陰虚

漢方の治療

陰を養い風を鎮める:滋陰熄風のススメ

- 滋陰熄風とは -# 滋陰熄風とは 滋陰熄風は、東洋医学における治療法の一つで、体のバランスを整え、様々な不調を改善することを目指します。この治療法は、「陰」と「陽」という相反する二つの要素のバランスを重視する東洋医学の基本的な考え方に基づいています。 「陰」は、静かで落ち着いた状態、冷やす力、物質的な基礎などを表し、「陽」は、活動的で温かい状態、温める力、機能的な側面などを表します。健康な状態を保つためには、この陰と陽が互いに調和し、バランスを保っていることが重要です。 滋陰熄風では、体内の「陰」が不足し、「陽」が相対的に亢進している状態を改善することを目指します。この状態は、東洋医学では「陰虚陽亢(いんきょようこう)」と呼ばれ、めまい、耳鳴り、不眠、動悸、のぼせ、ほてり、便秘などの症状が現れると考えられています。 「滋陰」は、不足している「陰」を補うことを意味し、「熄風」は、亢進した「陽」の働きを鎮めることを意味します。具体的には、食事療法、漢方薬、鍼灸、マッサージ、気功など、様々な方法を用いて、陰陽のバランスを整え、症状の改善を図ります。 滋陰熄風は、西洋医学では治療が難しいとされる、更年期障害、自律神経失調症、慢性疲労症候群などの症状にも効果が期待できるとされ、近年注目を集めています。
漢方の診察

陽損及陰證:陰陽両虚のメカニズム

- 陽損及陰證とは -# 陽損及陰證とは 人間の生命活動を支える上で欠かせないのが、「陽気」と「陰液」という二つの要素です。簡単に言うと、陽気は温める力、陰液は潤す力と考えてよいでしょう。健康な状態を保つためには、この二つがバランスを保っていることが重要です。しかし、過労や加齢、病気などによって陽気が大きく損なわれると、単に温める力が弱まるだけでなく、陰液を生成したり、体内に留めておく力も低下してしまいます。その結果、陽気と陰液の両方が不足した状態に陥ってしまうことがあり、これを「陽損及陰證」と呼びます。 例えば、真夏の炎天下で長時間激しい運動を続けると、大量の汗と共に体内の水分やミネラルが失われ、脱水症状に陥ることがあります。これは、陽気が過剰に消耗された結果、陰液を保てなくなった状態と言えるでしょう。また、慢性的な疲労や睡眠不足、過度なストレスなども陽気を傷つけ、結果的に陽損及陰證を引き起こす要因となります。 陽損及陰證になると、倦怠感や食欲不振、めまい、不眠、動悸、息切れ、手足の冷え、口の渇きなど、さまざまな症状が現れます。これらの症状は、陽気と陰液の両方の不足によって引き起こされるため、どちらか一方だけを補えば良いというわけではありません。東洋医学では、患者さんの体質や症状に合わせて、陽気を補う生薬と陰液を補う生薬を組み合わせた漢方薬を処方したり、食事療法や生活習慣の改善などを指導することで、陽気と陰液のバランスを整え、健康な状態へと導いていきます。
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陰損及陽證:陰陽両虚の複雑な状態

- 陰損及陽證とは -# 陰損及陽證とは 私たちの体は、活動の源となる「陽気」と、それを支える「陰液」という相反する要素のバランスによって成り立っています。例えるなら、燃木を燃やす炎が「陽気」で、薪となる木が「陰液」です。陰液は、体の潤滑油としての役割や、栄養を蓄える役割などを担っています。 陰損及陽證は、この陰液が慢性的に不足し、やがて陽気までもが衰えてしまう状態を指します。これは、井戸の水が枯れ果て、いくらポンプを動かしても水が出なくなる状態に似ています。 最初は、陰液不足による症状、例えば、皮膚や喉の渇き、ほてり、寝汗、めまいなどが現れます。しかし、この段階で適切な対処を行わないと、次第に陽気も衰え始めます。 陽気が衰えてくると、冷え、倦怠感、食欲不振、息切れといった症状が現れます。これは、まるで燃え尽きようとする炎が弱々しくなっていくかのようです。 陰損及陽證は、陰陽両方のバランスが崩れた深刻な状態であり、放置すると生命活動にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、早期に専門家の診断を受け、適切な養生法を取り入れることが重要です。
体質

東洋医学における肝腎陰虚:その症状と対策

- 肝腎陰虚とは -# 肝腎陰虚とは 東洋医学では、生命活動を支えるエネルギーとして「気・血・津液」という3つの要素が考えられています。 「気」は目に見えない生命エネルギー、「血」は血液そのもの、「津液」は血液以外の体液全体を指します。 このうち、「陰液」とも呼ばれる「津液」は、体内の潤滑や栄養を司る重要な役割を担っています。 例えば、唾液や涙、消化液、関節液なども津液の一部です。 これらの津液が潤滑な状態に保たれることで、身体は円滑に動くことができます。 肝腎陰虚とは、この陰液が肝臓と腎臓において不足した状態を指します。 東洋医学では、肝臓は「血」を貯蔵する働き、腎臓は「精」を貯蔵する働きがあるとされ、どちらも陰液と密接な関係があります。 陰液は、体の潤滑や栄養を保つだけでなく、熱を冷ます働きも持っています。 体内で過剰に発生した熱を冷ましながら、潤いを与えることで、身体のバランスを保っているのです。 そのため、陰液が不足すると、体内の熱のバランスが崩れ、のぼせやほてり、寝汗、不眠、動悸、めまい、耳鳴り、便秘などの症状が現れると考えられています。 また、肌や髪に潤いがなくなり、乾燥しやすくなるのも特徴です。
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陰虚と血瘀、その複雑な関係

- 陰虚血瘀証とは 東洋医学では、健康な状態を保つためには、体内の「陰」と「陽」のバランスが重要であると考えられています。「陰」は体を潤し冷やす働き、「陽」は体を温め活発にする働きをします。この二つのバランスが崩れることで、様々な不調が現れると考えられています。 陰虚血瘀証とは、「陰虚」と「瘀血」という二つの状態が同時に起こっている状態を指します。「陰虚」は、体の潤いのもととなる「陰液」が不足している状態です。一方、「瘀血」は、血液の循環が悪くなり、滞っている状態を指します。 陰液が不足すると、体を潤す力が弱まり、乾燥しやすくなります。また、熱を冷ます力も弱まるため、のぼせやほてりを感じやすくなります。一方、瘀血は、血液の流れを滞らせ、体に必要な栄養や酸素が行き渡りにくくなります。 陰虚血瘀証は、これらの要因が組み合わさることで、様々な不調を引き起こすと考えられています。例えば、めまい、動悸、息切れ、不眠、便秘、肌の乾燥、冷え性、月経不順、肩こり、頭痛など、多岐にわたる症状が現れる可能性があります。 陰虚血瘀証は、加齢やストレス、不規則な生活習慣、食生活の乱れなどが原因で引き起こされると考えられています。また、体質的に陰虚や瘀血になりやすい人もいます。
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陰虚と湿熱が織りなす不調:陰虚湿熱証

- 陰虚湿熱証とは -陰虚湿熱証とは、体の潤いである「陰液」が不足した状態(陰虚)と、体内に余分な熱と湿気がこもった状態(湿熱)が同時に現れる複雑な病態です。-東洋医学では、この2つの状態は、本来、相反する性質を持つと考えられています。潤い不足は乾燥を、熱と湿気は停滞を意味し、これらが同時に起こることは、一見矛盾しているように思えるかもしれません。 では、なぜこのような矛盾した状態が起こるのでしょうか。それは、-体のバランスが崩れ、自己調整機能がうまく働かなくなっている状態-を示していると考えられています。 例えば、過労やストレス、睡眠不足、偏った食事などによって体に熱がこもり、その熱が体内の潤いを奪ってしまうことで陰虚の状態を引き起こすと考えられます。また、脂っこいものや甘いもの、冷たいものの摂り過ぎは、体内に湿気をため込みやすく、それが熱と結びつくことで湿熱の状態を引き起こすと考えられています。 陰虚と湿熱、この2つの状態が複雑に絡み合い、様々な不調を引き起こします。具体的な症状としては、のぼせやほてり、口の渇き、肌の乾燥、尿の濁り、おりものの増加、むくみ、だるさ、食欲不振など、多岐にわたります。 陰虚湿熱証は、-現代社会において増加傾向にある-と言われています。これは、ストレスの多い生活環境や食生活の乱れなど、現代人に特有の要因が大きく影響していると考えられています。
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熱厥:陰の衰えと熱が招く体の危機

- 熱厥とは 熱厥(ねっけつ)は、東洋医学における病名の一つで、突然意識を失い倒れてしまう症状を指す厥証(けっしょう)の中でも、体内の水分が不足し、熱がこもった状態によって引き起こされるものを指します。 -# 熱厥の原因 東洋医学では、人体は「気・血・水」のバランスによって健康が保たれていると考えられています。このバランスが崩れると、様々な不調が現れると考えられており、熱厥は体の熱が強すぎる、または体の水分が不足している状態が続くことで、気・血・水のバランスが崩れ、引き起こされると考えられています。 例えば、激しい運動や暑さの中で長時間過ごしたり、高熱が続いたりすることで、体内の水分が失われ、体の熱を冷ますことができなくなります。また、脂っこい食事や甘いものの摂り過ぎ、過度な飲酒やストレスなども、体内に熱をため込みやすく、熱厥の原因となると考えられています。 -# 熱厥の症状 熱厥は、意識を失って倒れてしまう以外にも、以下のような症状が現れることがあります。 * 顔色が赤い * 息が荒い * 皮膚が熱い * 脈が速い * 汗が多い * 意識がもうろうとする * けいれん 熱厥は、放置すると命に関わることもあります。上記の症状が見られる場合は、速やかに医療機関を受診してください。
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陰虚水停証:東洋医学が捉える体の不調

- 陰虚水停証とは -# 陰虚水停証とは 東洋医学では、健康な状態を保つためには、体内の相反する要素である「陰」と「陽」が調和していることが重要だと考えられています。この陰陽のバランスが崩れることで様々な不調が現れると考えられており、その状態の一つに「陰虚水停証」があります。 陰虚水停証とは、文字通り「陰」が不足し、「水」が停滞している状態を指します。人間の体を潤す潤滑油のような役割を担う「陰液」が不足することで、体に様々な不調が現れます。この状態は、例えるならば、植物に水をやらずに放置しておくと、土が乾燥し、植物が枯れてしまう状態に似ています。 陰虚によって起こる代表的な症状としては、のぼせやほてり、寝汗、口や喉の渇きなどが挙げられます。一方、水は、体の中を循環し、栄養を届けたり、老廃物を排出したりする役割を担っていますが、この水の巡りが滞ることで、むくみや尿量の減少、冷え、だるさといった症状が現れます。 陰虚水停証は、体質や生活習慣、ストレスなど様々な要因によって引き起こされると考えられています。特に、偏った食生活や睡眠不足、過労、精神的なストレスなどは、陰液を消耗し、水の巡りを悪くする大きな原因となります。 東洋医学では、一人ひとりの体質や症状に合わせて、漢方薬や鍼灸、食事療法、生活習慣の改善など、様々な方法を組み合わせて治療を行います。陰虚水停証は、放置すると、さらに症状が悪化したり、他の病気を引き起こしたりする可能性もあるため、早期に適切な対応をすることが大切です。
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陰虛津虧證:東洋医学における陰液不足

- 陰虛津虧證とは -# 陰虛津虧證とは 東洋医学では、人間の体は「気・血・水」のバランスによって健康が保たれていると考えられています。その中の「水」の一つである「陰液」は、体の中に存在し、潤いを与えたり、栄養を届けたり、熱を冷ましたりするなど、重要な役割を担っています。陰陽論で言うと、陰液は「陰」の性質を持つとされ、この陰液が不足した状態を「陰虛」と言います。さらに、陰液の中でも特に「津液」と呼ばれる、体表に近い部分や粘膜などを潤す液が不足した状態を「津虧」と言い、「陰虛」と「津虧」が組み合わさった状態が「陰虛津虧證」です。 陰虛津虧證は、過労やストレス、睡眠不足、偏った食事、辛いものや味の濃いものの過剰摂取、加齢などによって引き起こされます。体内の水分が失われることで、乾燥や熱の症状が現れやすくなります。具体的には、喉の渇き、空咳、皮膚や粘膜の乾燥、寝汗、ほてり、手足の熱感、めまい、耳鳴り、便秘などの症状が現れます。 東洋医学では、一人ひとりの体質や症状に合わせて、食事療法や漢方薬などを用いて、陰液を補い、体のバランスを整える治療を行います。
体質

陰虚陽亢:東洋医学における不均衡の理解

- 陰虚陽亢とは -# 陰虚陽亢とは 東洋医学では、人間の体は「陰」と「陽」という相反する二つの要素が調和することで健康が保たれると考えられています。陰は静かで冷たく、潤いを与えるエネルギーを象徴し、夜や休息、月などを連想させます。一方、陽は活動的で温かく、万物を成長させるエネルギーを象徴し、昼や活動、太陽などを連想させます。 健康な状態であれば、体の中の陰陽はバランスを保っています。しかし、過労やストレス、睡眠不足、偏った食事、加齢などの要因によって、このバランスが崩れることがあります。その中でも、体の潤いや栄養を蓄える「陰」が不足し、相対的に熱を生み出す「陽」が過剰になってしまう状態を「陰虚陽亢」と呼びます。 陰虚陽亢になると、体に様々な不調が現れます。代表的な症状としては、のぼせ、ほてり、顔が赤い、寝汗、不眠、イライラしやすい、動悸、めまい、耳鳴り、口や喉の渇き、便秘などが挙げられます。 陰虚陽亢は、そのまま放置すると、さらに体のバランスを崩し、様々な病気を引き起こす可能性があります。そのため、東洋医学では、陰虚陽亢の状態を改善するために、不足した「陰」を補い、「陽」の過剰な働きを抑える治療を行います。具体的には、食事療法、漢方薬、鍼灸治療などを組み合わせて、体質改善を目指します。
体質

陰虚火旺:体内のバランスの乱れが招く症状

- 陰虚火旺とは -# 陰虚火旺とは 東洋医学では、健康な状態を保つためには、体内の「陰」と「陽」のバランスがとれていることが重要だと考えられています。「陰」は体を冷まし潤す作用を、「陽」は体を温め活力を与える作用を担っており、この二つのバランスが崩れると様々な不調が現れると考えられています。 「陰虚火旺」は、この陰陽バランスが崩れ、陰が不足し、相対的に陽である「火」が過剰になっている状態を指します。分かりやすく例えると、体内の潤いが不足し、まるで体が乾燥した状態のように熱がこもってしまっている状態と言えるでしょう。 この状態は、様々な不快な症状を引き起こす原因となります。例えば、顔や体がほてりやすい、手足の裏が熱く感じる、眠りが浅い、めまい、耳鳴り、口や喉が渇く、便秘がちといった症状が現れます。また、精神的なイライラしやすくなったり、不安を感じやすくなることもあります。 陰虚火旺は、過労やストレス、睡眠不足、不適切な食生活、加齢など、様々な要因によって引き起こされると考えられています。現代社会においては、これらの要因にさらされやすい生活を送っている方が多いため、陰虚火旺の状態に陥りやすいと言えるかもしれません。
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陰虚内熱:東洋医学における不調のサイン

- 陰虚内熱証とは 東洋医学では、健康な状態を保つには、体内の「陰」と「陽」のバランスがとれていることが重要だと考えられています。 「陰」は体の潤いとなる栄養や物質を、「陽」は体の活動のエネルギーを表し、この二つのバランスが崩れると様々な不調が現れると考えられています。 陰虚内熱証とは、その名の通り体の潤いである「陰」が不足し、相対的に「熱」が体内にこもってしまった状態を指します。 潤いを与える「陰」が不足することで、体は乾燥しやすくなり、のぼせやほてりを感じやすくなります。 また、不足した「陰」を補おうとして、体に熱を生み出す力が過剰に働いてしまうため、体内に熱がこもりやすくなるのです。 この熱は、まるで体の中で燃え続けている火のようなもので、放っておくと様々な不調を引き起こします。 具体的な症状としては、顔が赤くなる、のぼせる、手足のひらや足の裏が熱い、寝汗をよくかく、不眠、イライラしやすい、便秘がち、口や喉が渇きやすい、肌が乾燥する、などが挙げられます。 陰虚内熱証は、体質や生活習慣、ストレス、加齢など、様々な要因によって引き起こされると考えられています。 特に、ストレス社会と言われる現代社会では、多くの人が陰虚内熱証を抱えているとも言われています。
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陰虚證:その症状と漢方での捉え方

- 陰虚證とは -# 陰虚證とは 東洋医学では、生命活動を支える重要な要素として「陰」と「陽」の二つがあるとされています。この陰と陽は、それぞれ体内の異なる側面を表しており、互いに影響し合いながら調和を保つことで健康が維持されていると考えられています。 陰は、体の物質的な基礎となる部分を指し、静かさや冷たさ、潤いなどを象徴しています。一方、陽は活動的なエネルギーや温かさ、機能などを表しています。 この陰陽のバランスが崩れ、陰が不足した状態を「陰虚」と呼びます。「陰虚證」は、この陰虚が原因となって様々な症状が現れる状態のことを指します。 陰は、体内の潤い成分である「陰液」と密接な関係を持っています。陰液は、血液やリンパ液、唾液、胃液、汗など、体液全般を指し、体の潤滑性を保ち、栄養を運搬し、老廃物を排泄するなど、重要な役割を担っています。 陰虚の状態になると、この陰液が不足するため、体内の潤いが失われ、乾燥症状が現れやすくなります。 また、陰液は熱を冷ます働きも持っています。そのため、陰虚になると体内の熱がこもりやすく、のぼせやほてりを感じやすくなります。その他、めまいや耳鳴り、不眠、動悸、便秘などの症状が現れることもあります。 陰虚證は、体質や生活習慣、加齢など、様々な要因によって引き起こされると考えられています。
体質

風気内動:東洋医学における体の不調

- 風気内動とは -# 風気内動とは 東洋医学では、健康を保つためには体内のエネルギーである「気」の流れがスムーズであることが重要だと考えられています。この「気」の流れが乱れ、様々な不調を引き起こす状態の一つに「風気内動」があります。「風気内動」とは、本来は体を温め、活動の源となる「陽気」が、何らかの原因でコントロールを失い、まるで体内に風が吹き荒れているかのように暴れ出す状態を指します。 風の特徴は「動」です。自然界の風は、目まぐるしく方向を変え、時に穏やかに、時に激しく吹き荒れます。風気内動も同様に、めまい、震え、痙攣、麻痺など、突発的で変化しやすい症状を引き起こすのが特徴です。 この「風」は、実際に目に見える風ではなく、体内のエネルギーバランスが崩れた状態を比喩的に表現したものです。激しい運動や過労、精神的なストレス、老化などによって体のバランスが崩れると、陽気が制御できなくなり、風気内動を引き起こすと考えられています。
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東洋医学における傷陰証:原因と症状

- 傷陰証とは -# 傷陰証とは 東洋医学では、人間の体は「気・血・水」の3つの要素のバランスによって健康が保たれていると考えられています。その中の「水」に分類されるのが「陰液」です。陰液は、体の中に存在する水分全般を指し、血液やリンパ液なども含まれます。体中に潤いを与え、栄養を届け、体温を調節するなど、生命活動の維持に欠かせない役割を担っています。 この陰液が不足した状態を、東洋医学では「傷陰証(しょういんしょう)」と呼びます。陰液は、例えるならば私たちの体を潤す「潤滑油」のようなもので、不足すると様々な不調が現れます。 傷陰証の原因は、過労やストレス、睡眠不足、偏った食生活など様々です。現代社会では、これらの要因に囲まれているため、傷陰証は決して珍しい状態ではありません。 傷陰証の代表的な症状としては、乾燥症状、ほてり、のぼせ、不眠、便秘、動悸、イライラなどが挙げられます。これらの症状は、西洋医学の病気と密接に関係している場合もあれば、そうでない場合もあります。 東洋医学では、一人ひとりの体質や症状に合わせて、食事療法や漢方薬などを用いて、陰液を補い、身体のバランスを整えていきます。
体質

肝風内動:東洋医学における不調のメカニズム

- 肝風内動とは -# 肝風内動とは 東洋医学では、心身ともに健康な状態を保つためには、「気」というエネルギーが体内をスムーズに巡っていることが重要だと考えられています。この「気」の流れが滞ったり、乱れたりすると、体に様々な不調が現れるとされています。 その中でも「肝風内動」は、感情や精神活動をつかさどる「肝」の働きと密接に関係する「風」の乱れによって引き起こされる状態を指します。 感情の一つである怒りは、肝の働きを活発化させる作用があり、過度な怒りやストレス、あるいは長期間にわたる精神的な緊張状態は、肝に大きな負担をかけてしまいます。 また、不規則な生活や睡眠不足、栄養バランスの偏った食生活、過労なども、肝の機能を低下させ、風の動きを乱す原因となります。 このようにして肝の機能が乱れ、風の動きが激しくなると、めまい、耳鳴り、頭痛、顔面紅潮、イライラしやすい、怒りっぽい、睡眠の質の低下など、様々な症状が現れます。 肝風内動は、放置すると高血圧や脳血管疾患などのリスクを高める可能性も指摘されており、早期に適切な養生法を行うことが大切です。
体質

東洋医学における「肝風」:その原因と症状

- 「肝風」とは -# 「肝風」とは 東洋医学では、生命エネルギーである「気」が体内をスムーズに巡ることで健康が保たれると考えられています。この「気」の流れに乱れが生じると、様々な不調が現れるとされています。 「風」は、体内を動き回る性質を持ち、「気」の乱れによって発生し、様々な症状を引き起こす原因の一つと考えられています。 「肝風」とは、この「風」が肝に影響を及ぼしている状態を指します。 東洋医学において、肝は感情の調節や血の貯蔵、気の流れをスムーズにする働きを担う重要な臓器です。 そのため、肝に「風」が生じると、これらの機能が乱れ、精神的なイライラや怒りっぽくなる、抑うつ状態になるなどの精神症状が現れやすくなります。 また、めまい、顔面紅潮、頭痛、高血圧、目の充血、耳鳴りといった症状が現れることもあります。 さらに、肝は筋肉の働きにも関わるため、筋痙攣やこわばりなども「肝風」の症状として見られます。 「肝風」は、ストレスや過労、睡眠不足、暴飲暴食などによって引き起こされやすいと考えられています。 これらの生活習慣を見直し、規則正しい生活を送ることが「肝風」の予防と改善には重要です。 また、東洋医学では、鍼灸治療や漢方薬を用いることで、肝の機能を整え、「気」の流れを調整し、「肝風」の症状を改善していきます。
内臓

肝陽偏旺:その原因と症状

- 肝陽偏旺とは -# 肝陽偏旺とは 東洋医学では、健康を保つためには、体内の「陰」と「陽」という相反する二つの気が調和していることが重要だと考えられています。この陰陽のバランスが崩れ、陽の気が過剰に強くなる状態を「陽亢」と言います。 「肝陽偏旺」または「肝陽上亢」とは、この陽亢が肝に起こった状態を指します。肝は、東洋医学では「疏泄(そせつ)」という、気の流れをスムーズにする働きを担うと考えられています。 肝陽偏旺になると、この疏泄作用が過剰になり、気が上に昇りすぎる状態になります。その結果、のぼせやイライラ、怒りっぽくなる、めまい、頭痛、目の充血、耳鳴り、不眠などの症状が現れることがあります。 肝陽偏旺は、ストレスや過労、睡眠不足、食生活の乱れ、感情の起伏などが原因で引き起こされると考えられています。また、体質的に肝陽が亢進しやすい人もいます。 肝陽偏旺を改善するためには、生活習慣の見直しやストレス解消、食養生などが大切です。症状が重い場合は、漢方薬を用いた治療も行われます。
体質

静かなる燃焼:肝陰虚を理解する

- 肝陰虚とは -# 肝陰虚とは 東洋医学では、人間の体は「陰」と「陽」という相反する二つの力で成り立っており、この二つが調和することで健康が保たれると考えられています。陰は体を冷まし、潤す働き、陽は体を温め、活動させる働きをします。 肝陰虚とは、この陰陽のバランスが崩れ、肝の働きを支える「陰」のエネルギーが不足した状態を指します。 肝は、東洋医学では「血」を貯蔵し、全身に巡らせる役割を担うと考えられています。この働きを支えているのが「肝陰」です。肝陰は、肝に潤いを与え、スムーズに働きを促す役割を担っています。しかし、ストレスや過労、睡眠不足、食生活の乱れなどによって肝陰が不足すると、肝の働きが低下し、血の巡りが悪くなると考えられています。 肝陰虚の代表的な症状としては、めまい、目の充血、かすみ目、耳鳴り、不眠、イライラ、不安感、手足のほてり、のぼせ、生理不順、便秘などが挙げられます。これらの症状は、いずれも体に潤いが足りず、熱がこもった状態であることを示しています。 肝陰虚を改善するには、十分な睡眠、栄養バランスのとれた食事、適度な運動、ストレスをため込まないなど、生活習慣の見直しが必要です。また、東洋医学では、枸杞子(クコシ)や菊花(キッカ)など、体を冷やし、潤いを与える生薬を処方することもあります。 肝陰虚は、放置すると他の病気の原因となる場合もあるため、早期に適切な対処をすることが大切です。
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知っておきたい! 心陰不足:その原因と症状

- 心臓を支える陰の力不足、それが心陰不足 -# 心陰不足とは 東洋医学では、人の体は「陰」と「陽」という相反する二つの力で成り立ち、この二つのバランスが保たれることで健康が維持されると考えられています。 心臓は体を活発に動かすための「陽」の臓器ですが、その力強い働きを陰ながら支えているのが「心陰」と呼ばれるものです。 心陰は、心臓に栄養を与え、潤いを与え、スムーズな活動を手助けする大切な役割を担っています。しかし、様々な原因でこの心陰が不足してしまうことがあります。これが「心陰不足」と呼ばれる状態です。 心陰が不足すると、心臓はまるで乾き切った大地のように潤いを失い、その働きは弱まってしまいます。すると、動悸や息切れ、不眠、不安感など、様々な不調が現れるようになります。 心陰不足は、過労や睡眠不足、ストレス、栄養不足、加齢など、様々な要因によって引き起こされます。忙しい現代社会において、心陰不足は決して珍しいものではありません。 東洋医学では、心陰不足の状態を改善するために、食事療法、漢方薬、鍼灸治療など、様々な方法を用います。日頃から心身のバランスを整え、心陰を補う生活を心がけることが大切です。
体質

心陰虚:その静かなる燃焼

- 陰陽のバランスの乱れ -# 陰陽のバランスの乱れ 東洋医学では、健康とは体内の陰と陽のバランスが保たれた状態だと考えられています。陰と陽は、この世界に存在するあらゆるものを分類する二つの相反する性質を指します。 陰は静かさ、冷たさ、闇、収縮、物質などを表し、陽は活動性、温かさ、光、拡張、機能などを表します。この陰陽は、昼と夜、夏と冬、男と女のように、自然界や人体の中で常に影響し合い、調和を保っています。 この陰陽のバランスが何らかの原因で崩れると、体に不調が現れると考えられています。例えば、陰が不足して陽が過剰になると、のぼせや不眠、イライラしやすくなるなどの症状が現れます。逆に、陽が不足して陰が過剰になると、冷え性やむくみ、だるさなどの症状が現れます。 心陰虚とは、心臓における陰のエネルギーが不足した状態を指します。心臓は生命エネルギーを全身に送り出す重要な臓器であり、その心臓の陰が不足すると、動悸や不眠、不安感、顔色が悪くなるなどの様々な症状が現れます。 東洋医学では、陰陽のバランスを整えることが健康を維持するために非常に重要だと考えられています。
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東洋医学における津枯血燥:その原因と症状

- 津枯血燥とは -# 津枯血燥とは 東洋医学では、私たちの体は「気・血・津液」のバランスによって健康が保たれていると考えられています。このうち、「津液」は、西洋医学でいう体液と似た概念で、唾液や涙、汗など、体内の潤滑油のような役割を担っています。 「津枯血燥」とは、この津液が不足し、体が乾燥した状態になることを指します。体の潤いが不足すると、同時に熱がこもりやすくなり、「血燥」と呼ばれる血液の循環が悪くなる状態を招きます。 津枯血燥は、さまざまな要因で引き起こされますが、特に加齢やストレス、過労、睡眠不足、偏った食事などが影響すると考えられています。また、乾燥した気候も、津枯血燥を悪化させる要因の一つです。 津枯血燥になると、肌や髪、喉の乾燥、便秘、目の渇き、めまい、立ちくらみ、不眠、イライラしやすくなるなどの症状が現れます。これらの症状は、西洋医学では異なる病名に分類されることもありますが、東洋医学では「津液不足」と「熱のこもり」という共通の原因によって引き起こされると考えます。
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気陰両虚:東洋医学における複合的な不調

- 気陰両虚とは 東洋医学では、心身ともに健康な状態を保つためには、「気」「血」「水」といった要素のバランスが非常に重要だと考えられています。これらの要素は互いに影響し合い、どれか一つでも不足したり偏ったりすると、体に不調が現れると考えられています。 その中でも、「気陰両虚」は生命エネルギーである「気」と、体を潤す「陰」の両方が不足している状態を指します。これは、気虚と陰虚という二つの状態が同時に起こっていることを意味し、より複雑な症状が現れることが特徴です。 「気」は、体を動かすエネルギー源となるものです。呼吸や血液循環、体温調節、代謝など、生命活動の根幹を支えています。一方、「陰」は体を潤し、栄養を与え、冷却する働きをします。体内の水分や栄養を保ち、過剰な活動を抑え、バランスを調整する役割を担っています。 気陰両虚の状態になると、気虚による倦怠感や食欲不振、息切れ、めまいなどの症状に加え、陰虚による口の渇き、のどの乾燥、肌の乾燥、ほてり、寝汗、便秘といった症状も現れます。 気陰両虚は、過労や睡眠不足、ストレス、偏った食事、加齢、慢性疾患などが原因で引き起こされると考えられています。症状が長引くと、さらに体のバランスを崩し、様々な不調につながる可能性もあるため、注意が必要です。
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東洋医学における「裏熱」:その原因と症状

- 「裏熱」とは -# 「裏熱」とは 「裏熱」とは、東洋医学で使われる言葉で、体の奥深くに熱がこもっている状態を指します。まるで体の中で熱がくすぶっているように感じることから、「裏熱」と呼ばれるようになりました。 体温計で測る体温は正常なのに、顔のほてりやのぼせ、微熱、寝汗、不眠、イライラ、便秘、肌の乾燥、喉の渇きといった症状が現れることがあります。これらの症状は、西洋医学の検査では原因がはっきりしない場合もありますが、東洋医学では「裏熱」が原因で起こると考えられています。 東洋医学では、心身のストレスや不摂生、過労、睡眠不足、食生活の乱れなどが原因で、体内のエネルギーバランスが崩れ、「気」「血」「水」の巡りが悪くなることで「裏熱」が生じると考えられています。体内のバランスが崩れることで、過剰な熱が体の中にこもってしまうのです。 「裏熱」は、放置すると様々な体の不調や病気を引き起こす可能性があります。日頃から、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスを溜めない生活を心がけ、「裏熱」を予防することが大切です。