東洋医学における診断の要:三部九候

東洋医学を知りたい
先生、『三部九候』って東洋医学の用語で聞いたんですけど、どんなものですか?

東洋医学研究家
いい質問だね。『三部九候』は、簡単に言うと、体の表面に近いところと深いところで、血管の pulsation を触って体の状態を調べる方法なんだ。

東洋医学を知りたい
体の表面に近いところと深いところで、ですか? どうやって調べるんですか?

東洋医学研究家
例えば手首だと、手首の親指側にある動脈を触るよね。軽く触れただけで感じる pulsation 、少し力を入れて感じる pulsation 、もっと強く押して感じる pulsation と、三段階で pulsation を調べるんだ。それが『三部』で、これを体のいくつかの場所でみるから『九候』って言うんだよ。
三部九候とは。
東洋医学で使われる言葉「三部九候」は、体の状態を知るための方法です。
まず、(1)頭、腕、足それぞれにある、上・中・下の動脈を触って脈の状態をみます。
次に、(2)手首の親指側にある動脈を「寸」「関」「尺」の3つの場所に分けます。それぞれの場所を、軽く押さえる、少し強く押さえる、強く押さえるという3種類の強さで触れ、脈の深さや強さをみます。
三部九候とは

– 三部九候とは
-# 三部九候とは
三部九候とは、東洋医学、特に脈診において非常に重要な診断方法です。脈診は、患者さんの手首にある動脈を指で触れて、体の状態を判断する診断方法です。この脈診を行う際に、ただ漠然と脈を診るのではなく、「三部」と呼ばれる3つの部位と、「九候」と呼ばれる9つのポイントを組み合わせて、合計27の箇所を細かく診察していくのが三部九候です。
具体的には、患者さんの手首の親指側にある橈骨動脈を、人差し指、中指、薬指の三本の指で触れていきます。この三本の指の位置をそれぞれ「寸」「関」「尺」と呼び、これが「三部」にあたります。そして、それぞれの指を置く場所を、手首に近い方から「寸口」「関上」「尺中」の三つに分け、さらに指の当て方によって「浮」「中」「沈」の三段階で脈の状態を診ていきます。この三つの場所と三つの深さを組み合わせた九つのポイントが「九候」です。
三部九候を用いることで、体の表面に近い部分の「気」の流れや、奥にある内臓の働き、体の冷えや熱など、様々な情報を読み取ることができます。例えば、心臓の働きは「寸」の脈で、「関」は消化器系、「尺」は腎臓や生殖器系の状態を反映していると考えられています。また、「浮」の脈は風邪などの初期症状、「沈」の脈は体力の低下や慢性的な病気を示唆していることがあります。
このように、三部九候は、患者さんの体の状態を総合的に判断するための、非常に重要な診断方法と言えるでしょう。
| 部位 | 脈の位置 | 深さ | 脈候 |
|---|---|---|---|
| 寸 (人差し指) |
寸口 | 浮 | 寸口脈浮 |
| 中 | 寸口脈中 | ||
| 沈 | 寸口脈沈 | ||
| 関上 | 浮 | 関上脈浮 | |
| 中 | 関上脈中 | ||
| 沈 | 関上脈沈 | ||
| 尺中 | 浮 | 尺中脈浮 | |
| 中 | 尺中脈中 | ||
| 沈 | 尺中脈沈 | ||
| 関 (中指) |
寸口 | 浮 | 寸口脈浮 |
| 中 | 寸口脈中 | ||
| 沈 | 寸口脈沈 | ||
| 関上 | 浮 | 関上脈浮 | |
| 中 | 関上脈中 | ||
| 沈 | 関上脈沈 | ||
| 尺中 | 浮 | 尺中脈浮 | |
| 中 | 尺中脈中 | ||
| 沈 | 尺中脈沈 | ||
| 尺 (薬指) |
寸口 | 浮 | 寸口脈浮 |
| 中 | 寸口脈中 | ||
| 沈 | 寸口脈沈 | ||
| 関上 | 浮 | 関上脈浮 | |
| 中 | 関上脈中 | ||
| 沈 | 関上脈沈 | ||
| 尺中 | 浮 | 尺中脈浮 | |
| 中 | 尺中脈中 | ||
| 沈 | 尺中脈沈 |
体の三つの部位

– 体の三つの部位
-# 体の三つの部位
東洋医学では、体を大きく三つの部位に分けて観察します。それが「頭部」「上肢」「下肢」です。この三つの部位は、それぞれが重要な役割を担っており、互いに密接に関係し合っていると考えられています。
それぞれの部位には、特定の動脈が流れており、その脈拍や状態を診ることで、体の状態を詳しく知ることができます。これを「脈診」といいます。脈診は、東洋医学における重要な診察方法の一つです。
「頭部」は、思考や感情、感覚をつかさどる重要な部位です。頭部に流れる動脈の脈を診ることで、精神状態や神経系のバランスを知ることができます。例えば、脈が速ければ、興奮状態や緊張状態が考えられますし、脈が遅ければ、疲労や気力の低下が疑われます。
「上肢」は、主に呼吸器や循環器と関係しています。上肢の脈からは、心臓や肺の働き、血液循環の状態などを知ることができます。例えば、脈が強ければ、高血圧や動悸などが考えられますし、脈が弱ければ、低血圧や貧血などが疑われます。
「下肢」は、消化器や泌尿器、生殖器と関係しています。下肢の脈からは、胃腸や肝臓、腎臓などの働きを知ることができます。例えば、脈が沈んでいれば、消化不良や便秘などが考えられますし、脈が浮いていれば、下痢や膀胱炎などが疑われます。
このように、東洋医学では、体の三つの部位とその脈の状態から、全身の状態を総合的に判断します。
| 体の部位 | 役割 | 関係する臓器・器官 | 脈の状態 | 考えられる状態 |
|---|---|---|---|---|
| 頭部 | 思考、感情、感覚をつかさどる | 神経系 | 速い 遅い |
興奮状態、緊張状態 疲労、気力の低下 |
| 上肢 | 呼吸器、循環器 | 心臓、肺 | 強い 弱い |
高血圧、動悸 低血圧、貧血 |
| 下肢 | 消化器、泌尿器、生殖器 | 胃腸、肝臓、腎臓、膀胱など | 沈む 浮く |
消化不良、便秘 下痢、膀胱炎 |
各部位の三つの脈

– 各部位の三つの脈
東洋医学では、体の表面にある特定の場所(経穴と呼ばれるツボ)を流れる「気」の状態を診ることで、健康状態を把握します。この診察法は脈診と呼ばれ、特に手首の橈骨動脈は重要な部位です。
「九候」とは、体の左右にある三つの脈診部位(合計六か所)それぞれにおいて、さらに三つの深さの脈を診ることで、より詳細な診断を行うことを指します。それぞれの部位で三つの脈、つまり合計九つの脈の状態を診ることから、「九候」と呼ばれているのです。
具体的に、手首の橈骨動脈を例に説明しましょう。橈骨動脈は、親指の付け根から手首にかけての部位にあり、皮膚のすぐ下で触れることができます。この動脈を指で軽く押さえて感じる脈を「寸」と呼びます。「寸」は体の表層を流れる「気」、つまり呼吸器や循環器など、体の外側にある臓腑の状態を反映すると考えられています。
次に、少し力を込めて感じる脈を「関」と呼びます。「関」は「寸」よりも少し深い、体の消化器系など、中部の臓腑の状態を反映すると考えられています。
最後に、さらに強く押さえて、骨の際で感じる脈を「尺」と呼びます。「尺」は体の最も深い部分を流れる「気」、泌尿器や生殖器など、体の奥にある臓腑の状態を反映すると考えられています。
このように、三つの深さの脈を診ることで、体の様々な部位の「気」の状態をより詳しく把握することができると考えられています。
| 脈の深さ | 体の部位 | 関連する臓腑 |
|---|---|---|
| 寸 | 表層 | 呼吸器、循環器など体の外側にある臓腑 |
| 関 | 中間 | 消化器系など中部の臓腑 |
| 尺 | 深部 | 泌尿器、生殖器など体の奥にある臓腑 |
脈診における重要性

– 脈診における重要性
脈診は、東洋医学において患者の状態を把握するための重要な診断方法の一つです。単に脈拍数を測るだけでなく、脈の速さや強さ、深さ、リズム、質感など、様々な要素を組み合わせて総合的に判断します。この脈診方法を「三部九候」と呼びます。
三部九候では、まず左右の橈骨動脈の寸口と呼ばれる部位を触診します。寸口は、手首の親指側にあり、人差し指、中指、薬指の三本の指を当てて脈を診ます。そして、それぞれの指に感じる脈の位置によって、表(浅い)、中(中間)、裏(深い)の三つの深さを、指の位置によって寸、関、尺の三つの部位を診ていきます。この三つの深さと三つの部位を組み合わせた合計九つの部位を診るため、「九候」と呼ばれます。
経験豊富な東洋医学の医師は、この三部九候を駆使することで、体内の「気」の流れや臓腑の状態を詳細に把握することができます。例えば、脈が速く力強い場合は、体に熱があるか、「気」が亢進している状態を示唆しています。反対に、脈が遅く弱い場合は、体が冷えているか、「気」が不足している状態を示唆しています。さらに、脈のリズムや質感から、気滞、血瘀、水滞といった体の不調や、どの臓腑に問題があるのかを判断します。
このように、脈診は患者の状態を総合的に判断するための重要な情報を提供してくれるため、東洋医学において非常に重要な診断方法となっています。そして、脈診によって得られた情報は、鍼灸治療や漢方薬の処方など、一人ひとりに最適な治療法を選択するために活用されます。
| 三部九候 | |||
|---|---|---|---|
| 部位 | 寸(親指側) | 関(中央) | 尺(小指側) |
|
表 (浅い) |
肺 | 心包 | 三焦(上焦) |
|
中 (中間) |
脾 | 肝 | 胆 |
|
裏 (深い) |
腎 | 心 | 三焦(中下焦) 命門 |
現代医学との関連

現代医学においても、脈拍は心拍数として測定され、血圧や呼吸数と並んで重要なバイタルサインとされています。これは、脈拍が心臓の活動と直接的に結びついているため、全身の循環状態を把握する上で重要な指標となるからです。
一方、東洋医学における脈診は、単なる心拍数の測定を超えた、より深く、多角的な体の状態の評価を可能にします。東洋医学では、脈は単なる血液の循環としてではなく、「気」の流れを反映していると考えます。「気」とは、生命エネルギーとも呼ばれる、目には見えない生命活動の根源的なエネルギーのことです。そして、この「気」は、体中に張り巡らされた経絡という通路を通り、各臓腑と密接に関係しながら全身を循環しています。
三部九候はこの「気」の流れを、脈の速さ、強さ、深さ、リズム、滑らかさなど、様々な角度から分析することで、臓腑の活動状態や体全体のバランスを詳細に把握する診断方法です。つまり、西洋医学が主に心臓の働きという一つの側面から体の状態を診るのに対し、東洋医学では、脈を通じて全身の「気」の流れや臓腑の状態を総合的に判断するという、よりホリスティックな視点を持っていると言えるでしょう。
| 項目 | 西洋医学 | 東洋医学 |
|---|---|---|
| 脈拍の捉え方 | 心拍数として測定、重要なバイタルサイン | 「気」の流れを反映 |
| 診断の目的 | 心臓の働きという側面から体の状態を診る | 脈を通じて全身の「気」の流れや臓腑の状態を総合的に判断する |
| 視点 | 一つの側面からの診断 | ホリスティックな視点からの診断 |
