東洋医学における風中血脈：その原因と症状

東洋医学における風中血脈：その原因と症状

風中血脈とは

– 風中血脈とは

風中血脈とは、東洋医学において、風邪（ふうじゃ）の邪気が身体の中に侵入し、それが血管に影響を与えることで、様々な神経症状を引き起こす病態を指します。現代医学の脳血管障害、特に脳梗塞や脳出血と症状が似通っており、突然手足に力が入らなくなったり、言葉がうまく話せなくなったり、意識が朦朧とするといった症状が現れます。

東洋医学では、風邪は気温や湿度の変化、風の影響などによって身体に侵入してくる外邪と考えられています。この風邪が体表にとどまらず、体の奥深く、つまり血脈にまで侵入してしまうと、気血の流れが滞り、様々な不調が現れると考えられています。特に、脳は「元神（げんしん）」と呼ばれる人間の精神活動をつかさどる重要な器官と考えられているため、風中血脈は命に関わる危険性も孕んでいるとされています。

ただし、ここで注意が必要なのは、風中血脈はあくまでも東洋医学的な診断名であり、西洋医学的な診断とは異なる場合もあるということです。似たような症状が現れたとしても、自己判断せずに、必ず医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。

風邪の侵入と影響

– 風邪の侵入と影響

東洋医学では、風邪はありとあらゆる病気の源になり得ると考えられており、「百病の長」とさえ呼ばれています。健康な状態であれば、多少の風邪の侵入を防ぐことはできますが、体が弱っている時や疲れが溜まっている時は、風邪はより侵入しやすくなります。

この風邪が、体の中を巡る道である「血脈」に影響を与えることで、様々な神経症状が現れると考えられており、これを「風中血脈」と呼びます。

では、風邪はどのようにして血脈に侵入するのでしょうか。

私達の体は、常に外邪と呼ばれる、風邪などの病気の原因となるものに触れています。健康な状態であれば、体を守る「衛気」というエネルギーが、外邪の侵入を防いでくれます。しかし、疲労や冷え、寝不足などが続くと、この衛気の働きが弱まってしまいます。

衛気の力が弱まると、風邪などの外邪は簡単に体内に侵入し、血脈に影響を与え、頭痛やめまい、しびれ、麻痺などの神経症状を引き起こすと考えられています。

つまり、風中血脈は、体の抵抗力が落ちている時にこそ注意が必要な状態と言えるでしょう。日頃から十分な休息と栄養を摂り、体の免疫力を高めておくことが、風邪から身を守るだけでなく、風中血脈の予防にも繋がります。

衰弱した血管への影響

健康な状態であれば、風邪を引いた程度では血管に大きな影響はありません。 私たちの身体は、外部からの様々な影響から身を守る防御機能が備わっており、血管もその一つです。しかし、加齢や不摂生な生活習慣によって血管が衰えてくると、風邪などの些細な影響を受けやすくなってしまいます。
血管は、全身に栄養や酸素を運ぶ重要な役割を担っています。加齢によって血管は弾力を失い硬くなってしまい、血液の通り道が狭くなってしまいます。また、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、血管に負担をかけ、傷つけてしまいます。これらの要因によって血管がもろくなると、風邪のウイルスが侵入しやすくなり、炎症を引き起こしてしまうのです。
このような状態になると、風中血脈を発症しやすくなる可能性があります。 風中血脈は、顔面神経麻痺や神経痛などを引き起こす可能性のある病気です。健康な状態であれば、風邪をひいたとしても、これらの病気を発症することは稀です。しかし、血管が衰えている場合は注意が必要です。
日頃から、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、血管を健やかに保つことが重要です。

主な症状：口眼喎斜と麻痺

– 主な症状口眼喎斜と麻痺

風中血脈の代表的な症状として、顔の筋肉が麻痺し歪んでしまう「口眼喎斜」と、体の片側に力が入らなくなる「片麻痺」が挙げられます。

口眼喎斜は、顔の片側に麻痺が生じることで、眉が上がらなくなったり、目が閉じにくくなったり、口角が下がったりと、表情が非対称になる症状です。
例えば、食事の際に食べ物がこぼれやすくなったり、発音しづらくなったり、表情が作りづらくなることで周囲に誤解を与えてしまうなど、日常生活に支障をきたすこともあります。

片麻痺は、脳の血管が詰まったり、破れたりすることで、脳からの指令が体の片側にうまく伝わらなくなり、手足に力が入らなくなる、感覚が鈍くなるなどの症状が現れます。

これらの症状は、脳卒中の初期症状である可能性もあるため、発症したらすぐに医療機関を受診することが重要です。

東洋医学的な治療法

{東洋医学では、病気の原因は、身体のエネルギーである「気」の流れが滞ることだと考えています。この滞りが起こる原因は、冷えや湿気などの外的な要因と、過労やストレス、偏った食事などの内的な要因があります。
風中血脈とは、これらの要因によって気血の流れが乱れ、身体の様々な場所に痛みやしびれなどの症状が現れる状態を指します。

東洋医学的な治療法では、鍼やお灸を用いて、身体の特定のツボを刺激することで、気の流れを調整し、血行を促進し、神経の働きを正常に戻すことを目指します。
また、患者さんの体質や症状に合わせて、生薬を組み合わせた漢方薬を処方することもあります。漢方薬は、身体の内側から gently に働きかけ、自然治癒力を高める効果が期待できます。

さらに、東洋医学では、病気の予防や再発防止のために、生活習慣の改善を重要視しています。
患者さん一人ひとりの体質や生活習慣を考慮し、食事療法や運動療法、睡眠の質を高めるためのアドバイスなどを行います。
風中血脈は、放置すると症状が悪化し、慢性化する可能性もあります。少しでも症状が気になる場合は、早めに専門医に相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。