても、個々の体質や症状に合わせて、食事療法、漢方薬の処方、鍼灸治療などを組み合わせて、体全体の調和を取り戻すことを目指します。
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東洋医学における臍下拘急

- 臍下拘急とは -# 臍下拘急とは 臍下拘急とは、東洋医学において、おへその下あたりが硬く緊張し、圧迫感や痛みを伴う状態を指します。西洋医学でいう腹筋の痙攣や硬直とは異なる概念であり、東洋医学独自の診断基準に基づいています。 おへその下あたりは東洋医学で「丹田」と呼ばれる重要な部位であり、体のエネルギーである「気」が集まるとされています。この「気」は全身を巡り、心身の活動を支えていると考えられていますが、冷えやストレス、過労などが原因で「気」の流れが滞ると、丹田周辺に「気」が停滞しやすくなります。 この状態が「気滞(きたい)」であり、臍下拘急の主な原因と考えられています。丹田に「気」が停滞すると、その部位が硬く緊張し、圧迫感や痛みとして自覚されるようになります。 また、「気」の流れが滞ると、血液の循環も悪くなる「瘀血(おけつ)」の状態を併発することもあります。「瘀血」になると、さらに臍下部の緊張や痛みが強くなる傾向があります。 臍下拘急は、主に消化器系の不調と関連付けられることが多く、便秘や下痢、腹部膨満感などを伴うことがあります。その他、精神的な緊張や不安、婦人科系のトラブルなどが原因となることもあります。 東洋医学では、臍下拘急の治療として、主に「気」や「血」の流れを改善することを目指します。鍼灸治療や漢方薬の処方、生活習慣の改善指導などを通して、身体全体のバランスを整えていきます。
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東洋医学における「麻木」:感覚の異変を読み解く

- 麻木とは -# 麻木とは 麻木とは、皮膚の感覚が鈍くなり、外部からの刺激を正常に感じ取ることができない状態を指します。 これは、触れた感覚、温度感覚、痛み感覚など、様々な感覚に影響を及ぼす可能性があります。 例えば、冷たい氷を握っても温度が分からなかったり、熱い湯呑に触れても熱さを感じなかったりすることがあります。 また、針で軽く刺しても痛みを感じないなど、感覚が完全に失われてしまう場合もあります。 麻木は、まるで皮膚の表面を虫が這うようなピリピリとした感覚や、皮膚の一部または全体が締め付けられるような感覚を伴うことがあります。 このような感覚は、一過性のこともあれば、慢性的に続くこともあります。 日常生活では、手足の痺れとして経験することが多く、特に指先に症状が現れやすいです。 軽度の麻木の場合、日常生活に支障がないこともありますが、重症化すると、箸が使えなくなったり、ボタンを留めるのが困難になったりと、日常生活に支障をきたすこともあります。 麻木は、神経の圧迫や血行不良、糖尿病などの病気によって引き起こされることがあります。 また、冷え性や疲労、ストレスなども麻木の原因となることがあります。 麻木が続く場合は、放置せずに医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けるようにしましょう。
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東洋医学における心下堅とは

- 心下堅の概要 心下堅とは、みぞおちのあたりが異常に硬く感じられる状態を指す、東洋医学で使われる言葉です。西洋医学でいう「心窩部硬直」とほぼ同じ意味合いで用いられます。みぞおちはちょうど胸骨の下あたりを指しますが、この奥には胃や膵臓、胆嚢など、生命維持に欠かせない重要な臓器がいくつも存在しています。そのため、みぞおちのあたりに硬さを感じ、心下堅がみられる場合は、これらの臓器に何らかの異常が起きている可能性が考えられます。 心下堅は、臓器に炎症や腫瘍などが起こることで、周りの組織が緊張したり、硬くなったりすることで現れると考えられています。また、ストレスや緊張など、精神的な要因によって自律神経のバランスが乱れ、内臓の働きが低下することでみぞおちの硬さに繋がるケースも少なくありません。 みぞおちの硬さ以外にも、吐き気や食欲不振、膨満感、便秘、背中の痛みなどを伴う場合もあります。自己判断せず、医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けるようにしましょう。
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東洋医学が考える「噫気」:その原因と改善策

- 「噫気」とは何か 「噫気(げき)」とは、東洋医学において用いられる言葉で、胃の中から空気やガスが、音とともに上がってくる状態を指します。西洋医学では「噯気(おくび)」と呼ばれるものとほぼ同じ現象を指します。 私たちは、食事をしたり話をしたりする日常の動作の中で、知らず知らずのうちに微量の空気を飲み込んでいます。胃の中に溜まった空気は、通常は特に意識することなく、口から自然と排出されます。しかし、様々な原因で胃の中に空気が溜まりすぎたり、排出の仕方が乱れたりすると、過剰な空気やガスが、音や時には臭いを伴って口から出てしまうことがあります。この状態を、東洋医学では「噫気」と診断します。 「噫気」は、必ずしも病気のサインというわけではありません。健康な人でも、炭酸飲料を飲んだ後や早食いをした後などに、一時的に「噫気」が起こることがあります。しかし、頻繁に「噫気」が起こる場合や、「噫気」とともに腹部の張りや痛み、吐き気などの症状が現れる場合には、胃腸の不調や病気の可能性も考えられます。その場合は、自己判断せずに、医療機関を受診し、適切な診察を受けるようにしましょう。
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東洋医学における「証」:病気の状態を正しく理解する

- 「証」とは何か 東洋医学では、同じ病気であっても、患者さん一人ひとりの体質や症状、生活環境によって治療法が変わってきます。これは、病気の状態を病名だけで判断するのではなく、「証(しょう)」と呼ばれる、より詳細な分類に基づいて判断するからです。 「証」とは、病気の表面的な症状だけでなく、その人の体質や生活習慣、環境なども含めた、総合的な状態を指します。 例えば、風邪を引いたという場合でも、患者さんによって、寒気がする人、熱っぽい人、喉が痛い人、鼻水が出る人など、様々な症状が現れます。さらに、同じような症状が出ていても、体力がなく冷えやすい人、胃腸が弱い人、ストレスを抱えやすい人など、体質によってその原因や経過は異なります。 東洋医学では、これらの情報を総合的に判断し、「証」を特定することで、その人に最適な治療法を見つけ出します。西洋医学で例えるなら、風邪という病気において、発熱、咳、鼻水などの症状に加え、炎症の程度や患部の状態などを総合的に判断して、細菌感染によるものか、ウイルス感染によるものかなどを特定するようなものです。 このように、「証」は東洋医学における診断と治療の基礎となる重要な概念であり、患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイドの医療を提供するために欠かせないものです。
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東洋医学が解き明かす「口澁」の謎

- 口澁とは? 口澁とは、読んで字のごとく、口の中が乾いて渋みを感じる状態のことです。単に喉が渇いて水分が足りない状態とは異なり、唾液そのものの分泌量が減っている、あるいは唾液が粘ついているなど、質が変わってしまっているように感じられることも特徴です。 東洋医学では、この口澁は、体の中のバランスが崩れ、不調が生じているサインだと考えられています。原因としては、主に次の3つが挙げられます。 1. -水分代謝の乱れ- 体内の水分を適切に巡らせ、不要な水分を排泄する機能がうまく働いていない状態です。暴飲暴食や冷たいものの摂り過ぎ、過度なストレスなどが原因で起こりやすく、口澁の他にも、むくみや尿量の減少などがみられることがあります。 2. -胃腸の機能低下- 食べ物を消化吸収する胃腸の働きが弱っている状態です。暴飲暴食、脂っこい食事、冷えなどが原因で起こりやすく、口澁だけでなく、食欲不振や胃もたれ、軟便や下痢などの症状を伴うことがあります。 3. -体内の潤い不足- 東洋医学で「陰液」と呼ばれる、身体を潤すための体液が不足している状態です。過労や睡眠不足、ストレス、老化などが原因で起こりやすく、口澁の他に、肌の乾燥や髪の毛のパサつき、便秘などがみられることがあります。 このように、口澁は様々な原因で起こる可能性があります。一時的なものであれば、それほど心配する必要はありませんが、慢性的に続く場合は、根本的な原因を探り、体質改善を図っていくことが大切です。
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東洋医学から見る「口酸」とは?

「口酸」とは、口の中に酸味を感じる症状のことを指します。まるで梅干しやレモンを食べた後のように、唾液が酸っぱく感じられ、時には胃のあたりから酸っぱい液体が上がってくるような感覚を伴うこともあります。 口酸は、医学的には「酸味感異常」や「味覚過敏」と呼ばれることもあり、多くの人が経験するありふれた症状です。 口酸の原因は様々ですが、一般的には、胃腸の不調、ストレス、疲労、食生活の乱れ、睡眠不足などが挙げられます。 例えば、暴飲暴食や脂っこい食事、甘いものの食べ過ぎは胃に負担をかけ、胃酸の分泌を過剰にすることがあります。また、ストレスや疲労は自律神経のバランスを崩し、胃酸の分泌を調整する機能を低下させてしまうことがあります。 口酸が気になる場合は、生活習慣を見直し、バランスの取れた食事を心がけ、十分な休息をとるようにしましょう。また、ストレスを溜め込まないように、適度な運動やリラックスできる時間を作ることも大切です。 症状が改善しない場合は、医療機関を受診し、医師に相談することをおすすめします。
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東洋医学が紐解く「口の中の不思議な味」

- 口の中の違和感、実は病気のサインかも? 私たちは毎日、食事を通して様々な味を楽しんでいます。甘いもの、辛いもの、酸っぱいものなど、その味は実に様々です。しかし、何も口に入れていないのに、特定の味が常に感じられる、まるで口の中に何かが残っているような感覚を経験したことはありますか? 東洋医学では、このような「何も食べていないのに感じる味」のことを「口 味(こうみ)」と呼び、体の不調を知らせるサインだと考えています。これは、まるで体が私たちに何かを伝えようとしているかのようです。 例えば、常に甘い味がする場合は、胃腸の働きが弱っている可能性があります。また、苦みを感じる場合は、体に熱がこもっていたり、ストレスを抱えていることが考えられます。さらに、酸っぱい味がする場合は、肝臓の機能が低下している可能性も。このように、口の中に現れる不思議な味には、それぞれ意味があるのです。 口 味を感じたら、まずは自分の体と向き合い、生活習慣を見直してみましょう。そして、必要であれば専門家の診断を受けることも大切です。口の中のサインを見逃さず、健康的な毎日を送りましょう。
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東洋医学における口渇:原因と対処法

- 口渇とは -# 口渇とは 「口渇」とは、単純に口の中が乾いている状態を指すだけではありません。東洋医学では、体に水分が足りず、それを強く求める状態を指します。喉の渇きを訴え、冷たい水を好んで飲む傾向が見られます。 東洋医学では、この口渇は体の陰陽のバランスが崩れた状態、特に体に熱がこもることで水分代謝がうまくいかなくなることで起こると考えられています。 体の水分が不足する原因は、主に二つあります。一つ目は、汗を大量にかくなどして、体内の水分が失われることです。暑い環境で過ごしたり、激しい運動をしたりすることで起こりやすくなります。二つ目は、体の水分をうまく利用できない状態になっていることです。これは、暴飲暴食や睡眠不足、過労、ストレスなどによって、体の機能が低下することが原因と考えられています。 口渇は、放っておくと、体の様々な機能に影響を及ぼす可能性があります。例えば、便秘や肌荒れ、めまい、倦怠感などが現れることがあります。さらに症状が進むと、熱中症や腎臓病などの病気を引き起こすリスクも高まります。 東洋医学では、口渇の改善には、体の陰陽バランスを整え、水分代謝を促すことが大切だと考えられています。具体的には、生活習慣の見直しや食事療法、漢方薬などが用いられます。
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東洋医学から考える鼻詰まりの原因と対策

- 鼻詰まりとは -# 鼻詰まりとは 鼻詰まりとは、まさに鼻の通りが悪く、息苦しさを感じる状態のことです。医学用語では「鼻閉」と呼ばれます。鼻の奥には「鼻腔」と呼ばれる空間が広がっており、私達が呼吸する際に空気の通り道となっています。この鼻腔が何らかの原因で狭くなることで、鼻詰まりが起こります。 鼻詰まりの原因は様々ですが、大きく分けると、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染によるもの、花粉やダニなどによるアレルギー反応、そして鼻炎などが挙げられます。また、空気の乾燥や気温の変化、強い匂いなども鼻詰まりの原因となることがあります。 東洋医学では、鼻は肺と密接な関係にあると考えられており、「肺が開竅するところを鼻という」という言葉もあります。これは、肺の機能が鼻に表れやすいことを意味しています。そのため、東洋医学では、鼻詰まりは、単なる鼻の症状として捉えるのではなく、肺の機能低下や、体内の水分バランスの乱れ、いわゆる「水毒」が原因となって起こると考えられています。 例えば、風邪の初期症状として鼻詰まりが起こる場合、これは、体内に侵入しようとするウイルスから身体を守るために、鼻で食い止めようとする防御反応として起こると考えられます。また、冷たいものを摂り過ぎたり、冷え性などで身体が冷えている場合にも、鼻詰まりが起こりやすくなります。これは、身体を温めようとして鼻の血管が収縮し、鼻腔が狭くなるためです。
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東洋医学が考える「項背拘急」

- 項背拘急とは -# 項背拘急とは 項背拘急とは、読んで字のごとく、首筋から背中にかけて張りが生じ、筋肉が硬くなってしまう状態を指します。一般的には、肩や首のこりが悪化し、慢性化した状態と考えられています。症状は人によって異なり、長年かけて徐々に硬くなっていく場合もあれば、ある日突然、激しい痛みに襲われる場合もあります。 西洋医学では、主にデスクワークや長時間スマホ、猫背などの悪い姿勢、運動不足、冷え、ストレスなどが原因で、筋肉が緊張し、血行不良が引き起こされることで発症すると考えられています。 一方、東洋医学では、項背拘急は、身体全体のバランスの乱れや、気血水の巡りの滞りが原因となって起こると考えます。気血水とは、生命エネルギーである「気」、血液の「血」、そして血液以外の体液である「水」のことで、これらが滞りなく身体を巡ることで、健康は保たれると考えられています。 つまり、東洋医学では、項背拘急は単なる筋肉の硬直として捉えるのではなく、身体からのサインとして捉え、その根本原因を探ることが重要視されます。
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東洋医学が考える唇の炎症「脣風」

- 脣風とは 脣風とは、東洋医学の考え方の一つで、唇に炎症が生じて、ひび割れや汁が出てくる状態を指します。これは、西洋医学でいう口唇炎にあたり、乾燥や炎症が原因で唇が赤く腫れ上がったり、ひび割れて痛みが出たりします。脣風は、ただ唇が乾いている状態とは異なり、体の中のバランスが崩れているサインとして現れると考えられています。 東洋医学では、唇は消化器官である「脾」と密接な関係があるとされています。脾は、食べ物を消化吸収し、栄養を全身に送る働きを担っており、この働きが弱ると、唇に症状が現れやすくなると考えられています。例えば、暴飲暴食や冷たい食べ物の摂り過ぎ、不規則な生活習慣などは、脾に負担をかけ、脣風を引き起こす一因となると考えられています。 また、脣風は、風邪や冷え、乾燥など、外からの影響を受けて発症することもあります。特に、冬場は空気が乾燥しやすいため、唇の水分が奪われ、脣風になりやすいと言われています。 脣風の症状としては、唇の乾燥、ひび割れ、腫れ、痛み、出血などがあります。症状が悪化すると、口を開けるのも痛くなる場合もあるため注意が必要です。 脣風の予防には、普段から脾を労り、体のバランスを整えておくことが大切です。具体的には、規則的な生活習慣を心がけ、栄養バランスの取れた食事を摂るようにしましょう。また、冷たい食べ物や飲み物は控えめにし、温かいものを積極的に摂るように心がけましょう。乾燥が気になる場合は、リップクリームなどで唇を保湿することも効果的です。
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体の半分だけ汗?半身汗出の謎に迫る!

- 半身汗出とは? 半身汗出とは、その名の通り、体の一部だけに汗が出る症状のことを指します。例えば、上半身だけが汗ばむのに下半身は全く汗をかかなかったり、顔の右半分だけ汗が噴き出すのに左半分はサラサラしている、といった状態です。左右で汗のかき方が異なる場合もあります。このような、一見不思議な体の反応は、実は東洋医学の観点から見ると、体のバランスが崩れているサインとして捉えられています。 東洋医学では、人間の体は「気・血・水」の3つの要素で成り立っていると考えます。そして、これら3つの要素が体の中を滞りなく巡っている状態が健康な状態であり、反対に、流れが滞ったり、偏りが生じたりすると、体に様々な不調が現れると考えられています。半身汗出も、この考え方に基づくと、体の左右どちらか一方に「気・血・水」のバランスの乱れが生じている状態として解釈できるのです。 例えば、体の右半身だけ汗が過剰に出る場合は、体の右側に「熱」がこもっていると考えられます。反対に、体の左半身だけ汗が全く出ない場合は、体の左側に「冷え」が滞っていると考えられます。 半身汗出は、その原因や症状によって様々なタイプに分けられます。それぞれのタイプに合わせた適切な養生法を実践することで、体のバランスを整え、健康な状態へと導くことができます。
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気になる陰汗の原因と東洋医学的解決策

- 陰汗とは? 陰汗とは、脇や頭部など全身に汗をかくのではなく、陰部のみが局所的に汗ばむ症状を指します。普段の生活ではあまり汗をかかない人でも、特定の状況下で陰部にだけ汗をかいてしまうケースも少なくありません。 日常生活で特に支障がない場合でも、過剰な陰汗は不快感や臭いの発生源となることがあります。また、下着が湿ることで雑菌が繁殖しやすくなり、かゆみやかぶれなどの肌トラブルに繋がる可能性も考えられます。さらに、外出時や人と接する際に陰汗が気になってしまい、精神的なストレスを感じる人もいるようです。 陰汗の原因は、体質や生活習慣、精神的な影響など多岐に渡るため、自己判断で対策を行うよりも、まずは専門医に相談することをおすすめします。